少子化が深刻化するなかで、企業はどのようにして従業員の育児休業の促進に取り組むかを考える時代になっています。
育児休業は、従業員が子育てと仕事の両立を図るために必要な時間であり、企業にとっては優秀な人材の確保と定着につながる、重要な制度です。
育休期間は子どもを育むための期間ですが、東京都で「育休中にスキルアップもしたい!」と希望する従業員を支援する企業に対し、受講料等を支援する助成事業が始まるのをご存じでしょうか。その名も「育業中スキルアップ助成金」。育児休業を後押しする取り組みの一つで、企業の人材確保・職場環境整備につながる助成金です。
申請するための要件にはどのようなものがあるのか、助成金額はどのくらいなのか、気になりますね。さっそく詳細を確認しましょう!
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この記事の目次
育業中スキルアップ助成金 助成対象経費
まずは、どのような経費が助成対象となるのかをみていきましょう。
助成対象経費は以下の3つです。
(1)受講料 | 教育機関等が講座の料金表を公表しており、以下のどちらかに該当するもの 〇1講座及び1人あたりの受講料が定められているもの(単講座) 〇 一定期間の受講料が定められており、期間内に複数の講座が受講できるもの(定額制) |
(2)訓練に付随するID登録料 |
教育機関等への受講申込みや受講開始時に受講者のIDを登録するために必要な料金 等 |
(3)訓練に付随する管理料 | 受講状況等を確認するために必要な料金 等 |
【対象外経費】
以下の内容は、助成対象経費に含まれません。
- インターネット回線使用料、通信料
- パソコンやオンライン機器類などの機器、設備の購入費用
- 食事代、交通費及び宿泊費
- 消費税
- 振込手数料、送料 等
助成率・助成限度額
助成率および助成限度額は以下のとおりです。
助成対象事業者の区分 | 助成率 | 1助成対象事業者あたりの上限額 |
中小企業 | 2/3 | 100万円/年度 |
大企業 | 1/2 | 100万円/年度 |
1社あたり1年度 100万円が上限です。
対象となる訓練の要件
この助成を受けるには、訓練に関する3つの要件を全て満たす必要があります。
(1)教育機関等が提供する集合またはeラーニング等を利用して実施するものである。
(2)助成対象事業者が受講者の受講履歴等を確認できる訓練である。
(3)教育機関等の受講案内と受講に係る経費(受講料等)が、ホームページやパンフレット等で一般に公開されている。
(1)について、「eラーニング等」とは、パソコン等の電子機器と情報通信技術を使用して実施される訓練で、テキストや動画等を活用したeラーニング訓練や同時かつ双方向で実施されるオンライン訓練のことを指します。
また、教育機関等とは、eラーニング等により、職業に関する知識・技能の習得と向上を目的とした教育訓練を行う団体及び組織を指し、企業等や学校教育法の大学、専修学校、及び各種学校等のことをいいます。
(2)について、実績報告書の提出時に、受講履歴がわかる書類の提出が必要になります。定額制の講座は毎月の受講履歴が確認できる書類を提出してください。一定程度の受講履歴が確認できない場合は、助成対象外となることもありますのでご注意ください。
育業中スキルアップ助成金 助成対象受講者
どのような訓練の経費が助成対象になるのか理解したところで、助成対象となる受講者をみていきましょう。
助成対象受講者は、以下の要件をすべて満たす者とします。
(1)助成対象事業者が雇用している者
(2)4週間以上の育業を取得し育業中にスキルアップを希望する者(育業取得予定者を含む。)
(3) 常時勤務する事業所の所在地が都内である者
受講者の要件はそれほど多くありませんね。では次に、助成対象事業者、つまりこの助成金を申請できる者とその申請要件を確認しましょう。
育業中スキルアップ助成金 申請者とその要件
【申請できる者】
都内に本社または主たる事業所(支店・営業所等)の登記がある事業主
【主な申請要件】
- 訓練に要する経費を受講者に負担させていない
- 助成を受けようとする訓練について、国または地方公共団体から助成を受けておらず、今後受ける予定もない
- 過去5年間に重大な法令違反等がない
※要件の詳細は令和5年度育業中スキルアップ助成金募集要項でご覧いただけます。
育業中スキルアップ助成金の申請方法
交付申請は、原則として助成対象訓練開始予定日の1か月前までに行う必要があります。申請後の講座の追加や変更は認められませんので、事前によく確認しましょう。
【申請方法】
交付申請書の受付期間内に、申請書類一式を事務局宛てに郵送にて提出します(郵送以外での申請は不可)。申請書類は、東京しごと財団雇用環境整備課ホームページにある、育業中スキルアップ助成金のページからダウンロードできます。
交付申請書受付期間
令和5年5月17日から令和6年2月29日(当日消印有効)まで
助成対象期間
令和5年5月17日から令和7年3月31日まで
育業中スキルアップ助成金の手続きの流れ
最後に、簡単に手続きの流れを確認しましょう。交付申請書の提出から、助成金の振り込みまでは、大きく以下の7つのステップに分けて取り組んでいきます。
Step1:交付申請書の提出
↓
Step2:審査を経て、交付決定通知を受ける
↓
Step3:訓練の実施
↓
Step4:実績報告書の提出
↓
Step5:審査後、助成金の支給額の確定・通知
↓
Step6:助成金額請求書の提出
↓
Step7:助成金の振り込み
まとめ
今回は、従業員の育業中のスキルアップにかかる受講料等を支援する「育業中スキルアップ助成金」についてご紹介しました。
育業とは、東京都で使われている、育児休業の愛称です。育児は「休み」ではなく「大切な仕事」と考えるマインドチェンジのために、育休ではなく育業と呼んでいます。
子育ても会社の仕事もどちらも大事な仕事である、という想いから、育児休業中の従業員は、子育てと仕事の両方に悩みを抱えていることが少なくありません。今回ご紹介したような助成制度を活用することで、企業はより充実した制度を整えることができ、従業員の満足度を高めることも可能になります。
「育業中スキルアップ助成金」の申請は令和5年5月17日から始まっています。育業を後押しして、従業員のワークライフバランスを向上させ、企業の活性化につなげてみませんか?