年末・年度末は、例年企業の運転資金等の需要が高まる傾向にあります。しかし2020年から続くコロナ禍に加え、世界的に不安定な社会情勢の影響を受けた物価の高騰や経済の活性化に向けた新しい取り組みへの対応など、今年は企業も個人も複合的な負担を強いられています。
こうした状況を踏まえ、経済産業省は関係機関へ中小企業・小規模事業者に対する金融の円滑化への支援を要請しました。今回は東京都が実施する「年末特別」中小企業・雇用就業対策について、お伝えします。
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この記事の目次
中小企業等に対する金融円滑化支援の要請
「物価高克服・経済再生実現のための総合経済対策」を踏まえて11月28日に開催された「中小企業の金融の円滑化等に関する意見交換会」では、年末・年度末の資金需要の高まりに対する支援の必要性が話し合われています。
意見交換会終了後には関係大臣より関係機関へ、以下のような要請が出されました。
■事業者のニーズに応じたきめ細やかな支援の徹底すること
■条件変更や借換え等に対して、迅速かつ柔軟な対応の継続すること
■借換保証制度の円滑かつ迅速な実施・スーパー低利融資やセーフティネット貸付の積極的な活用すること
■事業者の収益力改善・事業再生・再チャレンジの総合的支援に努めること
また西村経済産業大臣は、同会議で、経営者保証に依存しない融資慣行の確立に向けた施策を年末に取りまとめるとも発言しました。
年末・年度末に向け、国や各自治体などには、中小企業・小規模事業者に対する積極的な支援が求められています。
参考:経済産業省 「物価高克服・経済再生実現のための総合経済対策」を踏まえた事業者支援の徹底等について要請しました
東京都 「年末特別」中小企業・雇用就業対策とは
こうした要請や社会情勢を背景に、11月30日、東京都では「年末特別」中小企業・雇用就業対策の実施が発表されました。これは新型コロナウイルス感染症の影響やウクライナ情勢に伴う原油高騰のほか、依然として厳しい状況の続く雇用情勢に対する対策です。
この特別対策は、「中小企業に対する金融支援の強化」「中小企業の資金繰り・経営に関する年末特別相談(夜間延長等)の実施」「労働問題と再就職に関する年末特別相談」「東京都中小企業従業員融資による生活の安定に向けた支援」「早期の再就職に向けた支援」の5つの内容にわかれています。
それぞれの内容について、見ていきましょう。
中小企業に対する金融支援の強化
資金需要が特に高まる年末・年度末に向けて、緊急的な資金需要に迅速に対応する東京都中小企業制度融資「クイックつなぎ(小口)」と「クイックつなぎ(事業一般)」の融資限度額が引き上げられます。
その概要等は以下の通りです。
【概要】
■緊急的な資金需要に対応する、短期(融資期間2年以内)のつなぎ資金を融資
■スピーディな資金調達が可能
■融資額や企業規模に応じて2つのメニューを用意
対象となるのは都・区市町が実施している融資制度で保証協会の保証付融資制度を利用し、元金返済を1年以上継続している方です。また、「クイックつなぎ(小口)」では、全国の信用保証協会の保証付融資の合計残高が 2,000万円以下であることも条件に加わります。
クイックつなぎ(小口)
■融資対象
小規模企業者
■融資限度額
300万円から500万円に引き上げ
■補助
信用保証料の1/2を都が補助
クイックつなぎ(事業一般)
■融資対象
中小企業者または組合
■融資限度額
700万円から500万円に引き上げ
【期間】
令和4年12月1日(木)~令和5年3月31日(金)
期間内の保証申込分が対象です。
中小企業の資金繰り・経営に関する年末特別相談(夜間延長等)の実施
年末の資金繰りや経営課題の解決などに向けて、専門家のアドバイスを受けることができます。それぞれの詳細は以下のとおりです。
①資金繰りに関する電話相談
年末の資金需要等に対応に関して、電話で相談することができます。
■相談実施日
令和4年12月22日(木)~28日(水)
9時00分~19時30分
ただし、土曜日と日曜日は除きます。
②総合相談・事業再生特別相談
経営課題の解決に向けた無料相談や、感染症の影響による経営状況の悪化に関するアドバイスを受けることができます。
電話のほか、オンラインや来所での相談が可能です。
■相談実施日
令和4年12月1日・8日・15日(毎週木曜日)9時00分~19時30分
令和4年12月22日(木曜日)~28日(水曜日)9時00分~19時30分
ただし、土曜日と日曜日は除きます。
なおいずれの相談も受付期間が延長され、以下の日程も相談実施日となりました。
令和4年12月29日(木)・30日(金)9時00分~17時00分
相談日のスケジュールに関しては、以下の表も参考にしてください。
出典:中小企業の資金繰り・経営に関する年末特別相談(夜間延長等)の実施 別紙
労働問題と再就職に関する年末特別相談
東京都労働相談情報センターでは、弁護士や東京労働局職員等を交え、労働に関する特別相談を実施します。相談内容に応じて、関係法令の説明・助言や関係機関の紹介などが受けられます。
また、東京しごとセンターの就職支援アドバイザー(キャリアカウンセラー)による再就職相談や職業訓練受講相談も実施されます。
■相談実施日
令和4年12月6日(火)・7日(水)
・電話相談
9時30分~20時00分
・来所相談
9時30分~17時00分
■相談内容
・解雇、雇止め、内定取消し
・休暇や休業とそれに伴う賃金の取扱い
・職場のハラスメントなどの労働問題全般
・再就職についての相談
・職業能力開発センターへの入校相談
■対象者
・労働者
・使用者等
東京都中小企業従業員融資による生活の安定に向けた支援
中小企業従業員の世界活安定を図るため、実質無利子融資や融資利率の引き下げが行われます。それぞれの内容は以下のとおりです。
①実質無利子融資
新型コロナウイルス感染拡大の影響による休業等によって収入が減少した中小企業の従業員を対象に、実質無利子融資が実施されます。
■期間
令和2年3月27日(金)より継続実施中~令和5年3月31日(金)まで
■要件
①現在の勤務先に6か月以上勤務している
②現住所に3か月以上居住し、勤務先か住所のいずれかが都内にある
③年間収入が800万円以下
④住民税を滞納していない
⑤資金使途が生活の安定のためであって、返済の見込みがある
■資金使途
新型コロナウイルス感染症の影響による生活資金
■利率
実質無利子融資
融資利率1.8% の全額を東京都が負担します
■限度額
100万円
■返済期間・返済方法
5年以内・元利均等月賦返済
②融資利率の引き下げ
感染症の影響にかかわらず、年末の生活資金のための融資の金利が引き下げられます。
■期間
令和4年12月1日(木)~令和5年3月31日(金)
団体融資は令和5年1月31日(火)までです。
≪①個人融資≫
■対象
中小企業に働く従業員
■資金用途
生活資金
■融資限度額
70万円など
■引き下げ後の融資利率
1.6%
■返済期間・返済方法
3年以内・元利均等月賦返済
ただし、融資額が70万円を超える場合の返済期間は5年以内です
≪②家内労働者融資≫
■対象
専業的家内労働者
■資金用途
一般生活資金、作業場の改善等の資金
■融資限度額
一般生活資金70万円など
■引き下げ後の融資利率
1.6%
■返済期間・返済方法
5年以内・元利均等月賦返済
≪③子育て・介護支援融資≫
■対象
・育児、介護休業を取得中の方
・妊娠から子育て期間中の方
・要介護または要支援認定を受けた、三親等以内の親族のいる方
■資金用途
育児・介護休業中の生活費または子育て・介護に必要な費用
■融資限度額
100万円
■引き下げ後の融資利率
1.3%
■返済期間・返済方法
据置期間経過後5年以内(据置期間:育児休業は子が1歳6か月に達するまで、介護休業は12か月を限度)・元利均等月賦返済
早期の再就職に向けた支援
感染症の影響等で解雇・離職を余儀なくされた方等を対象に、再就職に向けた年末特別就職面接会が開催されます。
開催日時等は以下のとおりです。
■開催日時
令和4年12月20日(火)
第1部・10時00分~13時00分
第2部・13時30分~16時30分
場所:TKPガーデンシティ御茶ノ水
対象:30~54歳
定員:各回40名程度(事前予約制)
参加企業:10社程度
問合せ先:ミドルコーナー就職1day(ワンデー)トライ事務局 電話 03-6272-8502
令和4年12月22日(木)
第1部・12時00分~15時00分
第2部・14時00分~17時00分
場所:すみだ産業会館 8階 サンライズホール
対象:55歳以上
定員:各回40名程度(事前予約制)
参加企業:10社程度
問合せ先:シニア就職1day(ワンデー)トライ事務局 電話 03-6256-9094
資金繰り・経営・雇用の悩みには、中小企業・雇用就業対策を活用しよう
例年、年末には募金や生活支援の取り組みが行われます。しかし今年は不安定な社会情勢が重なり、精神的にも経済的にも不安を抱える人が多くいることが予想されます。
ウィズコロナ時代への移行が進む一方で、東京都では完全失業率がコロナ禍以前の水準に戻っていません。
経済的な課題を抱える企業や従業員、生活資金に援助が必要な方は、ぜひ「年末特別」中小企業・雇用就業対策を申請してください。実質無利子で受けられる融資や無料の就職相談は、生活を安定させる支えになるはずです。
助けが必要なときにこそ公的な支援を利用して、困難な時期を共に乗り越えていきましょう。
まとめ
経済的な困窮は、誰にとっても身近な問題です。いまは安定している生活も、コロナ禍や世界的な情勢悪化の折には一時的な窮地に陥ることも珍しくありません。急激に変化していく時代を乗り越えるには、支援や補助を上手に取り入れ、収入の減少や負担に耐える必要があります。
「年末特別」中小企業・雇用就業対策をはじめとした支援事業を活用し、良い年を迎えてください。