AIをはじめとする新しい技術が次々と登場するなか、企業の競争力を保つには従業員のスキルアップが求められます。とはいえ、研修にかかる費用は中小企業にとって決して小さな負担ではありません。
東京都では、都内の中小企業等が従業員のスキルアップ研修を行う際に活用できる「スキルアップ助成金(スキルアップ支援事業)」を、公益財団法人東京しごと財団を通じて実施しています。
令和8年度(2026年度)は制度内容が一部変わり、事業内スキルアップ助成金の助成単価が1時間あたり760円から800円に増額されたほか、建設・建築・運輸分野向けの「資格取得サポート助成金」が新設されました。一方、育業中スキルアップ助成金は令和7年度をもって募集を終了しています。
この記事では、令和8年度のスキルアップ助成金4種類の概要・違い・申請方法を、比較表とFAQを交えてわかりやすくまとめました。
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この記事の目次
東京都 スキルアップ助成金とは
スキルアップ助成金は、公益財団法人東京しごと財団が実施する人材育成支援の制度で、都内に本社または主たる事業所を置く中小企業や個人事業主が利用できます。従業員に研修を受けさせた際の受講料などの経費の一部が助成される仕組みで、研修の企画方法や内容に応じて、令和8年度は以下の4つの助成金で構成されています。
| 助成金の種類 | 概要 |
|---|---|
| 事業内スキルアップ助成金 | 自社で企画した研修が助成対象。助成対象受講者1人1時間あたり800円を助成 |
| 事業外スキルアップ助成金 | 教育機関が実施する公開研修が助成対象。受講料等の1/2〜2/3(上限25,000円/1人1研修)を助成 |
| DXリスキリング助成金 | 自社のDX推進のために実施する研修が助成対象。受講料等の3/4(上限75,000円/1人1研修)を助成 |
| 資格取得サポート助成金 【令和8年度新設】 | 建設・建築・運輸分野の国家資格・免許等の取得を目的とした研修が助成対象。受講料等の1/2(上限100万円/年度)を助成 |
いずれの助成金も、共通して以下のすべてを満たす事業者が対象です。
・東京都政策連携団体、事業協力団体または東京都が設立した法人でないこと
・都税の未納付がないこと
・過去5年間に重大な法令違反等がないこと
・最低賃金・36協定・年5日の有給取得義務など労働関係法令を遵守していること
・風俗営業者や暴力団関係者等でないこと
それぞれの制度概要を確認しましょう。
①事業内スキルアップ助成金
都内の中小企業等が従業員に対して、自社で企画した短時間の研修(OFF-JT・集合研修)を実施した際の経費の一部を助成します。令和8年度から助成単価が1時間あたり760円から800円に引き上げられました。| 対象者 |
|---|
| ①申請企業等の従業員(代表および個人事業主本人は除く。役員は雇用保険加入者のみ対象) |
| ②常時勤務する事業所の所在地が都内である者 |
| ③研修ごとに総研修時間数の8割以上を受講した者 |
| ④過去の申請で同様の研修を受けていない者 |
| 助成額 | 助成対象受講者数×研修時間数×800円 |
|---|---|
| 助成限度額 | 事業外スキルアップ助成金と合わせて150万円(上限に達するまで複数回申請可) |
主な研修要件は、1研修あたり総研修時間数が3時間以上10時間未満であること、研修ごとに2名以上が受講すること、令和8年4月1日〜令和9年3月31日に開始し令和9年8月31日までに終了することなどです。
②事業外スキルアップ助成金
都内の中小企業等が従業員に対して、教育機関の公開研修を利用して研修を実施した際の経費の一部を助成します。集合研修(オンライン可)のほか、eラーニングも対象です。| 対象者 |
|---|
| ①申請企業等の従業員(代表および個人事業主本人は除く。役員は雇用保険加入者のみ対象) |
| ②常時勤務する事業所の所在地が都内である者 |
| ③研修ごとに総研修時間数の8割以上を受講した者 |
| ④過去の申請で同様の研修を受けていない者 |
| 小規模企業者 | 助成対象経費の2/3(上限25,000円/1人1研修) |
|---|---|
| 中小企業等 | 助成対象経費の1/2(上限25,000円/1人1研修) |
| 非正規雇用労働者受講加算 | 助成対象経費の2/3(上限25,000円/1人1研修) |
| 助成限度額 | 事業内スキルアップ助成金と合わせて150万円(複数回申請可) |
非正規雇用労働者受講加算は、中小企業等において非正規雇用労働者(有期雇用契約の労働者)が助成対象受講者全体の2割以上を占める場合に適用されます。
助成対象経費は受講料、教科書・教材代、研修に付随する登録料・管理料で、1人1研修単位で金額が定められているものに限ります。サブスクリプション形式(定額制)の研修は対象外です。
詳しくはこちら:従業員のスキルアップに仕える事業外スキルアップ助成金とは
③DXリスキリング助成金
都内の中小企業等が従業員に対して、自社のDX推進のために研修を実施した際の経費の一部を助成します。教育機関の公開研修(レディメイド研修)に加え、自社の従業員向けに教育機関へ委託して実施するオーダーメイド研修も対象になる点が特徴です。
| 対象者 |
|---|
| ①申請企業等の従業員(代表および個人事業主本人は除く。役員は雇用保険加入者のみ対象) |
| ②常時勤務する事業所の所在地が都内である者 |
| ③研修ごとに総研修時間数の8割以上を受講した者 |
| ④過去の申請で同様の研修を受けていない者 |
| 助成額 | 助成対象経費の3/4(上限75,000円/1人1研修) |
|---|---|
| 助成限度額 | 100万円(上限に達するまで複数回申請可) |
オーダーメイド研修の場合は、研修を計画するためのヒアリング料や会場費も助成対象経費に含められます。
④資格取得サポート助成金【令和8年度新設】
令和8年度から新たにスタートした助成金です。建設・建築・運輸分野の国家資格や法律に基づく免許の取得、法令に基づく講習の修了を目的として、教育機関の公開研修を受講した際の経費の一部を助成します。
対象となる資格・講習は、施工管理技士(建築・土木・電気工事など)、建築士、電気工事士、自動車整備士、運行管理者、大型自動車免許、フォークリフト・玉掛け・足場の組立て等の技能講習、各種技能検定、登録基幹技能者講習などです。募集要項の「対象資格・講習一覧」には、170種類を超える資格・講習が掲載されています。
| 対象者 |
|---|
| ①申請企業等の従業員(代表および個人事業主本人は除く。役員は雇用保険加入者のみ対象) |
| ②常時勤務する事業所の所在地が都内である者 |
| ③研修ごとに総研修時間数の8割以上を受講した者 |
| ④過去の申請で同様の研修を受けていない者 |
| 助成額 | 助成対象経費の1/2 |
|---|---|
| 助成限度額 | 100万円(上限に達するまで複数回申請可) |
他の3つの助成金と異なり、1研修あたりの総研修時間数が10時間以上の研修が対象です。対象となるのは、2026年5月30日(令和8年5月30日)から2027年3月31日(令和9年3月31日)までに開始し、2028年3月31日(令和10年3月31日)までに終了する研修です。
受講料、教科書・教材代、登録料・管理料に加えて入学金も助成対象経費に含まれます。なお、すでに保有している資格・免許の「更新」のための講習は対象外です。


東京都 スキルアップ助成金 4種類の比較
助成金の種類別に特徴を一覧表にまとめました。| 種類 | 対象研修・実施形式 | 助成額 | 上限額(年度) |
|---|---|---|---|
| 事業内スキルアップ助成金 | 自社で企画・実施 集合型(オンライン可) | 受講者数×研修時間数×800円 | 事業内・事業外の合計で150万円 |
| 事業外スキルアップ助成金 | 教育機関の公開研修 集合型(オンライン可)またはeラーニング | 経費の1/2(小規模企業者・非正規加算は2/3)、上限25,000円/1人1研修 | 事業内・事業外の合計で150万円 |
| DXリスキリング助成金 | 教育機関の公開研修またはオーダーメイド研修(DX関連) 集合型(オンライン可)またはeラーニング ※オーダーメイドは集合型のみ | 経費の3/4、上限75,000円/1人1研修 | 100万円 |
| 資格取得サポート助成金 | 教育機関の公開研修(建設・建築・運輸分野の資格取得等) 集合型(オンライン可)またはeラーニング | 経費の1/2 | 100万円 |
事業内と事業外はどちらも都内の中小企業等・個人事業主が対象ですが、自社で研修を企画するか、教育機関の公開研修を利用するかで使い分けます。
DXリスキリング助成金は助成率3/4と4種類のなかで最も高く、DX人材の育成を進めたい企業に有利です。資格取得サポート助成金は10時間以上の本格的な資格取得研修が対象で、人手不足が深刻な建設・建築・運輸分野の企業を後押しする制度といえます。
なお、DXリスキリング助成金・資格取得サポート助成金の上限額(各100万円)は事業内・事業外の150万円とは別枠で、同一年度に複数の助成金を併用することも可能です。各制度の年度上限を単純に合算すると、事業内・事業外150万円、DXリスキリング100万円、資格取得サポート100万円で、最大350万円相当になります。
ただし、資格取得サポート助成金は対象となる建設・建築・運輸分野の資格・免許等を必要とする事業を営む事業者に限られるなど、合算についてはそれぞれの助成金の要件を個別に満たす必要があります。また、同じ研修について複数の助成金を重複して受給することはできません。
東京都 スキルアップ助成金の申請方法
スキルアップ助成金の申請は、電子申請(Jグランツ)または紙申請(郵送)で行います。財団は電子申請を推奨しており、Jグランツの利用にはデジタル庁のgBizIDプライムアカウントが必要です。アカウント発行には時間がかかるため、早めに準備しましょう。
手続きの流れは以下のとおりです。
②審査・交付決定通知(審査が順調な場合、申請からおおむね3週間)
③研修の実施
④実績報告書の提出(研修終了後2か月以内)
⑤審査・額の確定通知
⑥助成金の請求・振込(請求書類の確認完了後おおむね1か月で振込)
交付申請書受付期間(令和8年度)は以下のとおりです。
| 助成金の種類 | 交付申請書受付期間 |
|---|---|
| 事業内・事業外・DXリスキリング | 令和8年3月1日〜令和9年2月28日 |
| 資格取得サポート | 令和8年4月30日〜令和9年2月28日 |
いずれも研修開始予定日の1か月前までに申請が必要です。また、交付決定前に開始した研修は助成対象外となるため、必ず交付決定を待ってから研修を開始するようにしましょう。予算の範囲を超えた場合は受付期間内でも受付が終了することがあります。
東京都 スキルアップ助成金活用のメリット
従業員のスキルアップ研修では、費用面の負担が大きな課題になります。特に中小企業では、設備投資と人材育成を同時に進めることが難しいケースも少なくありません。
スキルアップ助成金は、自社企画の研修から公開研修、DX研修、資格取得研修まで、事業所や従業員の事情にあわせて柔軟に活用できる制度です。上限額に達するまで複数回申請できるため、年間の研修計画に組み込みやすい点も魅力です。
また、上限額は年度ごとに設定されるため、前年度に上限まで受給した企業でも今年度あらためて申請できます。継続的な人材育成の仕組みづくりに適した助成金といえるでしょう。
よくある質問
個人事業主や従業員個人でも申請できる?
申請できるのは従業員を雇用する中小企業等・個人事業主で、従業員が個人名義で申請することはできません。個人事業主本人や代表者が受講する研修は対象外ですが、個人事業主に雇用されている従業員の研修は対象です。
本社が都外にあっても申請できる?
都内に支店等の登記がある、または都内事業所について都税事務所に事業開始等申告書を提出済みであれば申請できます。
複数の助成金を併用できる?
同一年度に複数の助成金を申請することは可能です。ただし、同じ研修で複数の助成金を受けることはできず、事業内と事業外の上限額150万円は合算です。
eラーニングは対象になる?
事業外・DXリスキリング・資格取得サポートの各助成金では対象です。事業内スキルアップ助成金は集合研修(同時双方向のオンライン研修を含む)のみが対象です。
資格の更新のための講習は対象?
対象外です。資格取得サポート助成金は資格の「取得」を目的とする研修が対象で、更新のための講習には利用できません。
まとめ
東京都のスキルアップ助成金は、令和8年度から「事業内」「事業外」「DXリスキリング」「資格取得サポート」の4本立てとなり、中小企業が従業員のスキルを向上させるための選択肢がさらに広がりました。
DXやリスキリングへの社会的ニーズが高まるなか、こうした助成金の活用は研修コストの軽減だけでなく、人材が定着する企業づくりにもつながります。自社の研修計画にあった助成金を選び、負担の少ない形で企業の成長を目指しましょう。
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