「パートナーシップ構築宣言」とは、企業規模の大小に関わらず、企業が「発注者」の立場で自社の取引方針を宣言する取り組みで、令和2年6月から始まりました。企業は代表者の名前で「サプライチェーン全体の共存共栄と新たな連携(企業間連携、IT実装支援、専門人材マッチング、グリーン調達等)」や「振興基準の遵守」に重点的に取り組むことを宣言します。
成長戦略実行計画(令和3年6月18日閣議決定)において、今年度中の宣言企業数2,000社という目標を掲げ、10月19日に宣言企業数2,000社を達成しました。その後2週間ほどで3,000社に達し、11月10日現在さらに数を伸ばし3,500以上の経営者が宣言をしています。短い間に多くの経営者が宣言をし始めている理由は何でしょうか?
今回は、コロナ禍を乗り越え、取引先と共存共栄関係を築きたいとお考えの経営者の皆さまを対象に「パートナーシップ構築宣言」の成り立ちや宣言のメリット、宣言の仕方などをご紹介します。
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この記事の目次
パートナーシップ構築宣言の成り立ち
新型コロナウイルスの影響が長引いたことで、取引上の立場の悪化や不合理な計画変更、値下げなどの要請といった取引条件の「しわ寄せ」が懸念されています。
こうした課題に対応するため、2020年5月18日に開催された「未来を拓くパートナーシップ構築推進会議」での議論を受けて、新たに「パートナーシップ構築宣言」の仕組みが導入されました。この仕組みにより、大企業と中小企業が共に成長すること、取引先との持続可能な関係を築くことを目指しています。
パートナーシップ構築宣言で宣言する内容は
あらゆる規模・業種の企業や個人事業主が宣言できますが、宣言する内容はどのようなものでしょうか。
出典:パートナーシップ構築宣言とは?
宣言する内容は次の2つです。
(1)サプライチェーン全体の共存共栄と規模・系列等を超えた新たな連携
(2)親事業者と下請事業者との望ましい取引慣行(下請中小企業振興法に基づく「振興基準」)の遵守
(1)について、下記から積極的に取り組む項目を特定し、具体的に取り組み内容を示す必要があります。
1.企業間の連携(オープンイノベーション、M&A 等の事業継承支援 等)
2.IT実装支援(共通EDIの構築、データの相互利用、IT人材の育成支援 等)
3.専門人材のマッチング
4.グリーン化の取り組み(脱・低炭素化技術の共同開発、生産工程等の脱・低炭素化、グリーン調達 等)
(2)の「振興基準」の遵守については、業界の取引形態に合わせて変更することが可能ですが、宣言する取り組み内容として下記1~5があがっています。
1.価格決定方法(不合理な原価低減要請を行わない。等)
2.型管理などのコスト負担(契約のひな形を参考に型取引を行う。不要な型の廃棄を促進するとともに、下請事業者に対して型の無償保管要請を行わない。等)
3.手形などの支払条件(下請代金は可能な限り現金で支払う。手形で支払う場合には、割引料等を下請事業者の負担にしない。等)
4.知的財産・ノウハウ(知的財産取引に関するガイドラインや契約書のひな形に基づいて取引を行う。等)
5.働き方改革等に伴うしわ寄せ(取引先も働き方改革に対応できるよう、下請事業者に対して適正なコスト負担を伴わない短納期発注や急な仕様変更を行わない。等)
パートナーシップ構築宣言のメリット
こういった宣言をすることのメリットはどこにあるのでしょうか。
宣言を行った企業は、パートナーシップ構築宣言の「ロゴマーク」が使用できるようになり、ロゴマークを名刺などに記載することで、取引先との共存共栄の関係を築こうとする会社(ホワイト企業)であることをPRすることができます。また、経済産業省が実施する補助金で加点措置を受けることができます。
【パートナーシップ構築宣言の加点措置がある補助金】
(1)ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金(一般型、グローバル展開型)
革新的なサービス開発や試作品開発、生産プロセスの改善のための設備投資等を支援する補助金。
(2)ものづくり・商業・サービス高度連携促進補助金(企業間連携型、サプライチェーン型)
中小企業・小規模事業者等が連携して取り組む、生産性向上に資する革新的サービス開発・試作品開発・生産プロセスの改善を行うための設備投資や、幹事企業が主導し、中小企業・小規模事業者等を束ねて面的に高度連携を推進する取り組み等を支援する補助金。
(3)先進的省エネルギー投資促進支援事業
工場や事業所のエネルギー利用効率の向上を目的とし、省エネルギー設備に入れ替える企業(大企業含む)を支援する補助金。
(4)産業・業務部門における高効率ヒートポンプ導入促進事業
高効率ヒートポンプを新設または増設する企業(大企業含む)を支援する補助金。
SDGsの達成にも
多くの企業が取り組んでいるSDGs(持続可能な開発目標)についても、宣言の内容を実践することで、次の5つの目標の達成につながります。
目標3: すべての人に健康と福祉を
目標8: 働きがいも経済成長も
目標9: 産業と技術革新の基盤をつくろう
目標10: 人や国の不平等をなくそう
目標17: パートナーシップで目標を達成しよう
パートナーシップ構築宣言の効果についてのアンケート結果
パートナーシップ構築宣言のポータルサイトで公開されているアンケート結果によると、発注側の約94%が「宣言」を意識して仕入先と取引条件の協議をしており、受注側の半数以上が「宣言」の効果を実感したとあります。
出典:日本商工会議所 パートナーシップ構築宣言
アンケートによると、宣言を検討する際に魅力となった項目として、「共存共栄の精神に賛同した」が65.5%、次いで「取組姿勢を発信できる」48.2%、「ポータルサイト上に公表される」39.1%となっています。メリットはもちろん重要ですが、大企業と中小企業が共に成長できる持続可能な関係を構築する、というパートナーシップ構築宣言導入の基となる精神に賛同している回答が多いことがわかります。
パートナーシップ構築宣言の参加手順
取引先と共存共栄関係を築きたい、パートナーシップ構築宣言をしたい場合は、どのような手順をふめばよいのでしょうか。
難しい書類の作成などはなく、パートナーシップ構築宣言のポータルサイトからひな型をダウンロードし、必要事項を記入して、ファイルをサイト上にアップロードすると宣言の登録・公表を行うことができます。
【宣言するための5つのStep】
Step1:ポータルサイトからひな形をダウンロードする。
Step2:自社の取り組み内容にあわせて宣言文に加筆・修正を行う。
Step3:会社名と代表者名を明記(代表者のコミット)する。
Step4:PDF形式に変換してポータルサイト上にアップロードする。
Step5:内容に問題がなければ、登録・公表される。
▼「パートナーシップ構築宣言」ポータルサイトはこちら!
https://www.biz-partnership.jp/index.html
まとめ
今回は、コロナ禍を乗り越え、取引先と共存共栄関係を築きたいとお考えの経営者の皆さまを対象に「パートナーシップ構築宣言」の成り立ちや宣言のメリット、宣言の仕方などをご紹介しました。
パートナーシップ構築宣言とは、取引先との共存共栄の取り組みや、取引条件のしわ寄せ防止を代表者の名前で宣言するもので、宣言の内容は、パートナーシップ構築宣言のポータルサイト上でみることができます。政府は今年度中の宣言企業2,000社を目指していましたが、すでに宣言を公表した企業数は3,500社を超え、登録数をいまも伸ばしていることから、注目の取り組みになっているといえるでしょう。
宣言した企業には、ロゴマークを使ったPRができる、一部の補助金について加点措置の対象になる、SDGsの達成につながるなどのメリットがあります。パートナーシップ構築宣言を公表した企業が1,500社を突破した時の経済産業省のニュースリリースでは、「宣言企業へのメリットを順次追加していく」と言及されていますので、宣言を行った企業に対する支援の充実などが期待されます。
より多くの企業が宣言することで、大企業も中小企業も適正な取引を尊重する機運が醸成されますので、この機会に宣言への参加を検討してみてはいかがでしょうか。
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