2023年6月13日、政府は「異次元の少子化対策」実現のための、こども未来戦略方針を閣議決定しました。政策をまとめたこども・子育て支援加速化プランの規模は、3兆円半ばとなりました。2025年4月、盛り込まれた支援策の多くが、本格的にスタートしています。
今回はこども・子育て支援加速化プランの概要や、2025年から始まった制度内容をまとめました。
▼▼▼日々配信中!無料メルマガ登録はこちら▼▼▼
メルマガ会員登録する
この記事の目次
日本の少子化の現状と課題
2025年4月1日、子どもの数は1366万人となりました。これは前年に比べて35万人少なく、過去最少です。子どもの数は1982年から、44年連続の減少となりました。少子化による人口減少を防ぐには、2030年までの徹底した少子化対策が必要とされます。
一方で子ども・子育て政策に関しては、過去の施策によって待機児童が大きく減少するなど、一定の成果は見られました。しかし依然として、少子化傾向は続いています。こども・子育て政策を抜本的に強化していくためには、以下の3点の課題改善が重要です。
| ①若い世代が結婚・子育てについて将来の展望を見出せない |
| 近年、「一生結婚するつもりはない」と考えている者が増加しています。収入や雇用の不安等によって、若い世代が結婚・子育てについて将来の展望を描けなくなっているのです。 |
| ②子育てと両立しにくい職場環境・子育てが困難な社会環境 |
| 共働き世帯が一般化するなか、職場の理解不足や家庭内の負担の偏りが指摘されています。また子どもの泣き声やベビーカーでの移動に対する苦情など、子育てしにくい社会環境も課題です。 |
| ③子育ての経済的・精神的負担感や子育て世帯の不公平感 |
| 子育てや教育には、お金がかかります。特に多子世帯の経済的負担は重く、子育て世帯が、本来の希望より少ない子どもの人数を選択するケースも多く見られます。 |
少子化を食い止めるためには、若者世帯の収入・雇用の改善や、社会全体の意識改革が必要です。
異次元の少子化対策とは
2023年12月、こども・子育て支援強化策を盛り込んだ「こども未来戦略」が決定されました。その総額は3.6兆円程度と、前例のない規模です。若い世代が安心して将来を描ける社会を実現するため、以下の3つを重点に掲げています。
■社会全体の構造や意識を変える
■すべてのこどもと子育て世帯をライフステージに応じて切れ目なく支援していく
「こども未来戦略」はこれらを戦略の基本理念として掲げ、若い世代が希望どおり結婚・出産し、安心して子育てできる、子どもたちが笑顔で暮らせる社会の実現を目指すものです。
また加速化プランでは、2023年からの3年間が集中的な取組期間として設定されています。
異次元の少子化対策はいつから始まる?
異次元の少子化対策の主な施策の施行時期は、以下のとおりです。
| 制度 | 施行時期 |
|---|---|
| 児童手当の拡充 | 2024年10月 |
| 出産・育児期の支援 | 2025年4月 |
| 教育費支援・多子世帯無償化 | 2025年4月 |
| 男性育休・育児時短給付 | 2025年4月 |
| 柔軟な働き方支援 | 2025年10月(事業主の義務化) |
| こども誰でも通園制度 | 2025年から順次開始 |
| 年収の壁対策 | 2025年 |
| 子育て支援金制度 | 2026年 |
なお異次元の少子化対策は、2027年度までが集中取組期間です。さらに2028年には、子育て支援金制度の支援金が満額化される予定になっています。
異次元の少子化対策の効果と今後の課題
2023年に日経xwomanが「働く男女」を対象として実施したアンケートによると、「少子化対策は効果があると思う」との回答が多く見られました。
こども未来戦略は、若年人口が急激に減少する2030年代までを「少子化傾向を反転できるラストチャンス」として定めた施策です。社会経済の参加者全員が子育て世帯を支え、応援することを目指して定められました。この期間に少子化対策を重点的に支援することで、出生率反転や雇用安定を狙います。
一方で、財源や企業実務の負担増加などの課題も残ります。また世代間の公平感に対する国民の理解をどう得ていくかも検討されなくてはいけません。
異次元の少子化対策が成功するかどうかは、すべての世帯から理解が得られる説明や、課題に対する社会全体の意識改革も必要なのです。
異次元の少子化対策の内容【2025年版】
異次元の少子化対策では、妊娠時から子どもの進学まで、息の長い伴走支援が設定されています。
出典:こども家庭庁
また2023年に制定されたこども未来戦略方針の関連事業の多くは、2025年4月から施行されました。
ここでは主な施策や、実際の制度概要を見ていきましょう。
児童手当の拡充
2024年10月から、児童手当が拡充されました。所得制限が撤廃され、高校生まで支給が延長されています。
支給金額は以下のとおりです。
■3歳以上、高校生年代まで 1万円(第3子以降は3万円)
なお「第3子以降」とは、児童・児童の兄姉等のうち、年齢が上の子から数えて3人目以降の子のことです。
出産等の経済的負担の軽減
妊産婦への伴走型相談支援と経済的支援の一体的実施として「妊婦等包括相談支援事業・妊婦のための支援給付」が開始されました。これは令和4年度補正予算から始まった「出産・子育て応援交付金事業」を2025年度から法律に基づく制度として実施するものです。
支援内容は、以下のとおりです。
5万円+妊娠している子どもの人数×5万円
■妊婦当方活費産段支援事業
面談・相談等を通じて、妊婦・配偶者を伴走支援する
また出産時に支給される出産一時金は、42万円から、原則1人につき50万円に引き上げられました。
そのほかにも「妊娠・出産期から2歳までの支援」を強化するため、こども未来戦略方針では以下の事業が盛り込まれています。
- 初回産科受診料の費用助成、出産費用の見える化
- 出産費用(正常分娩)の保険適用導入
「初回産科受診料の費用助成、出産費用の見える化」では、費用やサービスを踏まえて適切に出産施設を選択できる環境を整備するため、厚生労働省が運営する「出産なび」が開設されています。
また「出産費用(正常分娩)の保険適用導入」では、5月14日に行われた厚生労働省の有識者検討会にて、2026年度をめどに「標準的な出産費用の自己負担無償化に向けた具体的な制度設計を進める」と記した文書がとりまとめられました。
高等教育費の負担軽減と多子世帯の大学等授業料・入学金の無償化
2020年度から、高等教育の修学支援新制度が開始されました。2024年度からは奨学金制度の対象が、多子世帯や理工農系の中間層に拡大されています。また2025年度から、多子世帯の授業料等が無償になりました。
そのほか、以下の取組が行われました。
・子ども2人世帯は500万円以下まで、3人以上世帯は600万円以下まで引き上げられました。
■修士段階の学生を対象とした授業料後払い制度導入
この施策は特に、扶養する子どもが3人以上の多子世帯の経済的に支え、家庭環境に影響を受けない進学の機会を提供するとともに、子育て世代が理想の子どもの数を持つことを可能にすることを目指しています。
男性育休・育児時短給付
共働き・共育てを定着させるため、特に男性の育休取得を支援することが盛り込まれました。主な施策と概要は、以下のとおりです。
子の出生後または産後休業後8週間以内に、両親ともに14日以上の育児休業を取った場合、それぞれに既存の育児休業給付金に上乗せして、出生後休業支援給付金が、最大28日間支給されます。
・育児休業給付金 休業前賃金の67%相当額
・出生後休業支援給付金 休業前賃金の13%相当額
■育児時短就業給付金
2歳未満の子の子育て中に時短就業をした場合に、時短就業時の賃金の10%が支給される
また2024年度年5月には育児・介護休業法及び次世代育成支援対策推進法(次世代法)が改正され、次世代育成支援対策の推進・強化が図られました。
▼こちらの記事も合わせてご参照ください。
産後パパ育休(出生後育児休業)とは?育休との違いや給付金、手取り10割も解説
個人の主体的なリスキリングへの支援
企業経由が中心である在職者への学び直し支援策(リスキリング)について、働く個人が主体的に選択できるような仕組みに変えていきます。またその際の教育訓練給付に関して、補助率等の拡充を検討するとともに、個人が主体的にリスキリングを進められるよう、新たな給付や融資制度の創設に取り組みます。
育児期を通じた柔軟な働き方の推進 ~利用しやすい柔軟な制度へ~
柔軟な働き方を実現するための取組を事業主が複数の制度を選択・措置し、3歳~小学校就学前のこどもを持つ労働者が1つ選択できる制度が創設されました。この制度は2025年10月から、各事業主に義務化されます。
「年収の壁」への対応
2025年度から、いわゆる「年収の壁」対策が実施されました。内容は、以下のとおりです。
103万円から160万円へ引き上げ
■配偶者特別控除等の対象となる上限額
150万円から160万円に増額
■扶養基準
扶養基準が103万円から123万円に
■厚生年金保険等に加入(手取り額が減る)する上限額
106万円から段階的に廃止へ
■大学生等が扶養対象となる就労収入の上限額
150万円までは手取りが減らない「特定親族特別控除」を導入
▼こちらの記事も合わせてご参照ください。
103万円の壁を超えたらどうなる?年収の壁とは?
全ての子育て家庭を対象とした保育の拡充
子どもの成育環境の整備や子育て中の孤立感の解消を目指し、月一定時間までの利用可能枠の中で、就労要件を問わず時間単位などで柔軟に利用できる「こども誰でも通園制度」が創設されました。
2025年度から順次、一部自治体で制度が開始されています。
ひとり親家庭の自立促進
非正規雇用の割合が高く、経済的基盤が弱いひとり親世帯の方を支援するため、2021年3月16日に決定された「非正規雇用労働者等に対する緊急支援策について」の中に、安定就労を通じた中長期的な自立支援や住居確保につながることを目指した「ひとり親自立促進パッケージ」が盛り込まれました。
これに関連し、各自治体で、以下の事業が実施されています。
■母子家庭自立支援給付金及び父子家庭自立支援給付金
■高等学校卒業程度認定試験合格支援事業
■母子・父子自立支援プログラム策定事業
詳細は各自治体の窓口に問い合わせてください。
よくある質問
最後に、こども未来戦略や異次元の少子化対策について、よくある疑問と回答をまとめました。こども未来戦略の財源は?
「こども未来戦略」の約3.6兆円の予算のうち、1兆円程度は「子ども・子育て支援金制度」によって賄われる予定です。なお支援金制度は、医療・介護の歳出改革と賃上げによる実質的な社会保険負担軽減効果の範囲内で導入されることになっています。2026年度から2028年度にかけて段階的に構築され、その間の財源は「子ども・子育て支援特例公債」を発行することで賄われる予定です。
子ども・子育て支援金の額はいくら?
個々人の具体的な拠出額については、加入する医療保険制度、所得や世帯の状況等によって異なります。参考として、令和10年度においては、平均で月額450円程度と試算されています。
「こども大綱」とは?
2023年12月22日、子どもに関する今後5年間の基本方針「こども大綱」が閣議決定しました。具体的な施策は、毎年6月に「こどもまんなか実行計画」として策定されています。
まとめ
根本的に、妊娠・出産・子育ては個人の自由な意思に基づき、多様な価値観や考え方を尊重することが大前提です。
一方で、少子化対策は、待ったなしの社会課題です。若い世代が将来に希望を持ち、積極的に「子どもを持ちたい」と思えるような社会にしなければなりません。
「異次元の少子化対策」では、これらの課題を迅速に解決するため、従来とは異なる政策が盛り込まれた「加速化プラン」を設けています。若い世代や子どもたちが、どのような環境や家庭状況にあっても、分け隔てなく暮らせる社会の実現を目指し、今後も取組が続けられる予定です。
▼▼▼日々配信中!無料メルマガ登録はこちら▼▼▼
メルマガ会員登録する


