補助金を探していると、「委託費」「委託金」「委託料」「委託事業」といった言葉を目にすることがあります。いずれも国や自治体から資金が支払われる点は似ていますが、その性質はまったく異なります。
補助金は事業への財政援助として「もらう」お金であるのに対し、委託費は国の仕事を代わりに請け負った「対価」として受け取るお金です。委託料は地方自治体が外部に事業を委託する際の歳出科目、委託金は国から地方公共団体への委託で使われる呼称で、それぞれ支出主体と法令上の位置づけが異なります。
この記事では、委託費・委託料・委託金それぞれの意味を紹介したうえで、補助金との違いを「性格」「自己負担」「資産・知財の帰属」など7つの観点から具体的に解説します。委託事業への参加を検討している方や、補助金との違いを正しく理解したい方は、ぜひ参考にしてください。
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・委託費は、国の事業を代わりに請け負う「対価」として受け取るお金
・補助金は事業への「財政援助」で、委託費とは法的性格が異なる
・委託費は原則として自己負担ゼロ(全額が委託元の負担)
・委託金は「国庫委託金」として国から地方公共団体への委託で使われる呼称。一般には委託費の俗称として使われることもある
・委託費は精算方式のため、使い切れなかった分は原則返金となる
この記事の目次
委託費とは?国の事業を請け負う「対価」として支払われるお金
委託費とは、国や自治体が本来行う事務・事業を、外部の機関に委託する際に「その対価」として支払う経費です。財務・会計上は「国の事務、事業等を他の機関又は特定の者に委託して行わせる場合に、その反対給付として支出する経費」と定義されています。
ここでいう「委託」とは、本来は国の仕事であった事業を、国の代わりに受託した機関が請け負うことを指します。事業を請け負う以上、それを進めるための費用を国から受け取る必要があります。この費用が委託費です。
委託費の対象となるのは、主に調査・研究開発・国家試験の実施・各種講習などの事業です。受託者となれるのは、企業・大学・公益法人・研究機関・NPO法人など、一定の実施体制や実績を有する団体です。
委託費・委託料・委託金の違い
「委託費」「委託料」「委託金」はいずれも委託にまつわるお金を指しますが、支出主体と法令上の位置づけが異なります。
| 用語 | 支出主体 | 法令上の位置づけ | 代表例 |
|---|---|---|---|
| 委託費 | 国(中央省庁) | 国の歳出科目(会計法令上の区分) | 経産省・文科省などの研究委託、調査委託 |
| 委託料 | 地方自治体(都道府県・市町村) | 地方自治法施行規則第15条で定められた予算「節」の一つ | ごみ処理委託、指定管理業務、施設運営委託 |
| 委託金 | 国 → 地方公共団体 | 国庫委託金として地方財政法第10条の4で規定。国が本来行うべき事務を地方に委託する際に経費の全額を交付するもの。なお一般用語としては「委託費」の俗称として使われることもあります | 国政選挙費委託金、国勢調査委託金、基礎年金事務費委託金 |
委託費と補助金の7つの違いを一覧で比較
委託費と補助金は似ているように見えて、法的な性格・自己負担・資産や知財の帰属などが大きく異なります。両者の違いを一覧にまとめると、次のとおりです。| 比較項目 | 委託費 | 補助金 |
|---|---|---|
| 性格 | 国の業務を代わりに受託機関が実施する「対価的性格」 | 事業への財政援助という「助成的性格」 |
| 自己負担 | 原則ゼロ(全額が委託元の負担) | あり(補助率は1/3・1/2・2/3などが一般的) |
| 実施主体 | 国(または自治体) | 補助事業者(申請者) |
| 配分決定のタイミング | 委託契約(準委任契約)を締結した時 | 申請・採択後に交付決定(行政行為)された時 |
| 配分先 | 機関(通常は機関と契約) | 個人・グループ・機関など様々 |
| 資産の帰属 | 原則 国(事業終了後に無償貸与・買取あり) | 補助事業者(処分等に一部制限あり) |
| 知財の帰属 | 原則 国だが、日本版バイ・ドール制度の適用で受託者へ帰属できる | 補助事業者 |
| 主な関連法規 | 会計諸法規および私法上の契約 | 補助金適正化法(適化法) |
①性格の違い:委託費は「対価」、補助金は「援助」
委託費と補助金の最も本質的な違いは、その「性格」にあります。補助金は、国や自治体が公益性を認めた事業に対し、見返り(反対給付)を求めずに交付する金銭で、「助成的性格」を持ちます。
一方、委託費は国と受託機関の双方の合意(契約)で成り立ち、お金を受け取る代わりに業務を遂行するという「対価的性格」を持ちます。補助金は「もらうお金」、委託費は「業務の対価として受け取るお金」と整理するとわかりやすいでしょう。
②自己負担の違い:委託費は原則ゼロ
委託費は、原則として受託者の自己負担がゼロで、事業に必要な経費は全額が委託元(国など)の負担となります。これは、委託費が「業務の対価」であり、補助金のように事業者が一部を負担する「補助率」という考え方が当てはまらないためです。
そのため、補助金が補助率1/2や2/3で自己負担が生じるのに対し、委託費は実質的に全額を委託元が負担する形になります。ただし、委託業務以外の業務(科学研究費=科研費など)に従事したときの人件費は委託費では負担できない点に注意が必要です。
③実施主体の違い:委託費の主体は国
補助金の定義は「国が特定の事務・事業に対し、国家的見地から公益性があると認め、その実施に資するため反対給付を求めることなく交付される金銭的給付」であり、実施主体は補助事業者(申請者)です。
委託費の定義は「国の事務・事業等を他の機関又は特定の者に委託して行わせる場合に、その反対給付として支出する経費」であり、実施主体はあくまで国(または自治体)です。受託機関は、国の業務を代行する立場という位置づけになります。
④配分決定のタイミングの違い
補助金が配分される(交付が決まる)タイミングは、申請して採択され、交付決定という行政行為がなされた時です。申請から採択までの審査を経て初めて交付が確定します。
委託費が配分されるタイミングは、国と受託機関が委託契約(民法上の準委任契約)を締結した時です。委託費は審査による「交付決定」ではなく、契約の成立によって配分が決まる点が異なります。
⑤配分先の違い
補助金の配分先は、個人・グループ・機関など制度によってさまざまで、幅広い対象に交付されます。中小企業向けの補助金のように、個人事業主や法人が直接交付を受けるものもあります。
委託費の配分先は、原則として機関です。国の委託契約は通常、機関との間で締結され、委託費はほぼ100%が機関契約となっています。
⑥資産の帰属の違い
補助金で取得した資産(機械・設備など)は、原則として補助事業者に帰属します。ただし、補助金適正化法(適化法)第22条により、処分等について一部制限があります。
委託費で取得した資産は、原則として委託元である国に帰属します。事業終了後は、受託者への無償貸与または買い取りが行われる場合があります。
⑦知的財産権の帰属の違い
委託費で生まれた知的財産権(特許権など)は、原則は国に帰属しますが、日本版バイ・ドール制度を適用すれば受託者に帰属させることができます。これが補助金と異なる重要なポイントです。
補助金の知財は、原則として補助事業者に帰属します(科研費の場合は所属機関のルールに従います)。一方、委託費では、産業技術力強化法第17条に基づく日本版バイ・ドール制度により、研究成果の国への報告など一定の条件を受託者が約束すれば、委託研究開発から生じた知的財産権を100%受託者(民間企業等)に帰属させることが可能です。NEDOの委託事業などでも、このバイ・ドール条項を適用し、知財を委託先に帰属させる運用が一般的です。
日本版バイ・ドール制度は、当初「産業活力再生特別措置法(平成11年法律第131号)第30条」で措置されていました。その後、2007年に恒久法である産業技術力強化法へ移管され、2018年(平成30年)の法改正を経て、現在は同法第17条に規定されています。古い解説では旧法(産業活力再生特別措置法)の名称が使われていることがありますが、現行の根拠法は産業技術力強化法第17条です。
出典:日本版バイ・ドール制度(産業技術力強化法第17条)(経済産業省)
委託費が交付された実例
委託費の具体的なイメージをつかむため、過去の交付事例を紹介します。たとえば、資源エネルギー庁が研究機関に対して原子炉安全対策に関する研究を委託し、委託費を交付した事例があります。
このように、委託費は専門的な調査・研究開発の分野で活用されることが多く、国の政策目的を達成するために、専門性や実施体制を備えた機関へ事業が委託されています。受託者となるのは、こうした事業を遂行できる企業・大学・研究機関などです。
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委託費に関するよくある質問
最後に、委託費に関するよくある質問をまとめました。委託費と補助金の一番大きな違いは何ですか?
最も大きな違いは「性格」と「自己負担」です。補助金は事業への財政援助として交付され、補助率1/2・2/3などの自己負担が生じます。一方、委託費は国の事業を代わりに請け負う「対価」として支払われるため、原則として自己負担はゼロ(全額が委託元の負担)です。委託費は「業務の対価」であり、補助金のような「補助率」という考え方は当てはまりません。
委託費を受け取ることができるのはどんな団体ですか?
企業、大学、公益法人、研究機関、NPO法人など、一定の実施体制・実績を有する団体が対象となります。国の委託契約は通常、個人ではなく機関との間で締結され、委託費はほぼ100%が機関契約です。委託される事業を遂行できる専門性や体制を備えていることが前提となります。
委託費は返還が必要になることがありますか?
契約上の義務を果たさなかった場合や、不正使用があった場合には返還義務が発生します。また、委託費は精算方式のため、事業を実施したうえで委託費が余れば、使い切れなかった分は原則返金となります。委託契約書には、契約違反時に委託費の全部または一部の交付停止・返納を命じられる旨が定められているのが一般的で、補助金と同様に適切な経理処理と報告が求められます。
委託費の対象になるのはどんな事業ですか?
委託費の対象となる事業には、調査・研究開発・国家試験の実施・各種講習などがあります。いずれも本来は国や自治体が行う事務・事業を、専門性や実施体制を備えた外部機関に代わりに実施してもらうものです。とくに研究開発分野で活用されることが多い制度です。
委託費で生まれた特許などの知的財産権は誰のものになりますか?
原則は委託元である国に帰属しますが、日本版バイ・ドール制度(産業技術力強化法第17条)を適用すれば、受託者へ帰属させることができます。研究成果を国に報告することなど一定の条件を受託者が約束する場合、委託研究開発から生じた知的財産権を100%受託者(民間企業等)に帰属させることが可能です。NEDOの委託事業などでも、このバイ・ドール条項を適用して知財を委託先に帰属させる運用が一般的です。
委託費で取得した機械や設備は誰のものになりますか?
委託費で取得した資産は、原則として委託元である国に帰属します。事業終了後は、受託者への無償貸与または買い取りが行われる場合があります。これに対し補助金で取得した資産は補助事業者に帰属しますが、補助金適正化法により処分等に一部制限がある点が異なります。
まとめ
委託費とは、国と機関が双方の合意のもとで委託契約を締結し、機関が国の事業等を代わりに請け負う「対価」として受け取るお金です。補助金が事業への財政援助という「助成的性格」を持つのに対し、委託費は「対価的性格」を持つ点が本質的な違いです。
その結果として、委託費は原則自己負担ゼロ(全額が委託元の負担)である一方、取得した資産は原則として国に帰属し、知的財産権についても原則は国帰属となります。ただし、知財については日本版バイ・ドール制度(産業技術力強化法第17条)を適用することで、受託者に帰属させることが可能です。また、委託費は精算方式のため、使い切れなかった分は原則返金となります。
補助金と委託費は混同されがちですが、自社が「援助を受ける」のか「業務を請け負う」のかによって、適した制度や手続き、成果物の扱いが変わります。違いを正しく理解したうえで、自社に合った制度を選びましょう。
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