工場・事業場における脱炭素化のロールモデルとなる取組を支援する「SHIFT事業」のうち、省CO2型設備更新支援は、CO2削減に向けて設備更新等を行う企業を資金面でサポートしてくれるものです。「環境に配慮した活動を実施したいが資金的に厳しい」という企業を支援し、最終的に脱炭素経営によるサプライチェーン全体での脱炭素化を進めることを目指しています。
今回の記事では、SHIFT事業の「省CO2型設備更新支援」で行わなれている二次公募の概要や応募要件、補助金額などを解説します。
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この記事の目次
SHIFT事業の概要
日本では、2030年度において温室効果ガスを46%削減(2013年度比)することを目標としていましたが、さらに50%の高みに向けて挑戦を続けています。この目標達成のためには、電力排出係数改善とともに、工場や業務用ビル等の既存ストックにおけるエネルギー消費効率の改善を行うことが重要です。
SHIFT事業では、中長期の温室効果ガス削減目標達成に貢献することを目的として、意欲的なCO2削減目標を盛り込んだ「CO2削減計画の策定」の支援、およびCO2削減計画に基づく設備更新を支援する事業です。
SHIFT事業のうち、今回解説する二次公募が実施されている「省CO2型設備更新支援」は、以下のような形で活用できます。
・CO2削減計画策定支援を利用してCO2削減計画を策定し、省CO2型設備更新支援を利用して対策を実施する
・自ら所定様式のCO2削減計画を策定し、 省CO2型設備更新支援を利用して対策を実施する
省CO2型設備更新支援の要件とは
応募要件は以下のとおりです。以下ア〜コの本邦法人および団体であり、かつ(1)から(3)の要件をすべて満たすものとします。
応募要件 |
ア:民間企業(個人、個人事業主を除く) |
イ:独立行政法人通則法(平成11年法律第103号)第2条第1項に規定する独立行政法人 |
ウ:地方独立行政法人法(平成15年法律第118号)第21条第3号チに規定される業務を行う地方独立行政法人 |
エ:国立大学法人や公立大学法人および学校法人 |
オ:社会福祉法(昭和26年法律第45号)第22条に規定する社会福祉法人 |
カ:医療法(昭和23年法律第205号)第39条に規定する医療法人 |
キ:特別法の規定に基づき設立された協同組合等 |
ク:一般社団法人や一般財団法人および公益社団法人、公益財団法人 |
ケ:その他、環境大臣の承認を得て協会が適当と認める者 |
コ:地方公共団体(ア〜ケいずれかの共同申請者であり、ア〜ケいずれかと建物を共同所有する場合に限る) (1)補助事業を的確に遂行するのに必要な費用の経理的基礎を有する (2)直近2期の決算において連続の債務超過がなく、適切な管理体制および経理処理能力を有する (3)暴力団排除に関する誓約事項に誓約できる |
以下、補助対象となる設備をまとめました。
ア:エネルギー使用設備機器 |
CO2排出削減に寄与する高効率化、あるいは電化・燃料低炭素化した、産業・業務用設備機器や生産設備が補助対象となる。また、廃エネルギーを利用した産業・業務用設備機器や生産設備も補助対象。 |
イ:燃料・エネルギー供給設備機器 |
(1)低炭素燃料供給設備および受変電設備 電化や燃料転換を伴う補助対象の上記「ア:エネルギー使用設備機器」の付属設備として低炭素燃料供給設備や受変電設備を導入する場合のみ、補助対象にできる。なお、同設備からの燃料や電力を補助対象外設備機器にも供給することは、原則認められない。ただし、本事業において自主的対策として導入や改造することが整備計画書に明記されている補助対象外設備に対する供給は、特例として認める。その場合、その供給量あるいは設備容量に応じた按分比率に基づき、供給設備の補助金額を減額する |
(2)再生可能エネルギー発電設備 以下3つの条件をすべて満たす場合に補助対象となる。 ・上記「ア:エネルギー使用設備機器」を、補助対象設備として少なくとも一つ導入する ・発電した電力が100%自家消費である ・発電能力は、上記アに該当する「補助対象設備による削減量に相当する発電量」あるいは「導入した省CO2設備で使用する電気量」の多い方を上限とする |
(3)コジェネレーション発電設備 コジェネレーション発電設備は、上記「ア:エネルギー使用機器」としての位置付けもあるので、既存発電設備の更新として導入する他、システム更新として新たに導入できるが、発生した電力および熱エネルギーは 100%自家消費であることが必要。既設コジェネレーションの更新であっても、上記を満たさない場合は補助対象とならない |
(4)太陽熱供給設備 太陽熱供給設備は、単独で補助対象設備にできる。ただし、発生した熱エネルギーは、100%自家消費であることが必要 |
以下の設備は補助対象外です。
・エネルギー使用設備機器でも、CO2 削減に寄与しないもの
・家庭用設備機器
・運輸部門の設備機器
・照明、蓄電池
・外部へ供給する再生可能エネルギー発電設備/コジェネレーション発電設備
・インバータ、BEMS、FEMS
・予備や非常用等、常時使用されない設備機器
SHIFT事業 二次公募の補助率・上限額
各事業によって異なります。
【標準事業】
上限額:上限1億円(複数年度の場合は、複数年度合計の上限1億円)
補助率:1/3以内
【大規模電化・燃料転換事業】
上限額:上限5億円(複数年度の場合は、複数年度合計の上限5億円。年度あたりの上限3億円)
補助率:1/3以内
【中小企業事業】
上限額:0.5億円
CO2削減量比例型補助
排出量取引による着実な目標達成
採択事業者は、設備導入が完了した翌年度にあたる削減目標年度のCO2排出量を報告して、CO2排出量実績に相当する排出枠を確保することで削減目標を達成します。CO2排出量実績に比べ排出枠が不足している場合は、排出量取引(自己負担)によって補填します。この排出量取引ではJ-クレジット等の外部クレジットも利用可能です。
令和3年度および令和4年度では「193事業」が省CO2型設備更新支援を受けました。内訳は「工場:81件・事業場:112件」です。以下のように一定量のCO2削減(年間)に成功しています。
・1,000t超:19件
・400〜1,000以下:20件
・300〜400t以下:12件
・200〜300t以下:22件
・100〜200t以下:34件
・100t以下:22件
補助対象対策の例
公的書類で定められる敷地境界において、下記に示すような対策により、一定水準以上のCO2排出量を削減する既存の設備機器やシステム系統の更新を補助対象としています。CO2削減の主な対策としては、下記1~4およびそれらの組み合わせが考えられます。
1:高効率設備機器・システムへの更新
2:電化・燃料転換
3:再生可能エネルギー導入
4:廃エネルギー利用
設備機器の更新とは、同種の機能と同程度以下の能力(出力)を有する機器への更新のことです。更新対象となる既存機器は、撤去あるいは稼働不能状態とすることが必要になります。
システム系統の更新とは、当該システム系統の既存の構成機器の機能やエネルギー供給の全部、あるいは一部を異種の機器やエネルギーに置き換えたシステム系統とするものです。システム系統の更新においても、機能が置き換えられた既存設備は撤去、あるいは稼働不能状態とすることが原則です。
ただし、機能や能力の代替が一部に留まる等、既存設備機器を撤去・廃止することが不合理と認められる場合は、既存設備機器の継続使用を認める場合があります。
なお、補助対象対策としては、他にも以下が挙げられます。
・空調設備の更新
・蒸気ボイラの更新(重油からガスへ)
・給湯設備の更新(ヒートポンプ・ガス燃焼併用)
・冷凍冷蔵ショーケースの更新
・射出成形機の更新(油圧式から電動式へ)
・太陽光発電設備の導入
補助対象経費
設備更新事業の実施期間中に行われ、設備更新事業に使用されたことを証明できるものであり、かつ同期間内に補助事業者の支払いが完了する、高効率機器導入や電化・燃料転換を実施して二酸化炭素の排出量を削減する事業に要する以下の経費であることが必要です。
1:本工事費(材料費・労務費・直接経費・共通仮設費・現場管理費・一般管理費)
2:付帯工事費
3:機械器具費
4:測量及試験費
5:設備費
支払いのみ未完了の場合は、同期間内に請求書が発行されている場合を含みます。また、算定報告書の第三者検証費用は自己負担です。なお、設備更新後の補助対象設備のCO2排出量の計測手段として導入する計測器は補助対象です。
補助対象外の例は以下のとおりです。
1:本補助事業に使用されない機器・設備等 |
2:交付の決定日前に発生した経費 |
3:事業実施に直接関連のない経費 |
4:事務所の家賃など事業実施主体の経常的な運営経費 |
5:事業実施期間中に発生した事故・災害処理のための経費 |
6:CO2排出削減に寄与しない機器・設備や、周辺機器 (見える化機器、フェンス・保安用品、法定必需品など) |
7:既存設備の更新により機能を新設時の状態に戻すような「単なる機能回復」に係る費用 |
8:少量排出源になるような機器(非常用発電機等) |
9:照明(LED等) |
10:既存設備の撤去・移設・廃棄費(当該撤去・移設・廃棄に係る諸経費も含む) |
11:数年で定期的に更新する消耗品 |
12:産業・業務用以外の低炭素機器 |
13:予備品、予備機 |
14:建物(特定の機器を保護するための小屋程度は補助対象可) |
15:車両 等 |
申請方法
必要書類および電子媒体を下記へ提出しましょう。書留郵便等の配達記録が残る方法に限ります。持ち込みは不可です。
【郵送先】
〒101-0051
東京都千代田区神田神保町3-29-1
住友不動産一ツ橋ビル7階
一般社団法人温室効果ガス審査協会事業運営センター宛
□応募申請 □ 交付申請 □ 完了実績報告書 □ その他(同封書類の種類に✔を入れる)
GAJ事業番号(7桁)*交付申請以降に記入する
【電子データ提出先】
shift@gaj.or.jp
【必要書類】※ CO2 型設備更新支援(A.標準事業、B.大規模電化・燃料転換事業)の場合
出典:SHIFT事業 省CO2型設備更新支援(A.標準事業、B.大規模電化・燃料転換事業)公募要領
公募スケジュール
令和5年8月1日(火)~令和5年11月2日(木)*12時必着
まとめ
SHIFT事業の「省CO2型設備更新支援」は、省エネに向けて設備更新等を行う企業を資金面でサポートしてくれる制度です。自社の負担を減らしつつ、環境に配慮した活動を推進したい企業はぜひ活用しましょう。