「宿泊施設デジタルシフト応援事業」とは、東京都内の中小宿泊事業者が人手不足の解消や業務の効率化を目指して取り組むデジタル化の導入経費の一部を補助する制度です。
今回の記事では、宿泊施設デジタルシフト応援事業の概要や補助対象者、補助率、必要な申請書類などを解説します。さまざまなデジタル化の取り組みが対象となるため、自社で活用できないかをチェックしましょう。
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この記事の目次
宿泊施設デジタルシフト応援事業とは
宿泊施設デジタルシフト応援事業は、都内の観光産業活性化を目的として、東京都内の中小宿泊事業者が「人手不足解消」「業務効率化」などの課題解決に向けて実施する、比較的短期間で導入可能なデジタル技術を活用した取り組みにかかる経費の一部を補助するものです。
宿泊施設デジタルシフト応援事業の補助対象事業と補助対象者
都内の中小宿泊事業者が、自社の人手不足解消や業務効率化などの課題解決のために行なった「デジタル技術を活用した取り組み」が補助対象となります。取り組みの例として以下が挙げられます。
デジタル技術を活用した取り組みの例 |
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・市販の宿泊予約サイトで一元管理システムや顧客管理システムを導入する ・自動精算や自動チェックインシステムを導入する ・施錠管理システムを導入する ・フロント呼出やルームサービス注文、情報閲覧等、客室システムを導入する ・清掃管理システムを導入する ・レストランや浴場等において、混雑状況監視システムを導入する ・レストランや売店向けに、POSおよび注文システムを導入する ・問い合わせや受付対応用チャットボットを導入する ・コミュニケーションを行うために、音声入力や翻訳システムを導入する ・受付や案内、掃除、運搬を自動で行う業務用ロボットを導入する 等 |
補助対象事業について考える際は以下の点にご留意ください。
構想や企画など、事業の主要部分は自社で策定し、システムや機器の導入は補助対象期間内に行う必要があります。目標達成の見込みがないと判断されると支援が打ち切られる可能性があるため、実現性のある事業計画を作成することが重要です。
また、以下に該当する事業は、補助対象事業外です。
- 開業や運転資金など、宿泊施設デジタルシフト応援事業と直接関係ない経費の補助を目的としている事業
- 特定の顧客向けに展開されており、汎用性がない事業
- 公序良俗に反する事業など、事業内容が不適切であると判断された事業
補助対象外に該当しないように、事業内容を細かく確認しましょう。
【補助対象者】
申請時は以下(1)〜(4)の条件すべてを満たす必要があります。
(1)中小企業者あるいは個人事業主に該当している |
(2)東京都内において、旅館業法第3条第1項の許可を受けて、同法第2条第2項あるいは第3項の営業を行っている民間宿泊事業者。ただし、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律第2条第6項に規定する「店舗型性風俗特殊営業」を行っている施設および類するものは除く |
(3)補助事業の成果を活用し、東京都内で引き続き事業を営む予定である |
(4)申請者は以下の条件に該当していないこと ・暴力団 ・風俗関連の営業を行っている ・過去5年以内に刑事法令による罰則適用を受けている ・事業継続性が不確実な状況である ・都税、その他租税の未申告あるいは滞納がある ・すでに宿泊施設デジタルシフト応援事業の支援決定を受けている ・宗教活動や政治活動を主な目的とする団体等である 等 |
宿泊施設デジタルシフト応援事業の補助率・限度額
補助率は「賃上げ引き上げ計画の有無」によって異なります。
・賃金引上げ計画なし:補助対象経費の「2/3以内」
・賃金引上げ計画あり:補助対象経費の「3/4以内」
なお「賃金引上げ計画あり」の補助率を適用するには、以下の(1)(2)の両方が必要です。
(1)補助対象事業終了後に初めて到来する事業年度における給与支給総額が、補助金申請時の直近決算書の給与支給総額と比べ「2%以上(被用者保険の適用拡大について制度改革に先立ち任意適用に取り組む場合は1.5%以上)の増加」を達成している |
(2)補助対象事業終了後に初めて到来する事業年度のすべての月において、補助対象事業として申請する取り組みを実施する都内事業場内の最低賃金(事業場内で最も低い賃金)が、「地域別最低賃金+30円以上」を達成している |
具体的な最低賃金額については「東京労働局の公式サイト」で随時公表されているため、確認しておきましょう。
補助限度額は、1施設あたり150万円です。
宿泊施設デジタルシフト応援事業の補助対象と対象外経費
補助対象となるのは以下の条件すべてに該当する経費です。
項目 | 具体的な経費の内容 |
システムやソフトウェア等の導入経費 | 人手不足解消や業務効率化などの課題解決に直接必要な、新たなシステム等の導入やクラウド利用等に要する経費 (1)システム等導入費:新しいシステムやデジタルツール・ソフトウェア等の導入に要する経費 (2)クラウド利用費:自社が保有していないサーバーにインターネット等を介して接続し、アプリケーション機能の提供を受け、またデータ保存領域の割り当てを受けるための新たな経費 |
機械設備導入費 | 人手不足解消や業務効率化などの課題解決に直接必要な、機器や備品等の新たな導入に要する経費 (1)システム付随機器等導入費:新たなシステム等導入に付随して必要となる機器備品の購入や設置に必要な経費。例として「専用 PCやタブレット端末、精算機、カードキー、スマートロック、センサー、カメラ、サイネージ、POS」などが挙げられる (2)ロボット製品利用費 清掃や受付、配膳等、業務用ロボットの導入に必要な経費 |
以下は補助対象外となるため注意しましょう。
- 補助事業に直接関係ない物品の購入や外注、業務委託等の経費
- 見積書や契約書、仕様書、納品書、検収書、請求書、振込控、領収書等の帳票類が無い経費
- 業務内容や発注品が不明確な経費(例:諸経費、雑費、○○関連費)
- 申請書に記載されていないものを購入した経費
- 交付決定前あるいは補助対象期間終了後に契約や発注、支払いを行った経費
上記以外にも条件があるため、詳細は募集要領をご確認ください。
宿泊施設デジタルシフト応援事業の申請受付期間および申請方法
【受付期間】
・郵送:令和7(2025)年3月31日(月)まで ※当日消印有効
・電子申請:令和7(2025)年3月31日(月) ※17時申請到達分まで
申請方法は郵送と電子申請の2パターンがあります。郵送の場合は、簡易書留やレターパック等、追跡可能な方法で送る必要があります。
(1)郵送 |
〒162-0801 東京都新宿区山吹町346番地6 日新ビル2階 公益財団法人東京観光財団観光産業振興部 宿泊施設デジタルシフト応援事業担当宛 |
(2)電子申請 |
令和6年5月10日時点で電子申請の受付は開始されていません。準備でき次第、受付開始となるため、電子申請を検討している方はこまめに情報をチェックしましょう。 |
宿泊施設デジタルシフト応援事業の申請書類
申請時に必要な書類は以下の通りです。
必要書類 | 備考 |
宿泊施設デジタルシフト応援事業申請書 | 電子申請の場合は押印不要 |
事業計画書 | 「宿泊施設デジタルシフト応援事業の申請に必要な書類」のチェック欄確認含む。電子申請の場合は押印不要 |
経費明細表 | ー |
賃上げ計画書・誓約書 | 電子申請の場合は押印不要 |
補足説明資料 | 必要な場合のみ。A4用紙片面で10枚以内 |
決算関係書類 | ・法人:直近1期分の決算関係書類を提出 ・個人事業主:税務署へ提出した直近2期分の事業の収支内訳書、あるいは青色申告決算書を提出 |
登記簿謄本(履歴事項全部証明書) | 発行後3ヶ月以内の原本。電子申請の場合は提出不要 |
社歴(経歴)書 | 会社概要(パンフレット)でも可 |
直近の事業税等の納税証明書(原本) | ・法人:直近の「法人事業税及び法人都民税の納税証明書」 ・個人事業者で事業税が課税対象:直近の「個人事業税の納税証明書」および代表者の「住民税納税証明書」 ・個人事業者で事業税が非課税対象:代表者の直近の「所得税納税証明書」および「住民税納税証明書」 |
見積書の写し | ・宛先や金額、消費税額、発行日、発行者名、所在地、購入品等の内容がすべて明記されている ・発行者の押印がある ・1件100万円(税抜)以上の購入等がある場合、2社以上の見積書の写しを提出する。1件100万円(税抜)未満のもの等についても、見積書の写し(1社で可)を提出する |
旅館業営業許可書の写し | ・管轄保健所が発行した営業種別が記載されている ・記載事項に変更がある場合は、現状と同一になるよう変更届の写し等も提出する |
建物の不動産登記簿謄本または賃貸借契約書等の写し | ・該当する場合のみ ・補助金交付対象施設の改修等を行う事業を実施する場合、建物の管理運営を行っていると確認できる上記の書類を添付する ・補助事業者が補助金交付対象施設の所有者でない場合、改修等について所有者の許可を確認できる書類(所有者の署名と記名押印がある)を添付する |
申請書類は細かい規定が多く、ミスが多い部分です。補助金は書類に細かいミスがあると申請できないケースも多いため、専門家に依頼するなどして正確な内容で作成するよう心がけましょう。
交付申請から補助金交付までの流れ
申請から交付までの流れは「 賃金引上げ計画の有無」で異なります。今回は「 賃金引上げ計画なしの場合」の流れを解説しています。詳細は必ず募集要領をご確認ください。
申請から交付までの流れ |
( 1 )事業者の交付申請内容をもとに審査が行われる(1か月程度) |
( 2 )交付決定後に事業を開始する |
( 3 )事業を終了する(最長で1年) |
( 4 )事業終了から1か月以内に実績報告を行う |
( 5 )実績報告をもとに完了検査が行われる(2〜3か月程度) |
( 6 )完了検査後に1〜2週間程度で金額が確定する |
( 7 )補助金を請求する |
( 8 )請求から1〜2週間程度で交付される |
まとめ
宿泊施設デジタルシフト応援事業は、デジタル化を進めることで人手不足を解消し、業務の効率化を図る宿泊事業者を支援する取り組みです。この事業では、デジタル技術を活用した様々な改善策が補助対象とされています。事業者の皆さまは、自社の取り組みが補助対象に該当するかどうかを確認し、このチャンスを活用して事業の効率化やサービス向上を図りましょう。