近年、働き方の多様化が進み、育児や介護をしながら仕事を続けたいと考える人が増えています。従業員が安心して働ける職場は、満足度の向上や生産性アップにつながるだけでなく、優秀な人材の確保や定着率の向上にも直結します。厚生労働省の令和6年度雇用均等基本調査によれば、男性の育児休業取得率は40.5%と過去最高を記録し、政府は2030年度に85%を目標に掲げるなど、両立支援は「福利厚生」から「経営戦略」の領域に移りつつあります。
こうした流れを財政面から後押しするのが、厚生労働省の「両立支援等助成金」です。育児・介護・不妊治療・女性の健康課題までを幅広くカバーする6コース構成で、令和8年度(2026年度)は4つのコースで対象拡大・支給額引き上げ・新規助成の新設が行われ、より多くの企業が活用しやすくなりました。
本記事では、令和8年度(2026年度)の最新支給要領に沿って、両立支援等助成金6コースの支給額・要件・変更点・申請の注意点までを、企業担当者向けにわかりやすく整理します。
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・出生時両立支援コース(子育てパパ支援助成金)
・介護離職防止支援コース
・育児休業等支援コース
・育休中等業務代替支援コース
・柔軟な働き方選択制度等支援コース
・不妊治療及び女性の健康課題対応両立支援コース
【関連記事】産後パパ育休(出生時育児休業)とは?実質手取り10割の給付金も解説
この記事の目次
令和8年度(2026年度)の主な変更点
令和8年度(2026年4月〜)は、両立支援等助成金の4つのコースで拡充が行われました。申請を検討している企業担当者は、最新の支給要領(令和8年4月1日時点)と手引きを必ず確認しましょう。
令和8年度の4つの拡充ポイント
| コース | 変更点 |
|---|---|
| ①出生時両立支援コース | 「男性労働者の育児休業取得率の上昇等」(旧・第2種)のみ対象を「中小企業」から常時雇用労働者300人以下の企業全体に拡大(支給額60万円は変更なし)/男性育休取得率の算定に事実婚状態の男性労働者も対象/「男性労働者の育児休業取得」(旧・第1種)は引き続き中小企業のみ対象 |
| ②育休中等業務代替支援コース | 新規雇用(育児休業)の最大支給額を引き上げ(旧:6か月以上67.5万円→新:1年以上で最大81万円、プラチナくるみん認定は最大99万円) |
| ③介護離職防止支援コース | 有給の介護休暇制度導入への助成が新設(30万円〜50万円)/介護両立支援制度から「所定外労働の制限制度」「深夜業の制限制度」を削除 |
| ④柔軟な働き方選択制度等支援コース | 障害のある子・医療的ケアが必要な子を養育する労働者を対象に、制度利用期間を18歳の年度末まで延長した場合、20万円を加算(障害児等要配慮支援加算)/子の看護等休暇制度の有給化について対象労働者の実利用を支給要件に追加 |
コース名称の変更にも注意
令和8年度より、出生時両立支援コースの種別名称が変更されています。旧「第Ⅰ種」は「男性労働者の育児休業取得」、旧「第Ⅱ種」は「男性労働者の育児休業取得率の上昇等」という名称になりました。本記事では新名称に旧称を併記して解説します。厚生労働省の資料や社内文書を更新する際にご注意ください。
両立支援等助成金とは?6つのコースで最大数百万円
両立支援等助成金は、仕事と育児・介護等の両立を支援する制度を整備した中小企業事業主に対して、厚生労働省が支給する助成金です。育児・介護・不妊治療・女性の健康課題まで幅広くカバーする6コースで構成されており、複数コースを組み合わせて活用すれば事業主あたり数百万円規模の受給も可能です。
| コース名 | 主な支給対象 | 1事業主あたり支給額の目安 |
|---|---|---|
| 出生時両立支援コース(子育てパパ支援助成金) | 男性の育休取得・育休取得率上昇 | 最大60万円+加算 |
| 育児休業等支援コース | 育休復帰支援プランに基づく育休取得・職場復帰 | 最大62万円(1人あたり) |
| 育休中等業務代替支援コース | 育休・時短勤務中の業務代替体制整備 | 最大140万円/99万円 |
| 柔軟な働き方選択制度等支援コース | 柔軟な働き方制度の導入・利用 | 最大25万円+加算 |
| 介護離職防止支援コース | 介護休業・介護両立支援制度の整備・利用 | 最大80万円+加算 |
| 不妊治療及び女性の健康課題対応両立支援コース | 不妊治療・月経・更年期の両立支援制度 | 最大90万円 |
対象は原則として中小企業事業主に限定されます。ただし、令和8年度から出生時両立支援コースの「男性労働者の育児休業取得率の上昇等」(旧・第2種)のみ、対象が常時雇用労働者300人以下の企業全体に拡大されました。
出生時両立支援コース(子育てパパ支援助成金)
出生時両立支援コースは、男性労働者の育児休業取得を促進する取り組みを行った企業に支給される助成金です。「男性労働者の育児休業取得」(旧・第Ⅰ種)と「男性労働者の育児休業取得率の上昇等」(旧・第Ⅱ種)の2区分に分かれています。
| 区分 | 要件 | 支給額 | 対象事業主 |
|---|---|---|---|
| ①男性労働者の育児休業取得(旧・第1種) | 子の出生後8週間以内に育休開始 | 1人目20万円/2〜3人目各10万円 | 中小企業事業主 |
| ②男性労働者の育児休業取得率の上昇等(旧・第2種) | 育休取得率が30ポイント以上上昇&50%達成 等 | 60万円(プラチナくるみん認定は+15万円) | 常時雇用労働者300人以下の企業(令和8年度〜) |
※②は1事業主につき1回限りの支給。②申請後の①申請、および同一年度内の①②両方の申請はできません。①の対象となった同一の育児休業取得者の同一の育児休業について、育児休業等支援コース(育休取得時等)との併給もできません。
男性労働者の育児休業取得(旧・第1種)の詳細
男性従業員が育児休業を取得しやすい雇用環境整備や業務体制整備を行い、子の出生後8週間以内に育児休業を取得した男性従業員が生じた中小企業事業主に支給されます。支給額は1人目20万円、2〜3人目各10万円で、1事業主につき3人目まで対象です。
| 取得人数 | 必要な育休取得日数 |
|---|---|
| 1人目 | 5日以上 |
| 2人目 | 10日以上 |
| 3人目 | 14日以上 |
主な受給要件は、①育児・介護休業法に定める雇用環境整備の措置を複数実施、②育児休業取得者の業務代替労働者に関する業務見直しの規定策定と業務体制整備の実施、③男性労働者が子の出生後8週間以内に一定日数以上の育休を取得、の3点です。1人目の育休取得前に雇用環境整備措置を4つ以上実施している場合は10万円加算、「両立支援のひろば」で情報公表した場合は2万円加算があります。
男性労働者の育児休業取得率の上昇等(旧・第2種)の詳細
令和8年度から対象が「中小企業」から「常時雇用労働者300人以下の企業全体」に拡大されました。業種を問わず労働者数が300人以下であれば申請できます。支給額は60万円で、プラチナくるみん認定事業主は15万円が加算されます。
主な受給要件は、次のいずれかを満たすことです。
B. 申請年度の前々事業年度で子が出生した男性労働者が5人未満、かつ申請前事業年度と前々事業年度の男性育休取得率が連続70%以上であること
令和8年度からは、男性育休取得率の算定において事実婚状態の男性労働者の育児休業も対象となりました。
詳しくはこちら:出生時両立支援コース(子育てパパ支援助成金)とは?
育児休業等支援コース
育児休業等支援コースは、「育休復帰支援プラン」を作成し、プランに沿って従業員の育児休業取得・職場復帰を支援した中小企業事業主に支給される助成金です。1事業主あたり有期雇用労働者1名・無期雇用労働者1名の計2名まで対象になります。
| 区分 | 支給額 | 要件 |
|---|---|---|
| 育休取得時 | 30万円 | 育休復帰支援プラン策定・面談・業務引継ぎ実施/連続3か月以上の育休取得 |
| 職場復帰時 | 30万円 | 育休取得時と同一の対象労働者について支給/原職等復帰/復帰後6か月以上継続雇用 |
| 情報公表加算 | 2万円 | 「両立支援のひろば」で育児休業取得状況を公表(1事業主1回限り) |
対象は中小企業事業主に限定されており、令和8年度も要件・支給額に変更はありません。1人あたり最大62万円、事業主あたり最大126万円(2名分+情報公表加算)を受給できます。
育休取得時・職場復帰時の主な要件
育休取得時は「育児休業の取得・職場復帰についてプラン作成による支援方針の社内周知」「労働者との面談実施と面談シート記録」「育休復帰支援プランの作成」「対象労働者が連続3か月以上の育児休業を取得」が必要です。
職場復帰時は「育休取得時と同一の育児休業取得者のみ対象」「復帰までに職務や業務の情報・資料提供の実施」「育児休業終了前の面談実施と記録」「原職等復帰&申請日まで6か月以上継続雇用」が求められます。
詳しくはこちら:両立支援等助成金「育児休業等支援コース」とは?
育休中等業務代替支援コース【令和8年度で最大額引き上げ】
育休中等業務代替支援コースは、育児休業や育児短時間勤務の期間中に、業務代替者への手当支給や代替要員の新規雇用を行った中小企業事業主に支給される助成金です。令和8年度は新規雇用(育児休業)の最大支給額が大きく引き上げられました。
令和8年度の変更点:新規雇用の最大額81万円/99万円
令和8年度の目玉は、新規雇用(育児休業)の代替期間区分に「1年以上」が新設された点です。
| 代替期間 | 改正前 | 令和8年度 |
|---|---|---|
| 7日以上14日未満 | 9万円 | 9万円 |
| 14日以上1か月未満 | 13.5万円 | 13.5万円 |
| 1か月以上3か月未満 | 27万円 | 27万円 |
| 3か月以上6か月未満 | 45万円 | 45万円 |
| 6か月以上(旧最大) | 67.5万円 | 67.5万円(1年未満) |
| 1年以上(新設) | ー | 最大81万円(プラチナくるみん認定は最大99万円) |
コース全体の支給額
| 区分 | 支給額(令和8年度) |
|---|---|
| ①手当支給等(育児休業) | A(業務体制整備経費6万円、外部委託の場合20万円)とB(手当支給総額の3/4、上限月10万円×12か月)の合計で最大140万円 |
| ②手当支給等(短時間勤務) | A(業務体制整備経費3万円、外部委託の場合20万円)とB(手当支給総額の3/4、上限月3万円×子が3歳になるまで)の合計で最大128万円 |
| ③新規雇用(育児休業) | 代替期間に応じた額を支給。1年以上の代替期間で最大81万円(プラチナくるみん認定は最大99万円) |
| 有期雇用労働者加算 | 10万円加算(対象労働者が有期雇用労働者かつ業務代替期間1か月以上の場合) |
※①〜③あわせて1年度10人まで、初回から5年間支給。プラチナくるみん認定事業主は割増・加算あり。
詳しくはこちら:両立支援等助成金「育休中等業務代替支援コース」とは
柔軟な働き方選択制度等支援コース【令和8年度で障害児等加算新設】
柔軟な働き方選択制度等支援コースは、育児期の柔軟な働き方に関する制度を複数導入し、「育児に係る柔軟な働き方支援プラン」に基づいて制度利用者を支援した中小企業事業主に支給される助成金です。令和8年度は障害児等要配慮支援加算が新設されました。
対象となる柔軟な働き方制度
対象となるのは、次の5つの制度カテゴリです。
| 制度名称 | 導入内容 | 利用実績の基準 |
|---|---|---|
| フレックスタイム制/時差出勤制度 | 始業・終業時刻や労働時間を労働者が決定/1時間以上の繰り上げ・繰り下げ | 合計20日以上利用 |
| 育児のためのテレワーク等 | 勤務日の半数以上利用可能・時間単位利用可能 | 合計20日以上利用 |
| 短時間勤務制度 | 1日1時間以上の所定労働時間短縮/1日6時間以外の短縮時間も利用可能 | 合計20日以上利用 |
| 保育サービスの手配・費用補助制度 | 一時的な保育サービスの手配と費用補助 | 労働者負担額の5割以上かつ3万円以上、または10万円以上の補助 |
| 子の養育を容易にするための休暇制度/法を上回る子の看護等休暇制度 | 有給、年10日以上取得可能、時間単位取得可能 | 合計20時間以上取得 |
支給額と障害児等要配慮支援加算(令和8年度新設)
| 区分 | 支給額 |
|---|---|
| 制度を2つ導入し、利用者が生じた場合 | 20万円 |
| 制度を3つ以上導入し、利用者が生じた場合 | 25万円 |
| 情報公表加算 | 2万円(「両立支援のひろば」での公表時) |
| 障害児等要配慮支援加算(令和8年度新設) | 20万円(障害のある子・医療的ケアが必要な子を養育する労働者を対象に、制度利用期間を18歳の年度末まで延長した場合) |
※1事業主1年度5人までが対象です。
詳細はこちら:両立支援等助成金「柔軟な働き方選択制度等支援コース」とは?
介護離職防止支援コース【令和8年度で有給介護休暇助成が新設】
介護離職防止支援コースは、「介護支援プラン」に基づき労働者の介護休業取得・職場復帰を支援した企業や、仕事と介護の両立に資する制度を導入・利用させた中小企業事業主に支給される助成金です。令和8年度は有給介護休暇制度導入への助成が新設されました。
コース全体の支給額
| 区分 | 要件 | 支給額 |
|---|---|---|
| 介護休業 | 対象労働者が介護休業を取得&職場復帰 | 40万円 |
| 介護両立支援制度A | 制度を1つ導入&対象労働者が当該制度を利用 | 20万円 |
| 介護両立支援制度B | 制度を2つ以上導入&対象労働者が1つ以上利用 | 25万円 |
| 有給介護休暇制度導入助成(令和8年度新設) | 有給の介護休暇制度を導入し、対象労働者が実際に利用 | 30万円(年10日以上取得可能な制度は50万円) |
| 業務代替支援(新規雇用) | 介護休業取得者の代替要員を新規雇用または派遣で受入 | 20万円 |
| 業務代替支援(手当支給・介護休業) | 介護休業取得者の業務代替者に手当を支給 | 5万円 |
| 業務代替支援(手当支給・短時間勤務) | 介護短時間勤務者の業務代替者に手当を支給 | 3万円 |
それぞれ1事業主あたり5人まで支給されます。
介護両立支援制度のメニューから2制度が削除
令和8年度から、介護両立支援制度のメニューから次の2つが削除されました。
・深夜業の制限制度
これらは既に育児・介護休業法で企業に義務付けられている措置であり、助成金の対象から除外されました。介護両立支援制度として対象となるのは、介護在宅勤務・フレックスタイム制・時差出勤制度・短時間勤務制度・法を上回る介護休暇制度・介護サービス費用補助制度などです。
詳しくはこちら:両立支援等助成金「介護離職防止支援コース」とは
不妊治療及び女性の健康課題対応両立支援コース
不妊治療及び女性の健康課題対応両立支援コースは、不妊治療・月経・更年期という3つの女性の健康課題に対応する両立支援制度を整備し、労働者に利用させた中小企業事業主に支給される助成金です。1事業主あたり最大90万円を受給できます。
| 区分 | 要件 | 支給額 |
|---|---|---|
| 不妊治療 | 不妊治療のための両立支援制度を合計5日(回)利用 | 30万円 |
| 女性の健康課題対応(月経) | 月経に起因する症状への対応制度を合計5日(回)利用 | 30万円 |
| 女性の健康課題対応(更年期) | 更年期における心身の不調への対応制度を合計5日(回)利用 | 30万円 |
各区分とも1事業主あたり1回限りの支給で、令和7年度から制度内容に変更はありません。令和6年度までに旧「不妊治療両立支援コース」を受給した事業主は、不妊治療区分の再受給はできませんが、月経・更年期は新たに要件を満たせば対象になります。
詳しくはこちら:不妊治療及び女性の健康課題対応両立支援コースとは?
2025年10月から始まった「柔軟な働き方措置」の義務化
2025年10月1日より、3歳から小学校就学前の子を養育する労働者に対して、事業主が柔軟な働き方を選択できる制度を整備することが義務化されました。企業は以下の5つの措置から2つ以上を導入し、労働者はその中から1つを選んで利用できる仕組みです。
| 選択肢 | 概要 |
|---|---|
| ①始業時刻等の変更(時差出勤等) | フレックスタイム制や時差出勤など、始業・終業時刻の変更を可能にする措置 |
| ②テレワーク等 | 月10日以上のテレワークを可能にする措置(時間単位の取得可) |
| ③保育施設の設置運営等 | 事業所内保育施設の設置、ベビーシッター費用補助等 |
| ④養育両立支援休暇 | 年10日以上の休暇を付与(原則時間単位で取得可能) |
| ⑤短時間勤務制度 | 1日6時間を原則とする短時間勤務制度の導入 |
対象となる従業員には「制度の内容」「申出先」「残業免除や時間外労働・深夜業の制限制度」について、子が3歳になる前の1年間に個別の周知と意向確認を行うことも義務化されました。この改正により、フルタイム勤務を維持しながらも家庭の状況に応じて柔軟に働ける環境整備が、すべての企業に求められることになります。
出典:育児・介護休業法(令和7年10月施行部分)及び両立支援等助成金(令和7年10月施行柔軟な働き方選択制度等支援コース)等のご案内
2026年10月からの国民年金育児期間免除もチェック
企業の人事担当者が押さえておきたい関連改正として、2026年10月から始まる国民年金第1号被保険者(自営業・フリーランス等)の育児期間免除制度があります。会社員の育休中の社会保険料免除に相当する仕組みで、雇用形態を問わず子育て世帯を経済的に支える枠組みが完成します。
副業で自営業を行っている社員や、退職後に自営業に転じる社員に対して案内できるよう、概要を押さえておきましょう。
両立支援等助成金を申請するときの5つの注意点
両立支援等助成金は、要件を満たしていても取り組み前の準備不足や労務管理の不備で対象外となるケースが少なくありません。申請前に「制度整備→労働者への周知→取り組み実施→書類提出」の順序を守ることが受給の鍵です。
①原則として中小企業事業主のみが対象
両立支援等助成金は、原則として中小企業事業主のみが対象です。ただし、令和8年度から出生時両立支援コースの「男性労働者の育児休業取得率の上昇等」(旧・第Ⅱ種)のみ、常時雇用労働者300人以下の企業全体に対象が拡大されました。中小企業の範囲は業種ごとに定められています。
| 業種 | 資本金または出資金 | 常時雇用する労働者数 |
|---|---|---|
| 小売業・飲食業 | 5,000万円以下 | 50人以下 |
| サービス業 | 5,000万円以下 | 100人以下 |
| 卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
| その他の業種 | 3億円以下 | 300人以下 |
いずれか一方を満たしていれば「中小企業事業主」に該当します。
②取り組み前の制度・体制の整備が必要
助成金の支給要件を満たすには、取り組みを実施する前に社内制度を整えることが必須です。就業規則への規定なしでは、法定を上回る対応をしていても助成対象外となります。事前準備の代表例は次のとおりです。
| コース | 必要な事前準備 |
|---|---|
| 出生時両立支援コース | 育児・介護休業法に定める雇用環境整備/業務見直しに係る規定策定/業務体制の整備 |
| 育児休業等支援コース | 育児休業取得・職場復帰についてのプラン作成方針の社内周知/育休復帰支援プランの策定 |
| 育休中等業務代替支援コース | 手当制度等を就業規則等に規定/代替業務の見直し・効率化の実施 |
| 柔軟な働き方選択制度等支援コース | 柔軟な働き方選択制度等を2つ以上導入/プラン作成による支援方針の社内周知 |
| 介護離職防止支援コース | 介護休業の取得・職場復帰のプラン作成・面談実施 |
| 不妊治療及び女性の健康課題対応両立支援コース | 不妊治療・月経・更年期休暇制度・両立支援制度を就業規則等に規定 |
③支給対象外となる事業主の条件
要件を満たしていても、以下に該当する事業主は雇用関係の助成金を受給できません。
・支給申請日が属する年度の前年度より前のいずれかの保険年度の労働保険料を納付していない事業主
・支給申請日の前日から起算して1年前の日から支給申請日の前日までの期間に労働関係法令に違反していた事業主
・性風俗関連営業、接待を伴う飲食等営業を行う事業主
・事業主または役員が暴力団と関わりがある場合
・支給申請日または支給決定日時点で倒産している事業主
・都道府県労働局が行う事業主名等の公表について、あらかじめ同意していない事業主
④従業員の適切な労務管理が必要
助成金の支給要件として労務管理の適正性が確認されるため、就業規則・労働者名簿・賃金台帳・出勤簿などの書類提出が求められます。労務管理に不備があると助成金を受け取れないため、日頃から正確な記録を保ちましょう。労働基準法や育児・介護休業法などの遵守も欠かせません。
⑤受給までに時間がかかる(2〜3か月程度)
助成金の申請後、振込までには一般的に2〜3か月程度かかります。助成金の種類や労働局の処理状況によってはさらに長くなるケースもあるため、資金計画には十分な余裕を持って対応しましょう。
申請方法と各コースの申請期限
両立支援等助成金は、令和5年6月26日から電子申請の対象となっています。厚生労働省の「雇用関係助成金ポータル」を通じて電子申請すれば、労働局への持参・郵送の手間を省けます。書面申請の場合は、事業主の本社等の所在地を管轄する労働局雇用環境・均等部(室)に、簡易書留など配達記録が残る方法で送付してください。
各コースの申請期限一覧
| コース | 申請期限 |
|---|---|
| 出生時両立支援コース(旧・第1種) | 育児休業の終了日の翌日から起算して2か月以内 |
| 出生時両立支援コース(旧・第2種) | 育児休業取得率が上昇等した事業年度の翌事業年度の開始日から起算して6か月以内 |
| 育児休業等支援コース | 育休取得時:産後休業または育児休業の開始日から3か月経過日の翌日〜2か月以内/職場復帰時:育児休業終了日の翌日から6か月経過日の翌日〜2か月以内 |
| 育休中等業務代替支援コース | 育児休業期間により異なる。1か月未満:育児休業終了日の翌日から2か月以内/1か月以上:育児休業終了日の翌日から3か月経過日の翌日〜2か月以内 |
| 柔軟な働き方選択制度等支援コース | 6か月間の制度利用期間の翌日から2か月以内 |
| 介護離職防止支援コース | 対象となる介護休業取得日数が合計5日を経過する日の翌日から2か月以内 |
| 不妊治療及び女性の健康課題対応両立支援コース | 対象労働者の両立支援制度の利用期間が合計5日(回)を経過する日の翌日から2か月以内 |
共通で必要となる主な書類
各コース共通で提出が求められる主な書類は次のとおりです。個別コースごとの詳細書類は、厚生労働省の支給申請の手引き(2026(令和8)年度版)で確認してください。
・支給要件確認申立書
・労働協約・就業規則・労使協定
・労働者名簿・出勤簿・賃金台帳
・面談シート・プラン等(該当コースの場合)
・雇用契約書・労働条件通知書
・次世代法に基づく一般事業主行動計画策定届
・支払方法・受取人住所届・支払口座確認書類
両立支援等助成金を活用するメリットと支援制度
両立支援等助成金を活用することで、企業には制度整備コストの軽減・人材の確保と定着・法改正への対応・企業ブランディングという4つのメリットがあります。育児や介護、不妊治療といった私生活の変化にも対応して、長期間にわたり安心して働ける環境を提供することは、才能ある人材の確保と雇用の安定、企業経営の安定にもつながります。
「仕事と家庭の両立支援プランナー」の無料訪問支援
厚生労働省では、「仕事と家庭の両立支援プランナー」が中小企業を訪問し、育休復帰支援プランや介護支援プランの作成を無料で支援する制度も整備しています。令和8年度はプランナー人数が前年度の100人から105人に増員される予定です。制度活用に不安がある企業担当者は、こうした無料支援制度の活用も検討するとよいでしょう。
両立支援等助成金に関するよくある質問
令和8年度(2026年度)からの主な変更点は何ですか?
令和8年度は4つのコースで拡充が行われました。①出生時両立支援コースの「男性労働者の育児休業取得率の上昇等」(旧・第2種)のみ対象が「中小企業」から「常時雇用労働者300人以下の企業全体」に拡大(支給額60万円は変わらず)、②育休中等業務代替支援コースの新規雇用で1年以上の代替期間に最大81万円(プラチナくるみん認定は99万円)を新設、③介護離職防止支援コースに有給介護休暇制度導入への助成が新設(30万円〜50万円)、④柔軟な働き方選択制度等支援コースに障害のある子や医療的ケアが必要な子を持つ労働者向けの加算(20万円)が追加されました。あわせて、出生時両立支援コースの種別名称も「第Ⅰ種」から「男性労働者の育児休業取得」、「第Ⅱ種」から「男性労働者の育児休業取得率の上昇等」に変更されています。
出生時両立支援コースは300人以下の企業ならどの種別でも申請できますか?
いいえ。令和8年度に常時雇用労働者300人以下の企業全体へ拡大されたのは「男性労働者の育児休業取得率の上昇等」(旧・第2種)のみです。「男性労働者の育児休業取得」(旧・第1種)は引き続き中小企業事業主が対象で、中小企業の範囲(業種ごとの資本金・従業員数の基準)を満たす必要があります。自社がどちらの種別で申請できるかは、企業規模と取り組み内容によって異なるため、申請前に確認しておきましょう。
両立支援等助成金は大企業でも申請できますか?
原則として大企業は対象外です。両立支援等助成金の6コースは、いずれも中小企業事業主に対象が限定されています。ただし、令和8年度から出生時両立支援コースの「男性労働者の育児休業取得率の上昇等」(旧・第2種)のみ、対象が「常時雇用労働者300人以下の企業全体」に拡大されたため、業種を問わず労働者数300人以下であれば申請できます。中小企業の範囲は業種ごとに資本金または常時雇用労働者数で定められており、いずれか一方を満たせば該当します。
個人事業主も両立支援等助成金を申請できますか?
申請できます。個人事業主も、要件を満たしていれば助成金の対象となります。この場合、事業所単位ではなく個人単位で支給されます。ただし、雇用保険の被保険者を雇用していることや、労働保険料の納付、労働関係法令の遵守などの基本要件は満たす必要があります。
法律より手厚い対応をしていても、就業規則に書かれていなければ対象になりませんか?
対象になりません。本制度は「仕事と育児・介護等を両立しやすい環境整備のための助成金」という趣旨のため、就業規則等に規定化されているものが対象となります。実態として法定を上回る対応をしていても、就業規則に反映されていない場合は助成対象外です。制度取り組み前に、必ず就業規則の見直しと労働者への周知を行いましょう。
電子申請はできますか?受給まではどれくらいかかりますか?
電子申請できます。令和5年6月26日から両立支援等助成金は電子申請の対象となっており、厚生労働省の「雇用関係助成金ポータル」を通じて申請可能です。労働局への持参・郵送の手間を省けるほか、書類の紛失リスクも減らせます。申請後、振込までには一般的に2〜3か月程度かかりますが、書類の不備や労働局の審査状況によってはさらに長くなるケースもあります。資金計画には十分な余裕を持って対応してください。
育児介護休業法の2025年改正と両立支援等助成金は何が違いますか?
育児介護休業法の2025年改正は「企業に義務を課す法律」、両立支援等助成金は「取り組んだ企業に支給されるお金」という違いがあります。2025年4月・10月に施行された育児介護休業法の改正では、子の看護等休暇の拡充、柔軟な働き方措置の義務化(5選択肢から2つ以上導入)、育児のためのテレワーク努力義務化などが定められました。両立支援等助成金は、これらの法改正への対応や、法定を上回る取り組みを行った中小企業への財政支援として機能します。法改正対応と助成金申請は並行して進めるのが効率的です。
情報公表加算はいくら?どんな条件で受給できますか?
情報公表加算は1事業主あたり2万円が支給される加算区分で、事業主あたり1回限りの支給です。厚生労働省が運営する「両立支援のひろば」の「一般事業主行動計画公表サイト」で、①雇用する男性労働者の育児休業等の取得割合、②雇用する女性労働者の育児休業の取得割合、③雇用する労働者(男女別)の育児休業の平均取得日数、の3項目を公表することが条件です。自社サイトなど「両立支援のひろば」以外の場での公表は対象外です。出生時両立支援コース・育児休業等支援コース・育休中等業務代替支援コース・柔軟な働き方選択制度等支援コースなどで加算対象となります。
くるみん・プラチナくるみん認定は必須ですか?
必須ではありません。両立支援等助成金の受給要件にくるみん・プラチナくるみん認定は含まれていません。ただし、プラチナくるみん認定事業主は、出生時両立支援コース(旧・第2種)で15万円の加算、育休中等業務代替支援コースの新規雇用(育児休業)で最大額81万円が99万円まで割増されるなど、複数コースで有利な扱いを受けられます。認定取得を助成金の受給と組み合わせれば、財政的なメリットに加えて採用ブランディング効果も期待できます。
「仕事と家庭の両立支援プランナー」の訪問支援は無料で使えますか?
無料で利用できます。厚生労働省が設けている中小企業向けの無料支援制度で、社会保険労務士等の資格を持つ「仕事と家庭の両立支援プランナー」が企業を訪問し、育休復帰支援プランや介護支援プランの作成を支援してくれます。令和8年度はプランナー人数が前年度の100人から105人に増員される予定です。両立支援等助成金の受給に必要な各種プランの策定に不安がある企業は、まずこの無料訪問支援の活用を検討するとよいでしょう。都道府県労働局雇用環境・均等部(室)を通じて申し込みが可能です。
まとめ
両立支援等助成金は、育児・介護・不妊治療・女性の健康課題まで幅広くカバーする6コース構成の助成金で、中小企業の両立支援体制整備を財政面で強力に後押しします。令和8年度は4つのコースで拡充が行われ、出生時両立支援コースの対象拡大、育休中等業務代替支援コースの最大額引き上げ、介護離職防止支援コースへの有給介護休暇助成新設、柔軟な働き方選択制度等支援コースへの障害児等加算追加により、より活用しやすい制度となりました。
助成金の受給には社内制度の整備・就業規則への規定・労働者への周知など事前準備が欠かせません。あわせて2025年4月・10月に施行された育児・介護休業法改正への対応や、2026年10月開始予定の国民年金育児期間免除にも視野を広げ、時代に合った職場環境づくりを進めていきましょう。厚生労働省の「仕事と家庭の両立支援プランナー」など無料の支援制度も活用しながら、着実に対応を進めていくのが成功の鍵です。
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