
2022年の出生数は79万9700人で過去最少となりました。
岸田総理大臣は3月17日の記者会見で、2030年代には日本の若年人口が現在の倍のスピードで減少するため、2030年代に入るまでの残りの6~7年間が、少子化傾向を変えることができるかどうかのラストチャンスだと述べました。参考:岸田内閣総理大臣記者会見
今後実施する少子化対策として、育休を取りやすい職場づくりとともに、育児休業制度自体を充実させる方針も示しています。その一つが「産後パパ育休の促進」です。
これは産後の一定期間に男女で育休を取得した場合の給付率を引き上げるというもので、実質賃金の100%をカバーする給付金を受け取ることができるため、休業中に家計が圧迫されることを避けることができます。
今回は「手取り10割」「賃金を100%補償」などで話題の「産後パパ育休」のポイントをご紹介します。
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この記事の目次
産後パパ育休とは
下表は産後パパ育休と、現行の育児休業制度の内容を比べたものです。
産後パパ育休 ※育休とは別に取得可能 |
育児休業制度 | |
対象期間・取得可能日数 | 子の出生後8週間以内に 4週間まで取得可能 |
原則、子が1歳(最長2歳)まで |
申出期間 | 原則、休業の2週間前まで | 原則、1か月前まで |
分割取得 | 分割して2回取得可能 ※初めにまとめて申し出ること |
分割して2回取得可能 ※取得の際にそれぞれ申し出ること |
休業中の就業 | 労使協定を締結している場合のみ、 労働者が合意した範囲で休業中の就業が可能 |
原則、就業不可 |
1歳以降の延長 | - | 育休開始日を柔軟化 |
1歳以降の再取得 | - | 特別な事情がある場合に限り再取得可能 |
子の出生後8週間以内に、4週間(28日)まで、2回に分割して取得することが可能です。労使協定と個別同意があれば、産後パパ育休中に一部就業することもできます。
産後パパ育休のメリット
子どもが生まれた直後の時期に父親が産後パパ育休を取ることには、以下のようなメリットがあります。- 父親が育児に積極的に参加することで、母親の育児負担を軽減し、家庭の安定をはかることができる
- 父親が育児に参加することで、子どもとの絆を深めることができる
- 父親が育児休業中に仕事を離れることで、仕事とプライベートのバランスを取ることができる
このように、父親が育児に積極的に参加することで、子育てに対する意識が男女ともに高まり、子育てに前向きな気持ちを持つ人が増える可能性があります。
産後パパ育休の支給要件
産後パパ育休の取得期間中、会社からの給与は通常ありませんが、雇用保険の「出生時育児休業給付金」が支給されます。
出生時育児休業給付金は、雇用保険の被保険者の方が、産後パパ育休を取得して、以下の要件を満たした場合に支給されるものです。
①子の出生日から8週間を経過する日の翌日までの期間内に、4週間(28日)以内の期間を定めて、当該子を養育するための産後パパ育休を取得した被保険者である |
②育児休業を開始した日の前2年間で11日以上働いた月が12か月以上ある |
③休業開始中の就業日数が、最大10日以下である |
産後パパ育休の対象者について
産後パパ育休開始時点で、契約期間の定めのある「有期雇用労働者」の場合は、上記に加えて、子の出生日から8週間を経過する日の翌日から6か月を経過する日までに、その労働契約の期間が満了することが明らかでないことが必要です。
また、産後パパ育休を取得して、要件を満たした場合に支給される「出生時育児休業給付金」の対象者は、原則男性です。基本的には女性が出生時育児休業給付金を受給できるのは、養子の場合に限られます。
産後パパ育休の支給額
では、「出生時育児休業給付金」の支給額はいくら位になるのか、計算してみましょう。
支給額は、休業開始時賃金日額 × 休業期間の日数(28日を上限とする)× 67% で求めた額です。
【休業開始時賃金の日額上限額は?】
休業開始時賃金日額の上限額は、15,190円(2023年7月31日までの額)です。上の式に、この上限額と、休業日数28日を当てはめると、産後パパ育休の支給上限額がわかります。
支給上限額=15,190円 × 28日 × 67% = 284,964円
このように、現行では休業前の賃金の67%である給付水準が、今後、80%程度へ増額される見通しです。社会保険料は免除されますので、これで実質手取りの100%が補填されるという形になります。
まとめ
今回は、産後パパ育休制度のポイントについて確認しました。
産後パパ育休制度を使って父親が子育てに参加することで、家族の絆を深めることができ、子育てに対する意識が高まることが期待されます。
育休中、賃金がなくなるのではないかという不安は大きいものですが、給付金の支給率の引き上げの方針が示されたことで、経済的な負担がこれまでより軽減されるでしょう。手取りの100%を確保できるようになるとすれば、子どもをもつことへの経済的な不安も和らぐ可能性があります。
3月17日の記者会見で岸田総理大臣が示した育児休業制度の充実には、給付率の引き上げだけでなく、時短勤務時にも給付が行われるような見直しや、育休の給付がない非正規雇用・フリーランス・自営業への経済的な支援創設することなどが含まれています。
育児休業制度が充実し、それにより家庭の環境が整うことで、子育てに前向きな気持ちを持つ人が増えることが期待されます。