
近年、働き方の多様化が進み、育児や介護をしながら仕事を続けたいと考える人が増えています。特に、リモートワークの普及や労働力不足の問題がクローズアップされる中、企業にとって「仕事とプライベートの両立を支援する環境づくり」は重要な課題となっています。従業員が安心して働ける職場は、満足度の向上や生産性アップにつながるだけでなく、優秀な人材の確保や定着率の向上にも大きく貢献します。
こうした背景を受け、政府も両立支援の取り組みを後押ししており、その一環として「両立支援等助成金」という制度が用意されています。本記事では、両立支援等助成金の概要と活用方法について分かりやすく紹介します。
雇用の定着を図りたいと考えていらっしゃる企業の方はぜひ参考にしていただければと思います。
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この記事の目次
両立支援等助成金とは
両立支援等助成金は、働く環境の改善を通じて、仕事と家庭生活のバランスを取ることを促進し、雇用の安定を図る事業主のための助成金です。
以下、6つのコースに分かれています。
- 出生時両立支援コース(子育てパパ支援助成金)
- 育児休業等支援コース
- 育休中等業務代替支援コース
- 柔軟な働き方選択制度等支援コース
- 介護離職防止支援コース
- 不妊治療両立支援コース
多様なニーズに応じたコースがあり、これにより事業主は従業員のさまざまなライフステージに対応した支援策を実施することができます。
両立支援等助成金の各コース概要・助成額
ここでは、各コースの内容と支給額を紹介します。従業員のライフステージに応じた支援策を検討する際の参考にしてください。出生時両立支援コース(子育てパパ支援助成金)
【第1種(男性労働者の育児休業取得)】
男性従業員が育児休業を取得しやすい雇用環境整備や業務体制整備を行い、子の出生後8週間以内に開始する育児休業を取得した男性従業員が生じた中小企業事業主に支給します。
支給額 | |
---|---|
1人目 | 20万円 |
2~3人目 | 10万円 |
※第1種の対象となった同一の育児休業取得者の同一の育児休業について、育児休業等支援コース(育休取得時等)との併給はできませんのでご注意ください。
1人目の育休取得前に雇用環境整備措置を4つ以上実施している場合、1人目に10万円を加算されます。また対象事業主が自社の育児休業等の取得状況に関する情報を「両立支援のひろば」サイト上で公表した場合、2万円が加算されます。
<主な受給要件>
・育児・介護休業法に定める雇用環境整備の措置を複数実施
・育児休業取得者の業務を代替する労働者の、業務見直しに係る規定等を策定し、当該規定に基づき業務体制の整備を実施
・男性労働者が子の出生後8週間以内に開始する一定日数以上の育児休業を取得
・1人目:5日(所定労働日4日)以上
・2人目:10日(所定労働日8日)以上
・3人目:14日(所定労働日11日)以上
【第2種(男性の育児休業取得率の上昇等)】
男性従業員の育児休業取得率が、上記第1種の助成を受けてから3年以内に30%以上上昇した中小企業事業主や、一定の場合に2年連続70%以上となった中小企業事業主に支給します。(1企業1回まで) ※令和6年12月の拡充で、第2種は第1種未受給でも申請可能になりました!
支給額 | |
---|---|
男性労働者の育児休業取得率の数値(%)が 1事業年度で30ポイント以上上昇し、50%を達成した (または一定の場合に2年連続70%以上となった)場合 | 60万円 |
※第2種は1事業主につき1回限りの支給となっています。
※対象事業主がプラチナくるみん認定事業主の場合、15万円加算されます。
<主な受給要件>
・育児・介護休業法に定める雇用環境整備の措置を複数実施
・育児休業取得者の業務を代替する労働者の、業務見直しに係る規定等を策定し、当該規定に基づき業務体制の整備を実施
・A.男性労働者の育児休業取得率が、前事業年度から30ポイント以上上昇し、50%以上となっていること
または
B.男性労働者の育児休業取得率が、2か年連続して70%以上となっていること
育児休業等支援コース
「育休復帰支援プラン」を作成し、プランに沿って従業員の円滑な育児休業の取得・職場復帰に取り組み、育児休業を取得した従業員が生じた中小企業事業主に支給します。(1企業あたり雇用期間の定めのない労働者1人、有期雇用労働者1人の計2人まで支給)
支給額 | |
---|---|
①育休取得時 | 30万円 |
②職場復帰時 | 30万円 |
※①②とも1事業主2人まで(無期・有期1人ずつ)
※①②の対象事業主が自社の育児休業等の取得状況に関する情報を「両立支援のひろば」サイト上で公表した場合、2万円が加算されます。
<①育休取得時の主な受給要件>
・育児休業の取得、職場復帰についてプラン作成による支援を実施する方針の社内周知
・労働者との面談を実施し、本人の希望を確認したうえで結果を記録し、プランを作成
・対象労働者の育児休業(引き続き休業する場合は産前休業)の開始日の前日までに、業務の引き継ぎを実施し、対象労働者が連続3か月以上の育児休業(引き続き休業する場合は産後休業を含む)を取得
<②職場復帰時の主な受給要件>
・「①育休取得時」と同一の育児休業取得者のみ対象
・対象労働者の復帰までに職務や業務の情報・資料の提供を実施
・育児休業終了前にその上司または人事労務担当者が面談を実施し、面談結果を記録
・対象労働者を原則として原職等に復帰させ、申請日までの間6か月以上継続雇用
育休中等業務代替支援コース
育児休業や育児短時間勤務の期間中の業務体制整備のため、育児休業取得者や育児短時間勤務を利用する従業員の業務を代替する周囲の従業員への手当支給等の取組や、育児休業取得者の代替要員の新規雇用(派遣受入を含む)を実施した中小企業事業主に支給します。
※ 令和6年12月の拡充で、支給額欄①②については常時雇用する労働者の数が300人以下の事業主も支給対象になりました。
以下、≪≫内はプラチナくるみん認定事業主への加算・割増
支給額 | ||
---|---|---|
①手当支給等(育児休業) | A・Bの合計 最大140万円 | A.業務体制整備経費:6万円 (育休1か月未満:2万円) (労務コンサルティングを外部の専門事業者に委託した場合は20万円) B.手当支給総額の3/4(※1) ※上限10万円/月、12か月まで |
②手当支給等(短時間勤務) | A・Bの合計 最大128万円 | A.業務体制整備経費:3万円 (労務コンサルティングを外部の専門事業者に委託した場合は20万円) B.手当支給総額の3/4 ※上限3万円/月、子が3歳になるまで |
③新規雇用(育児休業) | 代替期間に応じた額を支給(※1) 最短:7日以上14日未満 9万円 最長:6か月以上 67.5万円 | |
有期雇用労働者加算 | 10万円加算(※3) |
※1 プラチナくるみん認定事業は割増・加算あり
※2 ①~③全てあわせて1年度10人まで、初回から5年間支給
※3 育休取得者/短時間勤務者が有期雇用労働者かつ業務代替期間1か月以上の場合に加算
<①手当支給等(育児休業)の主な受給要件>
・代替業務の見直し・効率化の取組の実施
・業務を代替する労働者への手当制度等を就業規則等に規定
・対象労働者が7日以上の育児休業を取得し、復帰後も支給申請日まで継続雇用
・業務を代替する労働者への手当等の支給(支給した手当額に応じ、助成金支給額が変動)
<②手当支給等(短時間勤務)の主な受給要件>
・代替業務の見直し・効率化の取組の実施
・業務を代替する労働者への手当制度等を就業規則等に規定
・対象労働者が育児のための短時間勤務制度を1か月以上利用し、支給申請日まで継続雇用
・業務を代替する労働者への手当等の支給(支給した手当額に応じ、助成金支給額が変動)
<③新規雇用(育児休業)の主な受給要件>
・育児休業を取得する労働者の代替要員を新規雇用または派遣受入で確保
・対象労働者が7日以上の育児休業を取得し、復帰後も支給申請日まで継続雇用
・代替要員が育児休業中に業務を代替(業務を代替した期間に応じ、助成金支給額が変動)
※育休取得者/制度利用者が有期雇用労働者の場合、①~③に10万円加算(代替期間1か月以上の場合のみ)
※対象事業主が自社の育児休業等の取得状況に関する情報を「両立支援のひろば」サイト上で公表した場合、2万円が加算されます。
柔軟な働き方選択制度等支援コース
育児期の柔軟な働き方に関する制度(柔軟な働き方選択制度等)を複数導入した上で、「育児に係る柔軟な働き方支援プラン」に基づき、制度利用者を支援した中小企業事業主に支給します。本コースは、令和6年度予算により新設された助成金で、令和6年4月1日以降に対象労働者が制度利用を開始した場合が対象となります。
対象となる働き方制度とは以下の制度となります。
制度名称 | 導入すべき主な内容 | 利用実績の基準 |
---|---|---|
フレックスタイム制/時差出勤制度 | 始業・終業時刻や労働時間を労働者が決定/始業・終業の1時間以上の繰り上げ・繰り下げ | 合計20日以上制度利用 |
育児のためのテレワーク等 | 勤務日の半数以上利用可能時間単位利用可能 | 合計20日以上制度利用 |
短時間勤務制度 | 1日1時間以上の所定労働時間短縮/1日6時間以外の短縮時間も利用可能 | 合計20日以上制度利用 |
保育サービスの手配・費用補助制度 | 一時的な保育サービスを手配し、サービスの利用に係る費用の全部または一部を補助 | 労働者負担額の5割以上かつ3万円以上、または10万円以上の補助 |
子の養育を容易にするための休暇制度/法を上回る子の看護休暇制度 | 有給、年10日以上取得可能、時間単位取得可能な休暇制度 | 合計20時間以上取得 |
※異なる制度を同一期間に利用した場合、利用実績を合算することはできません。
支給額 | |
---|---|
制度を2つ導入し、利用者が生じた場合 | 20万円 |
制度を3つ以上導入し、利用者が生じた場合 | 25万円 |
※対象事業主が自社の育児休業等の取得状況に関する情報を「両立支援のひろば」サイト上で公表した場合、2万円を加算
※1事業主1年度5人まで
<主な受給要件>
・柔軟な働き方選択制度等(上記)を2つ以上導入
・柔軟な働き方選択制度等の利用について、プラン作成による支援を実施する方針の社内周知
・労働者との面談を実施し、本人の希望等を確認・結果記録の上、業務体制の検討や制度利用後のキャリア形成円滑化のための措置を盛り込んだプランを作成
・制度利用開始から6か月間の間に、対象労働者が柔軟な働き方選択制度等を一定基準以上利用
介護離職防止支援コース
「介護支援プラン」を作成し、プランに沿って従業員の円滑な介護休業の取得・職場復帰に取り組み、介護休業を取得した従業員が生じた、または介護のための柔軟な就労形態の制度(介護両立支援制度)の利用者が生じた中小企業事業主に支給します。(それぞれ、1企業あたり1年度5人まで支給)
支給額 | ||
---|---|---|
①介護休業 | 【休業取得時】 | 30万円 |
【職場復帰時】 <業務代替支援加算> | 30万円 <新規雇用20万円、手当支給等5万円> | |
②介護両立支援制度 | 30万円 | |
個別周知・環境整備加算 | 15万円 |
<①介護休業の主な受給要件>
休業取得時
・介護休業の取得、職場復帰について、プラン作成による支援を実施する方針の社内周知
・労働者との面談を実施し、本人の希望等を確認・結果記録の上、プランを作成
・業務の引き継ぎを実施し、対象労働者が合計5日(所定労働日)以上の介護休業を取得
職場復帰時※休業取得時と同一の対象介護休業取得者のみ対象:
・介護休業終了後にその上司または人事労務担当者が面談を実施し、面談結果を記録
・対象労働者を原則として原職等に復帰させ、支給申請日まで3か月以上継続雇用
<業務代替支援加算> ※職場復帰時への加算:
・介護休業期間中の代替要員を新規雇用等で確保した場合(新規雇用)または、代替要員を確保せずに周囲の社員に手当を支給して業務を代替させた場合(手当支給等)に支給額を加算
<②介護両立支援制度(介護のための柔軟な就労形態の制度)の主な受給要件>
・介護両立支援制度の利用について、プラン作成による支援を実施する方針の社内周知
・労働者との面談を実施し、本人の希望等を確認・結果記録の上、プランを作成
・業務体制の検討を行い、以下のいずれかの介護両立支援制度を対象労働者が合計20日以上(一部除く)利用し、支給申請日まで継続雇用
・所定外労働の制限制度・深夜業の制限制度・介護のための在宅勤務制度・介護のためのフレックスタイム制・時差出勤制度・短時間勤務制度・法を上回る介護休暇制度(※1)・介護サービス費用助制度(※2) |
※1、2の制度は利用期間が利用開始から6か月を経過する日の間に一定の要件を満たすことが必要となります。
<<個別周知・環境整備加算> の主な受給要件>※介護休業(休業取得時)または介護両立支援制度への加算
・受給対象労働者に、介護に係る自社制度の説明、介護休業の取得時の待遇の説明を資料で行う
・社内の労働者向けに、仕事と介護を両立しやすい雇用環境整備の措置を2つ以上講じる
不妊治療両立支援コース
不妊治療と仕事との両立に資する職場環境の整備に取り組み、不妊治療のために利用可能な休暇制度や両立支援制度を労働者が利用した中小企業事業主に支給します。
支給額 | |
---|---|
A 最初の労働者が休暇制度・両立支援制度を合計5日(回)利用 | 30万円 |
B Aを受給し、労働者が不妊治療休暇を20日以上連続して取得 | 30万円 |
※A、Bとも1事業主あたり1回限り
<Aの主な受給要件>
・企業トップが不妊治療休暇制度または両立支援制度(以下に表記する)の利用促進についての方針を全労働者に周知
(所定外労働制限制度/時差出勤制度/短時間勤務制度/フレックスタイム制/テレワーク)
・不妊治療休暇制度・両立支援制度を就業規則等に規定し、労働者に周知
・不妊治療と仕事との両立に関して、社内ニーズ調査を実施
・両立支援担当者を選任し、相談に対応
・対象労働者について、不妊治療両立支援プランを策定
・対象労働者がプランに基づき不妊治療休暇制度または両立支援制度を合計5日(回)利用
<Bの主な受給要件>
・不妊治療休暇を一つの年度内に対象労働者が20日以上連続して取得
・対象労働者を原則として原職復帰させ、3か月以上継続雇用
2025年の拡充方針
厚生労働省は、2024年度補正予算案の中で、「出生時両立支援コース」および「育休中等業務代替支援コース」に関する制度の拡充を進める方針を示しました。これにより、従業員の育児休業取得を支援する企業への助成がさらに手厚くなることが期待されます。
出生時両立支援コース拡充ポイント
今回の変更において、主に出生時両立支援コースの第2種の要件や支給金額が変動します。まず第2種の要件が変更となり、今までは第2種の申請要件は「出生時両立支援コース第1種」を受給していることでしたが、第1種未受給でも申請可能になります。また、年次ごとの育児取得率の上昇ポイントの要件も緩和され70%から50%に引き下げられ、支給金額も60万円になります。事業年度ごとの詳細は未定ですので、2事業年度以降までが60万円と引き上げられるのかどうかが注目されます。
・第2種の要件→第1種未受給でも申請可能に
・第2種の要件:育児取得率の上昇ポイント70%→50%へ
・第2種の支給金額:2〜3事業年度以内の上昇の場合の金額20〜40万円→60万円へ
・第2種の申請時→プラチナくるみん認定事業主であった場合→15万円加算(第1種未受給でも申請可能となるため)
育児中等業務代替支援コース拡充ポイント
このコースでは、対象となる事業主の要件が常時雇用する労働者数が300人以下の事業主も支給対象に引き下げされておりまた支給金額も拡充されています。
・育児休業中の手当支給
・最大140万円(休業取得時30万円+職場復帰時110万円)に拡充
・業務体制整備経費が1人目20万円(社労士委託なしの場合6万円)に拡充
・育短勤務中の手当支給
・最大128万円(育短勤務開始時23万円+子が3歳到達時105万円)に拡充
・業務体制整備経費が1人目20万円(社労士委託なしの場合3万円)に拡充
事前に今までの要件等を確認し該当する方がいるようであれば今のうちに準備を進めておくことをお勧めします。
両立支援等助成金を申請するときの注意点
両立支援等助成金を活用することで、育児や介護と仕事の両立を支援する環境を整えやすくなりますが、申請にはいくつかのポイントに注意が必要です。「申請したのに対象外だった」「必要な書類が足りずに手続きが遅れた」といったトラブルを防ぐためにも、事前に要件や手続きの流れをしっかり確認しておくことが大切です。
ここでは、スムーズに申請を進めるための注意点を詳しく解説します。
両立支援等助成金の対象外となる事業主とは?
そもそも自社は「両立支援等助成金」の対象となるのかどうかという点について確認していきたいと思います。
以下にあてはまる事業主は雇用関係の助成金の受給ができません。事前に内容を確認しましょう。
・不正受給をしてから3年以内に支給申請をした事業主、または支給申請後、支給決定が下されるまでの期間に不正受給を行った事業主 ・支給申請日が属する年度の前年度より前のいずれかの保険年度の労働保険料を納付していない事業主(支給申請日の翌日から起算して2か月以内に納付を行った事業主を除く) ・支給申請日の前日から起算して1年前の日から支給申請日の前日までの期間に労働関係法令を違反していた事業主 ・性風俗関連営業、接待を伴う飲食等営業またはこれら営業の一部を受託する営業を行う事業主 ・事業主またはその役員が暴力団と関わりがある場合 ・事業主またその役員が破壊活動防止法に定められた暴力主義的破壊活動を行ったまたは行う恐れのある団体に属している場合 ・支給申請日または支給決定日時点で倒産している事業主 ・不正受給が発覚した際に都道府県労働局が行う事業主名等の公表について、あらかじめ同意していない事業主 |
適切な労務管理
両立支援等助成金を申請する際には、従業員の労務管理を適切に行うことが求められます。これは、助成金の支給要件として労務管理の適正性が確認されるためであり、就業規則や労働者名簿、賃金台帳などの書類提出が必要になります。
万が一、労務管理に不備があると助成金を受け取ることができないため、日頃から正確な記録を保ち、適切な管理を徹底しましょう。労働基準法や育児・介護休業法などの遵守も欠かせません。
労務管理が不十分であると感じる事業者の方は、事前に社労士などの専門家に相談しながら進めることをおすすめします。
事業主単位での支給
両立支援等助成金は、事業所ごとではなく事業主単位で支給されます。多くのコースでは、1つの事業主につき1回のみの助成となる場合があるため、申請のタイミングには注意が必要です。
また、受給対象のほとんどが中小企業の事業主に限定されています。自社の規模が対象に該当するかどうか、以下の表を参考に確認してみてください。
小売業・飲食業 | 資本額または出資額が5千万円以下 または常時雇用する労働者数が50人以下 |
---|---|
サービス業 | 資本額または出資額が5千万円以下 または常時雇用する労働者数が100人以下 |
卸売業 | 資本額または出資額が1億円以下 または常時雇用する労働者数が100人以下 |
その他 | 資本額または出資額が3億円以下 または常時雇用する労働者数が300人以下 |
取り組み前の制度や体制の整備
助成金の支給要件を満たすには、取り組みを実施する前に社内制度を整えることが重要です。以下は具体的にどのような事前準備が必要かを代表的なものを記載していますのでご確認ください。
出生時両立支援コース(子育てパパ支援助成金) | 育児・介護休業法に定める雇用環境整備 業務見直しに係る規定等を策定 業務体制の整備等 |
---|---|
育児休業等支援コース | 育児休業の取得、職場復帰についてプラン作成等 |
育休中等業務代替支援コース | 手当制度等を就業規則等に規定する等 |
柔軟な働き方選択制度等支援コース | 柔軟な働き方選択制度等を2つ以上導入等 |
介護離職防止支援コース | 介護休業の取得、職場復帰のプラン作成・面談実施等 |
不妊治療両立支援コース | 不妊治療休暇制度・両立支援制度を就業規則等に規定等 |
事前の準備を怠ると助成対象外となる可能性があるため、各コースの要件を確認し早めに確認・対応しましょう。
いつ受給できるのか
助成金の申請後、振込までには一般的に2〜3ヶ月程度かかるとされていますが、これはあくまで目安であり、状況によって変動する可能性があります。特に、助成金の種類によっては審査や手続きに時間を要し、さらに長期間かかるケースも少なくありません。そのため、申請から受給までのスケジュールをしっかり把握し、資金計画には十分な余裕を持って対応することが重要です。
両立支援等助成金を受給するメリット
両立支援等助成金を活用することで、企業は育児や介護などにかかわる従業員のために必要な支援策を整備できます。育児や介護、不妊治療といった私生活の変化にも対応して、長期間にわたり安心して働ける環境を提供することは、才能ある人材の確保につながり、雇用の安定を促進するだけでなく、企業経営の安定にもつながります。
両立支援等助成金の申請方法
申請に必要な書類を準備し、期限内に申請します。コースごとに申請のタイミングが異なりますので計画的に申請をすすめましょう。各コースの申請期限は以下のとおりです。
【申請期限】
出生時両立支援コース |
第一種:育児休業の終了日の翌日から起算して2か月以内 第二種:育児休業取得率が上昇等した事業年度の翌事業年度の開始日から起算して6か月以内 |
育児休業等支援コース |
・産後休業から連続して育児休業を取得した場合は、産後休業開始日 ・上記以外の場合(産後休業を取得せず、育児休業のみを取得した場合または産後休業と育児休業が連続していない場合)は、育児休業開始日から起算して3か月を経過する日の翌日から2か月以内です。 |
育休中等業務代替支援コース |
• 申請期間は、育児休業期間の⻑短により異なります。 • 育児休業期間が1か月未満の場合は、育児休業終了日の翌日から2か月以内です。 • 育児休業期間が1か月以上の場合は、育児休業終了日の翌日から3か月を経過する日の翌日から2か月以内です。 |
柔軟な働き方選択制度等支援コース |
6か月間の制度利用期間の翌日から2か月以内 |
介護離職防止支援コース |
対象となる介護休業取得日数が合計5日を経過する日の翌日から2か月以内 |
不妊治療両立支援コース |
対象労働者の不妊治療休暇・両立支援制度の利用期間が合計5日を経過する日の翌日から2か月以内 |
申請先は、申請事業主の本社等の所在地にある労働局雇用環境・均等部(室)です。郵送で申請する場合は、簡易書留など配達記録が残る方法で送付してください。
申請に必要な書類
各コースの提出書類をまとめました。どのような書類の準備が必要になるか参考にしてください。書類の詳細は支給申請の手引き等をご確認ください。
【出生時両立支援コース 申請に必要な書類 (第1種の場合)】
・支給申請書:両立支援等助成金(出生時両立支援コース(第1種))支給申請書(【出】様式第1号①②) ・支給要件確認申立書: 共通要領様式第1号、最新版様式を使用すること ・労働協約・就業規則・労使協定:育児休業制度(産後パパ育休含む)、短時間勤務制度の規定が確認できる書類 ・雇用環境整備の措置実施書類:育児休業に関する研修・相談体制・事例収集などの実施と実施日が確認できる書類 ・業務見直しに関する規定:育児休業取得者の業務の整理や引き継ぎに関する事項が含まれている書類 ・育児休業申出書:育児休業期間や申出日が明記され、変更がある場合は変更申出書を添付 ・出勤簿またはタイムカード・賃金台帳:育児休業前1か月分の実績及び休業期間中の休業状況、賃金控除の算出方法書類 |
【育児休業等支援コース 申請に必要な書類(育休取得時)】
・支給申請書:両立支援等助成金(育児休業等支援コース)支給申請書 ・支給要件確認申立書:厚生労働省HPから最新版様式を利用 ・面談シート:【育】様式第2号 ・育休復帰支援プラン:【育】様式第3号 ・労働者への育休取得・職場復帰支援周知書類:社内報や就業規則などで育休支援方針を周知した証明書類 ・労働協約・就業規則・労使協定:育児休業制度、短時間勤務制度が確認できるもの ・雇用契約書・労働条件通知書:プラン策定日における雇用期間が確認できる書類 ・育児休業申出書:支給申請書に記載した育休期間を確認できる書類 ・出勤簿またはタイムカード・賃金台帳:休業前1か月分の就業実績および育休3か月分の休業状況が確認できる書類 ・母子手帳、子の健康保険証、住民票:子の出生や健康保険証・住民票の写し(マスキング対応あり) ・行動計画策定届:次世代法に基づく一般事業主行動計画策定届 ・提出を省略する書類についての確認書:2人目の申請時に周知書類、就業規則、行動計画策定届の省略を確認するための書類 ・支払方法・受取人住所届・支払口座確認書類:支払口座が確認できる通帳等の写し |
【育児休業等支援コース 申請に必要な書類(職場復帰時)】
・支給申請書:両立支援等助成金(育児休業等支援コース(職場復帰時))支給申請書(【育】様式第4号①②) ・支給要件確認申立書:厚生労働省HPから最新版様式を利用 ・面談シート:【育】様式第2号 ・育休中に提供した業務内容の資料:育休中に職務や業務内容を提供したことを確認できる書類(日付が確認できるもの) ・出勤簿またはタイムカード・賃金台帳:育休終了前3か月分の休業状況及び復帰後6か月分の勤務実績が確認できる書類 ・労働協約・就業規則・労使協定:育児休業制度、短時間勤務制度が確認できるもの ・行動計画策定届:次世代法に基づく一般事業主行動計画策定届 ・育児短時間勤務の申出書:育児短時間勤務を利用した場合に必要 ・賃金計算方法の確認書類:賃金計算方法が確認できる書類(申立書など) ・提出を省略する書類についての確認書:内容に変更がない場合、就業規則および行動計画策定届の提出を省略できる |
【育休中等業務代替支援コース 申請に必要な書類(手当支給等(育児休業)の場合)】
・支給申請書:両立支援等助成金(育休中等業務代替支援コース)支給申請書(【代】様式第1号①②③) ・支給要件確認申立書:厚生労働省HPから最新版様式を利用 ・労働協約・就業規則・労使協定:育児休業制度、短時間勤務制度が確認できるもの ・育児休業申出書:育児休業の期間や変更を確認できる書類 ・労働条件通知書・就業規則・企業カレンダー:育児休業取得者の所属や所定労働時間を確認できる書類 ・出勤簿またはタイムカード:育休前1か月分と育休期間の休業状況が確認できる書類 ・賃金台帳:育休前1か月分と育休期間の休業状況が確認できる書類 ・事務分担表:育児休業取得者・業務代替者の事務分担表 ・業務代替手当の規定書類:労働協約や就業規則に規定されたもの ・業務代替者の賃金台帳:業務代替期間前1か月分及び業務代替期間分の賃金台帳 ・業務代替者の労働条件通知書:所定労働時間が確認できる書類 ・業務代替者のタイムカード・賃金台帳:業務代替期間の勤務実績が確認できる書類 ・母子手帳・子の健康保険証・住民票:子の出生や健康保険証、住民票の写し(マスキング対応あり) ・行動計画策定届:次世代法に基づく一般事業主行動計画策定届 ・育児短時間勤務の申出書:育児短時間勤務を利用した場合に必要 ・賃金計算方法が確認できる書類:賃金計算方法が確認できる書類(申立書など) ・労働条件通知書・雇用契約書:有期雇用労働者加算を申請する場合に必要 ・提出を省略する書類についての確認書:2人目以降の申請時に内容変更がなければ提出を省略できる ・支払方法・受取人住所届・支払口座確認書類:支払口座が確認できる通帳等の写し |
【柔軟な働き方選択制度等支援コース 申請に必要な書類】
・支給申請書:両立支援等助成金(柔軟な働き方選択制度等支援コース)支給申請書(【選】様式第1号①②) ・支給要件確認申立書:厚生労働省HPから最新版様式を利用 ・面談シート:【選】様式第2号 ・柔軟な働き方支援プラン:【選】様式第3号 ・支援方針の周知書類:社内報、イントラネットの掲示板、就業規則など ・労働協約・就業規則・労使協定:育児休業制度や柔軟な働き方制度が確認できる部分 ・制度利用申出書:制度利用期間の変更や複数回利用時に必要 ・出勤簿またはタイムカード・賃金台帳:制度利用開始前1か月分及び利用期間6か月分の就業実績 ・母子手帳、子の健康保険証、住民票:子の出生や健康保険証、住民票の写し(マスキング対応あり) ・雇用契約書・労働条件通知書・勤務シフト表:所定労働日や所定労働時間が確認できる書類 ・行動計画策定届:次世代法に基づく一般事業主行動計画策定届 ・テレワーク等の申出書・実施報告書:テレワーク等を利用した場合に必要 ・短時間勤務の賃金確認書類:短時間勤務制度利用前後の賃金台帳や規定 ・保育サービスの利用実績書類:保育サービスの利用実績や費用補助が確認できる書類 ・有給休暇制度の取得書類:有給休暇制度の取得実績が確認できる書類 ・提出を省略する書類についての確認書:2人目以降の申請時に内容変更がない場合、省略可能な書類 ・支払方法・受取人住所届・支払口座確認書類:支払口座が確認できる通帳等の写し |
【介護離職防止支援コース 申請に必要な書類(休業取得時)】
・支給申請書:両立支援等助成金(介護離職防止支援コース(介護休業))支給申請書(【介】様式第1号①②) ・支給要件確認申立書:厚生労働省HPから最新版様式を利用 ・面談シート兼介護支援プラン:【介】様式第4号 ・支援方針の周知書類:支援方針を周知したこと及びその日付が確認できる書類(社内報、イントラ掲示等) ・労働協約・就業規則・労使協定:介護休業制度及び所定労働時間短縮の規定が確認できる書類 ・雇用契約書・労働条件通知書:対象労働者の雇用形態が確認できる書類 ・介護休業申出書:介護休業の期間変更がある場合は変更申出書も必要 ・出勤簿またはタイムカード・賃金台帳:介護休業前1か月分の実績及び休業期間の状況が確認できる書類 ・就業規則・労働条件通知書・企業カレンダー:介護休業期間の所定労働日が確認できる書類 ・介護保険被保険者証・医師の証明書:対象労働者の家族が要介護状態であることが確認できる書類 ・提出を省略する書類についての確認書:2人目以降の申請時に内容変更がなければ周知書類および就業規則の提出を省略できる ・支払方法・受取人住所届・支払口座確認書類:支払口座が確認できる通帳等の写し |
【不妊治療両立支援コース 申請に必要な書類】
・支給申請書:両立支援等助成金(不妊治療両立支援コース)支給申請書(【不】様式第1号①②) ・支給要件確認申立書:共通要領様式第1号 ・企業トップの方針:不妊治療と仕事の両立支援の方針(周知した日付が確認できる書類) ・労働協約・就業規則・労使協定:不妊治療休暇・両立支援制度を規定している部分 ・社内ニーズ調査:不妊治療と仕事の両立に関する社内アンケート調査票や調査結果報告書等 ・両立支援面談シート兼不妊治療両立支援プラン:【不】様式第2号 ・制度利用実績書類:不妊治療休暇・両立支援制度の利用実績が確認できる書類 ・雇用形態・所定労働日の確認書類:労働条件通知書や雇用契約書、会社カレンダー等 ・短時間勤務制度利用時の賃金確認書類:制度利用前後の賃金台帳や賃金規定 ・連続20日間の不妊治療休暇の取得確認書類:出退勤記録簿、タイムカード等 ・雇用形態・休暇取得期間の所定労働日確認書類:労働条件通知書、雇用契約書、会社カレンダー等 ・復帰後3か月分の就業実績書類:出退勤記録簿、タイムカード及び賃金台帳 ・復帰後の短時間勤務制度利用時の賃金確認書類:制度利用前後の賃金台帳や賃金規定 ・復帰後3か月分の所定労働日確認書類:就業規則、雇用契約書、労働条件通知書、勤務シフト表等 ・支払方法・受取人住所届・支払口座確認書類:支払口座が確認できる通帳等の写し |
まとめ
両立支援等助成金は、育児休業や介護休業、不妊治療休暇などを取得しやすくするための制度整備を行った事業主に支給されます。資金面の支援だけでなく、本助成金の活用により「企業として両立支援体制が整うこと」そして「従業員の定着とモチベーションの向上、企業の魅力アップにつながること」がメリットとしてあげられます。
助成金の申請には多くの書類提出が必要で、社内制度の整備が不十分では受給要件を満たすことができないため、申請前にはしっかりと準備と確認を行うことが重要です。
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