人材確保等支援助成金の「中小企業団体助成コース」は、事業協同組合等の事業主団体が、構成中小企業者に対して労働環境の向上を図るための事業を行うと、事業費の一部が助成されるコースです。令和8(2026)年度も継続実施されており、助成額は認定組合等の規模に応じて最大1,000万円、助成率は対象経費の2/3となります。
中小企業の人手不足や定着率の低さは、もはや一社単独では解決が難しい構造的課題ではないでしょうか。業界団体や事業協同組合が中核となり、傘下企業をまとめて支援する仕組みとして注目されているのが本コースです。
特に令和7(2025)年度からは申請手続きが「認定」から「届出」へ簡素化され、これまで以上に活用しやすくなりました。
今回は中小企業団体助成コースの概要、対象事業の例、申請手続きの流れを、2026年最新情報をもとに整理します。
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・雇用管理制度・雇用環境整備助成コース
・【本記事】中小企業団体助成コース
・建設キャリアアップシステム等活用促進コース
・若年者及び女性に魅力ある職場づくり事業コース(建設分野)
・作業員宿舎等設置助成コース(建設分野)
・外国人労働者就労環境整備助成コース
・テレワークコース
この記事の目次
人材確保等支援助成金とは?2026年度の概要と7つのコース一覧
人材確保等支援助成金は、事業主や事業主団体が雇用管理改善や人材の確保・定着に向けた取り組みを行った際に、その費用の一部を支援する厚生労働省の助成金です。令和8(2026)年度も全7コースが継続実施されており、業種・対象者ごとに使い分けができます。
本記事で解説する「中小企業団体助成コース」は、中小企業者個々ではなく、その構成団体である事業協同組合などを対象とする点が大きな特徴です。
人材確保等支援助成金の7つのコース一覧
2026年度に実施されている7コースの概要は次のとおりです。
| コース名 | 主な対象 | 主な助成額の目安 |
|---|---|---|
| 雇用管理制度・雇用環境整備助成コース | 全業種の中小企業 | 最大287.5万円 |
| 中小企業団体助成コース(本記事) | 事業協同組合等の事業主団体 | 最大1,000万円 |
| 建設キャリアアップシステム等普及促進コース | 建設業 | 事業主団体への支給 |
| 若年者及び女性に魅力ある職場づくり事業コース(建設分野) | 建設業 | 定額・経費の一部 |
| 作業員宿舎等設置助成コース(建設分野) | 建設業 | 経費の2/3等 |
| 外国人労働者就労環境整備助成コース | 外国人を雇用する事業主 | 最大80万円 |
| テレワークコース | 全業種 | 最大200万円 |
あわせて読みたい:人材確保等支援助成金2026 全コースの助成内容を解説
中小企業団体助成コースとは?対象団体と助成内容
中小企業団体助成コースは、事業協同組合などの団体が傘下の中小企業の人材確保や職場定着支援のための取り組みを行った場合に、その事業にかかった費用の一部が助成される制度です。中小企業を直接支援するのではなく、中小企業者を構成員とする事業協同組合等が助成の対象になります。都道府県労働局長による中小企業労働環境向上事業計画の「認定」が廃止され、「事業計画届の提出(届出)」に変更されました。なお、都道府県知事による「改善計画」の認定は引き続き必要です。
本コースの申請の流れは、以下のとおりです。
| 手順 | 詳細 |
|---|---|
| ①改善計画の作成・提出 | 提出期間内に、本社の所在地を管轄する都道府県へ提出 |
| ②中小企業労働環境向上事業計画の作成・提出(届出) | 提出期間内に、本社の所在地を管轄する都道府県労働局へ提出(令和7年度より認定から届出に変更) |
| ③中小企業労働環境向上事業の実施 | 計画に基づき1年間の事業を実施 |
| ④支給申請書の作成・提出 | 提出期間内に、本社の所在地を管轄する都道府県労働局へ提出 |
改善計画の承認を受けた後、さらに中小企業労働環境向上事業計画を届け出る必要があります。
中小企業団体助成コースと他コースの違い
人材確保等支援助成金の7コースの中で、本コースには3つの特徴があります。
| 比較項目 | 中小企業団体助成コース | 他のコース(例:雇用管理制度・雇用環境整備助成コース) |
|---|---|---|
| 申請主体 | 事業協同組合等の事業主団体 | 個々の事業主 |
| 助成上限 | 最大1,000万円 | 最大287.5万円 |
| 事業の単位 | 傘下中小企業者を対象とする1年間の事業 | 自社内での制度導入・機器導入 |
| 計画の認定先 | 都道府県知事(改善計画)+労働局(事業計画届) | 都道府県労働局 |
つまり、業界団体・組合の事務局がまとめて雇用管理改善を担うのが本コース、個別企業の取り組みに対応するのが他コース、という整理になります。
支給対象となる事業協同組合等
本コースの支給対象となる「事業協同組合等」とは、以下に当てはまる者を指します。中小企業自身が直接申請することはできない点に注意が必要です。
②事業協同小組合
③協同組合連合会
④その他特別の法律により設立された組合およびその連合会のうち政令で定めるもの
⑤中小企業者を直接または間接の構成員とする一般社団法人
改善計画の作成・提出
改善計画とは、中小企業で人手を確保し働きやすい職場を増やすために、事業協同組合などの団体や中小企業が、雇用管理の見直しや改善に取り組むために策定する計画です。基本指針の7項目のうち、事業協同組合等の実情に照らして必要な項目に取り組むものを作成します。
| 基本指針の7項目 |
|---|
| ①労働時間等の設定の改善:労働時間等に関する事項について、労働者の健康と生活に配慮するとともに多様な働き方に対応したものへと改善する |
| ②男女の雇用機会均等の確保および職業生活と家庭生活との両立支援:雇用の各分野における男女の均等な機会と待遇の確保を図るとともに、育児や家族の介護を行う労働者が職業生活と家庭生活とを両立することができるような環境づくり |
| ③職場環境の改善:労働者が快適に働けるような職場の環境整備 |
| ④福利厚生の充実:福利厚生施設の設置・整備、福利厚生制度の充実による労働者の生活の安定と福祉の増進のためのハード・ソフト面の整備 |
| ⑤募集・採用の改善:適切な募集条件を設定して職場の魅力を効果的にアピールするなどの、募集・採用の改善 |
| ⑥教育訓練の充実:労働者の自己啓発への援助等、知識・技能・技術の習得に資する能力開発などの教育訓練の充実 |
| ⑦その他の雇用管理の改善:高度人材の配置、新分野進出または円滑な技能継承に伴い必要となる労働者の雇用管理改善、仕事のやりがいを高める職業設計のモデルの明確化・職場の活性化、高年齢者等の活用・能力発揮、青少年の職場定着の促進 など |
なお「募集・採用の改善」の項目のみを選択することはできません。また構成中小企業者の1/3以上が、「募集・採用の改善」を除くいずれかの項目について取り組む必要があります。
中小企業労働環境向上事業計画の作成・提出
改善計画の承認を受けた後、次の4項目から構成される1年間の「中小企業労働環境向上事業」の実施計画を策定し、労働局に届け出ます(令和7年度より認定から届出に変更)。
| 区分 | 詳細 |
|---|---|
| ①計画策定・調査事業【必須】 | 中小企業労働環境向上事業のために必要な調査研究の実施、②から④に該当する事業の計画の策定等 |
| ②安定的雇用確保事業【②または③のいずれか】 | 労働者の安定的な雇入れに向けた、労働条件等の雇用環境及び募集・採用に係る諸問題の改善を図る |
| ③職場定着事業【②または③のいずれか】 | 労働者の職場定着に向けた、快適な職場環境づくりのための雇用環境に係る諸問題の改善を図る |
| ④モデル事業普及活動事業【必須】 | 本事業の効果についての実情把握、本事業の実施に関する成果・ノウハウ等の他の事業所への普及、活用等を図る |
「①計画策定・調査事業」「④モデル事業普及活動事業」は必須項目、「②安定的雇用確保事業」「③職場定着事業」はいずれか1つを選択する項目です。あわせて、事業実施体制を確保するため、労働環境向上検討委員会・労働環境向上推進員の設置が必要です。
助成対象となる事業の例
助成対象となる事業の例は次のとおりです。事業協同組合等の実情に照らして必要な項目に取り組みます。
■雇用管理改善啓発のセミナーの開催
■モデル企業見学会
■異業種団体交流会
■雇用管理の相談会(管理者向け)の実施
■団体紹介のための新聞広告等の掲載
■業界PRのための各種催物の実施
■集団説明会等共同活動の実施
■労働者のモラール向上のための事業
■事業成果の分析検討 等
中小企業団体助成コースはいくらもらえる?
中小企業団体助成コースで支給される助成額は、事業費の2/3、上限額は最大1,000万円です。限度額は、認定組合等の規模(構成中小企業者数)に応じて設定されています。
| 助成率 | 事業の実施に要した費用の2/3 |
|---|---|
| 助成限度額 | 大規模認定組合等(構成中小企業者数500以上)…1,000万円/中規模認定組合等(100以上500未満)…800万円/小規模認定組合等(100未満)…600万円 |
中小企業団体助成コースの対象経費
対象となる主な経費は、①労働環境向上推進員の設置に係る費用、②対象となる具体的な事業に関する経費の2区分です。
| ①労働環境向上推進員の設置に係る費用 | 認定組合等の役職員の場合:基本給、賞与/外部の者に委嘱する場合:謝金等/選任する者が所属する法人との労働者派遣契約等による場合:労働者派遣契約に基づく派遣料等 |
|---|---|
| ②対象となる具体的な事業に関する経費 | 謝金、旅費、会議費、印刷製本費、通信運搬費、借料、賃金、賞状等費、委託費、受講料、広報費、事業消耗品費、給与 など |
その他、振込手数料や印紙代等も対象となります。
中小企業団体助成コースの申請手続きの流れ
申請は「改善計画の認定(都道府県)→事業計画の届出(労働局)→事業実施→支給申請」の4ステップで進みます。
提出期間内に、本社の所在地を管轄する都道府県へ提出
②中小企業労働環境向上事業計画の作成・提出(届出)
提出期間内に、本社の所在地を管轄する都道府県労働局へ提出
③中小企業労働環境向上事業の実施
計画に基づき、1年間の事業を実施
④支給申請書の作成・提出
提出期間内に、本社の所在地を管轄する都道府県労働局へ提出
なお令和7年度からは都道府県労働局長による中小企業労働環境向上事業計画の認定が廃止され、事業計画届の提出(届出)に変更となりました。ただし都道府県知事による「改善計画」の認定は、引き続き必要です。
支給申請に必要な書類
申請に必要な書類は、以下のとおりです。
■中小企業労働環境向上事業実施状況報告書
■実施した中小企業労働環境向上事業の事業内容等を証明する書類等
■実施した中小企業労働環境向上事業等の経費の支出が適正であることを証明する書類等
■労働環境向上推進員の設置及び設置費の支出を証する書類
■職業相談者の配置及び配置費の支出を証する書類
■支給要件確認申立書
その他、管轄労働局長が必要と認める書類の提出が求められます。
支給申請書の提出期間
申請書類は事業実施期間から2か月以内に、管轄の都道府県労働局に提出してください。事業実施期間中に実施し、経費の支払が完了した中小企業労働環境向上事業に関する経費が助成対象となります。
中小企業団体助成コースの申請でつまずきやすい3つのポイント
本コースは、改善計画と事業計画という二段階の手続きが必要なため、書類不備や要件誤認による差し戻しが起きやすい制度です。特に注意したい3つのポイントを整理します。
「改善計画」の認定先は都道府県知事、「中小企業労働環境向上事業計画」の届出先は都道府県労働局です。提出先を取り違えると審査が進まないため、必ず確認しましょう。
② 「募集・採用の改善」だけを取り組み内容に選んでしまう
改善計画で取り組む基本指針は7項目ありますが、「⑤募集・採用の改善」単独での選択は不可です。また構成中小企業者の1/3以上が、「募集・採用の改善」を除くいずれかの項目に取り組む必要があります。
③ 労働環境向上推進員の設置と経費証拠書類の不備
労働環境向上推進員の設置自体が支給要件であり、設置費の支出を証する書類が支給申請時に必要です。賞与や派遣料を計上する場合は、雇用契約書・労働者派遣契約書のコピーを残しておきましょう。
中小企業団体助成コースの活用事例
ここでは、中小企業団体助成コースの実際の活用事例を紹介します。
食肉業界での事例
食肉業界の組合では、業界の閉鎖性を打破するための広報活動と、組合員企業を対象とした巡回相談会を組み合わせた事業を実施しました。
| ■課題 | 雇用の確保、採用者の定着の両方に課題がある。特に採用については知り合いからの紹介に頼るなど、閉鎖的な面があった |
|---|---|
| ■対策:労働環境向上のための事業を実施 | 労働条件改善の啓発を目的としたポスターの作成・配布/雇用管理改善の巡回相談会を実施/業界PRのための資料を、各種イベントで配布/雇用管理マニュアルの作成・配布/モデル企業見学会の開催 など |
製造業での事例
製造業の組合では、傘下企業の実態調査から始め、共通の悩みを共有する場を設定したうえで研修につなげる、段階的な事業設計を行いました。
| ■課題 | 応募者の確保が困難な状況が続き、傘下企業の約半数が、採用計画を立てられていなかった。若年者の離職率も高い状況だった |
|---|---|
| ■対策:労働環境向上のための事業を実施 | 従業員アンケートによる雇用管理実態調査/組合パンフレット・クリアファイルの作成・配布/雇用管理についての意見交換会の開催/求人広告の新聞掲載/傘下企業向けに経営者および従業員の資質向上のための研修を実施 など |
中小企業団体助成コースに関するよくある質問
中小企業団体助成コースはいくらもらえる?
助成率は事業費の2/3で、上限額は認定組合等の規模によって異なります。大規模認定組合等(構成中小企業者数500以上)は1,000万円、中規模(100以上500未満)は800万円、小規模(100未満)は600万円が上限です。
中小企業自身が申請することはできますか?
いいえ。本コースは中小企業者を構成員とする事業協同組合等が申請主体です。中小企業自身が直接申請することはできません。傘下の中小企業者に対して労働環境向上事業を実施した事業協同組合等が支給対象となります。個々の中小企業が利用したい場合は、同じ人材確保等支援助成金の「雇用管理制度・雇用環境整備助成コース」などを検討しましょう。
令和7年度から変わった点はありますか?
はい。令和7年度より、都道府県労働局長による中小企業労働環境向上事業計画の「認定」が廃止され、「事業計画届の提出(届出)」に変更されました。なお、都道府県知事による「改善計画」の認定は引き続き必要です。令和8(2026)年度も同様の運用が継続されています。
雇用管理制度・雇用環境整備助成コースとの違いは何ですか?
申請主体と助成上限が異なります。中小企業団体助成コースは事業協同組合等が申請し、傘下中小企業向けの労働環境向上事業を実施するもので上限1,000万円です。雇用管理制度・雇用環境整備助成コースは個別の中小企業が自社内で雇用管理制度や業務負担軽減機器等を導入するもので上限287.5万円です。
「募集・採用の改善」のみを選択することはできますか?
できません。改善計画の作成にあたり、「募集・採用の改善」の項目のみを選択することはできません。また、構成中小企業者の1/3以上が「募集・採用の改善」を除くいずれかの基本指針項目に取り組む必要があります。
改善計画はどこに提出すればよいですか?
改善計画は、本社の所在地を管轄する都道府県(知事)に提出します。これに対し、中小企業労働環境向上事業計画の届出と支給申請は都道府県労働局に提出します。提出先が分かれている点に注意してください。
助成金は補助金とどう違いますか?
補助金は経済産業省系で予算枠内での審査・採択を経て支給されるものが多いのに対し、人材確保等支援助成金は厚生労働省所管で、雇用保険料を財源とし、要件を満たせば原則として支給される点が特徴です。本コースも改善計画と事業計画の要件を満たし、事業を適切に実施することで支給対象となります。
個人事業主や任意団体は対象になりますか?
なりません。本コースの対象は、事業協同組合、事業協同小組合、協同組合連合会、その他特別の法律により設立された組合およびその連合会のうち政令で定めるもの、中小企業者を直接または間接の構成員とする一般社団法人に限られます。任意団体や個人事業主は支給対象外です。
支給申請はいつまでに行えばよいですか?
事業実施期間の終了日から2か月以内に、本社所在地を管轄する都道府県労働局に提出してください。事業実施期間中に実施し、経費の支払が完了した中小企業労働環境向上事業に関する経費が助成対象となります。
同じ事業に他の助成金や補助金を併用できますか?
原則として、同一の事業や経費について他の助成金等を受けている場合は、本助成金を重複して受けることはできません。事業ごとに費用区分を明確に分け、重複しないよう設計する必要があります。詳細は管轄の都道府県労働局に事前確認することをおすすめします。
まとめ
人材確保等支援助成金(中小企業団体助成コース)は、事業協同組合等が構成中小企業者の雇用管理改善を支援する際に活用できる、最大1,000万円の助成制度です。労働時間の設定改善、男女雇用機会均等の確保、職場環境の改善、福利厚生の充実、教育訓練の充実など、基本指針の7項目に基づく1年間の中小企業労働環境向上事業が対象となります。
令和7年度からは労働局による事業計画の「認定」が「届出」に簡素化され、手続きがスムーズになりました。令和8(2026)年度も同じ運用が継続されており、業界団体が中核となって傘下企業の雇用管理改善を推進するのに適した制度です。
特に中小企業では、人材確保と定着に課題を抱える企業が多くあります。一社単独では取り組みにくいテーマも、業界団体が主導することで効率的に展開できます。支援制度を上手に活用し、組織的な雇用環境改善を推進しましょう。
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