2026年7月14日、熱中症警戒アラートが山梨・三重・富山・兵庫・和歌山など17県に発表され、今年最多を更新しました。2025年は全国で延べ1,749回のアラートが発表され、過去最多を記録しています。さらに厚生労働省が2026年5月に公表した令和7年「職場における熱中症による死傷災害の発生状況」(確定値)によれば、2025年の職場での熱中症死傷者は1,803人(前年比546人・約43%増)で統計開始以来最多を記録。業種別では製造業365人・建設業292人と、屋外・高温環境の作業で被害が集中し、月別では7月が最多、年齢別では50代以上が半数を占めました。
こうした事態を受け、2025年6月には改正労働安全衛生規則が施行され、一定の暑熱環境下で作業を行わせる事業者には熱中症対策の実施が義務付けられました。さらに2026年4月からは、改正労働安全衛生法により高年齢労働者の労働災害防止措置が事業者の努力義務となっています。
一方で、空調服やスポットクーラーの導入、休憩スペースの整備には一定の費用がかかります。限られた予算のなかで義務化への対応を迫られ、頭を悩ませている中小企業の経営者、農業者、施設運営者の方も多いのではないでしょうか。
そこで活用したいのが、国や自治体が実施する熱中症対策関連の補助金・助成金です。厚生労働省のエイジフレンドリー補助金をはじめ、都道府県や市区町村では業種ごとに独自の支援制度が用意されています。
本記事では、2026年7月時点で確認できる熱中症対策に使える補助金・助成金について、国の制度・自治体の制度・業種別の制度(農業・私立学校・福祉/介護)に分けて解説します。
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この記事の目次
義務化された熱中症対策の対応とは?
2025年6月1日に施行された改正労働安全衛生規則により、職場における熱中症対策は事業者の義務となりました。対象となるのは、WBGT値(暑さ指数)28度以上または気温31度以上の環境下で、継続して1時間以上、もしくは1日4時間を超えて行われる作業です。
事業者には、主に次の対応が求められます。
・緊急時の対応手順の作成と関係者への周知
・作業環境のWBGT値の測定・記録・管理
・作業者への労働衛生教育と対策アイテムの配備
対応を怠った場合、労働安全衛生法にもとづく措置義務違反として罰則の対象になる可能性があります。また、2026年4月からは高年齢労働者への労働災害防止措置が努力義務化されており、職場の暑さ対策は業種を問わず避けて通れない経営課題となっています。
なお、国は毎年5月から9月にかけて、職場における熱中症予防対策の国民運動「STOP!熱中症 クールワークキャンペーン」を実施しています。取り組むべき対策の全体像を把握するうえで参考になるため、あわせて確認しておきましょう。
キャンペーンの詳細はこちら:熱中症対策で職場を守る!クールワークキャンペーンの実施方法
熱中症対策に使える補助金は「国」と「自治体」の2系統
熱中症対策に使える補助金・助成金は、全国で一律に使える制度がひとつあるわけではありません。大きく分けると、全国共通で申請できる「国の制度」と、事業所の所在地ごとに異なる「自治体の制度」の2系統があります。
| 系統 | 特徴 |
|---|---|
| 国の制度 | 全国共通。要件が明確で、公募期間も比較的長い |
| 自治体の制度 | 所在地・業種の限定あり。予算規模が小さく、早期終了しやすい |
基本的には、まず国の制度を確認したうえで、事業所所在地の自治体制度を重ねて確認するのがおすすめです。なお、国・都道府県・市区町村で同一目的の制度は重複受給できないケースが一般的なため、どの制度を利用するかは事前に検討しておきましょう。
国が実施する熱中症対策の補助金・助成金
国の熱中症対策支援はいくつかありますが、その中でも押さえておきたいのは、「エイジフレンドリー補助金(熱中症対策コース)」と「業務改善助成金」です。
エイジフレンドリー補助金(熱中症対策コース)
厚生労働省が実施する、高年齢労働者の労働災害防止に向けた取り組みを支援する補助金です。令和8年度からは熱中症対策に特化した「熱中症対策コース」が独立したコースとして新設され、制度全体の予算も前年度の7.6億円から9.5億円(約25%増)へ拡充されました。
一定の要件を満たした、60歳以上の高年齢労働者が常時1名以上就労している中小企業が対象となります。
| 対象 | 1年以上事業を実施し、役員を除く60歳以上の高年齢労働者が常時1名以上就労している中小企業事業者 |
|---|---|
| 補助率 | 1/2 |
| 補助上限 | 100万円(消費税を除く) |
| 申請期間 | 2026年5月20日〜10月31日 |
| 支払請求期限 | 2027年1月31日 |
補助対象となる機器・設備
補助対象は、「体表面を冷やすための装備・設備」「効率的な身体冷却のための機器」「健康状態の把握・管理のための機器」の3カテゴリです。具体的には次のような機器が対象となります。
・作業場または休憩場所に設置する移動式スポットクーラー(熱排気を屋外等へ逃がせる構造で、標準使用期間5年以上のもの)
・専用の冷凍ストッカー
・深部体温を推定でき、通信機能による集中管理ができるウェアラブルデバイス
一方で、一般的な扇風機・送風機・サーキュレーター、気化式冷風機、通常のエアコン、WBGT指数計、保冷温庫などは対象外です。同じ「暑さ対策」の機器でも対象・対象外が細かく分かれているため、購入前に必ず交付要綱を確認してください。
なお、スポットクーラー等が対象となるのは、屋外作業、または温湿度調整を行ってもなお室温31度・WBGT28度を超える屋内作業場での作業に高年齢労働者が就いている場合です。補助対象台数は高年齢労働者の人数分が上限となる点にも注意が必要です。
詳しくはこちら:【2026年最新】熱中症対策コースとは?空調服・スポットクーラーを補助
業務改善助成金
中小企業・小規模事業者が、事業場内最低賃金の引き上げと生産性向上に資する設備投資をあわせて行う場合に活用できる助成金です。令和8年度は制度が大きく再編され、賃上げコースが50円・70円・90円の3コースに整理されました。上限額は最大600万円、助成率は引上げ前の事業場内最低賃金が1,050円未満で4/5、1,050円以上で3/4となります。
| 対象 | 事業場内最低賃金を50円以上引き上げ、生産性向上に資する設備投資等を行う中小企業・小規模事業者 |
|---|---|
| 助成上限 | 最大600万円 |
| 助成率 | 事業場内最低賃金1,050円未満:4/5/1,050円以上:3/4 |
| 受付開始 | 2026年9月1日 |
| 申請期限 | 地域別最低賃金の発効日前日または2026年11月30日のいずれか早い日 |
熱中症対策としては、空調設備の新設・更新、スポットクーラー、空調服、従業員用休憩スペースの整備などが対象になり得ます。ただし、対象経費はあくまで「生産性向上に資する設備投資等」であるため、単なる福利厚生ではなく、作業環境改善による生産性向上の効果を申請書類で具体的に示す必要があります。
なお、令和8年度は例年と異なり春〜夏(4〜8月)は申請不可となる点、また地域別最低賃金の発効タイミング次第で申請可能期間が2〜3か月に短縮される点に注意が必要です。個別の設備が対象となるかは、申請前に管轄の労働局へ確認しましょう。
詳しくはこちら:業務改善助成金とは【2026年・令和8年】生産性向上のための設備投資に最大600万円の助成金が受け取れる!
そのほかの関連制度
このほか、直接の熱中症対策ではないものの、職場の暑熱環境の改善につながる制度として次のようなものがあります。
| 制度名 | 概要 |
|---|---|
| 働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース) | 労働環境の改善を通じて、熱中症リスクの低減にもつながります |
| 脱炭素ビルリノベ事業(環境省) | 高効率空調などの導入により、熱中症対策と省エネを両立できます |
| 省エネ・非化石転換補助金(経済産業省) | 高効率空調や換気設備の更新が「設備単位型(Ⅲ型)」の補助対象に含まれます |
空調設備の全面的な更新を検討している場合は、省エネ系の制度もあわせて確認するとよいでしょう。
地方自治体が実施する熱中症対策補助金の例【令和8年度】
都道府県や市区町村でも、独自の熱中症対策補助金を実施しています。自社が使える制度を探す際は、「都道府県名+市区町村名+熱中症対策 補助金」で検索する方法が有効です。あわせて、地元の商工会議所・商工会の公募情報も確認しておくとよいでしょう。
ここでは、令和8年度に公募が確認できた事業者・職場向けの制度を紹介します。なお、本記事で取り上げていない自治体でも同様の制度が設けられている場合があります。詳細は各自治体の公式サイトや担当窓口でご確認ください。
東京都:暑さに配慮した職場環境づくり奨励金
令和8年度に新設された、都内小規模企業者向けの奨励金です。熱中症を生ずるおそれのある作業を行う職場がある小規模企業等が、対象となる熱中症予防対策に取り組んだ場合に、一律20万円(1事業者あたり1回限り)が支給されます。
| 支給額 | 一律20万円(1事業者あたり1回限り) |
|---|---|
| 募集企業数 | 年間1,000社(年4回募集) |
| 対象 | 熱中症を生ずるおそれのある作業を行う職場がある都内小規模企業等 |
| 申請方法 | Jグランツで事前エントリー |
令和8年度は年間合計1,000社の枠を、以下の4回に分けて募集します。第1回・第2回はすでに事前エントリーを終了しており、今後の申請機会は第3回・第4回となります。
| 回 | 事前エントリー期間 | 予定受付企業数 |
|---|---|---|
| 第1回 | 2026年4月27日〜5月13日(終了) | 250社 |
| 第2回 | 2026年6月22日〜6月26日(終了) | 300社 |
| 第3回 | 2026年8月24日〜8月28日 | 300社 |
| 第4回 | 2026年10月19日〜10月23日 | 150社 |
対象事業者の主な要件は、本社または主たる事業所が都内にあること、業種ごとの人数要件(小売業・サービス業・卸売業は5人以下、製造業・建設業・運輸業等は20人以下)を満たすこと、常時使用する従業員かつ雇用保険の被保険者である者を1名以上、6か月以上継続雇用していることなどです。
支給を受けるには、次の3つすべてを実施する必要があります。
- 厚生労働省の要綱に規定する熱中症予防対策の実施
- 熱中症予防対策に資する物品の購入
- 取組の報告
物品購入費の補填ではなく、予防対策の体制づくり全体を支援する制度である点が特徴です。取組実施可能期間の起算日は令和8年3月5日で、エントリー回によらず一律です。すなわち、第1回エントリー前にすでに着手・購入した取組であっても、令和8年3月5日以降であれば奨励対象となります。
なお、本奨励金は要件を満たせば必ず受け取れるものではありません。事前エントリーが各回の募集枠を上回った場合は抽選となり、通過後も取り組みの実施・支給申請・審査を経て支給が決定します。また、取組前の状況写真の提出が求められるため、物品を購入・設置する前に準備を始める必要があります。
詳しくはこちら:暑さに配慮した職場環境づくり奨励金とは|東京都の熱中症対策助成金を解説
東京都足立区:中小企業人材定着サポート助成金(熱中症対策)
区内中小企業の人材定着を目的として、熱中症対策のための設備・物品の導入経費に対し補助率1/2を助成する制度です。空調服・スポットクーラー・WBGT測定器などの購入費用が対象となります。令和8年度の申請期限は2026年8月31日で、予算がなくなり次第終了となるため、早めの申請がおすすめです。
東京都墨田区:人材確保・定着支援補助金(熱中症対策)
就業規則の整備とセットで、スポットクーラーやファン付き作業服などの熱中症対策設備を導入する事業者を支援する制度です。就業規則の整備部分は補助率1/2、暑熱作業対策部分は補助率2/3で、合計上限は100万円です。申請期限は2026年12月21日となっています。
神奈川県横須賀市:建設業熱中症対策補助金
市内の建設事業者を対象に、ファン付きウェアやスポットクーラーなどの導入費用の1/2を補助する、建設業に特化した制度です。市の競争入札有資格者名簿への登録などの要件があります。令和8年度の申請期限は2026年10月30日です。
大分県:暑熱対策事業費補助金
大分県が実施する事業者向けの暑熱対策補助金です。空調服・スポットクーラー等の熱中症対策設備の導入費用に対し、通常は補助率1/2、賃上げに取り組む事業者は補助率2/3に引き上げられる点が特徴です。申請期限は2027年1月29日と比較的長く、県外事業者にも参考になる先進的な取り組みです。
大阪府:中小事業者高効率空調機導入支援事業補助金
既存の空調機を高効率空調機へ更新する費用に対し、1/2以内(上限500万円、下限20万円)を補助する制度です。申請には「脱炭素経営宣言」への登録が必要となるため、事前に手続きを済ませておきましょう。なお、令和8年度分は2026年6月30日をもって申請受付を終了しています。人気の高い制度のため、次年度以降の実施が公表された際は早めの準備をおすすめします。
参考:大阪府「令和8年度中小事業者高効率空調機導入支援事業補助金」
長崎県長崎市:職場環境改善事業費補助金
市内中小企業の職場環境改善を支援する制度です。熱中症対策設備の導入や休憩スペースの整備などが対象となり、補助率は1/2。申請期限は2026年10月30日です。人材確保や離職防止に取り組む事業者向けの支援策として位置付けられています。
佐賀県佐賀市:職場の熱中症対策支援補助金
市内中小企業者を対象に、スポットクーラー・WBGT計測器・空調服等の導入費用の1/2以内を補助します。上限額は、常時使用する従業員が1名以上いる場合は20万円、従業員がいない場合は10万円です。
香川県丸亀市:事業者熱中症対策支援補助金
市内の中小企業者・中小企業団体等を対象に、空調服、冷却機能作業服、ファン付きヘルメット、防暑タレ、WBGT測定器、移動式スポットクーラーなどの導入費用の2/3以内(上限10万円)を補助します。事業実施前の申請が必要で、令和8年4月1日から随時受付、予算がなくなり次第終了となります。
静岡県島田市:地域産業振興事業費補助金(熱中症対策事業)
製造業、建設業、運輸業・郵便業、警備業を営む中小企業や協同組合等を対象に、空調服、冷却機能作業服、ベルトファン、ファン付きヘルメットなど、作業者向け装備品の購入を支援する制度です。熱中症対策部分の補助率は1/2、上限額は100万円。令和8年度前期の申請期限は2026年9月30日です。
農業・施設園芸向けの高温対策補助金【令和8年度】
農業・施設園芸分野は、屋外作業や園芸ハウス内での高温環境が課題となっており、都道府県・市町村が独自の高温対策支援制度を用意しています。作業者向けの空調服から施設園芸の遮熱・冷却装置まで、幅広い経費が対象になり得ます。令和8年度に公募が確認できた主な制度は以下のとおりです。
| 自治体・主管 | 制度名 | 補助率・上限 | 申請期限 |
|---|---|---|---|
| 東京都(JA東京中央会) | 暑熱対策推進事業 | 2/3 | 2026年9月14日 |
| 徳島県那賀町 | 空調服購入事業費補助金 | 1/2 | 2026年9月30日 |
| 大阪府富田林市 | 施設園芸猛暑対策補助金 | 1/2 | 2026年12月28日 |
| 島根県邑南町 | 高温対策等支援事業 | 1/4(上限50万円) | 2026年12月28日 |
| 静岡県焼津市 | 農業者猛暑対策支援事業補助金 | 1/3 | 2027年2月26日 |
| 愛知県東海市 | 営農継続支援補助事業(高温対策) | 1/2(上限10万円) | 2027年3月12日 |
| 静岡県藤枝市 | 農業者高温対策事業費補助金 | 1/3 | 2027年3月31日 |
これらの制度は、園芸ハウスの遮光・遮熱資材、細霧冷房・循環扇・換気扇などの環境制御機器、作業者向けの空調服・ファン付き作業服・冷却ベストなどが対象となるケースが一般的です。東京都のJA東京中央会が実施する暑熱対策推進事業は補助率2/3と手厚いのが特徴で、都内農業者は優先的に検討するとよいでしょう。
なお、労災保険に特別加入している農業事業主であれば、国のエイジフレンドリー補助金や業務改善助成金の対象になる場合もあります。制度ごとに要件が細かく異なるため、購入前に地元の農政部局・農協へ確認してください。
私立学校向けの暑さ対策補助金【令和8年度】
児童・生徒の熱中症を防ぐため、私立学校向けの暑さ対策補助金も整備されています。体育館や普通教室の空調整備を大規模に支援する制度が中心で、令和8年度は東京都と神奈川県で公募が確認されています。
| 自治体・主管 | 制度名 | 補助率・上限 | 申請期限 |
|---|---|---|---|
| 東京都私学財団 | 私立学校暑さ対策促進事業費助成事業 | 1/2(上限1,500万円) | 2026年11月2日 |
| 神奈川県 | 私立学校体育施設空調設備整備費補助金 | 1/2(上限1,500万円) | 2026年11月30日 |
いずれも上限1,500万円という大型の補助枠が特徴です。東京都の制度は普通教室・特別教室・体育館の空調設備整備を、神奈川県の制度は体育施設の空調設備整備を対象としています。夏場の教育活動・部活動の安全確保に直結する制度であり、私立学校法人は積極的に活用したい支援策です。
参考:東京都私学財団「私立学校暑さ対策促進事業費助成事業」、神奈川県「私立学校体育施設空調設備整備費補助金」
福祉・介護施設向けのサービス継続支援補助金
高齢者・障害者の熱中症リスクは特に高く、福祉・介護施設では暑さ対策が生命に直結します。厚生労働省の令和7年統計では、住宅における熱中症死者の約8割が65歳以上という結果も出ており、施設利用者の安全確保は喫緊の課題です。
複数の都道府県が「サービス継続支援事業補助金」の枠組みで、施設の暑さ対策設備・備品購入費用を支援しています。エアコン・冷風機・カーテン・冷却グッズなどが対象となる場合があります。
| 自治体 | 制度名 | 申請期限 |
|---|---|---|
| 茨城県 | 障害福祉事業所等サービス継続支援事業補助金 | 2026年7月31日 |
| 福井県 | サービス継続支援事業補助金(介護) | 2026年7月31日 |
| 佐賀県 | 介護事業所等サービス継続支援事業費補助金(第2次) | 2026年7月31日 |
| 沖縄県 | 介護事業所・施設等サービス継続支援事業補助金(第2回) | 2026年7月31日 |
| 山口県 | 介護事業所等サービス継続支援事業費補助金(備品等・第2回) | 2026年8月10日 |
| 群馬県 | 障害福祉事業所等サービス継続支援事業費補助金 | 2026年8月31日 |
申請期限が2026年7月31日に集中している制度が多いため、対象施設は早急に所在地の自治体窓口へ問い合わせを行いましょう。これらの制度は感染症対策や物価高騰対策と一体化されているケースもあり、対象経費の範囲は自治体ごとに異なります。要綱を確認したうえで、暑さ対策設備の購入計画を立てることが重要です。
業種別に見る熱中症対策補助金の活用シナリオ
厚生労働省の令和7年統計では、製造業365人・建設業292人・運輸交通業・警備業等でも多くの熱中症死傷者が発生しました。ここでは、被害が集中している業種ごとに、活用できる補助金の組み合わせと対策の優先順位を整理します。
製造業(工場):全体空調と個別冷却を組み合わせる
工場の場合、建屋全体の空調更新と、作業者個別の冷却装備の2段構えで対策するのが基本です。全体空調は省エネ・非化石転換補助金や自治体の高効率空調機補助金、個別装備はエイジフレンドリー補助金や自治体の熱中症対策補助金が候補となります。静岡県島田市の地域産業振興事業費補助金のように、製造業を主要対象に据えた自治体制度もあります。60歳以上の従業員がいる場合は、エイジフレンドリー補助金の熱中症対策コースを優先的に検討しましょう。
建設業:屋外作業に特化した装備と、事業主自身の備え
建設業では屋外の高温環境での作業が中心となるため、電動ファン付き作業服・冷却ベスト・ファン付きヘルメット等の個別装備が特に重要です。神奈川県横須賀市の建設業熱中症対策補助金のように業種特化の制度に加え、業務改善助成金や東京都の暑さに配慮した職場環境づくり奨励金も活用できます。中小事業主や一人親方は労災保険の特別加入をしていないと熱中症で倒れても補償の対象外となるため、補助金活用と併せて労災保険の特別加入も検討しておきましょう。
運輸業・警備業:休憩場所とWBGT管理の徹底
トラックドライバーや交通誘導警備員は、屋外での長時間作業と限られた休憩環境が課題です。移動式スポットクーラー・冷凍ストッカー・WBGT測定器などの導入がまず求められます。エイジフレンドリー補助金の熱中症対策コースはWBGT計自体が対象外ですが、佐賀市・丸亀市などの自治体制度ではWBGT計も対象に含まれます。令和7年統計では死者19人のうち警備業が3人と建設業に次ぐ多さで、休憩体制の整備は急務です。
農業・林業:自治体・都道府県の一次産業向け制度をチェック
農林水産分野では、東京都JA東京中央会の暑熱対策推進事業(補助率2/3)や、島根県邑南町の高温対策等支援事業(上限50万円)のように、都道府県・市町村が独自に園芸ハウスの高温対策や作業者向け冷却装備を支援しています。「都道府県名+農業+高温対策」で検索し、地元農政部局や農協の情報を確認しましょう。労災保険に特別加入している農業事業主であれば、エイジフレンドリー補助金の対象になる場合もあります。
私立学校・福祉施設:大型の設備投資に対応した制度を活用
私立学校は東京都・神奈川県の暑さ対策助成事業(上限1,500万円)を活用し、体育館・普通教室の空調設備を計画的に整備できます。福祉・介護施設は、サービス継続支援事業補助金の枠組みでエアコン・冷風機等の備品購入を支援する制度が複数の都道府県で用意されています。利用者の生命・健康に直結する分野であり、大型の補助枠が設定されているため、施設運営者は早めの情報収集と申請準備を進めましょう。
補助金の対象になりやすい設備・なりにくい設備
熱中症対策に使える設備・物品は多岐にわたりますが、制度によって対象・対象外が分かれます。多くの場合、対象になりやすい設備・なりにくい設備は以下のような傾向があります。
・ファン付き作業服(空調服)、冷却ベスト
・排熱ダクト付きの移動式スポットクーラー
・ミスト設備、冷凍ストッカー
・ファン付きヘルメット、防暑タレ
【制度によって対象にならないもの】
・WBGT計測器(エイジフレンドリー補助金では対象外の一方、佐賀市や丸亀市などの自治体制度では対象)
・一般的なエアコン、全体空調(労働安全系の制度では対象外が多く、業務改善助成金や省エネ系の制度、私立学校向け助成事業では対象になり得る)
・遮熱シート、断熱工事(省エネ系の制度が中心)
導入したい設備が先に決まっている場合は、その設備が対象経費に明記されている制度から逆引きして探すのが近道です。「去年はこうだった」という情報ではなく、必ず今年度の要綱を確認してから購入計画を立てましょう。
申請の流れと注意点
申請の基本的な流れ
多くの制度に共通する申請の基本的な流れは、次のとおりです。
| ステップ | 内容 |
|---|---|
| ①要件の確認 | 自社が対象か、何に使えるか、補助率・上限額を確認する |
| ②事前準備 | 見積書の取得、事業計画書の作成、納税証明などの書類を準備する |
| ③申請 | 募集期間内に申請書類を提出する |
| ④交付決定 | 審査を経て交付決定通知を受け取る |
| ⑤発注・購入 | 交付決定後に発注・購入し、事業を実施する |
| ⑥実績報告 | 領収書や写真等を添えて報告し、補助額の確定後に入金される |
申請時の注意点
熱中症対策の補助金・助成金は、多くの制度で交付決定日より前に発注・契約・購入した経費は補助対象になりません。また、東京都の奨励金のように、物品設置「前」の状況写真が求められるケースがあります。後から写真を用意することはできないため、事前に申請手順を確認しましょう。
前年に補助を受けた事業者は対象外となる場合があります。先着順の制度は、公募期間の途中でも予算に達し次第終了するため、早めの計画策定がおすすめです。
なお、一人親方や中小事業主が自身の熱中症対策として設備・装備を導入する場合、労災保険への特別加入が事実上の前提となる制度が多い点にも注意が必要です。特別加入をしていない場合、エイジフレンドリー補助金の申請要件を満たせないほか、業務中に自身が熱中症で倒れても労災保険による補償を受けられません。補助金活用と併せて特別加入団体等への加入手続きを進めておきましょう。
熱中症対策の補助金・助成金に関するよくある質問
全国どこでも使える熱中症対策の補助金はある?
全国一律で使える制度がひとつあるわけではありません。全国共通の制度としては厚生労働省のエイジフレンドリー補助金(熱中症対策コース)がありますが、60歳以上の高年齢労働者が常時1名以上就労していることなどの要件があります。要件に合わない場合は、業務改善助成金や自治体の制度を検討しましょう。
60歳以上の従業員がいなくても申請できる?
エイジフレンドリー補助金は対象外となりますが、賃上げとあわせて設備投資を行う業務改善助成金や、年齢要件のない自治体の制度(東京都の奨励金、足立区の助成金、大分県の暑熱対策事業費補助金、佐賀市・丸亀市の補助金など)を活用できる可能性があります。
建設業でも使える熱中症対策補助金はある?
建設業も対象となる制度は複数あります。国のエイジフレンドリー補助金・業務改善助成金に加え、神奈川県横須賀市の建設業熱中症対策補助金のように業種を建設業に絞った制度も存在します。静岡県島田市の地域産業振興事業費補助金も、製造業・建設業・運輸業・警備業を対象としています。所在地の自治体で「建設業+熱中症対策」で検索してみましょう。
工場の空調設備を全面更新したい。使える補助金は?
工場の空調全体を高効率設備へ更新する場合は、省エネ系の制度が有効です。経済産業省の「省エネ・非化石転換補助金」の設備単位型(Ⅲ型)や、大阪府の「中小事業者高効率空調機導入支援事業補助金」(令和8年度分は受付終了)のような自治体独自制度が候補になります。労働安全系の制度は個別の作業者向け装備が中心のため、全体空調は対象外となる場合が多い点に注意しましょう。
個人事業主でも熱中症対策の補助金は申請できる?
申請できる制度があります。エイジフレンドリー補助金は個人事業主も労災保険に加入し60歳以上の労働者を常時1名以上雇用していれば対象となります。業務改善助成金や大阪府の高効率空調機補助金なども個人事業主が対象に含まれます。ただし、常時使用する従業員がいない一人親方は対象外となる制度が多い点に注意が必要です。
農業者・施設園芸事業者でも使える補助金はある?
農業・施設園芸分野に特化した高温対策補助金が全国の自治体で用意されています。東京都のJA東京中央会が実施する暑熱対策推進事業(補助率2/3)、島根県邑南町の高温対策等支援事業(上限50万円)、静岡県焼津市・藤枝市の農業者高温対策補助金など、園芸ハウスの遮熱・冷却設備や作業者向けの空調服が対象となります。労災保険特別加入をしている農業事業主であれば、国のエイジフレンドリー補助金の対象になる場合もあります。
私立学校の空調整備に使える補助金は?
私立学校向けには、東京都の「私立学校暑さ対策促進事業費助成事業」(上限1,500万円、申請期限2026年11月2日)、神奈川県の「私立学校体育施設空調設備整備費補助金」(上限1,500万円、申請期限2026年11月30日)などの大型助成制度があります。普通教室・特別教室・体育館の空調設備整備が対象となるため、教育活動・部活動の安全確保に活用できます。
福祉・介護施設の暑さ対策に使える補助金は?
複数の都道府県が「サービス継続支援事業補助金」の枠組みで、施設のエアコン・冷風機等の備品購入を支援しています。茨城県・福井県・佐賀県・沖縄県・山口県・群馬県などが令和8年度に公募を実施しており、申請期限は7月末〜8月末に集中しています。対象経費の範囲は自治体ごとに異なるため、要綱を確認したうえで、暑さ対策設備の購入計画を立てることが重要です。
環境省が実施する熱中症対策補助金はある?
環境省が直接、事業者向けに熱中症対策の設備導入を補助する制度は限られています。ただし、業務用建築物の脱炭素改修加速化事業(脱炭素ビルリノベ事業)のように、高効率空調・断熱改修などを通じて職場の暑熱環境改善につながる制度は用意されています。また、環境省・気象庁は熱中症警戒アラートや暑さ指数(WBGT)情報の提供、地域気候変動適応センターの運営など、対策の基盤情報の提供を担っています。
購入済みの空調服やスポットクーラーも対象になる?
原則として対象外です。多くの制度では、交付決定前に発注・購入した経費は補助対象になりません。ただし、東京都の暑さに配慮した職場環境づくり奨励金は例外的に令和8年3月5日以降の取組であれば対象となります。購入を予定している場合は、まず制度を確認し、原則として申請・交付決定を経てから発注してください。
東京都の奨励金は要件を満たせば必ずもらえる?
必ず支給されるわけではありません。事前エントリーが各回の募集枠を上回った場合は抽選となります。令和8年度は年間1,000社の枠を4回に分けて募集しており、第3回(8月24日〜28日)・第4回(10月19日〜23日)の受付が残っています。抽選を通過した後も、対象となる取り組みをすべて実施したうえで支給申請を行い、審査を経て支給が決定します。
WBGT計(暑さ指数計)の購入に補助金は使える?
制度によります。エイジフレンドリー補助金の熱中症対策コースでは対象外ですが、佐賀市・丸亀市の補助金、東京都の奨励金、足立区の中小企業人材定着サポート助成金など、自治体の制度では対象となる例があります。義務化により職場でのWBGT測定・記録・管理が求められているため、購入予定の場合は所在地の自治体制度を優先的に確認しましょう。
国の補助金と自治体の奨励金は併用できる?
同一目的・同一経費での重複受給は原則できません。たとえば、同じ空調服の購入費用について国のエイジフレンドリー補助金と東京都の奨励金を両方から受け取ることはできない場合がほとんどです。ただし、対象経費が異なれば併用できる場合もあります(例:空調服はエイジフレンドリー補助金、休憩スペース整備は自治体制度)。申請前に各制度の要綱で他制度との併給に関する規定を必ず確認しましょう。
賃上げに取り組むと補助率が上がる制度はある?
大分県の暑熱対策事業費補助金は、通常補助率1/2に対して、賃上げに取り組む事業者は補助率2/3に引き上げられる仕組みを採用しています。また、国の業務改善助成金はそもそも事業場内最低賃金の引き上げが助成の前提条件となっており、賃上げ額に応じて助成上限が最大600万円まで拡大されます。人件費増と設備投資を同時に進めたい事業者にとって有効な制度設計です。
補助金申請時に用意しておくべき書類は?
共通して必要になるのは、事業計画書(対策の必要性と効果)、対象経費の見積書(原則2社以上)、事業者の確認書類(登記簿謄本や開業届等)、労災保険の加入証明、納税証明書などです。エイジフレンドリー補助金の場合はさらに60歳以上の高年齢労働者名簿、自治体制度では所在地確認書類や取組前の状況写真が求められることが多くあります。制度ごとに必要書類は異なるため、各制度の交付要綱を確認したうえで、公募開始前から準備を進めておくのがおすすめです。
まとめ
2025年6月の法改正により、職場の熱中症対策は事業者の義務となりました。厚生労働省の統計では2025年の職場熱中症死傷者が1,803人と過去最多を記録し、製造業・建設業を中心に対策の重要性は年々高まっています。対策に必要な設備・物品の導入には費用がかかりますが、国のエイジフレンドリー補助金(熱中症対策コース)を軸に、事業所所在地の自治体制度を組み合わせることで、負担を抑えながら対策を進めることができます。
2026年7月時点では、事業者・職場向けの制度に加え、農業・施設園芸向け(東京都・徳島県那賀町・大阪府富田林市・島根県邑南町・静岡県焼津市・愛知県東海市・静岡県藤枝市など)、私立学校向け(東京都・神奈川県)、福祉・介護施設向け(茨城県・福井県・佐賀県・沖縄県・山口県・群馬県など)でも公募が確認されており、業種ごとに使える制度が広がっています。
自治体の制度は公募期間が短く、予算に達し次第終了するものが多いため、早めの情報収集と準備が重要です。まずはエイジフレンドリー補助金の要件を確認し、あわせて「市区町村名+熱中症対策 補助金」で自社の地域の制度を検索してみてください。東京都の暑さに配慮した職場環境づくり奨励金のように第3回(8月24日〜28日)・第4回(10月19日〜23日)の申請機会が残っている制度や、大分県の暑熱対策事業費補助金(2027年1月29日まで)のように長期間受付を行っている制度もあります。見積書の取得など準備は進めつつ、発注は交付決定後まで待つことが、補助金活用の基本です。
制度を上手に活用し、従業員・利用者・生徒の安全と健康を守る職場・施設環境づくりを進めていきましょう。
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