政府は「人への投資」の施策パッケージによって、デジタル分野等の新たなスキルの獲得と成長分野への円滑な労働移動を同時に進めていく必要があると考えています。特に「企業間・産業間の労働移動の円滑化」に重点を置き、さまざまな取り組みを進めていく方針です。
具体的には、訓練後に非正規雇用を正規雇用に転換する企業や、賃上げを伴う転職・労働移動の実現に向け、より高い賃金で新たに人を雇い入れる企業への支援の拡充などを行います。さらに、在職者のキャリアアップのための転職支援として、民間専門家に相談して、リスキリング・転職までを一気通貫で支援する制度を新設します。
この新制度では、「専門スキルを身につける民間講座を、希望者は最大1年間受講することができ、政府は3年間で計約33万人の転職を後押しすることを目指す」といった報道もあります。本記事では、この「リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業」についてご紹介します。あわせて、政府がリスキリング支援に力を入れている理由について考えてみましょう。
参考:讀賣新聞オンライン 社会人の「学び直しから転職まで」を政府が一体支援、平均24万円助成へ
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この記事の目次
学び直しから転職までを支援する制度の担い手企業は?
リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業の一次公募では、人材会社のパーソルテンプスタッフやアデコのほか、50社以上の企業が採択されました。採択事業者は以下のとおりです。
採択事業者 | |
1 | 株式会社アイデミー |
2 | アデコ株式会社 |
3 | 株式会社ウィルエージェンシー |
4 | 株式会社エス・エム・エス |
5 | 株式会社エスワイシステム |
6 | 株式会社エヌ・エフ・ユー |
7 | 株式会社エンファクトリー |
8 | 株式会社ガイアックス |
9 | 株式会社キャリアステーション |
10 | キヤリアバンク株式会社 |
11 | 株式会社キャリアプラス |
12 | キャリアフラッグ株式会社 |
13 | キラメックス株式会社 |
14 | キラメックス株式会社 |
15 | コードキャンプ株式会社 |
16 | 株式会社コトラ |
17 | 株式会社コネクト |
18 | 株式会社さくらコミュニティサービス |
19 | ショウヨウ株式会社 |
20 | 株式会社ジンジブ |
21 | スキルアップAI株式会社 |
22 | 株式会社ディンプル |
23 | デジタルハリウッド株式会社 |
24 | パーソルキャリア株式会社 |
25 | パーソルテンプスタッフ株式会社 |
26 | 株式会社バリュー・スタッフ |
27 | ピーシーアシスト株式会社 |
28 | ヒートウェーブ株式会社 |
29 | 株式会社プロシーズ |
30 | ポート株式会社 |
31 | 株式会社ポテパン |
32 | マイキャリア株式会社 |
33 | マンパワーグループ株式会社 |
34 | レバレジーズメディカルケア株式会社 |
35 | 株式会社ワークポート |
36 | 川相商事株式会社 |
37 | 一般社団法人福祉キャリアセンター |
38 | 株式会社明光キャリアパートナーズ |
39 | 株式会社D4cアカデミー |
40 | 株式会社div |
41 | 株式会社iDA |
42 | Institution for a Global Society株式会社 |
43 | 株式会社MAIA |
44 | 株式会社SAMURAI |
45 | 株式会社TechBowl |
46 | 株式会社TIMERS |
47 | 株式会社TOASU |
48 | 株式会社ToBeキャリアパートナーズ |
49 | 株式会社UZUZ |
50 | 一般社団法人Work Design Lab |
51 | WorX株式会社 |
参考:リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業(一次公募) 採択事業者一覧
リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業 二次公募 対象は
では、ここから「リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業」の内容をみていきましょう。
本事業では、在職者が自らのキャリアについて民間の専門家に相談できる「キャリア相談対応」、それを踏まえてリスキリング講座を受講させる「リスキリング提供」、それらを踏まえた「転職支援」までを一体的に実施する体制を整備します。それにより、リスキリングと企業間・産業間の労働移動の円滑化を一体的に図ることを目的としています。
補助対象事業
補助対象となる事業は、以下の1~4を全てを含むものとします。4つの事業と取り組み内容をまとめました。
1.キャリア相談対応 | 支援を受ける個人が、民間の専門家(キャリアコンサルタント等)にキャリアについて相談し、キャリアの棚卸し、本支援を通じて目指すキャリアゴールの設定、スキルの棚卸し、リスキリング講座の検討等について相談を受けられる体制を構築した上で、個人に対する相談対応を行う取り組み |
2.リスキリング提供 | 支援を受ける個人に対するキャリア相談対応等を踏まえ、リスキリング講座を提供する取り組み |
3.転職支援 | 支援を受ける個人に対するキャリア相談、リスキリング講座の受講等を踏まえて、転職に向けた伴走支援や職業紹介を行う取り組み |
4.フォローアップ | 支援を受けた個人の転職後のフォローアップとして、転職後1年間の転職先での継続的な就業や転職に伴う賃金上昇の確認等を行う取り組み |
上記1~4には、それぞれ補助事業の要件があります。例えば、2.リスキリング提供の要件には次のようなものがあります。
- 職業との関連が明確な学びであると見込まれること ※趣味や教養の取得が目的である学びは対象外
- 受講期間が12ヶ月を超えないこと
- 受講時間が15時間以上であること
- 本事業を経由しない場合でも、同等のリスキリング講座を同価格(個人の自己負担軽減前の定価)で受けることができるものであること
詳細は、公募要領でご確認ください。
本事業の支援対象者とは
キャリア相談対応の支援開始時に在職者※(企業等と雇用契約を締結している者)である方に限定して支援を行います。なお、リスキリング講座の受講のみが目的で、雇用主の変更を伴う転職を目指していない方は、支援の対象になりません。
※在職者の例として、正社員、契約社員、パート・アルバイト、派遣社員などがあります。経営者、個人事業主、フリーランス、家内労働者等の企業等と雇用契約を締結していない者は対象となりません。
補助対象事業者
本事業の担い手企業(補助対象事業者)は、以下の全ての要件を満たす必要があります。
主な要件 |
国内に事業実施場所を有している法人、個人または教育機関(地方公共団体を除く) |
本事業を的確に遂行する組織、人員等を有している |
本事業の円滑な遂行に必要な経営基盤を有し、かつ、資金等について十分な管理能力を有している |
経済産業省からの補助金交付等停止措置または指名停止措置が講じられている者でない |
過去5年間に職業安定法または労働者派遣法の規定またはこれらの規定に基づく命令若しくは処分に違反していない |
【申請類型について】
補助事業は、前述のとおり、1.キャリア相談対応、2.リスキリング提供、3.転職支援、4.フォローアップの全てを含む必要がありますが、これらについて、単独の企業等が全てを提供しない場合は、その構成要素を複数の企業等が役割分担しながら行うコンソーシアム形式で申請をすることも可能です。
なお、コンソーシアム形式での申請の場合は、代表事業者を決めて、代表事業者以外の企業等を共同事業者として申請書を作成します。代表事業者は、申請及び事業実施に関して共同事業者の管理義務を負うこととなります。ただし、申請の内容によっては、コンソーシアム形式ではなく、別々の申請と扱うべきものと判断される場合がありますので、必要に応じて補助事業事務局にご相談ください。
補助対象経費および補助率
対象経費の区分は以下の3つです。
1.人件費
2.事業費
3.リスキリング経費※
補助率は、対象経費の区分・内容によって異なります。補助率1/2以内、7/10以内、定額、の3つに分かれています。
※リスキリング経費の補助については、最大で56万円の補助となります。
・リスキリング講座の提供価格の1/2相当額を定額補助(1人あたり上限40万円)
・転職に成功して1年間継続して働いている場合は追加で1/5相当額を定額で補助(1人あたり上限16万円)
補助対象経費および補助率の詳細は、以下の図を参考にしてください。
出典:リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業費補助金実施要領
リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業 申請方法
本事業の担い手となる「補助対象事業者」の申請書類の提出について 、受付期間と申請方法は以下のとおりです。
【受付期間】
2023年6月20日~2023年7月28日 正午まで
【申請方法】
申請様式を作成の上、上記期間に補助金申請システム「jGrants」にて提出
なお、本事業を活用して転職を希望する方は、リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業のサイト上で「転職をご検討の方」というページが近日公開予定です。
リスキリング支援をなぜ行うのか
今回は、労働者に転職の機会を与える企業間・産業間の労働移動の円滑化のための施策「リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業」についてみてきました。
最後に、政府がリスキリング支援に力を入れている理由について考えてみましょう。
日本の労働市場は、少子高齢化や技術革新の影響により、大きく変化しています。そのため、従来のスキルや知識では、仕事を見つけたり、生き残ったりすることが難しくなっているのが現状です。
また、日本の労働力人口は、今後も減少していくことが予想されており、労働力不足を解消するためにも、リスキリングにより、人々のスキルを向上させ新しい仕事に就けるようにすることが重要となっています。そうすることで、生産性の向上を図ることができると考えているのです。
加えて、リスキリングにより、人々の生活の質を向上させることができるという考えもあります。例えば、新しいスキルを身に付けることで、よりやりがいのある仕事に就いたり、より高い給料を得たりすることができるでしょう。
学び直しから転職までの支援策という特徴を持つ「リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業」では、事業の担い手の二次公募が始まっています。この制度で提供されるリスキリング講座は、また、転職率や転職支援の内容は、どうなるのでしょうか。今後、支援事業が実施されることで、どのような影響を社会に与えるのかに注目しましょう。