「親の介護が始まって、今の働き方を続けられそうにありません」。長く働いてきた社員からそう切り出されたとき、会社として示せる選択肢はあるでしょうか。
介護や看護を理由に仕事を辞める人は、年間約10万6千人にのぼります。人手の限られた中小企業では、1人の離職がそのまま現場の負担と採用コストに跳ね返ります。
こうした介護離職を防ぐ取り組みに使える助成金が、厚生労働省の「両立支援等助成金 介護離職防止支援コース」です。従業員が介護休業を取得して職場に復帰すれば40万〜60万円、短時間勤務や在宅勤務などの利用で20万〜40万円が支給され、介護休業の場合は加算を合わせて最大80万円を受け取れます。
2026年度(令和8年度)は、介護休暇を有給にした企業に30万〜50万円を支給する「介護休暇制度有給化支援」が新設されました。有期雇用の従業員が対象になった場合の10万円加算も新たに設けられています。
本記事では、4つの区分と2つの加算それぞれの助成額・支給要件・申請期限を、人事担当者が申請準備にそのまま使える形で解説します。
▼▼▼日々配信中!無料メルマガ登録はこちら▼▼▼
メルマガ会員登録する
・出生時両立支援コース
・【★本記事】介護離職防止支援コース
・育児休業等支援コース
・育休中等業務代替支援コース
・柔軟な働き方選択制度等支援コース
・不妊治療及び女性の健康課題対応両立支援コース
両立支援等助成金の全体像については、以下の記事で詳しく解説しています。
合わせて読みたい
この記事の目次
介護離職防止支援コースとは|介護離職を防ぐ企業への助成金
仕事をしながら家族を介護している人は約365万人(総務省「令和4年就業構造基本調査」)。介護は、どの従業員にも起こり得る課題です。
介護離職防止支援コースは、従業員が仕事と介護を両立できる職場づくりに取り組む中小企業事業主に支給される助成金で、両立支援等助成金の6コースのうちの1つです。対象となる取り組みは以下の4区分で、要件を満たせば2種類の加算も受けられます。
| 区分 | 内容 | 助成額 |
|---|---|---|
| ①介護休業 | 連続5日以上の介護休業取得・職場復帰 | 40万円(連続15日以上は60万円) |
| ②介護両立支援制度 | 短時間勤務・在宅勤務など制度の利用 | 20万円〜40万円 |
| ③業務代替支援 | 代替要員の確保・業務代替手当の支給 | 3万円〜30万円 |
| ④介護休暇制度有給化支援【2026年度 NEW】 | 介護休暇を有給化し労働者が利用 | 30万円(10日以上の有給の休暇を付与する場合は50万円) |
| 有期雇用労働者加算【2026年度 NEW】 | ①②の対象者が有期雇用労働者の場合 | +10万円 |
| 環境整備加算 | ①〜③に加えて雇用環境整備の取り組みを実施 | +10万円 |
①〜③の助成額は対象労働者1人あたりの金額で、それぞれ1事業主5人までです。④と各加算は1事業主1回限りとなります。
全区分に共通する要件
・介護休業制度と、介護のための所定労働時間の短縮等の措置を、対象労働者の休業や制度利用が始まる前に就業規則等へ規定していること
・規定の内容が、申請日時点の育児・介護休業法の水準を満たしていること
就業規則に「育児・介護休業法の定めによる」と書くだけでは、制度を規定しているとは認められません。休業の手続きや賃金の取り扱いまで、具体的に定めておく必要があります。
2026年度(令和8年度)の変更点
・有期雇用労働者加算を新設(10万円)
・介護両立支援制度の対象から「所定外労働の制限制度」「深夜業の制限制度」を削除
改正後の支給要領は令和8年4月8日から施行されています。令和8年4月7日までに介護両立支援制度の利用を開始した場合は、改正前の規定が適用されます。
①介護休業の助成金(40万〜60万円)
「仕事と介護の両立支援プラン」を作成し、労働者が連続5日以上の介護休業を取得して職場復帰した場合に支給されます。| 助成額 | 40万円(連続15日以上の休業なら60万円) |
|---|
・介護休業の取得と職場復帰を支援する方針を、あらかじめ全労働者に周知
・対象労働者と面談し、仕事と介護の両立支援プラン(面談シート兼用)を作成
・プランに基づき、業務の整理・引き継ぎを実施
・労働者が同一の対象家族について連続5日以上の介護休業を取得(所定労働日ベース)
・原職等に復帰させる旨を就業規則等に規定し、復帰後にフォロー面談を実施
・復帰後3か月以上継続雇用し、申請日にも雇用保険被保険者として雇用
プランは休業開始前に作成するのが原則で、休業中の作成も認められます。ただし、休業が終わってから面談やプラン作成を行った場合は支給対象外です。
復帰後3か月間の就業実績が、就業を予定していた日数の5割に満たない場合も対象外となります。同じ労働者の同じ対象家族に係る介護休業は、1回限りの支給です。
②介護両立支援制度の助成金(20万〜40万円)
仕事と介護の両立に役立つ制度を就業規則等に定め、労働者がその制度を利用した場合に支給されます。対象は以下の5制度です。
| 制度 | 利用要件 |
|---|---|
| 時差出勤制度 | 始業または終業の時刻を1時間以上繰り上げ・繰り下げ、合計20日以上 |
| 介護のための短時間勤務制度 | 1日の所定労働時間を1時間以上短縮、合計20日以上 |
| 介護のための在宅勤務制度 | 合計20日以上 |
| 介護のためのフレックスタイム制度 | 合計20日以上 |
| 介護サービス費用補助制度 | 利用開始から6か月の間に、労働者が負担した料金の5割相当以上または10万円以上を補助 |
20日は所定労働日ベースで数え、利用開始日から1年以内に、同一の対象家族について満たす必要があります。複数の制度の利用日数を合算することはできません。
助成額と主な要件
| 導入・利用パターン | 基本 | 60日以上利用 |
|---|---|---|
| 制度を1つ導入し利用 | 20万円 | 30万円 |
| 制度を2つ以上導入し1つ以上利用 | 25万円 | 40万円 |
60日以上利用した場合の増額は、介護サービス費用補助制度には適用されません。
・制度の利用を支援する方針を、あらかじめ全労働者に周知
・対象労働者と面談し、両立支援プランを作成(利用期間中の業務体制の検討を盛り込む)
・利用する制度を、利用開始日の前日までに就業規則等へ規定
・要件を満たす利用のあと1か月以上継続雇用し、申請日にも雇用保険被保険者として雇用
プランは制度の利用開始前に作成するのが原則で、利用が終わってから作成した場合は支給対象外です。在宅勤務と介護サービス費用補助を除き、出退勤の時刻をタイムカードなどで確認できない場合も対象になりません。
同じ労働者が同じ制度を利用した場合の支給は1回限りです。同じ対象家族について異なる制度を利用した場合は合計2回まで支給され、制度ごとにプランの作成が必要になります。
③業務代替支援の助成金(3万〜30万円)
介護休業や短時間勤務をする労働者の代わりに、新規で人を雇うか、業務を代わる労働者に手当を支給した場合に対象となります。
助成額
| 区分 | 基本 | 連続15日以上の休業 |
|---|---|---|
| 新規雇用(または派遣受入) | 20万円 | 30万円 |
| 手当支給等(介護休業) | 5万円 | 10万円 |
| 手当支給等(短時間勤務) | 3万円 | ー |
主な要件
| 区分 | 主な要件 |
|---|---|
| 新規雇用(または派遣受入) | ・対象労働者が連続5日以上の介護休業を取得(所定労働日ベース) ・代替要員を新たな雇い入れまたは派遣で確保 ・代替要員の所定労働時間が対象労働者の2分の1以上 ・代替要員が介護休業期間の8割以上勤務 |
| 手当支給等(介護休業) | ・対象労働者が連続5日以上の介護休業を取得(所定労働日ベース) ・業務代替者1人につき連続5日以上の代替実績 ・業務代替手当などの賃金制度を就業規則等に規定 ・業務代替者の賃金を、1日500円以上または月1万円以上のうち低い方の額以上増額 ・業務の見直し・効率化と、業務代替者への面談での説明を実施 |
| 手当支給等(短時間勤務) | ・対象労働者が1日1時間以上短縮する短時間勤務を合計15日以上利用 ・業務代替者1人につき合計15日以上の代替実績 ・業務代替手当などの賃金制度を就業規則等に規定 ・業務代替者の賃金を、1日150円以上または月3千円以上のうち低い方の額以上増額 ・業務の見直し・効率化と、業務代替者への面談での説明を実施 |
手当支給等の場合、賃金制度の規定と業務の見直し・面談は、業務の代替が始まる日の前日までに済ませておく必要があります。業務代替手当は代替する業務の内容を評価して支給するものが対象で、残業代のように労働時間に応じて支払う賃金は該当しません。
業務代替者は、対象家族の要介護の事実を事業主が知った日以前から雇用している労働者に限られます。なお、業務代替支援では両立支援プランの作成は要件に含まれません。同じ労働者の同じ対象家族については、介護休業と短時間勤務それぞれ1回限りの支給です。
④介護休暇制度有給化支援【2026年度 新設】
介護休暇を有給の休暇として就業規則等に定め、労働者が利用した場合に支給される助成金です。2026年度に新設された区分で、支給は1事業主1回限りとなります。
助成額
| 助成額 | 30万円(10日以上の有給の休暇を付与する場合は50万円) |
|---|
主な要件
・年次有給休暇とは別の休暇で、年次有給休暇を取得した場合と同等の賃金が支払われること
・時間単位(時間未満も可)で取得でき、始業・終業の時刻とつながらない「中抜け」も認めること
・1日の所定労働時間を変えずに利用できること
・制度を10時間以上利用した雇用保険被保険者が、申請日に在籍していること
10時間の利用は、同じ事業主に雇用されている配偶者や親族が取得した時間と合算できます。なお、介護休業と介護両立支援制度で求められる両立支援プランの作成は、この区分では不要です。
対象外になるケース
・有給化する前の介護休暇の規定が確認できない場合
有期雇用労働者加算と環境整備加算は、この区分には上乗せされません。
申請までの流れ
・現行の就業規則で、介護休暇の規定を確認する
・令和8年4月8日以降に就業規則等を改定し、介護休暇を有給化する
・労働者が有給の介護休暇を利用する
・利用時間が10時間に達した日の翌日から2か月以内に支給申請する
申請時には、有給化する前と後の両方の就業規則を提出します。改定前の就業規則も手元に残しておきましょう。
加算措置(最大20万円上乗せ)
有期雇用労働者加算(+10万円)
①介護休業または②介護両立支援制度の対象労働者が有期雇用労働者の場合に加算されます(1事業主1回限り)。①または②の支給申請と同時に申請します。
休業や制度利用を開始する日の前6か月の間に、期間の定めのない労働者として雇用していた場合は対象外です。
環境整備加算(+10万円)
①〜③のいずれかの要件を満たした事業主が、以下の4つすべてを実施すると加算されます(1事業主1回限り)。
・相談窓口の設置と全労働者への周知
・介護休業等の取得・利用事例の収集と提供
・制度の内容と取得・利用促進の方針の周知
研修は支給申請日までに、そのほかの3つは介護休業等の開始日までに実施している必要があります。自社に取得・利用の事例がない場合は、厚生労働省のパンフレットに掲載された事例を提供する形でも認められます。
申請方法
本社等の所在地を管轄する都道府県労働局 雇用環境・均等部(室)に申請します。郵送の場合は簡易書留など配達記録が残る方法で送付してください。消印ではなく到達日基準なので、期限内必着で送る必要があります。なお、2023年6月26日から電子申請にも対応しています。
各区分の申請期限は、以下のとおりです。
| 区分 | 申請期限 |
|---|---|
| ①介護休業 | 介護休業終了日の翌日から3か月経過の翌日から2か月以内 |
| ②介護両立支援制度(時差出勤・短時間勤務など) | 制度を合計20日(または60日)利用した翌日から1か月経過の翌日から2か月以内 |
| ②介護両立支援制度(介護サービス費用補助) | 6か月利用後の翌日から1か月経過の翌日から2か月以内 |
| ③業務代替支援(新規雇用/手当支給:介護休業) | 介護休業終了日の翌日から2か月以内 |
| ③業務代替支援(手当支給:短時間勤務) | 短時間勤務終了日の翌日から2か月以内 |
| ④介護休暇制度有給化支援 | 制度利用時間が10時間に達した日の翌日から2か月以内 |
主な必要書類
必要な書類は区分によって異なります。申請様式は厚生労働省の両立支援等助成金のページから最新版を入手してください。
・支給申請書(様式第1〜6号のうち該当するもの)
・支給要件確認申立書
・労働協約または就業規則・関連する労使協定
・対象家族の要介護状態を確認できる書類(介護保険被保険者証など)
・出勤簿またはタイムカード、賃金台帳など就業実績を確認できる書類
| 区分 | 追加で必要な主な書類 |
|---|---|
| ①介護休業 | ・仕事と介護の両立支援プラン(面談シート兼用) ・方針を周知した日付がわかる書類 ・介護休業申出書 ・雇用形態と所定労働日がわかる書類(労働条件通知書、会社カレンダーなど) |
| ②介護両立支援制度 | ・仕事と介護の両立支援プラン(面談シート兼用) ・方針を周知した日付がわかる書類 ・制度の利用申出書 ・所定労働日と所定労働時間がわかる書類 ・在宅勤務は実施報告書など、費用補助は介護サービスの領収書など |
| ③業務代替支援 | ・介護休業申出書または短時間勤務申出書 ・新規雇用:代替要員の労働条件通知書など、雇い入れの時期と所定労働時間がわかる書類 ・手当支給等:業務分担表、賃金制度を定めた就業規則、業務代替者の賃金台帳 |
| ④介護休暇制度有給化支援 | ・有給化する前と後の両方の就業規則 ・介護休暇の利用申出書、休暇簿など |
| 有期雇用労働者加算 | ・有期雇用労働者であることがわかる書類(労働条件通知書など) |
| 環境整備加算 | ・4つの取り組みの内容と実施日がわかる資料 |
上記は主な書類です。詳細は厚生労働省の「支給申請の手引き」で確認してください。
よくある質問
中小企業しか対象にならない?
はい。本コースの対象は中小企業事業主に限られており、大企業は対象外です。資本金や常時雇用する労働者の数で中小企業に該当するかが判定されます。
一度助成金を受けた労働者でも、別の家族が要介護状態になった場合は再申請できる?
介護休業はできます。新たに別の家族が要介護状態になった場合、改めて仕事と介護の両立支援プランを作成すれば、同じ労働者でも再び支給対象になります。一方、介護両立支援制度は、別の家族であっても同じ制度の再利用は対象外です。
「連続5日以上の介護休業」は土日も含めてカウントしていい?
含められません。所定労働日ベースでカウントするため、土日が休みの労働者が金〜火の5日間休んでも、所定労働日は3日となり要件を満たしません。
父と母の2人を介護している場合、それぞれの介護を合算して20日でも対象になる?
なりません。「同一の対象家族につき合計20日間以上」が要件のため、対象家族1人ごとに日数要件を満たす必要があります。
年次有給休暇を取った日も、制度利用の20日に数えられる?
原則として数えられません。ただし、1日の一部だけ年次有給休暇を取得し、出退勤の時刻や勤務実績から制度の利用が確認できる日は、利用実績に含められます。
介護休業中に特定の曜日だけ出勤していたら、介護休業として認められる?
認められません。あらかじめ特定の曜日を指定して就労する場合は、介護休業ではなく短時間勤務制度(週・月の所定労働日数を短縮する制度)に該当する扱いになります。
要介護状態を証明する書類は必須?
原則として必要です。介護保険被保険者証の写しや医師の証明書などを提出します。公的書類が用意できない場合は、労働者と事業主双方の申立書(対象家族の状態や介護状況などを記載)の提出で代替できる場合があります。
以前に介護休暇制度で受給した会社も、有給化支援を受けられる?
受けられません。令和7年度以前に介護両立支援制度の「介護休暇制度」で受給した事業主は、介護休暇制度有給化支援の対象外です。
環境整備加算はいつ申請するの?
介護休業・介護両立支援制度・業務代替支援の支給申請と同時に申請します。単独での申請はできず、加算対象の助成金が不支給となった場合は加算分も支給されません。
まとめ
両立支援等助成金の「介護離職防止支援コース」は、介護休業の取得、短時間勤務や在宅勤務の利用、代替要員の確保など、介護離職を防ぐ取り組みに対して支給される中小企業向けの助成金です。2026年度は、介護休暇の有給化で30万〜50万円を受け取れる区分も加わりました。
就業規則への規定や両立支援プランの作成は、休業や制度利用が始まる前に行うのが原則です。申請期限も区分ごとに異なるため、対象になりそうな従業員がいる場合は早めに準備を進めましょう。
▼▼▼日々配信中!無料メルマガ登録はこちら▼▼▼
メルマガ会員登録する
・出生時両立支援コース
・【★本記事】介護離職防止支援コース
・育児休業等支援コース
・育休中等業務代替支援コース
・柔軟な働き方選択制度等支援コース
・不妊治療及び女性の健康課題対応両立支援コース


