11月29日、政府は2024年(令和6年度)補正予算案を閣議決定しました。
観光庁の補正予算案は総額543億円を計上し、「観光地・観光産業の再生・高付加価値化」に300億円、「地方誘客促進によるインバウンド拡大」に80億円を投じて、観光振興を進める方針です。また、能登半島地震の観光再生支援やオーバーツーリズム対策にも重点が置かれています。
今回は、観光庁補正予算案のポイントをまとめました。
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この記事の目次
観光庁の2024年(令和6年)度補正予算案
まず4つのテーマをみていきましょう。
1. 観光地・観光産業の再生・高付加価値化 | 300億円 |
2. 地方誘客促進によるインバウンド拡大 | 80億円 |
3. オーバーツーリズム対策 | 158億円 |
4. 能登半島地震の観光再生支援 | 5億円 |
「観光地・観光産業の再生・高付加価値化(300億円)」で、宿泊施設の改修や廃屋撤去等を支援するほか、「地方誘客促進によるインバウンド拡大(80億円)」で、高単価な特別体験商品の造成や観光コンテンツの開発、販路開拓、情報発信等を強化します。
また、オーバーツーリズム対策や受け入れ環境の整備(158億円)を進めるとともに、能登半島地震の復興支援(5億円)として、専門家の派遣やプロモーション活動を支援します。
観光庁は、これらの取り組みを通じて、地域の魅力を高め、持続可能な観光地をつくりあげていく考えです。続いて、主な施策を確認しましょう。
地方創生プレミアムインバウンドツアー集中展開事業
訪日外国人観光客の消費額をさらに引き上げ、地方経済への波及効果を強化することを目的として、「地方創生プレミアムインバウンドツアー集中展開事業」では地域の自然や文化、食、スポーツといった観光資源を活用し、高付加価値な特別体験商品である「プレミアムインバウンドツアー」の造成を進めます。
例えば、特別名勝での茶懐石体験や伝統工芸体験など、地域ならではの体験型観光商品の開発を支援します。
事業スキームとしては、1,000万円の定額補助に加え、追加費用を補助(補助率1/2)する仕組みを予定しており、地方公共団体やDMOなどが対象となっています。
出典:観光庁 令和6年度観光庁関係補正予算
地域観光魅力向上事業
地域観光魅力向上事業は、観光に未活用の地域資源を活用し、独自性や新規性の高い観光コンテンツを開発することで、地方への持続的な誘客を目指します。この事業では、観光分野の専門家によるアドバイスを受けながら行う観光コンテンツの磨き上げや商品化、販路開拓、情報発信を総合的に支援します。
事業スキームとして、600万円以上の事業費を対象に、400万円までは定額補助、それを超える部分には補助率1/2で最大1,250万円の支援を行う予定です。
・地域固有の自然資源の活用(北海道美瑛町:インフラ・ジオツーリズム)
・歴史・文化に関する地域資源の体験化(三重県伊勢市:お伊勢さんについて学ぶ文化観光インタープリテーション)
・地域に根ざす伝統工芸や生業の観光活用(岐阜県高山市:飛騨春慶塗体験)
・閑散期の新たな魅力の創出(沖縄県宮古島市:冬の星空観測)
オーバーツーリズムの未然防止・抑制による持続可能な観光推進事業
オーバーツーリズムの未然防止・抑制による持続可能な観光推進事業は、観光客の過度な混雑やマナー違反による地域住民への影響を軽減しつつ、旅行者の満足度低下を防ぐことで、地域と観光客が共存できる観光地づくりを目指します。この事業では、受け入れ環境の整備や観光需要の適切な管理、需要の分散・平準化、マナー違反防止の取り組み等を支援します。
事業スキームは、地域一体型(地方公共団体やDMOが主体)と実証・個別型(地方公共団体、DMO、民間事業者が主体)の2種類があり、地域一体型の補助率は1/2または2/3で、上限額は8,000万円です。実証・個別型は、補助率1/2で上限額は5,000万円になります。
・手荷物配送スキームを通じた手ぶら観光の推進
・観光客向けの移動手段の確保
・観光スポットや周辺エリアの混雑状況の可視化・リアルタイム配信
・マナー啓発コンテンツの整備 等
観光地・観光産業における人材不足対策事業
観光地・観光産業における人材不足対策事業は、観光需要の急速な回復に伴い深刻化している宿泊業の人材不足を解消し、地方への旅行者数や観光消費額の増加を確実に取り込むことを目的としています。この事業では、大規模合同企業説明会などを通じた採用活動支援や、スマートチェックインやロボット、予約等管理システム(PMS)の設備投資支援等を行います。
設備投資支援は、補助率1/2、上限500万円が設定されています。
出典:観光庁 令和6年度観光庁関係補正予算
宿泊施設サステナビリティ強化支援事業
宿泊施設サステナビリティ強化支援事業は、訪日外国人旅行者をはじめとするサステナブルな旅行ニーズに応えるため、旅館・ホテル等の宿泊施設が実施する、サステナビリティの向上に関する取組を支援します。
たとえば、省エネ型ボイラーや太陽光発電設備、省エネ型空調といったエネルギー効率を高める設備の導入を支援します。補助率は1/2、補助上限1,000万円です。
出典:観光庁 令和6年度観光庁関係補正予算
能登半島地震からの復興に向けた観光再生支援事業
能登半島地震からの復興に向けた観光再生支援事業では、自治体、関係団体や個別事業者が一体となって行う復旧計画の作成や、復旧後の誘客促進を図るためのコンテンツ造成等を支援します。
・マーケティング実施、復旧・復興計画策定
・誘客コンテンツの造成
・情報発信、プロモーション
・宿泊施設の収益力向上支援
・専門家派遣 等
マーケティング調査を通じて効果的な復旧・復興計画を立案し、地域独自の誘客コンテンツの開発やプロモーション活動等を実施します。
出典:観光庁 令和6年度観光庁関係補正予算
地域一体となった観光地・観光産業の再生・高付加価値化
地域一体となった観光地・観光産業の再生・高付加価値化事業は、観光地全体の活力低下や施設の老朽化といった課題を解消し、宿泊施設を核とした地域の再生を図ることを目的としています。
この事業では、宿泊施設の高付加価値化や観光施設の改修、廃屋撤去、地域全体のデジタルトランスフォーメーション化(面的DX化)を支援します。補助金は補助率1/2または2/3で、民間事業者、都道府県、市町村、DMOなどが対象です。
出典:観光庁 令和6年度観光庁関係補正予算
まとめ
観光庁の2024年補正予算案は、観光地や観光産業の再生やインバウンド拡大、オーバーツーリズム対策に重点を置き、地域の観光振興を後押しする内容となっています。宿泊施設の改修や高付加価値化、観光コンテンツの開発、さらには人材不足への対応やサステナブルな旅行への関心が高まる中での環境対応型設備の導入支援など、幅広い支援が盛り込まれています。
宿泊業や観光施設の運営者の皆様は、観光地の課題解決と観光業の成長を実現するために、これから実施される支援制度の活用をご検討ください。