2024年6月13日、東京都は令和7年度の国の施策および予算に対し、提案要求をとりまとめました。これは都が現在抱える課題の早急な解決と、施策の実現を求めるものです。提案要求は10の項目に分類されます。さらにそのうち、95の施策は「最重点」と定められ、喫緊の課題として強調されました。今回は、令和7年度国の施策及び予算に対する東京都の提案要求の概要や主な施策について、紹介します。
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この記事の目次
国の施策及び予算に対する提案要求を行う理由
急速な少子化を背景に、日本の総人口は13年連続で減少しています。また、国際的な経済成長の足かせとなっているデジタル化の遅れや安全保障問題など、現代の日本は、さまざまな社会的課題を抱えています。
そこで東京都は、人やモノ、カネ、情報が集まる強みを活かして、これらの問題解決と持続的な発展を目指します。国に対する提案要求は、こうした施策を確実に実現するために出されたものです。
令和6年度 国の施策及び予算に対する東京都の提案要求の実現状況は?
令和6年度の提案要求における事項別の実現状況は、最重点事項のうち「一部実現した」が77.9%に上りました。また、予算措置では76.1%が、制度改善では35.5%の項目が、一部実現しています。
出典:令和6年度国の施策及び予算に対する東京都の提案要求の実現状況
令和7年度提案要求のポイント
東京都の令和7年度提案要求では、以下の10の分野が挙げられました。
①地方分権改革
②国境離島の維持保全
③行財政改革
④災害対策
⑤都市整備
⑥環境・エネルギー
⑦福祉・保健・医療
⑧生活・産業
⑨スポーツ・教育
➉治安対策
各分野の施策は、総計で200以上にも上ります。このうち95点が最重点事項です。
最重点事項の内容や、具体的な要求事項について見ていきましょう。
最重点事項
提案要求のうち特に知事が国に強く働きかける事項として、以下の4つに関わる要求が最重点とされています。
【「人」が輝く】
・誰もが個性を活かし活躍できる社会を実現する。
・個別化・個性化された教育制度、高度人材の育成環境を整備する。
■施策の内容
①子育て、働き方、くらし方
②教育、人材育成・確保
③これからの長寿社会
【国際競争力の強化】
・イノベーション型・グローバル型の経済成長を実現
・あらゆる分野でデジタル先進国へと飛躍する。諸課題の解決と持続的な社会経済の発展を目指す。
・首都東京の都市インフラを強化し、日本全体の産業振興を下支えする。
■施策の内容
①スタートアップ、国際金融・経済都市
②DX
③産業を支える都市基盤の整備
④東京グリーンビズの推進
【安全・安心】
・イノベーションで首都東京の強靱化を推進し、国全体のレジリエンスを強化する。
・エネルギーの安定確保やカーボンニュートラルに向けた戦略的な取組を急速に進展し、新技術で世界をリードする。
■施策の内容
①能登半島地震を踏まえた対策の強化
②首都東京の強靱化
③エネルギー・緩和と適応
④水素、蓄電池、ZEV
【地方分権改革の推進】
・国から地方への権限移譲を進めるとともに、役割と権限に見合った財源を確保する。
・地方の自主的・自立的な行財政運営を実現する。
・「ふるさと納税」制度について、抜本的な見直しを実施する。
■施策の内容
①真の分権型社会の実現
②「ふるさと納税」制度の抜本的な見直し
今回の提案要求における最重点は、項目数では、昨年よりも16項目多くなりました。特に以下の項目は、去年の提案要求から一部変更等が行われたり、重要度が向上したりして「最重点化」されています。
■高等学校等における授業料の無償化等、高等教育に係る経済負担の軽減
■高齢者の就業を推進するための支援の充実
■物流対策の推進
■下水道事業における財源の確保
■「ふるさと納税」制度の抜本的な見直し
これらの項目は、ますます深刻化が進みつつある課題であると言えそうです。
具体的な要求事項
そのほか、主な要求事項は、以下のとおりです。
■首都直下地震等への備え
住民の生命と財産を守るとともに、首都機能への打撃を最小限にとどめるため、首都直下地震対策を具体的に推進すること など
■国際競争力強化に資するまちづくりの推進
都市拠点インフラの整備や民間開発の誘導に必要な財源を確保するとともに、制度の拡充等を図ること
■住宅の脱炭素化に向けた取組の推進
省エネ性能が高い住宅が高く評価される環境の整備のため、売買時や賃貸契約時に省エネ性能等が、適切に表示されるよう、住宅の販売・賃貸に関わる様々な主体に広く周知を行うこと など
■企業が取り組む次世代育成支援の推進
「産後パパ育休」の施行や労働者に対する個別の意向確認の義務化など、法改正内容の周知徹底等により、社会的機運の醸成や企業における取組に対する支援の強化を図ること など
■スタートアップ支援の推進
都が進めるTokyo Innovation Base(TIB)に参画し、密接な連携により、国内のイノベーション創出に向けた大きなエコシステムを育てる取組を強化すること など
■中小・小規模事業者のキャッシュレス化の推進
キャッシュレス化の中小・小規模事業者への更なる普及促進に向けた環境整備を図ること
■女性の活躍を推進する雇用就業施策等の充実
女性の活躍推進に向けた取組を行う企業への支援策の充実や、女性の再就職に向けた施策の強化を図ること
■中小企業のビジネスチャンスの拡大を図る取組の推進
「ビジネスチャンス・ナビ」について、引き続き、都と連携して全国の事業者に利用を促すこと
■物価高騰等の影響を受ける中小企業への支援の更なる充実
物価高騰等の影響を受ける中小企業について、経済が本格的な回復に至るまでの間、その支援策の更なる充実を図ること
■高等学校等における授業料の無償化等
保護者等の所得により学校選択が左右されないよう制度の見直しを行い、高等学校等の授業料の無償化を実現すること
まとめ
東京には、全国から人やモノが動いています。それに伴って経済や技術が集結し、大きなポテンシャルを持った都市として成長してきました。中小企業等を対象とした支援策も多く設置されています。東京都の動きを知ることは、国内全体の流れを知る手がかりになります。提案要求の方向性を押さえ、時代の動きを捉えて、ビジネス計画に活かしていきましょう。