現在は中小企業向けに複数の補助金制度が展開されており、指定の認定制度(くるみん認定・えるぼし認定)を取得することで申請を優位に進められることもあります。子育て支援や女性の活躍推進に向けた取り組みを行う中小企業をサポートするために実施されているため、自社に該当するものがあれば積極的に活用しましょう。
今回はくるみん認定・えるぼし認定の概要や具体的な制度の中身、必要な手続きなどを紹介します。
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この記事の目次
中小企業向け補助金の子育て支援・女性活躍推進企業に対する加点措置の内容
現在(2023年6月時点)は複数の中小企業向け補助金において、指定の認定を受けた場合に加点措置が実施されるようになっています。
〜加点措置の対象となる認定基準〜
- くるみん認定:子育てサポート企業であると厚生労働大臣より認可されている
- えるぼし認定:女性の活躍推進に向けた取り組みが活発な企業であると認可されている
加点措置の実施対象となる補助金は以下の5つです。
補助金名 | 概要 |
事業再構築補助金 | 新型コロナウイルス感染症の影響が長期化し、需要や売り上げの回復が期待しにくい中で、ウィズコロナ時代の経済社会に対応するため事業再構築を行う中小企業等を支援する制度。新分野展開や事業転換、業種転換、業態転換、事業再編などの大胆な事業再構築に取り組む中小企業等を資金面で援助している |
ものづくり補助金 | 相次いで直面する制度変更(働き方改革・被用者保険の適用拡大・賃上げ・インボイス導入等)等への対応を目的として、中小企業・小規模事業者等が革新的サービスや試作品開発、生産プロセスの改善等に取り組む際の設備投資等を支援する |
IT導入補助金 | 中小企業・小規模事業者等が、自社の課題やニーズに合ったITツールを導入する経費の一部を補助する制度。自社の置かれた環境から強み・弱みを認識、分析し、把握した経営課題や需要に合ったITツールを導入することで、業務効率化や売上アップといった経営力の向上・強化を図ることを目的としている |
小規模事業者持続化補助金 | 小規模事業者および一定要件を満たす特定非営利活動法人が、相次いで直面する制度変更(働き方改革・被用者保険の適用拡大・賃上げ・インボイス制度の導入等)等への対応を目的として販路開拓等に取り組む際、経費の一部を補助する制度。地域の雇用や産業を支える小規模事業者等の生産性向上と持続的発展を図ることを目的としている。小規模事業者が作成した「持続的な経営に向けた経営計画」に基づく、販路開拓等の取り組みや業務効率化の取り組みを支援している |
事業承継・引継ぎ補助金 | 事業再編や事業統合を含む事業承継を契機として経営革新等を行う中小企業・小規模事業者に対し、取り組みに必要な経費の一部、および経営資源の引き継ぎに要する経費の一部を補助する制度。事業承継、事業再編・事業統合を促進し、経済の活性化を図ることを目的としている |
加点措置の内容
応募申請時点で、以下のいずれかに該当していることが条件です。
(1)女性の職業生活における活躍の推進に関する法律(女性活躍推進法)に基づく認定(えるぼし1~3段階目、あるいはプラチナえるぼしのいずれか)を受けている。あるいは、従業員数100人以下であって女性の活躍推進データベースに女性活躍推進法に基づく一般事業主行動計画を公表している。
(2)次世代育成支援対策推進法(次世代法)に基づく認定(くるみん、トライくるみん、あるいはプラチナくるみんのいずれか)を受けた。あるいは、従業員数100人以下であって一般事業主行動計画公表サイト(両立支援のひろば)に次世代法に基づく一般事業主行動計画を公表している。
加点の開始時期
以下の開始時期は執筆時点(2023年6月)の情報です。最新情報は必ずチェックしておきましょう。
補助金名 | 措置の開始時期 |
事業再構築補助金 | 措置済み |
ものづくり補助金 | 措置済み |
IT導入補助金 | 措置済み |
小規模事業者持続化補助金 | 2023年6月初旬開始予定の公募回 |
事業承継・引継ぎ補助金 | 2023年6月中旬開始予定の公募回 |
くるみん認定、えるぼし認定の概要
改めて加点措置が実施される認定の詳細について確認しましょう。認定条件や必要な手続きについても解説しているため、利用を検討する際の参考にしてください。
くるみん認定とは
くるみん認定は、厚生労働大臣より「子育てサポート企業である」と認可された企業が受けることができます。次世代育成支援対策推進法に基づいた「一般事業主行動計画」を策定した企業の中で、定めた目標を達成し一定の基準を満たした企業が、申請を行うことによって「くるみん認定」を受けることができます。
現在、申請できるくるみん制度のランクは以下の4つです。
(1)くるみん認定
行動計画を策定し、その計画に定めた目標を達成するなどの一定要件を満たした場合、必要書類を添えて申請を行うことで「子育てサポート企業」として厚生労働大臣(都道府県労働局長へ委任)の認定(くるみん認定)を受けることができる。認定を受けると、くるみんマークを「商品・広告・求人広告:などに付けて、子育てサポート企業であることをPRできる。公共調達(公式サイトのP.39参照)の加点評価等も受けることができる。
(2)プラチナくるみん認定
くるみん認定、あるいはトライくるみん認定(後述)企業のうち、より高い水準の取り組みを行った企業が一定の要件を満たした場合、必要書類を添えて申請を行うことにより、優良な「子育てサポート」企業として厚生労働大臣(都道府県労働局長へ委任)の特例認定を受けることができる。
プラチナくるみん認定を受けるためには、事前にくるみん認定あるいはトライくるみん認定を受ける必要がある。また、プラチナくるみん認定の申請ができる行動計画は、直近の行動計画に限る。
特例認定企業は、行動計画の策定・届出の代わりに「次世代育成支援対策の実施状況」について、毎年少なくとも1回、公表日の前事業年度における実施状況を公表する必要がある。
(3)トライくるみん認定
令和4年4月からスタートした新しい認定制度のこと。認定を受けると、くるみん認定、プラチナくるみん認定と同じように、トライくるみんマークを商品や広告、求人広告などに付けられる。公共調達の加点評価等も受けることができる。
トライくるみん認定を受けていれば、くるみん認定を受けていなくても直接プラチナくるみん認定に申請できる。
(4)プラス認定
令和4年4月からスタートした新しい認定制度のこと。認定を受けると、くるみん認定、プラチナくるみん認定、トライくるみん認定にプラスマークを追加して商品や広告、求人広告などに付けることができる。子育てサポート企業であることにプラスして、不妊治療と仕事の両立をサポートする企業であることもPRできる。
認定を受けるためには、くるみん等の認定基準を満たした上で、4項目のプラス認定基準をすべて満たす必要がある。
認定基準
(1)くるみん認定(2)プラチナくるみん認定(3)トライくるみん認定(4)プラス認定の「認定基準」を確認しましょう。
まず、(1)くるみん認定の認定基準は以下のとおりです。
(1)くるみん認定 | |
1 | 雇用環境の整備について、行動計画策定指針に照らし適切な行動計画を策定した |
2 | 行動計画の計画期間が「2年以上5年以下」である |
3 | 策定した行動計画を実施し、計画に定めた目標を達成した |
4 | 策定や変更した行動計画について、公表および労働者への周知を適切に行っている |
5 | 次のアまたはイのいずれかを満たしている ア→計画期間における、男性労働者の育児休業等取得率が10%以上であり、当該割合を厚生労働省のウェブサイト「両立支援のひろば」で公表している。 イ→計画期間における、男性労働者の育児休業等取得率および企業独自の育児を目的とした休暇制度利用率が合わせて20%以上であり、当該割合を厚生労働省のウェブサイト「両立支援のひろば」で公表している。かつ、育児休業等を取得した者が1人以上いる。 |
6 | 計画期間における女性労働者の育児休業等取得率が75%以上であり、当該割合を厚生労働省のウェブサイト「両立支援のひろば」で公表している。 |
7 | 3歳から小学校就学前の子どもを育てる労働者について、「育児休業に関する制度、所定外労働の制限に関する制度、所定労働時間の短縮措置または始業時刻変更等の措置に準ずる制度」を講じている。 |
8 | 計画期間の終了日の属する事業年度において以下のアとイのいずれも満たしている。なお、認定申請時にすでに退職している労働者は、アとイのいずれも分母や分子に含まない ア→フルタイムの労働者等の法定時間外・法定休日労働時間の平均が各月45時間未満である イ→月平均の法定時間外労働60時間以上の労働者がいない |
9 | 以下のア〜ウのいずれかの措置について、成果に関する具体的な目標を定めて実施している ア→所定外労働の削減のための措置 イ→年次有給休暇の取得の促進のための措置 ウ→短時間正社員制度、在宅勤務、テレワークその他、働き方の見直しに資する多様な労働条件整備のための措置 |
10 | 法および法に基づく命令その他関係法令に違反する重大な事実がないこと |
(2)プラチナくるみん認定(特例認定基準) | |
1~4 | くるみん認定の基準1〜4と同じ |
5 | 以下アまたはイのいずれかを満たしている ア→計画期間における、男性労働者の育児休業等取得率が30%以上である イ→計画期間における男性労働者の育児休業等取得率、および企業独自の育児を目的とした休暇制度利用率が、合わせて50%以上であり、かつ、育児休業等を取得した者が1人以上いる |
6 | 計画期間において、女性労働者の育児休業等取得率が75%以上である |
7 | くるみん認定の基準7と同じ |
8 | くるみん認定の基準8と同じ |
9 | 以下ア〜ウすべての措置を実施しており、かつ、アまたはイのうち少なくともいずれかについて、定量的な目標を定めて実施しその目標を達成した ア→所定外労働の削減のための措置 イ→年次有給休暇の取得促進のための措置 ウ→短時間正社員制度、在宅勤務、テレワークその他、働き方の見直しに資する多様な労働条件整備のための措置 |
10 | 以下アまたはイのいずれかを満たしている ア→子を出産した女性労働者のうち、子の1歳誕生日まで継続して在職(育児休業等を利用してる者を含む)している者の割合が90%以上である イ→子を出産した女性労働者、および子を出産する予定であったが退職した女性労働者の合計数のうち、子の1歳誕生日まで継続して在職している者(子の1歳誕生日に育児休業等を利用している者を含む)の割合が70%以上である |
11 | 育児休業等をし、または育児を行う女性労働者が就業を継続し、活躍できるような能力向上、またはキャリア形成支援の取り組みにかかる計画を策定し、実施している |
12 | くるみん認定の基準10と同じ |
次に、(3)トライくるみん認定の基準です。
(3)トライくるみん認定 | |
1~4 | くるみん認定の基準1〜4と同じ |
5 | 以下アまたはイのいずれかを満たしている 以下アまたはイのいずれかを満たしている ア→計画期間における、男性労働者の育児休業等取得率が7%以上である イ→計画期間における、男性労働者の育児休業等取得率および企業独自の育児を目的とした休暇制度利用率が合わせて15%以上であり、かつ、育児休業等を取得した者が1人以上いる |
6 | 計画期間における女性労働者の育児休業等取得率が、75%以上である |
7~10 | くるみん認定の基準7〜10と同じ |
最後に、(4)プラス認定の基準です。
(4)プラス認定(プラス認定基準) | |
1 | 以下アおよびイの制度を設けている ア→不妊治療のための休暇制度(不妊治療を含む多様な目的で利用することができる休暇制度や利用目的を限定しない休暇制度を含み、年次有給休暇は含まない) イ→不妊治療のために利用することができる、半日単位・時間単位の年次有給休暇、所定外労働の制限、時差出勤、フレックスタイム制、短時間勤務、テレワークのうちいずれかの制度 |
2 | 不妊治療と仕事の両立に関する方針を示し、講じている措置の内容とともに社内に周知している |
3 | 不妊治療と仕事の両立に関する研修、その他の不妊治療と仕事の両立に関する労働者の理解を促進するための取り組みを実施している |
4 | 不妊治療を受ける労働者からの「不妊治療と仕事の両立に関する相談」に応じる担当者(両立支援担当者)を選任し、社内に周知している |
認定に必要な手続き
申請書に必要書類を添付して、郵送・持参・電子申請のいずれかにより、都道府県労働局雇用環境・均等部(室)に申請します。
えるぼし認定とは
えるぼし認定とは、女性の活躍推進に向けた取り組みが活発であると認可された企業のことです。現在はえるぼし認定には、「えるぼし認定」と「プラチナえるぼし認定」2つのランクが設置されています。
(1)えるぼし認定
一般事業主行動計画の策定・届出を行った企業のうち、女性の活躍推進に関する取り組みの実施状況が優良である等の一定の要件を満たした場合に認定される。さらに3段階に分類できる。
【1段階目】
・えるぼしの管理職比率、労働時間等の5つの基準のうち1つ、あるいは2つの基準を満たし、実績を「女性の活躍推進企業データベース」に毎年公表している
・満たさない基準については、事業主行動計画策定指針に定められた取り組みの中から当該基準に関連するものを実施し、その実施状況について「女性の活躍推進企業データベース」に公表するとともに、2年以上連続して実績が改善している
【2段階目】
・えるぼしの管理職比率、労働時間等の5つの基準のうち3つ、あるいは4つの基準を満たし、実績を「女性の活躍推進企業データベース」に毎年公表している
・満たさない基準については、事業主行動計画策定指針に定められた取り組みの中から当該基準に関連するものを実施し、その実施状況について「女性の活躍推進企業データベース」に公表するとともに、2年以上連続して実績が改善している
【3段階目】
えるぼしの管理職比率、労働時間等の5つの基準すべてを満たし、実績を「女性の活躍推進企業データベース」に毎年公表している
(2)プラチナえるぼし認定
えるぼし認定企業のうち、一般事業主行動計画の目標達成や女性の活躍推進に関する取り組みの実施状況が特に優良である等の一定の要件を満たした場合に認定される。プラチナえるぼし認定企業は、一般事業主行動計画の策定・届出が免除される
・策定した一般事業主行動計画に基づく取り組みを実施し、当該行動計画に定めた目標を達成した
・男女雇用機会均等推進者、職業家庭両立推進者を選任している
・プラチナえるぼしの管理職比率、労働時間等の5つの基準すべてを満たしている
・女性活躍推進法に基づく情報公表項目(社内制度の概要を除く)のうち、8項目以上を「女性の活躍推進企業データベース」で公表している
えるぼし認定の手続き
えるぼし認定は「基準適合一般事業主認定申請書」(様式第1号)を、プラチナえるぼし認定は「基準適合認定一般事業主認定申請書」(様式第2号)を使用します。申請書に必要書類を添付して、郵送・持参・電子申請のいずれかにより、都道府県労働局雇用環境・均等部(室)に申請しましょう。
まとめ
子育て支援や女性の活躍推進は、国を挙げて取り組んでいる重要課題のひとつです。くるみん認定やえるぼし認定の取得に応じた補助金の加点措置は、国が進める「両立支援の取り組み」を前進させられるでしょう。
中小企業としても補助金の獲得確率を高められるため、自社で取り組んでいる施策があれば積極的に活用してみましょう。