自動販売機や冷蔵庫の冷媒として広く使われてきたフロンは、人体への毒性がないなどのメリットがある反面、強力な温室効果ガスです。環境問題への影響を鑑みて、国はノンフロン技術や製品の使用を推奨しています。
こうした動きを受け、東京都では冷媒にフロンを使用しない「省エネ型ノンフロン機器」の導入を支援する省エネ型ノンフロン機器普及促進事業を実施しています。
令和8年度は制度が大きく拡充されました。これまで対象外とされてきた冷凍冷蔵倉庫および食品製造工場が新たに助成対象に追加されたほか、チリングユニット・冷凍冷蔵ユニットの助成上限額が1台あたり最大6,700万円(中小企業者等の場合)へと大幅に引き上げられています。
今回は省エネ型ノンフロン機器普及促進事業の内容や補助金額、申し込み方法、令和8年度の変更点を紹介します。
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この記事の目次
フロンとは?都内フロン排出量は増加傾向
フロンは燃えにくく、化学的に安定した物質です。また液化しやすく、エアコンや飲食品冷蔵・冷凍ショーケース、冷水機などの冷媒のほか、断熱材などの発泡剤やパソコンなどのダストブロワーにも利用されてきました。
人間にとっては利点の多いフロンですが、環境には大きなダメージを与えます。フロンの中でも、特にCFC(クロロフルオロカーボン)やHCFC(ハイドロクロロフルオロカーボン)はオゾン層を破壊することがわかっており、代替フロンとしてHFC(ハイドロフルオロカーボン)の利用が増加しました。しかし、いずれのフロンも強力な温室効果ガスであることに変わりはありません。
都内のフロン(HFCs)排出量は近年増加傾向にあり、2022年度の排出量は約640万t-CO₂と、都内の温室効果ガス排出量の約1割を占めています。このうち、オフィスや商業施設などの業務用冷凍空調機器からの排出が7割弱を占めており、フロン排出量の削減に向けた取組みが急務となっています。
令和8年度 省エネ型ノンフロン機器普及促進事業の拡充ポイント
令和8年度の変更点は、大きく次の2点です。①冷凍冷蔵倉庫・食品製造工場が対象に追加
事業開始以来、本事業では冷凍冷蔵倉庫および食品製造工場は対象外とされてきました。令和8年度からはこの除外規定が撤廃され、都内で事業所を所有・使用する事業者であれば、冷凍冷蔵倉庫や食品製造工場も助成を受けられるようになりました。
冷凍冷蔵設備が事業の中核を担うこれらの業種にとって、機器更新の選択肢が大きく広がる変更です。
②チリングユニット・冷凍冷蔵ユニットの上限額を大幅引き上げ
対象機器のうち、冷凍冷蔵用又は空調用チリングユニットと冷凍冷蔵ユニットについて、1台あたりの助成上限額が引き上げられました。
| 事業者区分 | 令和7年度まで | 令和8年度 |
|---|---|---|
| 大企業 | 1,600万円/台 | 5,000万円/台 |
| 中小企業者・個人事業主等 | 2,200万円/台 | 6,700万円/台 |
約3倍への引き上げです。冷凍冷蔵倉庫や食品製造工場で使用される大型設備は導入費用が高額になりやすいため、対象拡大とセットで実効性を持たせた設計といえます。
なお、ショーケースについては内蔵型と別置型で上限額が区分され、内蔵型ショーケースには大企業200万円/台、中小企業者等270万円/台の上限が設定されています(別置型は従来どおり大企業1,600万円/台、中小企業者等2,200万円/台)。
省エネ型ノンフロン機器普及促進事業の詳細
省エネ型ノンフロン機器普及促進事業は、東京都がフロン排出量の削減を目的に実施する助成事業です。都が公益財団法人東京都環境公社に出えんして基金を造成し、公社が申請受付・審査・交付を行うスキームで運営されています。
事業目的
都内の温室効果ガス排出量のうち、フロンは約1割を占めます。省エネ型ノンフロン機器普及促進事業では、冷凍冷蔵機器等の使用によって排出されるフロン類の削減や脱炭素化の推進を目指し、都内で新たに省エネ型ノンフロン機器を導入する事業者を支援します。
ここでいう「省エネ型ノンフロン機器」とは、フロン類(CFC、HCFC、HFC)およびHFOではない自然冷媒(アンモニア、二酸化炭素、空気、水、炭化水素等)を使用した冷凍冷蔵機器等であって、同等の冷凍冷蔵能力を持つフロン冷媒機器と比較して使用時のCO₂排出が少ないものを指します。温室効果の低い代替冷媒として普及が進むHFO冷媒の機器は対象外である点に注意が必要です。
対象事業者
補助の対象は、都内で事業所を所有または使用している事業者です。大企業、中小企業者、個人事業主のほか、独立行政法人、学校法人、一般・公益社団法人/財団法人、医療法人、社会福祉法人、協同組合等も対象に含まれます。
令和8年度からは、これまで対象外だった冷凍冷蔵倉庫および食品製造工場も対象です。
リースを利用する場合は、リース等使用者とリース等事業者の共同申請により補助対象となります(レンタル契約は対象外)。個人事業主は、税務署に開業届を提出していることが必要です。
助成対象事業者の要件は、以下のいずれかに該当することです。
・上記の要件を満たすリース等使用者と共同申請を行うリース等事業者
ただし、次の場合は助成対象外です。
・暴力団、または役員・使用人に暴力団員等がいる
・法令に基づく必要な許可の取得や届出がなされていない
・税金の滞納がある等、公的資金の交付先として社会通念上適切であると認められないもの
要件
対象事業の主な要件は、以下のとおりです。
・導入する機器は新品であること
・フロンを含む既存機器を撤去する場合には、フロン排出抑制法に基づき、第一種フロン類充填回収業者にフロン類を適切に引き渡すこと
・機器の導入後、東京都および公社が行う調査等に協力できること
・導入機器に都が指定するステッカーを貼付すること
・本事業以外で都の資金を原資とする助成金の交付を受けた(受ける予定のある)事業でないこと
・【大企業のみ】ノンフロン機器への導入目標等の公表に加え、導入効果を広く周知すること
対象機器
補助の対象となる機器は、蒸気圧縮冷凍サイクル方式を採用した新品の省エネ型ノンフロン機器のうち、以下のもので、設置場所に常置されるものです。
・別置型ショーケース
・冷凍冷蔵用又は空調用チリングユニット
・冷凍冷蔵ユニット(車載用、船舶用又は輸送用を除く。プレハブ式の冷蔵庫などに設置して庫内を冷却するもの)
業務用冷凍・冷蔵庫は助成対象外です。
なお、別置型ショーケース等における機器の台数は、室内機や冷凍機の台数にかかわらず、同一冷媒系統について1台とカウントされます。
対象経費(対象外経費)
補助の対象経費は、以下のとおりです。
| 経費区分 | 内容 |
|---|---|
| 設備費 | 設備および機器の購入に要する費用(メーカー希望小売価格を超える分は対象外) |
| 運搬据付費 | 購入物の運搬据付けに要する費用(設備費の30%まで) |
| 工事費 | 工事に係る材料費、労務費、直接経費、共通仮設費、現場管理費および一般管理費 原則として冷媒配管・保温・ラッキング工事、制御盤・電源工事のみ(内蔵型ショーケースは対象外) |
| 業務費 | 設備に係る調査、設計、試験および検証等に要する費用(内蔵型ショーケース、大企業は対象外) |
| 撤去費 | 既存機器から助成対象機器へ更新する場合の配管等の撤去費用(大企業は対象外。既存機器が別置型ショーケース等の配管を有した機器である場合に限る) |
消費税、既存機器のフロン回収費用・廃棄費用、分電盤交換などの電気工事、リフォーム・増築に係る工事費などは対象外です。
また、交付決定の前に購入・契約しているものは助成の対象外となります。申請から交付決定までは概ね2か月を要するため、発注スケジュールには十分な余裕を持たせてください。
補助率・上限額
補助率と補助の上限額は以下のとおりです。
| 事業者区分 | 助成率 | 対象機器 | 上限額(1台あたり) |
|---|---|---|---|
| 大企業 | 助成対象経費の1/2 | 内蔵型ショーケース | 200万円 |
| 大企業 | 助成対象経費の1/2 | 別置型ショーケース | 1,600万円 |
| 大企業 | 助成対象経費の1/2 | チリングユニット/冷凍冷蔵ユニット | 5,000万円 |
| 中小企業者・個人事業主等 | 助成対象経費の2/3 | 内蔵型ショーケース | 270万円 |
| 中小企業者・個人事業主等 | 助成対象経費の2/3 | 別置型ショーケース | 2,200万円 |
| 中小企業者・個人事業主等 | 助成対象経費の2/3 | チリングユニット/冷凍冷蔵ユニット | 6,700万円 |
なお、国その他の団体からの補助金等を受ける場合は、その額を控除した額が交付されます。助成金額に千円未満の端数が生じたときは切り捨てとなります。
申請方法
申請は原則として電子メールで行います。郵送を希望する場合は、事前にヘルプデスクへ連絡のうえ、簡易書留等の記録が残る方法で郵送してください。申請に必要な様式は、東京都環境公社の公式ホームページからダウンロードします。申請は原則、設置場所ごとに行います。
なお、交付申請の手続きは、機器を販売・設置する事業者等に代行を依頼することも可能です。
省エネ型ノンフロン機器普及促進事業はいつまで?公募期間は
申請の受付期間は、以下のとおりです。
■受付期間 令和8年4月1日から令和9年3月31日(水)17時まで(必着)
申請は先着順に受理され、予算(基金)の限度額に達した時点で受付は終了します。基金超過日に複数の申請があった場合は抽選となります。検討中の場合は早めの申請をおすすめします。
必要書類
申請に必要な書類は、公式サイト掲載の手引・提出書類リストで確認できます。このうち、すべての事業者で提出が必要な主な資料は以下のとおりです。
・履歴事項全部証明書(法人)/住民票の写し(個人事業主)
・直近の貸借対照表または損益計算書(法人)/個人事業税納税証明書(個人事業主)
・設置場所(建物)の全部事項証明書
・見積書(経費区分ごとの明細記載が必要)
・助成対象機器に係る資料(使用冷媒・定価・省エネ効果・重量等がわかるカタログ等)
・新設または更新後の助成対象機器の設置図面
このほか、機器の種類や導入形態に応じて、冷媒系統図、更新前の既存機器の設置図面、リース関係書類、国等の補助金の交付決定通知書(写し)などの提出が必要です。
申請時の注意点
申請の際は、以下の点に注意してください。
・経費の支払いは銀行振込のみが認められます(現金払、クレジットカード払、手形払等は不可)。
・実績報告は、事業完了日から60日以内、交付申請時の完了予定日から1年以内、または令和11年10月1日のいずれか早い日までに提出が必要です。
・交付決定後に機器の購入先や経費の内容に変更が生じる場合は、契約前に必ず公社へ計画変更申請を行ってください。手続きを行わない場合、助成金が受けられなくなることがあります。
・助成金で取得した機器は、法定耐用年数の期間内は処分(譲渡・廃棄等)が制限されます。
国のコールドチェーン補助金との関係は?
冷凍冷蔵倉庫や食品製造工場を対象とする補助制度としては、環境省の「コールドチェーンを支える冷凍冷蔵機器の脱フロン・脱炭素化推進事業」があります。冷凍冷蔵倉庫、食品製造工場、食品小売店舗における脱炭素型自然冷媒機器の導入を支援する国の補助金で、これまで都内の倉庫・工場が自然冷媒機器を導入する際の主な選択肢となってきました。
令和8年度の対象拡大により、都内の冷凍冷蔵倉庫・食品製造工場は、国の補助金と都の助成金の両方を検討できるようになりました。都の助成金は国等の補助額を控除して交付される仕組みのため、要件を満たせば組み合わせての活用も可能です。
公募期間や採択方式(国は公募・審査による採択、都は先着順)、対象機器の要件などが異なるため、導入計画に応じてどちらを軸にするか比較検討するとよいでしょう。
よくある質問
業務用の冷凍庫・冷蔵庫も対象になる?
いいえ、業務用冷凍・冷蔵庫は助成対象外です。対象は内蔵型・別置型ショーケース、チリングユニット、冷凍冷蔵ユニットの4区分に限られます。
交付決定前に機器を発注してもいい?
できません。交付決定前に契約・発注したものは助成対象外となります。申請から交付決定までは概ね2か月かかるため、スケジュールには余裕を持たせましょう。
国の補助金と併用できる?
併用は可能です。ただし国その他の団体からの補助額を控除した額が交付されます。申請時には国の交付決定通知書(写し)の提出が必要です。
リースで導入する場合も対象?
対象です。リース等使用者とリース等事業者の共同申請が必要で、リース料から助成金相当額が控除されていることが条件です。なお、レンタル契約は対象外です。
個人事業主でも申請できる?
申請できます。税務署に開業届を提出していることが条件です。個人事業主の場合、助成率は中小企業者と同じく助成対象経費の2/3です。
申請はいつまで?
令和9年3月31日17時必着です。ただし先着順のため、予算(基金)の限度額に達した時点で受付終了となります。
まとめ
令和8年度の省エネ型ノンフロン機器普及促進事業は、冷凍冷蔵倉庫・食品製造工場への対象拡大と上限額の大幅引き上げにより、これまで以上に幅広い事業者が活用できる制度になりました。
申請は先着順で、予算に達し次第受付終了となります。冷凍冷蔵設備の更新を検討している都内の事業者は、早めに公式サイトで最新の要綱・手引を確認のうえ、準備を進めることをおすすめします。
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