補助金・助成金の中には、自治体への交付金を通じて企業を支援するものもあります。こうした補助事業では、企業への助成自体は自治体から行われます。自治体はその財源として、国から補助を受ける仕組みです。
例えば地域経済循環創造事業交付金は、地域金融機関から融資を受けて事業化に取り組む民間事業者に自治体が助成する経費に対して、総務省が交付金を交付します。総務省が産学金官の連携のもとで設置する「ローカル10,000プロジェクト」などがこの形式です。
こうした制度では、事業の流れや手続きが複雑に感じることもあるかもしれません。そこで今回は、自治体での予算確保が必要な事業について、予算の仕組みや相談する際のポイントをお伝えします。
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この記事の目次
自治体予算の仕組みとは?
自治体予算は、1年間の地方自治体の行政サービスや事業を実施するために必要な資金計画です。まずは自治体予算の基本的な性質や、種類を見ていきましょう。
自治体予算の性質と役割
自治体予算は、地域住民の生活を支え、地域社会の発展を促進する基盤となるものです。公共性と公益性が重視され、地域全体の利益を目的としています。
自治体予算では、1年間の収入と支出の見積もりが示されます。主な内容は、以下のとおりです。
歳入歳出予算 |
収入及び支出を計上したもの |
継続費 |
2年以上にわたって地方公共団体の経費による事業が行われる際、数年度にわたって支出することができる経費 |
繰越明許費 |
歳出予算のうち、年度内にその支出を終わらない見込みのあるものについて、翌年度に繰り越して使用することができる経費 |
債務負担行為 |
継続費と同様、年度をまたがる予算の一種。当該年度には契約行為のみを行い、翌年度以降に歳出予算を組んで債務を解消していく |
地方債 |
市町村が事業を実施する際、必要に応じて、長期の借入資金を手当して財源とする |
一時借入金 |
資金不足が見込まれたとき、指定金融機関などから受ける一時借入 |
歳出予算の各項の経費の金額の流用 |
歳出予算の各項の経費は、予算に定める場合にのみ流用することができる |
自治体の主な収入源について
自治体が行う支援策は、予算のなかに組み込まれます。その財源には国からの補助のほか、税収などがあげられます。税金を使用する政策だからこそ、支援対象となる事業には、公共性や地域への貢献性が重要視されるのです。
自治体の主な収入は、以下のとおりです。
一般財源 |
財源の使途が特定されず、どのような経費にも使用することができるもの ※地方税・地方交付税・地方譲与税・交付金・地方特例交付金・特別交付金・臨時財政対策債などが該当します。 |
特定財源 |
用途が特定される財源 ※国庫支出金・県支出金・市債などがあります。 |
市税 |
市民税、固定資産税、都市計画税、たばこ税などの税金 |
地方譲与税 |
国税として徴収され、一定の基準に基づき地方に譲与されるもの |
地方債 |
市町村が事業を実施する際、必要に応じて、長期の借入資金を手当して財源とする |
地方交付税 |
全国一律の行政サービスが受けられるように、国が一定基準により市町村に交付するもの |
国庫支出金 |
法令に基づき実施しなければならない事務や国と相互に利害関係のある事業等に対して、国が負担すべきものの総称(負担金や、補助金など) |
そのほかの収入には、地方消費税交付金や施設の使用料などがあります。
こうした収入は、その地域の住民だけから得られるものではありません。国庫支出金や地方交付税などは、国の一般会計等から捻出されます。自治体予算は、国全体の資金の流れの一部として編成されるのです。
地方自治体(地方団体)への資金の流れは、以下の図も参照してください。
出典:財務省
なお、支出には自治に必要な人件費などの経費のほか、各種行政サービスの提供や生活インフラの維持管理等が含まれます。
自治体予算の種類
自治体の予算には、主に「当初予算」と「補正予算」と「暫定予算」があります。当初予算とは年度ごとに収支をまとめたもので、毎年3月の議会を経て成立します。
一方で、既定された予算に追加や変更を加える必要が生じたときに調整するのが補正予算です。災害等の、突発的な支出に対応します。
暫定予算は、予算が年度開始前までに成立する見込みのない場合など、年間の予算が成立するまでの間に暫定的なものとして編成される予算です。
このほかに、「骨格予算」や「肉付予算」といわれるものがあります。
また、予算内では、基本的な経費を網羅して計上する「一般会計」と、特定の事業に関わる収支のみを計上する「特別会計」が区別されます。
自治体予算編成の流れとスケジュール
自治体に交付される助成金等を活用するためには、自治体の予算編成スケジュールを把握しておくのが重要です。予算が組まれる前に自治体に相談し、事業について理解を得ることで、次年度の事業展開につながる可能性が高まります。
細かなスケジュールは自治体によって異なりますが、ここでは自治体予算編成の一般的なスケジュールを見ていきましょう。
【予算編成スケジュール】 |
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一般的に自治体の予算編成スケジュールは、前年度始めの4月から動き始めます。 4月から6月には自治体職員の情報収集が始まり、9月から10月ころには財政運営方針(予算編成方針)が発表されます。その後、各部からの予算要求を受けて財政部の査定・審査があり、1月には首長の査定・審査・内示があります。 そして3月の議会審議と決議を経て、正式に当初予算が決定します。 |
6月から9月頃まで、来年度予算編成に向けた各部での情報精査や予算計画が行われます。予算に組み込んでほしい新規事業や交付金活用に関する事業の相談は、当初予算の編成に向けた動きが活発化する前、職員の計画時期に行う必要があるため、目安として、前年度の夏までに始めているとよいでしょう。
自治体へ相談する時のポイント
公的な支援制度は、社会的ニーズに合致し、社会的な信用度の向上も期待できることから、積極的に活用したいところです。採択されるためには、要綱をよく読み、正しい手続きを行うことが重要です。
たとえば地域経済循環創造事業補助金(ローカル10,000プロジェクト)では、総務省へ提出する前に、金融機関や自治体との事前調整が必要です。
ここでは自治体へ相談するときに気を付けたいポイントを、確認していきましょう。
早めに準備を始める
前述のとおり、自治体の予算は、前年度の夏頃には枠組みが決まります。来年度の予算計画に組み込んでもらうためには、早い段階で動き始めることが大切です。
自治体への相談時には、ある程度事業計画が明確になっていなくてはいけません。必要な人材や設備、資金をどう調達するのか、いつまでにどの程度の目標を達成する予定なのか、現時点で必要な予算はどのくらいなのかを明らかにし、誰の目にもわかるようにまとめておきましょう。
自治体への相談時期を確認し、そのために必要な準備を逆算して、早め早めの行動を意識してくださいね。
地域への貢献を明確にする
自治体の予算は住民の生活向上を主な目的としています。せっかくの事業計画も、地域への貢献度が低いと判断されると、公的な支援の対象にはなりません。提案する事業やプロジェクトが地域にどのような利益をもたらすか、具体的に説明することが重要です。
地域の企業には、地域経済の活性化・雇用創出・住民サービスの向上など、さまざまな期待が寄せられています。該当の事業がどんな項目に、どの程度貢献できるのか、わかりやすく説明できるようにしておきましょう。顧客アンケートや事前調査のデータなども有効です。
また、自治体のニーズを把握するために、すでに発表された予算や年間政策を確認しておくこともおすすめです。今年、自治体が行った事業の不足分や改善点を補える事業であれば、来年度の予算に組み込まれやすくなります。来年度の予算の枠組みに合わせた事業計画のアドバイスをもらえるかもしれません。
自治体との建設的な対話を通じて、予算確保の可能性を高めていきましょう。
まとめ
自治体予算は、地域の生活や安全を守るための大切な予算です。国からの助成金・補助金が交付される際にも、その前提は変わりません。企業成長に役立つだけでなく、地域にとって利益のある取組かどうかが、採択のカギとなります。
予算の仕組みやスケジュールを把握し、目的に沿った事業計画を立てて、支援の活用につなげましょう。