▼「異次元の少子化対策」これからの3年間で取り組む「加速化プラン」についてはこちらからどうぞ!
日本は、ほかの先進国と比べて、少子化対策にかける予算は少ないほうであるといわれています。有効な対策を打つことができず出生率は低下し続け、政府はどうにかして少子化に歯止めをかけようとしています。
3月末に、異次元の少子化対策のたたき台の内容が明らかになりました。これは、少子化の傾向を反転させるため、これから3年間で加速化して取り組むこども・子育て政策と、それが目指す将来像を取りまとめたものです。
この少子化対策の財源はどうするのかといった議論もあり、関心が高まっています。今回は、異次元の少子化対策の実現に向けたこども・子育て政策の強化について調べてみました。
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この記事の目次
異次元の少子化対策~こども政策の強化について~
令和5年1月に岸田総理はこども政策の強化について、3つの基本的方向性に沿って検討し、3月末を目途に少子化対策のたたき台をまとめるよう指示を出しました。
その3つの基本的な方向性とはどのような内容だったのか、振り返ってみましょう。
【対策の基本的な方向性】
(1)児童手当を中心とした経済的支援の強化
(2)幼児教育・保育サービスの強化及び全ての子育て家庭を対象としたサービスの拡充
(3)働き方改革の推進とそれを支える制度の充実
まず、少子化の根本的な解決には、経済的な不安から子どもを持ちたくても持てない、という人たちを減らしていくことが重要です。そこで(1)として、児童手当を中心に、経済的支援を強化することが掲げられました。
(2)について、学童保育や病児保育を含めて、幼児教育や保育サービスの量と質両面からの強化を進めるとともに、伴走型支援、産後ケア、一時預かりなど、全ての子育て家庭を対象としたサービスの拡充を進めていくとしました。
(3)では、男女ともに、仕事だけでなく家事や育児をしながら生活を送るための支援として、働き方改革の推進とそれを支える制度の充実、育児休業制度の強化を挙げました。
少子化対策のたたき台の内容とは
前項の方向性に沿って検討が進められて、たたき台がまとめられました。
まず、基本となる理念を知り、内容を確認していきましょう。
【基本理念】
3月17日の会見で岸田総理から示されたように、若い世代が希望通り結婚し、希望する誰もがこどもを持ち、ストレスを感じることなく子育てができる社会、そして、こどもたちが、いかなる環境、家庭状況にあっても分け隔てなく大切にされ、育まれ、笑顔で暮らせる社会、これが目指すべき社会の姿である。(抜粋:こども・子育て政策の強化について(試案)~次元の異なる少子化対策の実現に向けて~ )
政府は、結婚や子育てに関する多様な価値観を尊重しつつ、若い世代が希望通り結婚し、希望する誰もがこどもを産み、育てることができるようにすることで、結果として少子化を食い止めることにつながると考えています。
少子化問題を解決していくことは、経済活動の活性化や社会保障機能の安定化、地域社会の担い手の増加など、社会の多くの面に良い影響をもたらします。つまり、こども・子育て政策を強化することは「未来への投資」であるという認識のもと、社会全体で子育てを支えていくという意識を醸成していく必要があるとしています。
少子化の背景には、経済的な不安定さや仕事と子育ての両立の難しさ、家事・育児の負担が女性に偏っている状況、子育ての孤立感や負担感、子育てや教育にかかる費用負担といった、多様な要因が絡み合っています。以上の観点から、少子化対策は以下をポイントとして取り組んでいきます。
(1)若い世代の所得増加
■賃上げ促進
■働きやすい環境の整備
■希望する非正規雇用の方々の正規化
■最低賃金の引上げ
■106万円・130万円の壁について、手取りの逆転を生じさせない取組の支援導入 など
(2)社会全体の構造・意識の変化
■こどもまんなか社会に向けた社会全体の意識改革
■気兼ねなく育児休業制度を使えるような職場の文化・雰囲気の変革
■育児休業制度の強化
■働き方改革の推進 など
(3)子育て支援サービスについて、すべての子育て世帯へ切れ目ない支援を
■親の就業形態に関わらず全ての子育て家庭を等しく支援
■幼児教育・保育の強化
■妊娠・出産時から0~2歳の支援を強化 など
今後3年間で加速化する少子化対策の具体例
今後何をポイントに取り組んでいくのかのイメージがつかめたところで、具体策をみていきましょう。
児童手当の拡充
「児童手当」について、こどもの育ちを支える基礎的な経済支援としての位置付けを明確にします。そのため、所得制限を撤廃して、支給期間を高校卒業まで延長します。また、多子世帯が減少傾向にあることや経済的負担感が多子になるほど強いこと等を踏まえ、手当額についても見直しを行います。
対象や金額など見直しの具体的内容については、今後、財源の議論と併せて検討し、骨太の方針2023 までに結論を出します。
出産等の経済的負担の軽減
令和4年度第二次補正予算で創設された「出産・子育て応援交付金」(10万円)について、制度化等を検討します。また、出産費用の見える化について令和6年度からの実施に向けた具体化を進めて、効果等の検証を行い、出産費用(正常分娩)の保険適用の導入を含め出産に関する支援等の在り方について検討します。
子育て世帯に対する住宅支援の強化
理想とする数のこどもを持てない理由の一つとして、すまいの問題があります。そこで、子育てにやさしい住まいの拡充を目指し、住宅支援を強化します。
まず、子育て環境の優れた地域に立地する公営住宅等の公的賃貸住宅を対象に、子育て世帯等が優先的に入居できる取り組みを進めます。
ほかに、子育て世帯等が住宅を取得する際の金利負担を軽減するため、住宅金融支援機構が提供する長期固定金利の住宅ローン(フラット 35)について、住宅の広さを必要とする多子世帯に特に配慮しつつ、支援の充実を図ります。
妊娠期からの切れ目ない支援の拡充
妊娠から産後2週間未満までは多くの妊産婦にとって不安や負担感の大きい時期です。このため、妊娠期から出産・子育てまで、身近な場所で相談に応じ、多様なニーズに応じたサービスにつなぐ「伴走型相談支援」について、継続的な実施に向け制度化の検討を進めます。
また、産前・産後の心身の負担軽減を図る観点から、産後ケア事業の実施体制の強化等を行います。
全ての子育て家庭を対象とした保育の拡充
子育て世帯の多くが「孤立した育児」の中で不安や悩みを抱えていることから、全ての子育て家庭への支援を強化します。就労要件を問わず時間単位等で柔軟に利用できる新たな制度「こども誰でも通園制度(仮称)」の創設を検討します。
男性育休の取得促進
夫の家事・育児関連時間を増やし、共働き・共育てを定着させていくための第一歩として、男性育休の取得促進に取り組みます。「産後パパ育休(最大28日間)」を念頭に、出生後一定期間内に両親ともに育児休業を取得することを促進するため、給付面の強化として給付率を現行の67%(手取りで8割相当)から、8割程度(手取りで10割相当)へと引き上げます。
また、男女ともに、職場への気兼ねなく育休を取得できるようにするため、現行の育児休業期間中の社会保険料の免除措置及び育休給付の非課税措置に加えて、周囲の社員への応援手当など「育休を支える体制整備を行う中小企業に対する助成措置」を大幅に強化します。
育児期を通じた柔軟な働き方の推進
男女ともに育児や家事とキャリアの両立ができるような「両立支援」も少子化を改善するための重要な要素です。そこで、柔軟な働き方として、男女ともに短時間勤務をしても手取りが変わることなく育児・家事を分担できるよう、こどもが2歳未満の期間に、時短勤務を選択した場合の給付を創設します。
この柔軟な働き方についても、前述の男性育休促進と同様に、周囲の社員への応援手当支給等の体制整備を行う中小企業に対する助成措置の大幅な強化とあわせて推進します。
少子化対策のたたき台には、今回取り上げた以外にも、少子化の状況を変えるためのさまざまな政策案があります。気になる方は、こども・子育て政策の強化について(試案)~次元の異なる少子化対策の実現に向けて~でチェックしてみてください。
少子化対策 今後のスケジュール
最後に、今後のスケジュールを確認しましょう。
今回ご紹介した少子化対策のたたき台は、長年の課題解決に向けて「必要な政策内容を整理する」という観点から取りまとめられました。これをベースに、これから国民的議論が進められます。
内閣総理大臣の下に新たな会議を設置し、検討を深めるとともに、こども家庭庁にてこども政策を体系的に取りまとめます。そして、6月の骨太の方針2023までに、将来的なこども予算倍増に向けた大枠を提示するとしています。
▼6月13日閣議決定「こども未来戦略方針」案 についてはこちらから