「私立学校省エネ設備等導入事業費助成事業」とは、都内の私立学校がCO2削減のために省エネ設備を導入する際、必要な経費の一部に対して助成金が支払われる制度を指します。
規定の団体が主催する省エネ診断を受けて設備改善提案を出してもらえるため、専門家の意見をもとに効果的な校舎設備の省エネ化が可能です。
今回の記事では、私立学校省エネ設備等導入事業費助成事業の対象事業や種類、申請書類、実施に関する留意点などを解説します。
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この記事の目次
学校施設においても省エネ化が重要課題に
現在、国は「2030年にCO2を46%削減する(2013年度比)」という目標を掲げてさまざまな施策を実行しており、「再生可能エネルギーの導入促進」「水素やアンモニアの資源活用」などを実行する中で、学校などに対しても省エネ対策が求められるようになりました。業種別におけるエネルギー消費量を比較すると、学校施設は1973年よりも「2.4倍」に増えていることから、教育現場における省エネ対策の必要性が高まってきています。
参考:学校等における省エネルギー対策について - 文部科学省
私立学校省エネ設備等導入事業費助成事業とは
「私立学校省エネ設備等導入事業費助成事業」とは、上記の状況も踏まえ、CO2削減に取り組む都内私立学校を支援する助成金制度です。省エネ設備および再生可能エネルギー設備を校舎等に導入する私立学校に対し、一定の範囲内で経費の一部が援助されます。私立学校省エネ設備等導入事業費助成事業には2種類が設定されており、助成内容が異なります。実施時期についても留意点があるため、申請前に細かくチェックしておきましょう。
助成対象学種
都内の私立幼稚園(幼保連携型認定こども園を含む)、小学校、中学校、高等学校、特別支援学校および専修学校(高等課程)
なお「幼保連携型認定こども園」においては、子ども・子育て支援法第19第1項第1号に定める満3歳以上の小学校就学前の子ども(いわゆる「1号認定子ども」)が日常的に使用する施設等に必要な経費のみが対象となるためご注意ください。
助成対象事業
(公財)東京都環境公社が設置する「東京都地球温暖化防止活動推進センター(クール・ネット東京)」あるいは「省エネルギー相談地域プラットフォーム構築事業(経済産業省資源エネルギー庁)における補助事業者(プラットフォーム事業者)」による省エネ診断を受け、提案された改善内容を踏まえたうえで、既存の校舎等に省エネ設備等を導入するための事業が対象です。
ただし、校舎等の新改増築に必要な事業、単なる物品購入(例:工事を伴わない、従来型蛍光灯からLED蛍光灯への取替え等)にとどまる事業、省エネ効果の無い事業および全量買取制度(全量配線)による売電を目的とした太陽光発電設備導入事業は対象外となります。
助成金の種類
助成金には以下の2種類が設定されています。以下は両方とも同時申請が可能です。
(1)空調設備導入費助成金
申請できる導入例
-「電力消費の多い従来型エアコン」を「インバータエアコン等の高効率空調設備」へ更新する
-「旧型のボイラ・冷温水機・変圧器」を「高効率ボイラ・高効率冷温水機・高効率変圧器」へ更新する
(2)LED等導入費助成金
申請できる導入例
-「従来型蛍光灯」を「Hf型蛍光灯、LED蛍光灯など節電効果の高い照明器具」へ更新する
-太陽光発電設備を新規で設置する
-窓ガラスに遮熱・断熱フィルムを設置する
-高性能ガラス等への更新工事・節水型トイレへの更新など
助成対象経費
対象経費 | 具体的な内容 |
設計費 | 助成事業の実施に必要な設計に対して発生する経費 |
設備費 | 助成事業の実施に必要な、設備・機器・器具等の購入、設置・据付等に発生する経費。ただし、当該事業に必要な土地の取得および賃借料は除く |
工事費 | 助成事業の実施に必要な工事に発生する経費。ただし、既存の学校施設等の改修費等に相当するものは除く |
運搬費 | 助成事業の実施に必要な、設備・機器・器具等に発生する運搬搬入費 |
撤去・処分費 | 助成事業の実施により発生した既存設備等の撤去・処分に必要な経費 |
その他経費 | 本助成事業の実施するにあたり、特に必要と認められる経費 |
助成内容
①空調設備導入費助成金
・助成対象経費限度額…5,000万円/校(5,000万円を超える大規模な工事等の場合は1億円/校)
・助成率…対象経費の2/3以内(国庫補助対策事業等については、国庫補助等を含めて2/3以内)
②LED等導入費助成金
・助成対象経費限度額…1,500万円/校
・助成率…対象経費の2/3以内(国庫補助対策事業等については、国庫補助等を含めて2/3以内)
助成対象事業の実施時期
令和6(2024)年4月1日から令和7年1月31日までに整備が完了するものが対象です。契約から、工事完了・支払いまでを上記期間内に完了する必要があります。
【時系列の遵守】
事業全体の流れとして、まず省エネ診断を受診する必要があります。省エネ診断を受診せずに見積書の取得をしてはいけません。
私立学校省エネ設備等導入事業費助成事業の申請期間
契約日によって申請期間が異なります。申請期間は2回設けられています。
契約日 | 申請期間 | |
---|---|---|
第1回 | 7月31日まで | 令和6(2024)年7月1日(月)~9月4日(水) 消印有効 |
第2回 | 10月31日まで | 令和6(2024)年10月1日(火)~10月31日(木) 消印有効 |
申請は、期間内に設置者でとりまとめて1度のみ行い、複数事業で契約が第1回と第2回に分かれる場合は、第2回にまとめて申請してください。
事業の流れ
事業全体の流れは以下のとおりです。
事業全体の流れ |
---|
1.省エネ診断 2.三者以上の見積書の取得 ・ 公正な比較検討にて業者選定 3.契約(令和6年4月1日以降) 4.工事着手 5.工事完了 6.工事完了届(業者から学校への完了報告書) 7.検査調書(学校の工事完了確認) 8.請求書 9.支払い(令和7年1月31日以降) |
契約から支払いまで、令和6年4月1日から令和7年1月31日までに完了するものとします。
事業の年間スケジュールは以下の図を参照してください。
出典::私立学校省エネ設備等導入事業費助成事業のしおり
必要書類
助成金交付申請時に必要な書類は以下のとおりです。
必要書類 | 作成方法や留意点 |
交付申請書(交付申請1) | 法人・設置者ごとに作成。法人名・設置者名で登録印鑑を押印する。 |
学校別事業計画書(交付申請2) | 学校ごとに作成。按分が必要な場合や、他の補助金も受けている場合は金額に注意する。按分する場合は、根拠資料の添付が必要となる。 |
採択理由書(交付申請3) | 3者以上の見積合わせや入札の結果として、採択した理由を記載する。 |
見積書の写し *3者以上 見積書は、必ず事業者の社印があるものを取り、その写しを提出する。同一条件(仕様)による3者以上の見積書が必要となる。具体的には、設置場所(部屋数等)や機器の台数等において、3者の提案内容にばらつきが生じないように注意する。 |
・単価、数量、型式等の明細がわかるもの ・採択業者の見積書表紙には、採択と朱書き ・見積もりに助成対象外経費を含む場合は、助成対象を明示したうえで「助成対象経費」「助成対象外経費」の各合計額を記載する |
契約書の写し | 注文書の写しおよび注文請書の写しのセットでも可 |
工程表 | 「設計、工事の契約から代金支払いまでが令和6年4月1日〜令和7年1月31日の間に行われる」ということがわかるもの |
設備等の仕様書 | 導入する省エネ設備等の種類、型式および能力等がわかる書類(パンフレット、カタログ等) |
設備等の導入計画図面 | 校舎のどこに設置されるかが分かる図面・配置図。図面上で省エネ設備の設置状況(位置および型番)を正確に確認できるよう作成する。また、契約内容(見積書明細等)と一致していることも必要となる。空調設備の場合、図面には室外機・室内機等の購入物品の設置箇所を記入する。 |
省エネ診断報告書の写し | 「クール・ネット東京」あるいは「省エネルギー相談地域プラットフォーム構築事業(経済産業省資源エネルギー庁)における補助事業者(プラットフォーム事業者)」が、省エネ診断の結果として作成したもの。着工日前、概ね3年以内の結果が対象となる。 |
省エネ効果証明資料(CO2削減効果・電力削減効果が産出されることを示す計算根拠資料) | 施工業者が作成する、更新工事等による省エネ効果(CO2削減効果・電力削減効果)を確認できる証明書及びその根拠資料(計算中の消費電力等が確認できる仕様書等)財団HPに記入様式あり。 |
「空調設備導入費助成金」で、大規模な工事等に該当する場合 ①工事契約額等(助成対象経費)が5,000万円を超えた理由・経緯等の説明書。様式は任意。 ②更新分析表 |
空調設備の更新について、工事契約額等(助成対象経費)が5,000万円を超える大規模工事に該当する場合は、左記①②の書類を必ず提出する。 |
印鑑証明書(設置者) | 申請日前3ヶ月以内に発行したもの |
申請方法
上記で紹介した必要書類を以下の宛先に郵送します。
(公財)東京都私学財団 振興部振興課 省エネ設備等導入事業費助成金担当宛
〒162ー0823 新宿区神楽河岸1-1 セントラルプラザ11階
電話03-5206-7923
私立学校省エネ設備等導入事業費助成事業活用のメリット
私立学校では運営資金を自校で賄う必要があります。教育の質を上げるために必要な教材費用などを負担したうえで、省エネ化に向けた経費も賄うというのは資金的に大変なこともあるでしょう。
私立学校省エネ設備等導入事業費助成事業を活用すれば、省エネ設備の導入に必要な経費が一部助成されるため、学校の負担を軽減できます。子どもの教育環境の質を確保しつつ省エネ化に向けて具体的に行動したい私立学校はぜひ活用をご検討ください。
まとめ
私立学校省エネ設備等導入事業費助成事業は、省エネ化に向けた取り組みを実行する私立学校を支援するための制度です。導入前に省エネ診断を受けて改善提案をしてもらえるため、費用的に無理なく効率的に省エネ設備を導入できるでしょう。第1回募集は、令和6年7月1日(月)〜9月4日(水)までです。省エネ診断を受けていない場合は、受診のスケジュールなど日程に注意して、助成金活用の準備をすすめるようにしてください。