社員とその家族の生活の質の向上や健康促進のため設置される福利厚生は、企業の生産性を左右する従業員満足度(ES : Employee Satisfaction)に大きく影響します。10月10日から、ES(社員満足度)向上による若手人材確保・定着事業助成金の第3回事前エントリーが始まっています。これは人材確保に課題を抱える都内の中小企業等が、ESの向上を目指して行う取組を支援するものです。
今回はES(社員満足度)向上による若手人材確保・定着事業助成金の内容や申請方法について、お伝えします。
▼▼▼日々配信中!無料メルマガ登録はこちら▼▼▼
メルマガ会員登録する
この記事の目次
福利厚生における企業規模間格差
福利厚生の充実は、従業員の満足度を高めたり離職率を下げたりする効果があると言われます。しかし現状では、福利厚生制度が十分に整っていない企業も多いようです。
2022年3月、独立行政法人労働政策研究・研修機構は、2017年に実施された「企業における福利厚生施策の実態に関する調査」に基づく「わが国の福利厚生の導入と利用の実態とその諸要因、そして有効性の検証」を発表しています。ここでは福利厚生制度の充実に関する業種ごとの違いや業績との関係が指摘されました。福利厚生の導入率が高い業種は「宿泊業、飲食サービス業」「生活関連サービス業、娯楽業」です。これらの業種では深刻な人手不足が問題になっていますが、同調査では従業員が「不足している」と認識している企業ほど、福利厚生制度の廃止・縮小率が低くなっています。同様に、自社の業績が「上向き」と評価する企業も制度の廃止・縮小率が低かったことが報告されました。
また本報告書では「住宅」が日本の福利厚生を世界的に特徴づける制度領域であることにも触れられ、大企業層では法定外福利費としての支出額が最も大きいことが指摘されています。費用的な負担の大きさを要因として、企業の規模間格差が顕著な領域です。
人材不足の解消を目指す企業や業績が好調の企業では福利厚生が充実する傾向にあるいっぽうで、規模の小さな企業では、予算的負担が大きな問題となっていることがうかがえます。
ES(社員満足度)向上による若手人材確保・定着事業助成金とは
ES(社員満足度)向上による若手人材確保・定着事業助成金は、従業員の住宅・食事・健康に関する福利厚生を充実させることで、社員満足度(ES)向上を図る取組を補助する制度です。若手人材の採用・定着を図る都内中小企業等を支援することを目的としています。
まずは、事業内容や対象事業者の要件を見ていきましょう。
支援内容
ES(社員満足度)向上による若手人材確保・定着事業助成金に採択された事業者は、以下の2つの支援を受けることができます。
・ES向上に向けた取組計画の作成支援(専門家派遣)
・ESを高める取組への費用助成
ES向上に向けた取組計画の作成支援(専門家派遣)
福利厚生の充実による若手人材の確保・定着を目指す中小企業等に、1社あたり最大3回、専門家を派遣します。社員満足度向上等に関する知見をもと、企業の取組計画の作成を支援します。
■専門家決定後の流れ
①ヒアリングやアンケート | 専門家派遣第1回の前に、事務局がヒアリングやアンケートを行います |
②専門家派遣(最大3回) | 派遣された専門家と相談のうえ、取組計画を作成してください。専門家派遣の最終回終了後には、取組計画へ専門家の所見記載を受ける必要があります |
③支給申請書類を作成 | 専門家の所見が記載された取組計画と申請書類を、郵送にて提出します |
なお助成対象事業の取組は、派遣された専門家との相談を実施し、財団からの支給決定通知を受けた後に行ってください。派遣された専門家との相談が終了かつ支給決定する前に取組を開始した場合は、助成金の支給対象外です。
ESを高める取組への費用助成
取組計画を作成し、ES向上に向けた取組の経費を最大3年間助成します。対象となる取組は、35歳未満の若手従業員の採用・定着を目的として行う以下のものです。
①住宅の借上げ | 共同住宅の一室等を借り上げ、社宅として提供する |
②食事等の提供 | 従業員のために、継続的かつ定期的に食事等を提供する。 例) 置型の社食の設置や継続的かつ定期的な宅配弁当の利用等 |
③健康増進サービスの提供 | 従業員のために健康増進にかかわる支援を導入し、提供する 例) 職場でのフィットネス講座等 |
①から③の助成対象事業のうち、2つ以上を新たに実施した場合が助成金の支給対象です。
事業の流れ
助成事業の主な流れは、以下の通りです。
①事前エントリー
②支援申し込み
③専門家派遣日程調整&事前準備
④専門家と相談
⑤助成事業の取組
⑥実績報告
➆口座振替依頼書郵送
事業の流れは、以下の図も参考にしてください。
出典:令和5年度ES(社員満足度)向上による若手人材確保・定着事業 助成金募集要項(郵送の手引き)
対象事業者
対象事業者の要件は、以下の①~⑩です。
①都内に本社・事業所がある中小企業等 |
②都内に勤務する、従業員かつ雇用保険の被保険者である者を1人以上、6か月以上継続して雇用している |
③従業員の総数に占める若手従業員の割合が30%以下である |
④過去3年間の若手従業員の合計採用数が、従業員の総数の10%以下である |
⑤過去1年以内に求人活動を行っている |
⑥労働関係法令について、次のすべてを満たしている ・労働者に支払われる賃金が、就労する地域の最低賃金額を上回っている ・固定残業代等の時間当たり金額が時間外労働の割増賃金に違反していない ・固定残業時間を超えて残業を行った場合は、その超過分について、通常の時間外労働と同様に割増賃金が追加で支給されている ・法定労働時間を超えて労働者を勤務させる場合は36 協定を締結し、全労働者に対して協定で定める上限時間を超える時間外労働をさせていない ・年次有給休暇について年5日を取得させる義務を果たしている ・その他賃金や労働時間等に関する労働関係法令を遵守している ・セクシュアルハラスメント等を防止するための措置を取っている |
➆都税の未納付がない |
⑧過去5年間に重大な法令違反等がない |
⑨風俗営業、暴力団関係者が関係する企業等でない |
➉同一の取組内容で、過去に助成金等を受給していない |
その他、財団理事長が適当でないと判断した場合は本助成金の対象外となります。
助成対象期間
助成対象期間は、支給決定の日から起算して1年間です。 ただし、最初の支給申請時に記載する「助成事業の実施予定期間」が1年を超える場合については、最大3年間まで支給申請を行うことが可能です。
助成率・上限額
助成率と取組ごとの上限額は、以下のとおりです。
■助成率
1/2
■限度額
①住宅の借上げ
200万円
②食事等の提供
50万円
③健康増進サービスの提供
50万円
ES(社員満足度)向上による若手人材確保・定着事業助成金の申請方法
申請には、まず事前エントリーが必要です。(第3回目のエントリーはすでに応募が始まっています。)申請の流れや締め切りを見ていきましょう。
申請の流れ
申請の流れは、以下のとおりです。
①事前エントリー |
②支援申込 ・申請要件等確認書類の提出 |
③専門家派遣日程調整・事前準備 |
④専門家派遣(最大3回) ・取組計画作成 |
⑤支給申請書類一式(取組計画書等)提出 |
⑥助成対象事業(取組計画)の実施 |
⑦実績報告書類一式提出 |
⑧請求書類一式を提出 |
なお助成対象事業の実施予定期間が1年を超える場合は、毎年⑤~⑧を行なってください。
公募期間
各エントリー回では、20社程度が採択される予定です。エントリー期間や支援申込の締切、専門家の決定時期は以下のとおりです。
第1回
■事前エントリー受付期間
令和5年5月10日(水)~令和5年6月16日(金)午後5時
■支援申込締切
令和5年7月14 日(金)
■派遣される専門家の決定時期
令和5年8月中旬
第2回
■事前エントリー受付期間
令和5年8月1日(火)~令和5年9月11日(月)午後5時
■支援申込締切
令和5年10月6日(金)
■派遣される専門家の決定時期
令和5年11月初旬
第3回
■事前エントリー受付期間
令和5年10月10日(火)~令和5年11月15日(水)午後5時
■支援申込締切
令和5年12月8日(金)
■派遣される専門家の決定時期
令和6年1月初旬
必要書類
事前エントリーに当選した場合、支援申込に進みます。エントリーは公式ホームページのフォームから、申請申込は郵送で行います。必要な書類は、以下の①~⑬です。
①支援申込書 |
②事業所一覧 |
③誓約書 |
④同意書 |
⑤従業員年代別構成比等一覧 |
⑥商業・法人登記簿謄本 ■個人事業主の場合 ・個人事業の開業・廃業等届出書 ・住民票記載事項証明書 |
➆水道光熱費の請求書または領収書、賃貸借契約書等(該当する企業のみ) ■登記上の本店所在地と、本社機能を持つ事業所地とが異なる場合 本社機能を持つ事業所地の水道光熱費の請求書または領収書、賃貸借契約書等 ■登記上の本店所在地が都外の場合 都内事業所の水道光熱費の請求書または領収書、賃貸借契約書等 |
⑧会社案内または会社概要 |
⑨雇用保険被保険者資格取得等確認通知書(事業主通知用) |
➉助成対象事業者が求人活動を行っていたことがわかるもの |
⑪法人都民税及び法人事業税の納税証明書 ■法人の場合 法人都民税・法人事業税の納税証明書 ■個人事業主の場合 個人都民税・個人事業税の納税証明書 |
⑫事前エントリー時の受付完了メールの写し |
⑬その他 |
まとめ
経済活動が回復しつつあるいま、多くの企業にとって、優秀な人材の獲得は急務となりました。特に若い人材の定着は企業にとって有益であるだけでなく、将来的に安定した社会を築くためにも重要なことです。
いま、この瞬間のチャンスをつかみ、他異世代が安心して暮らせる豊かな社会の基盤を固めるためにもES(社員満足度)向上による若手人材確保・定着事業助成金を活用して企業間の環境的格差を縮めていきましょう。