2019年5月、東京都は、2050年CO2排出実質ゼロに貢献する「ゼロエミッション東京」を実現することを宣言しました。「中小規模事業所のゼロエミッションビル化支援事業」はゼロエミッション東京の実現に向け、中小企業等の更なる省エネルギー化を推進する制度です。
今回は中小規模事業所のゼロエミッションビル化支援事業の内容や申請方法について、まとめました。
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この記事の目次
中小規模事業所のゼロエミッションビル化支援事業とは
本事業では、中小規模事業所のゼロエミッションビル化に係る取組に必要な経費の一部が助成されます。まずは「ゼロエミ」や、本事業の目的について確認しておきましょう。
【ゼロエミとは?】
ゼロエミッション(ゼロエミ)は、2019年のU20東京メイヤーズ・サミットで、宣言された目標です。同サミットでは世界の大都市の責務として、平均気温の上昇を1.5℃に抑えることが追求されました。
都はゼロエミの実現に向け、ビジョンと具体的な取組・ロードマップをまとめた「ゼロエミッション東京戦略」を策定するなど、さまざまな施策を講じています。
【中小規模事業所のゼロエミッションビル化支援事業の目的】
業務・産業部門における建物由来のCO2排出量は、都内排出量全体の約4割を占めています。本事業は、中小規模事業所の更なる省エネルギー化を推進するものです。
建物の断熱性能の向上と省エネ設備の導入等を行い、ゼロエミッションビル化を図る取組に対して助成が行われます。
対象事業者と対象事業
助成の対象となる事業は、「建築省エネルギー技術(パッシブ技術)」「設備省エネルギー技術(アクティブ技術)」の2つです。
次は、具体的な支援内容や対象者の要件を見ていきましょう。
【対象事業者】
対象となる事業者は、個人事業主や学校法人を含む中小企業者と、その事業者と共同して事業を行うリース等事業者およびESCO事業者です。
共同事業者は、以下の要件を満たす必要があります。
■助成事業に着手する日までに、ファイナンスリース契約や割賦販売の契約、またシェアードセイビング方式のESCO契約注を締結すること |
■リース料等は、交付額に相当する金額が減額されていること |
■ESCO事業者においては、以下のすべてを満たすこと ・東京都地球温暖化対策ビジネス事業者に登録している ・1年以上継続して実施するESCO契約である ・当該契約に係る実績を有すること |
なお、以下の場合は対象外となります。
- 暴力団関係者等である
- 本事業となる事業と同一の内容で、国などから補助金等の交付を受けている
- 過去に税金の滞納がある
- 刑事上の処分を受けている
- その他、公的資金の交付先として社会通念上適切でないもの
- 国・地方公共団体の出資を受けているもの
【対象事業】
対象事業ごとの要件は、以下のとおりです。
①ゼロエミビル化設計支援 |
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■既存建築物(非住宅部分)全体の省エネ改修設計を行う事業であって、次の全てを満たすこと ・BELS認証の五つ星(キラ星も含む)を取得すること ・建築省エネルギー技術及び設備省エネルギー技術の導入が含まれていること ■都内で所有・使用する中小規模事業所において事業を実施すること |
②ゼロエミビル化設備導入支援の要件 |
---|
■省エネ設備等を導入するものであって、次の全ての要件を満たす事業 ・対象となる既存建築物(非住宅部分)全体が、建物要件ごとに定めるZEB水準省エネ性能の基準を満たすこと ・建築省エネルギー技術及び設備省エネルギー技術の両方を導入すること ・上記の事業とともに実施する、再生可能エネルギー発電等設備または再生可能エネルギー熱利用設備を設置する事業であること ■都内で所有・使用する中小規模事業所において事業を実施すること |
対象設備と対象経費
【対象設備】
助成の対象となるのは、以下のいずれかの設備です。
①建築省エネルギー技術(パッシブ技術) |
「省エネ設備等要件」を満たすもの ・断熱材、断熱・遮熱窓 など ※建築工事、躯体工事を除きます |
②設備省エネルギー技術(アクティブ技術) |
「省エネ設備等要件」を満たすもの ・空調設備、照明設備、換気設備、給湯設備、昇降機設備 など |
➂再生可能エネルギー発電等設備及び再生可能エネルギー熱利用設備 |
「再生可能エネルギー発電等設備」「再生可能エネルギー熱利用設備の要件」を満たすもの ・再生可能エネルギー発電設備、再生可能エネルギー熱利用設備、蓄電池など ※①②と合わせて申請する必要があります。単独では、助成対象となりません。 |
④WEBPRO未評価技術及びその他設備 |
「省エネ設備等要件」を満たすもの ・CO2濃度による外気量制御、高効率変圧器、BEMS など |
【対象経費】
対象経費は、以下のとおりです。
①ゼロエミビル化設計支援 | |
基本設計費 | 調査・基本設計・計画策定等に係る経費 |
実施設計費 | 建築設計、設備設計等に必要な経費 |
認証申請費 | ゼロエミビル化設計内容についてBELSの評価・認証を受けるために必要な経費 |
②ゼロエミビル化設備導入支援 | |
設計費 | 助成対象設備の導入等に係る設計に必要な経費 |
設備費 | 設備等の購入、製造、据付等に必要な経費 |
工事費 | 配管、配電等の工事に必要な経費 |
助成率・上限額
各事業の助成率と上限額は、以下のとおりです。
助成対象 | 助成金額 | 上限額 |
①ゼロエミビル化設計支援 | 助成対象経費の2/3以内 | 1000万円 |
②ゼロエミ設備導入支援 | 助成対象経費の2/3以内 | 1億5,000万円 |
中小規模事業所のゼロエミッションビル化支援事業の申請方法
申請は、電子メールにて行います。締め切りや必要書類、全体の流れをまとめました。申請期間と申請書類
【申請期間】
令和6(2024)年4月24日(水)~令和7(2025)年3月31日(月)※17時必着
やむを得ず郵送により提出する場合は、必ずCD-Rを添付してください。
【申請書類】
申請に必要な主な書類は、以下の①~⑨です。
①助成金交付申請書 |
②誓約書 |
➂助成事業実施計画書 |
④助成事業経費内訳書 |
⑤見積比較表 |
⑥商業・法人登記簿謄本 |
⑦建物登記簿謄本 |
⑧工事見積書又は入札等の証憑 |
⑨エネルギー購買伝票等 |
なお事業の実施が複数年度にまたがる場合は、別途中間報告として、助成事業実施状況中間報告書等の書類提出が必要です。
事業の流れ
事業全体の大きな流れは、以下のとおりです。
①交付申請
②交付決定
➂事業開始
④事業完了届・交付請求書の提出
⑤助成金の支払い
なお事業のスケジュールフローは、以下の図も参照してください。
出典:募集要項
省エネルギー技術や再生可能エネルギー導入のメリットは?
資源は有限です。地球全体のエネルギー資源は、このままではあと100年ほどで尽きると言われています。持続可能な社会の形成には、省エネルギー化や再生可能エネルギーの活用が不可欠です。
中小企業が新しい設備の導入を行うためには、予算負担が課題のひとつです。しかし設備を新しくすることは省エネルギー化につながり、将来的な経済的な負担を軽減することにもなります。企業を長く、未来に向けて成長させていくためには、こうした投資は大きな支えとなるはずです。
また、環境問題への企業の姿勢は、社会的な評価にも直結します。特に若い世代は環境問題に関心を持つ人も多く、就職時の企業選択にも影響を及ぼすと言われています。企業にとってもメリットの大きい取組なのです。
まとめ
2050年のカーボンゼロ達成に向けた取組は、日本全体で行われています。環境省は国と地方の協働・共創による地域における2050年脱炭素社会の実現を目指し、2024年3月29日時点で、1078の自治体が、排出実質ゼロにすることを目指す地方自治体(ゼロカーボンシティ)を表明しました。
東京都ではゼロエミの実現に向けて、中小規模事業所のゼロエミッションビル化支援事業をはじめとした支援事業が数多く設置されています。
助成制度をうまく活用し、経済的な負担を軽減しながら、企業改革に取り組みましょう。