前回の記事では、「女性の活躍推進責任者」を設置した企業に一律30万円が支給される奨励事業をご紹介しました。
補助金ポータル:「女性の活躍推進責任者」設置起業に30万円支給!「女性の活躍推進責任者設置等奨励金」について調べてみた
今回ご紹介するのは、「女性の活躍推進責任者」と同じく、中小企業における女性の活躍支援を目的とする奨励事業です。
この事業は、「女性の活躍推進責任者」を設置した企業が、一般事業主計画策定に係る取組に関して、フォローアップ研修と従業員向けの説明会を実施した場合に支給される奨励金です。
この記事の目次
1.「女性の活躍推進人材育成研修」とは?
今回は、「女性活躍推進責任者設置等奨励金」内の、「一般事業主行動計画策定等事業」についてご紹介します。
(1)一般事業主行動計画を策定して東京労働局へ届出
(2)行動計画の内容について従業員向け説明会を実施
「女性活躍推進責任者設置事業」を実施した場合は30万円、「一般事業主行動計画策定事業」もあわせて実施する場合には、合計60万円の奨励金が支給されます。
奨励金対象外となる場合
この事業は、「女性活躍推進責任者」設置事業の実施が必須条件です。
「一般事業主行動計画策定事業」のみを実施した場合は、奨励金の対象外となるため、注意してください。
2.対象事業主
都内に事業所がある中小企業で、研修終了日の前日までに、次の主要要件を満たしている必要があります。
①都内で事業を営んでいる常時雇用する従業員の数が300人以下の中小企業等(個人事業主を含む)であること
②常時雇用する従業員の数が2名以上、かつ、6カ月以上継続して雇用していること
③就業規則を作成して労働基準監督署に届出を行っていること
④期間の定めなく雇用されている労働者
⑤都内に登記簿上の本店または登記簿上の主たる事務所があること(個人事業主は都内で開業届の届出を出していること)
⑥過年度に「女性の活躍推進責任者」を任命した企業は、女性の活躍推進責任者が、次の(1)~(3)の実施予定をしていること
(1)「フォローアップ研修」を受講すること
(2)一般事業主計画の策定を東京労働局へ届け出ること
(3)従業員向け説明会の実施を行うこと
「推進責任者設置事業」「行動計画策定事業」いずれも実施が必要な場合
①長時間労働の課題がある(残業時間が月平均で45時間を上回っている)申請企業等は、行動計画に長時間労働の是正に係る目標を掲げる場合、交付申請を行うことが出来る
②従業員が女性のみの中小企業等は、行動計画に現状を上回る取り組み目標を掲げること
③従業員が男性のみの中小企業等は、行動計画に女性の採用に係る目標を掲げること
※このほかの要件は、「平成29年度東京都女性活躍推進責任者設置等奨励金 募集要項」からご確認ください。
3.申請の対象者
「女性の活躍推進人材育成研修」終了後、「女性の活躍推進責任者」として任命された方で、受講日に4時間通じて受講できる方が対象です。
4.研修内容等
1.実施期間
平成29年6月~平成29年12月まで
2.実施回数
1回あたり4時間、計8回
3.実施場所
都内23区3か所、多摩地区1か所
(新宿駅周辺、渋谷駅周辺、中野駅集権、立川駅周辺)
4.定員
1回60名程度(計500名・500社)
(応募者多数の場合は抽選です)
5.受講料
無料
6.研修内容
自社の行動計画の策定等、さらに取り組みを進めていくためのフォローアップ研修を実施します。
企業における女性推進の取り組み事例、社内の制度作り、実際に企業での取り組みを進めていくのに必要な知識を学ぶ研修です。
(1)目的
人材育成研修で習得した知識を実務に生かすために、事例を用いて行動計画策定を実施する
(2)ゴール
行動計画策定までの一連の流れを体験することにより、自社での行動計画策定の具体的なステップをイメージすることができる。
5.行動計画策定について
「女性活躍推進法」では、女性が職業生活の希望に応じて十分に能力を発揮し、活躍できる環境整備を推進に関する取組を実施するよう努めること、とされています。
常時雇用する労働者の数が301人以上の事業主に対しては、
■女性の活躍状況の把握や、課題分析
■課題解決にふさわしい数値目標と、行動計画の提出・周知・公表
■自社の女性の活躍に関する情報の公開
を行う必要があります(300名以下の中小企業は努力義務)。
参考:厚生労働省 女性活躍推進法特集ページ
厚生労働省では、企業における女性の活躍状況に関する情報を集約したデータベースを公表しています。このサイトでは「女性活躍推進法」に基づく、一般事業主行動計画を公表している企業一覧が検索可能です。
女性活躍について、「他社の企業はどのような取組をしているのだろう?」という疑問など、
作成時の参考にもなるので、ぜひ一度確認してみてくださいね。
参考:厚生労働省 女性の活躍推進企業データベース
6.導入事例
1.事業の種類:総合印刷業
【課題】
営業および制作部門の残業時間の削減
【解決策】
ノ―残業デー以外のワークライフバランスの実施を行う。
社内に女性活躍推進委員会を設置し、潜在化している女性社員の意見を見える化させる。
既存のCSR推進委員会の中に、独立した「女性活躍推進部会」を設立し、リーダーとして女性社員の相談窓(メンター)として活動を行う。
2事業の種類:ソフトウェア開発
【課題】
女性社員が少なく、育児休業・短時間勤務などの制度利用実績が少なく、都度対応している状況。
①短時間勤務中の社員が、保育園卒業までに短時間勤務を延長したい旨の要望が発生している。
②事前に女性のライフイベントで発生する手続きや懸念事項、本人に確認することなどの情報を纏められていない。
③事業所が点在しているため、女性社員のコミュニケーションの機会が少なく、現在抱えている悩みや問題を把握しづらい。
【解決策】
①育児短時間勤務制度の適用範囲を見直し(適用範囲を拡大)、育児休業規定を改訂。
②女性全員が見られるグループウェア上の掲示板へ、女性のライフイベントが発生した際に必要な情報を事前にアップし、情報を蓄積させていく。事前の情報展開で社員も安心でき、必要な情報展開漏れの防止にもなる。
また、蓄積だけでなく、経験者からの情報収集や、社員からの意見、要望をヒアリングする場としての運用も行う。
③定期的に女性社員同士の懇親会を企画、開催する。
【今後の予定】
育児休業取得後、安心して社員が現場復帰できる働き方を検討していく必要がある。
女性社員の採用率アップ、現在雇用している社員の定着率アップに繋げ、社員数を増やし、業績アップを目指す。
7.申請方法等
1.申請方法
申請は、持参または郵送で受け付けています。
郵送の場合は、双方に記録の残る簡易書留で送付してください。
2.申請受付場所
東京都産業労働局雇用就業部労働環境化 雇用環境整備推進担当が窓口です。
〒163‐8001
東京都新宿区西新宿2‐8‐1 東京都庁第一本庁舎31階北側
電話:03‐5320‐4645
申請受付時間は、平日午前9時30分から午後5時まで (正午~午後1時までは除く)です。
3.「一般事業主行動計画策定届」の提出先
申請受付場所と異なり、東京労働局が提出窓口となるため注意してください。
〒102‐8305
東京都千代田区九段南1‐2‐1 九段第3合同庁舎14階
電話:03‐3512‐1611
提出時には、提出用・控えの2部の用意が必要です。
8.手続きの流れ
過年度に「女性活躍推進責任者」を任命している企業が対象です。
※再度になりますが、「行動計画策定事業」のみの受付はできません。
必ず「女性活躍推進責任者」の設置事業を実施する必要があるので、気をつけてください。
Step1:「フォローアップ研修」申込・受講
↓
【東京都】終了証書の交付(郵送)
↓
Step2:東京都へ事業計画書兼交付申請書等の提出
「フォローアップ研修」修了の翌日から1カ月以内が提出期限です。
↓
【東京都】審査・交付決定(郵送)
↓
Step3:「一般事業主行動計画」の策定、東京労働局への届出、従業員説明会の実施
↓
Step4:東京都へ実績報告書等の提出
奨励金の交付決定後、「フォローアップ研修」修了日の翌日から3か月以内が提出期限です。
↓
【東京都】審査・奨励金額の確定通知(郵送)
↓
Step:5東京都へ請求書の提出
↓
【東京都】奨励金の交付
↓
Step6:東京都から取組状況報告・事業協力依頼
↓
東京都へ取組状況報告・事業協力
↓
【東京都】ホームページ等にて取組内容の公表、事業の情報発信
必要書類について
支給申請書類については、「TOKYOはたらくネット」からダウンロードください。
また、申請様式の書き方などは、募集要項をご確認ください。
支給のポイント
この助成事業は、女性責任者を設置したら支給確定するというものではありません。
女性の活躍推進責任者を中心に、社内の女性が能力をより発揮し、活躍できるように「教育の充実」と「環境整備」にむけた行動計画の取り組みを行うことが必要です。
行動計画では、次の①~④項目を記入する必要があります。
①計画期間
②会社の課題
③目標
④取組内容と実施時期
一般事業主行動計画記入例については、募集要項(18頁)をご確認ください。
フォローアップ研修内でも、行動計画の策定までの一連の流れを体験し、自社での具体的なステップのイメージ付けや、社内の制度作りや取組を進めていくための知識を学ぶことができるので、研修はシッカリ受講するようにしてくださいね!
前述でもご紹介しましたが、厚生労働省 女性の活躍推進企業データベースでも事例を公表しているので、作成時の参考にご確認下さい。