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【令和2年度概算要求】農林水産省の令和2年度概算要求について調べてみた

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農林水産省の令和2年度予算の概算要求が公表されました。農林水産省は安全な食料の安定供給、水田、畑、森林、海などの環境保全、農山漁村の振興などに取り組む官庁です。令和2年度予算の概算要求はどのような内容だったのでしょうか。さっそく調べてみたいと思います。

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令和2年度の要求額

農林水産省の一般会計要求総額は2兆7307億円で、対前年度比118.2%となりました。農地整備等の公共事業費に8436億円を要求しています。概算要求の重点事項は、以下の通りです。

1、農林水産物・食品の政府一体となった輸出力強化と高付加価値化
2、「スマート農業」の実現と強い農業のための基盤づくり
3、担い手への農地集積・集約化等による構造改革の推進
4、水田フル活用と経営所得安定対策の着実な実施
5、食の安全・消費者の信頼確保
6、農山漁村の活性化
7、林業の成長産業化と「林業イノベーション」の推進
8、水産改革の実行による適切な資源管理と水産業の成長産業化

これらの重点事項を確認しながら、どのような事業・施策に関する要求がされたのかみていきましょう。

この記事の目次

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1、農林水産物・食品の政府一体となった輸出力強化と高付加価値化

重点事項の1つ目は、農林水産物・食品の輸出の拡大を中心に予算を要求しています。

要求額の大きいものなどを、抜粋して以下に記載します。

【農林水産物・食品の政府一体となった輸出力強化】
・司令塔組織の創設:15億円
・輸出向け施設の整備と施設認定の迅速化:101億円、浜の活力再生・成長促進交付金等323億円の内数
・生産段階での食品安全確保への対応強化:19億円
・グローバル産地づくりの強化:16億円
・戦略的なマーケティング活動の強化:61億円 等

【知的財産の流出防止、規格・認証の国際化対応】
・植物品種等海外流出防止総合対策事業:6億円
・GAP(農業生産工程管理)拡大の推進:233億円の内数 等

【農林水産物・食品の高付加価値化、再生可能エネルギーの利用推進】
・6次産業化の推進:18億円の内数
・食品ロス削減・再生可能エネルギーの導入等の推進:18億円の内数 等

国産農林水産物・食品の輸出を促進するために、司令塔組織の創設や輸出環境の整備、戦略的マーケティングによって海外需要をつくり出すことなどが上がっています。また、日本の種苗の海外流出を防止する取り組み、輸出拡大のための国際的認証取得・更新の支援も行うとしました。そのほか、6次産業化の市場規模拡大へ向け、農林漁業者と多様な事業者が連携して行う新商品開発などの支援にも予算を求めています。

2、「スマート農業」の実現と強い農業のための基盤づくり

重点事項の2つ目は、「スマート農業」の実現と強い農業、畜産・酪農にするための基盤づくりにかかわる予算の要求となっています。

【「スマート農業」の社会実装の加速化とイノベーション・技術開発の推進】
・スマート農業総合推進対策事業:51億円
・農林水産研究推進事業:33億円
・「知」の集積と活用の場によるイノベーションの創出:53億円
・挑戦的農林水産研究開発事業:100億円 等

農業の現場では人手に頼る作業や熟練者でなければできない作業が多く、省力化、人手の確保などが課題となっていますが、スマート農業の実現はそれらの課題解決に役立つとして注目されています。たとえば、ロボットトラクターならば1人で複数台の操作をすることができ1人あたりの作業可能な面積を拡大できます。また力作業もアシストスーツの利用で従来の半分の力で持ち上げ動作が可能になり、高齢の農業者や女性などの身体的負担を軽くすることが期待されています。


政策目標として令和7年までに農業の担い手のほぼ全てがデータを活用した農業を実践することが上がっており、スマート農業の促進を加速化するため、先端技術の現場への導入・実証や、農業データ連携基盤(WAGRI)の活用促進のための環境整備等の支援などに予算を計上しました。

そのほか、イノベーション創出の支援として、海外・異分野の技術開発動向をふまえた研究開発の推進、挑戦的な研究開発(困難だが実現すれば大きなインパクトが期待される研究開発)促進などに予算を求めています。

【農業農村基盤整備(競争力強化・国土強靱化)】
・農業農村整備事業<公共>:3978億円
・農業水路等長寿命化・防災減災事業:281億円
・農山漁村地域整備交付金<公共>:1113億円 等

農業の競争力強化や国土の強靭化のため、農地の大区画化・汎用化や水路のパイプライン化、老朽化した農業水利施設の長寿命化・耐震化などを推進します。またスマート農業の基礎インフラとして先端技術を利用するために必要な無線局等の整備の推進も上がりました。
そのほか、地方の裁量で実施する農林水産業の基盤整備や防災・減災対策に必要な交付金も「農山漁村地域整備交付金」として計上しています。

【持続的な農業の発展に向けた生産現場の強化】
・強い農業・担い手づくり総合支援交付金:296億円
・持続的生産強化対策事業:233億円
・野菜価格安定対策事業:(所要額)155億円 等

産地の収益力強化と担い手の経営発展のため、農業用機械・施設の導入支援や、農業者の減少や労働力不足等に対応するための新たな生産モデル等の構築支援が上がっています。そのほか、農産・畜産を問わず現場の課題が迅速に解決されるよう、生産強化対策等を1つの事業にまとめて総合的な支援をする「持続的生産強化対策事業」や、野菜の生産・出荷の安定と消費者への安定供給を図るため、価格低落時における生産者補給金を交付する「野菜価格安定対策事業」にも予算を要求しています。

【畜産・酪農の競争力強化】
・畜産・酪農経営安定対策:(所要額)2230億円
・ICTを活用した畜産経営体の生産性向上対策:233億円の内数
・食肉処理施設再編促進・機能高度化支援事業:60億円
・草地関連基盤整備<公共>:93億円 等

意欲ある生産者が経営の継続・発展に取り組める環境を整備するため、畜種ごとの特性に応じて補給金等を交付し、経営の安定を支援します。そのほか、畜産生産体制の強化、労働力負担軽減・省力化のためのロボット・AI・IoT等の導入や、畜産農家に高度かつ総合的な経営アドバイスを提供するためのデータベース構築支援などが上がっています。

【生産資材価格の引下げ、流通・加工の構造改革】
・農業競争力強化プログラムの着実な実施に向けた調査:1億円
・食品等流通合理化促進事業:4億円 等

国内外における農業資材の価格や農畜産物の流通実態を調査し、農業資材の価格引下げや農産物の流通・加工の合理化を図る考えです。また、先端技術を活用した省人化・省力化を実現する食品流通プラットフォームの構築等を推進するための予算も求めています。

3、担い手への農地集積・集約化等による構造改革の推進

重点事項の3つ目は、担い手への農地集積・集約化等による構造改革の推進です。分散・錯綜している農地を、農地中間管理事業(農地バンク事業)が担い手へ集積させることで、「分散錯圃」を解消し農地の集約化を目指します。

出典:農林水産小 農地の担い手への集積・集約化に向けた取組状況について
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/miraitoshikaigi/suishinkaigo2018/nourin/dai11/siryou6.pdf

「分散錯圃」が解消され担い手に農地がまとまる事で、耕作放棄地拡大の抑制が期待されます。また経営面積が大きくなり機械の効率的な利用等も可能になるとみられています。

【農地中間管理機構による農地集積・集約化と農業委員会による農地利用の最適化】
・「人・農地プラン」の実質化と農地中間管理機構等による担い手への農地集積・集約化の加速化:201億円
・農地の大区画化等の推進<公共>:1854億円
・樹園地の集積・集約化の促進:233億円 等

【女性農業者、家族農業経営、法人経営など、多様な担い手の育成・確保と農業の「働き方改革」の推進】
・農業人材力強化総合支援事業:238億円
・農林水産業・食品産業における労働安全の推進:10億円の内数
・女性が変える未来の農業推進事業:1億円
・外国人材受入総合支援事業:9億円 等

前述の農地中間管理事業(農地バンク事業)のほかに、これからの農業を担う「担い手」の育成・確保に対して予算を要求しています。また、就業者の安全確保を推進するため、事故要因の調査・分析、安全性の高い技術や器具の導入を支援するとしています。

4、水田フル活用と経営所得安定対策の着実な実施

重点事項の4つめは、水田フル活用の推進に関する要求です。水田フル活用とは水田を有効に活用し食料自給率の向上を図る取り組みのことで、米を作っていない水田を利用して飼料作物や飼料用米、麦、大豆等の生産を行います。

【水田フル活用の推進】
・水田活用の直接支払交付金:3215幾円
・米穀周年供給・需要拡大支援事業:50億円
・米粉の需要拡大・米活用畜産物等のブランド化等:2億円 等

【経営安定対策の着実な実施】
・畑作物の直接支払交付金 :2029億円
・収入減少影響緩和対策交付金 :740億円
・収入保険制度の実施:149億円 等

フル水田ビジョンに基づき地域の裁量で産地づくりに向けた取り組みを支援する「産地交付金」や、米粉の需要拡大や飼料用米を活用した畜産物等のブランド化の支援のほか、麦・米・大豆等の土地利用型農業の経営安定のための交付金などに予算を要求しています。

5、食の安全・消費者の信頼確保

重点事項の5つめは、食の安全・消費者の信頼確保に関する要求です。

・消費・安全対策交付金:50億円
・家畜衛生等総合対策:61億円
・生産・製造現場と連携したリスク管理:2億円
・薬剤耐性対策:53億円の内数 等

農作物の病害虫や豚コレラ等の家畜の伝染性疾病の発生予防・まん延防止および国産農畜産物の安全性向上に向けた取り組みの支援に予算を求めています。そのほか、食品等の有害化学物質・微生物の汚染実態調査の推進などが上がっています。

6、農山漁村の活性化

重点事項の6つめは、農山漁村の活性化に関する要求です。中山間地域等における農業生産活動の支援、自然環境保全に効果の高い農業生産活動への支援などを行うとしています。

【日本型直接支払の実施】
・多面的機能支払交付金 :493億円
・中山間地域等直接支払交付金 :269億円
・環境保全型農業直接支払交付金:27億円

【中山間地農業の所得向上を始めとした農山漁村の活性化】
・中山間地農業ルネッサンス事業<一部公共>:510億円
・農山漁村振興交付金:100億円
・鳥獣被害防止対策とジビエ利活用の推進:122億円 等

農業・農村の多面的機能の維持・発揮を図るための交付金や地域の特色を活かした農業展開支援のほか、都市農村交流や農村への移住・定住を促進する取り組みに予算を求めています。また、野生鳥獣被害の深刻化に対応する取り組みや、ジビエ利用拡大に向けた取り組みも上がりました。

7、林業の成長産業化と「林業イノベーション」の推進

重点事項の7つめは、林業の成長産業化に関する要求です。意欲と能力ある経営者を育成し、持続的な林業経営を確立するための支援などが上がっています。

・林業成長産業化総合対策:163億円
・森林整備事業<公共> :1490億円
・「緑の人づくり」総合支援対策 :53億円
・森林・山村多面的機能発揮対策 :14億円
・治山事業<公共>:740億円 等

先端技術を活用したスマート林業を推進し、生産性・安全性を向上させる「林業イノベーション」への予算も求めています。そのほか「森林整備事業」として、間伐や路網整備、再造林等の推進も上がりました。また「治山事業」として、激甚化する災害に対する山地防災力強化のため、荒廃山地の復旧・予防対策、既存施設を有効活用した効率的な事前防災・減災対策などに予算を求めています。

8、水産改革の実行による適切な資源管理と水産業の成長産業化

重点事項の8つめは、水産改革の実行と水産業の成長産業化に関する要求です。

・漁業経営安定対策の強化:878億円
・漁船漁業の構造改革:53億円
・「スマート水産業」の推進:8億円
・水産基盤整備事業<公共>:867億円
・外国漁船対策等:262億円
・捕鯨対策:51億円 等

新たな資源管理システムの実施や漁業の成長産業化に向けた重点的な支援、漁港や漁場の整備などに予算を求めています。また、収益性向上を目指すため行う高性能漁船や大規模沖合養殖システムの導入支援や、水産業の抱えるニーズや課題についてICTを活用して解決する「スマート水産業」の推進なども上がっています。

まとめ

農林水産省の令和2年度予算概算要求では、農林水産物・食品の輸出力強化やスマート農業を軸とした攻めの農林水産業を展開し成長産業にしていく取り組みが上がりました。また「農林水産業・地域の活力創造プラン」等に基づく改革を実行するための予算の要求もありました。この概算要求に対し1月にどのような閣議決定がなされるのか、注目してみていきたいと思います。

参考:令和2年度農林水産予算概算要求の概要
http://www.maff.go.jp/j/budget/2019/index.html

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