2024年度(令和6年度)の厚生労働省補正予算案では、8454億円の追加予算が組まれました。医療・介護分野の賃上げ支援や人材確保、医療DXの推進など6つの重点施策を軸に、医療提供体制の強化と持続可能な社会保障制度の構築を目指します。
今回は、厚生労働省の補正予算案から、職場環境や労働環境の改善に活用できる助成金や支援事業についてみていきましょう。
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この記事の目次
2024年度 厚生労働省補正予算案 追加額
厚生労働省の補正予算案の追加額は、8454億円です。うち一般会計が8414億円、労働保険特別会計が38億円、年金特別会計が41億円となりました。
2024年度 厚生労働省補正予算案のポイント
今回の補正予算案には、6つの柱が盛り込まれました。それぞれの予算額と主な施策は、以下のとおりです。
①医療・介護・障害福祉分野の更なる賃上げの支援等、医師偏在是正に向けた対策の推進 2861億円 | |
医療・介護・障害福祉分野の生産性向上・職場環境改善等による更なる賃上げ等の支援 | 1892億円 |
医療需要等の変化を踏まえた医療機関に対する支援 | 428億円 |
介護・障害福祉における介護テクノロジーの導入、協働化等の支援 | 223億円 |
介護人材の確保、育成及び定着に向けた取組支援 | 46億円 |
医師偏在是正に向けた医師不足地域の診療所の承継・開業の支援、リカレント教育の実施及び医師のマッチングの支援等 | 109億円 など |
②持続的・構造的賃上げに向けた支援等 313億円 | |
最低賃金の引上げに対応する中小企業・小規模事業者向け生産性向上支援 | 297億円 |
育児休業取得時等の業務代替支援及び男性の育児休業取得促進に向けた取組支援の拡充 | 制度要求 |
シルバー人材センター会員の就業環境の整備に向けた取組の強化 | 8.5億円 など |
➂創薬力強化に向けたイノベーションの推進、医薬品等の安定供給確保 442億円 | |
バイオ後続品に係る製造施設整備の支援 | 65億円 |
医療上必要不可欠な医薬品等の安定供給を図るための支援 | 14億円 |
抗菌薬の安定供給に向けた体制整備 | 3.6億円 |
革新的医療機器の創出に向けた産業振興拠点の強化 | 7.7億円 など |
④医療・介護DX等の推進 1447億円 | |
診療報酬改定DXの取組の推進 | 104億円 |
マイナ保険証の利用促進に向けた取組 | 353億円 |
介護情報基盤の整備等に向けた取組の強化 | 174億円 など |
⑤国際保健・次なる感染症に備えた対応等 1022億円 | |
アジア諸国等における外国医療人材育成の促進等 | 4億円 |
次なる感染症への対応力強化に向けた体制強化 | 424億円 など |
⑥国民の安心・安全の確保 2205億円 | |
女性の健康総合センターの体制の充実、相談支援体制の構築 | 6.9億円 |
認知症の早期発見・早期介入実証プロジェクトの推進及び認知症施策推進計画の策定支援等 | 3.4億円 |
障害者の社会参加の推進等、共生社会の実現に向けた取組 | 47億円 |
居住支援を含む生活困窮者等の支援体制の整備及びNPO法人との連携強化等 | 66億円 |
地域におけるこども・若者等の自殺危機への対応強化、官民協働等による困難な問題を抱える女性への包括的な支援体制の強化 | 22億円 |
能登地域等に対する復旧・復興の支援、医療施設等の耐災害性強化等 | 497億円 など |
出典:厚生労働省 令和6年度 厚生労働省補正予算案のポイント
医療現場における人材確保や働き方改革、省力化などの事業に、特に大きな予算が組まれました。そのほか、賃上げやDX化の促進、社会的弱者への支援等が盛り込まれています。
では次に補正予算案に提示された、施策についてみていきましょう。ここでは助成金や補助金、人材確保や賃上げ等に関わる施策を中心にまとめました。
介護人材確保・職場環境改善等に向けた総合対策 (介護人材確保・職場環境改善等事業) 806億円
介護職員等処遇改善加算を取得している事業所の生産性を向上し、業務効率化や職場環境の改善を図り、介護人材確保・定着の基盤を構築するための補助事業です。
当該職場環境改善等の経費のほか、介護職員等の人件費も対象になっています。
最低賃金の引上げに向けた環境整備を支援する業務改善助成金 297億円
業務改善とともに、事業場内最低賃金を一定額以上引き上げる中小企業・小規模事業者を対象にした助成事業です。
助成対象、助成率、上限額は以下のとおりです。
【助成対象】
・中小企業事業者であること
・事業場内最低賃金と地域別最低賃金の差額が50円以内であること
【助成率】※()内は生産性要件を満たした事業場の場合
900円未満 | 900円以上950円未満 | 950円以上 |
9/10 | 4/5 (9/10) | 3/4 (4/5) |
【上限額(単位:万円)】
引き上げる労働者数 | 引き上げ額 | |||
30円 | 45円 | 60円 | 90円 | |
1人 | 30 (60) | 45 (80) | 60 (110) | 90 (170) |
2~3人 | 50 (90) | 70 (110) | 90 (160) | 150 (240) |
4~6人 | 70 (100) | 100 (140) | 150 (190) | 270 (290) |
7人以上 | 100 (120) | 150 (160) | 230 | 450 |
10人以上 ※ | 120 (130) | 180 | 300 | 600 |
※引上げ労働者数10人以上は、一定の要件を満たした場合に適用
両立支援等助成金の拡充(育休中等業務代替支援コース及び出生時両立支援コースの拡充) 制度要求
「共働き・共育て」の実現に向けて、「育休中等業務代替支援コース」の拡充および「出生時両立支援コース」の見直しを行います。育休中等業務代替支援コースでは、手当支給等の場合の支給額が増額となり、出生時両立支援コースでは、第1種の受給後に支給されていた第2種について「第1種未受給でも申請可能」になります。
電子処方箋の活用・普及の促進事業 61億円
都道府県が実施する電子処方箋の活用・普及に向けて、都道府県が行う医療機関等への導入費用の助成を補助します。
医療扶助のオンライン資格確認導入に係る指定医療機関・指定薬局への補助 75億円
医療機関等に対し、医療扶助のオンライン資格確認の導入に向けたレセプトコンピューターシステム等に係る改修費用等を助成します。
生活困窮者等支援民間団体活動助成事業 5億2000万円
生活困窮者やひきこもり状態にある者等に対する相談や支援を実施する、民間団体が助成されます。
社会福祉施設等施設整備費補助金(障害者の社会参加及び地域移行を推進するための受け皿等の整備事業) 31億円
障害者の社会参加支援や地域移行支援を推進するため、自治体の整備計画にもとづく整備を推進します。
まとめ
厚生労働省の2024年度補正予算案では、特に医療・介護現場の課題解決に向けた施策に大きな予算が組まれました。医療・介護・障害福祉分野へは2861億円の予算が配分され、うち1892億円が生産性向上と職場環境改善による賃上げ支援に活用されます。
また医療・介護分野のDX推進には1447億円を投じ、電子カルテの共有化とマイナ保険証の普及を目指します。
そのほか、生活や労働を守る施策が多く盛り込まれています。賃上げや社会的弱者に対する支援など、時代の流れを反映した補正予算案となりました。政策の流れを把握し、来年度の事業計画に役立てましょう。