皆さま、災害が起こったときの備えはしていますか?
東京でもいつ大規模地震があるかわからない、災害が起きたら会社としてどうすべきか、など不安に思うことはありながらも、備えるための具体的な行動に移せていない企業も多いのではないでしょうか。地震や台風、豪雨などの自然災害以外にも、テロ攻撃、不正アクセス、感染症など、さまざまなリスクが存在しています。
近年ますますBCP( ※事業継続計画)策定の重要性が高まっていますが、帝国データバンクの意識調査によると、BCP策定をしている企業はわずか18.4%で、「策定意向あり」は 48.6%と3年連続で5割を下回りました。
参考:事業継続計画(BCP)に対する企業の意識調査(2023 年)- 帝国データバンク
被害に遭う前に、事業継続を可能にする準備をしておくことが重要です。東京都では、策定したBCPの実践に必要な設備購入を助成する制度があります。ぜひこの助成金を活用しながら、しっかりと準備を進め、「いざ」というときに備えてみてはいかがでしょうか。
※BCPとは
BCP(Business continuity planning事業継続計画)とは、企業が自然災害、大火災、テロ攻撃などの緊急事態が発生したときに、その損害を最小限にとどめつつ、重要な業務が中断されないように、平常時から緊急事態が発生したときの事業継続について準備をしておくことです。
参考:中小企業庁「中小企業BCP策定運用指針」
この記事の目次
助成金の目的
この助成事業は、中小企業がBCPを実行するために必要な基本的な物品や設備の導入経費の一部を支援し、企業のBCPの策定と対策用品の備蓄等を促進することを目的としています。さらに、災害などで基幹システムが損害を受けた場合の業務の継続性を確保するため、基幹システムをクラウド化する費用の一部も助成の対象としています。
参考:BCP 実践促進助成金【募集要項】
助成対象事業者の要件
主な申請要件は以下のとおりです。
主な要件 |
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(1)法人・個人について 下記①~④のいずれかに該当するものとします。 ①中小企業者 ②中小企業団体 ③個人事業主 ④小規模企業者 (2)BCPの認定について 下記①~③のいずれか1つのBCPを提出可能であることとします。 ①平成29年度以降に「BCP策定支援事業(BCP策定講座・BCP策定コンサルティング)」の支援を受け、受講内容に基づいて作成したものである。 ②「事業継続力強化計画」の認定を得ており、その内容に基づいて作成したものである。 ③平成28年度以前のBCP策定支援事業等を活用して作成したものである。 (3)都内での事業継続について 下記①②のいずれにも該当するものとします。 ①法人:東京都内に登記簿上の本店もしくは支店を保有している。個人:開業届を提出し東京都内で営業している。 ②東京都内で実質的に1年以上事業を営んでいる。 |
都内に本社があり、都外の事業所に設置する場合は、茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、神奈川県及び山梨県に限り対象となります。
また、以下に当てはまる場合は対象外になるのでご注意ください。
・大企業が単独で発行株式総数または出資総額の1/2以上を所有または出資している。
・大企業が複数で発行株式総数または出資総額の2/3以上を所有または出資している。
・役員総数の1/2以上を大企業の役員または職員が兼務している。
助成対象事業
助成対象事業はBCPで定めた、地震、風水害、感染症拡大など、発生が予見できないリスクに対する防災・減災といったリスクの軽減および回避を目的とした対策の実施に必要となる、基本的な物品・器具、設備の購入や設置に係る下記の事業が対象です。
緊急時用の自家発電装置、蓄電池 |
従業員等の安否確認を行うためのシステムの導入又はサブスクリプション契約によるサービスの利用 |
データのバックアップ専用のサーバ(NAS)、クラウドサービスによるデータのバックアップ |
地震対策としての制震・免震ラックへの買い替え、飛散防止フィルム、転倒防止装置の設置等 |
緊急時用の従業員用非常食(水・食料等)、簡易トイレ、毛布、簡易浄水器等の備蓄品 |
災害対策用物品設備(土嚢、止水板等)の購入(ハザードマップの提出が必要) |
感染症を想定したもの(マスク、消毒液、体温計等) |
BCP の補完として実施する基幹システム(ERP、CRM、SFA 等の内、企業の業務遂行の基幹となるシステム)の防災力強化のためのクラウドサービスの導入(クラウド化) |
耐震診断 |
助成対象経費
下記について、必要最小限の費用が助成対象経費になります。
- 物品・設備購入費
- 工事費等
- クラウドサービス利用料等
助成対象外経費
以下の項目については、助成金対象外ですのでご注意ください。
①建物・構築物の建築、増築、改築、改修、および土木工事建物付属設備の設置・補修工事に係る経費等
②保険料
③人件費
④維持管理費、機器等の保守費、サポート費
⑤運営、業務等委託費、通信費
⑥ドキュメントの作成費、操作等の教育費用、機器またはクラウドサービス提供元の導入支援費用
⑦設計費、改修費、開発費、契約にかかる保証金
⑧消費税その他の租税公課、共通仮設費、現場管理費、一般管理費に含まれる経費
⑨既存設備等の撤去・処分のための工事に要した撤去費、移設費(データ移行費)、処分費
⑩消耗品、汎用性の高い備品、機器等に係る経費(乾電池、文房具類、パソコン・スマートフォン・タブレット、金庫等)
⑪借入金などの支払利息及び遅延損害金
⑫数量・品質的に過剰とみなされる設備を設置する経費
⑬中古品の購入に係る経費
⑭リースによる設置や割賦販売で購入する設備に係る経費
⑮親会社、子会社、グループ企業等、関連会社との取引により発生する経費
⑯自社製品又は自社で取り扱う製品の購入に係る経費、もしくは付帯設備単体のみの購入に係る経費
⑰助成金の交付決定日より前に導入された設備等に係る経費
⑱助成対象期間内に支払が完了していない経費
⑲普通預金・当座預金からの振込以外の方法(手形・小切手・為替・現金・電子マネー等)で支払った経費
⑳その他、理事長が適切ではないと判断する経費
助成率および助成限度額
対象者 | 助成限度額 | 助成率 | 申請下限額 |
中小企業者等 | 1500 万円(クラウド化の助成額を含む。クラウド化の上限は450万円) | 1/2 以内 | 10万円 |
小規模企業者 | 2/3以内 |
事業の流れ
色付きの部分は申請者が行う手続きです。
- 申請にあたり、東京都か公社の支援により策定したBCP、または中小企業強靱化法に基づく「事業継続力強化計画」の認定を受け、その内容に基づいて作成したBCPの提出が必須となります。
- 申請後、必要に応じ現地調査が行われる場合があります。
- 事業完了後5年間、設備の稼働状況等について報告義務があります。
申請スケジュール
申請回 | 請エントリー・電子申請受付期間 | 交付決定 | 助成対象期間 |
第1回 | 令和6(2024)年 5月13日(月)9:00時~ 5月17日(金)17:00 |
令和6年7月下旬 | 令和6年 8月1日~11月30日 |
第2回 | 9月9日(月)9:00~ 9月13日(金)17:00 |
11月下旬 | 令和6年12月1日~令和7年3月31日 |
第3回 | 令和7(2025)年 1月8日(水)9:00~ 1月15日(水)17:00 |
令和7年3月下旬 | 令和7年 4月1日~7月31日 |
申請方法
【①講座の受講等】
BCP策定事業による支援や事業継続力強化計画の認定を受けるなど、事前条件を満たす必要があります。
※平成28年度以前の東京都または公社が実施したBCP策定支援事業等を利用した事業者は不要
【②申請エントリー】
設定された受付期間内に申請エントリーを完了させます。エントリーには「ネットクラブ会員サービス」への登録が必要です。
【③申請書類の提出(Jグランツによる電子申請)】
申請書類の提出は「Jグランツ」を利用した電子申請で行います。申請書類の提出期間内に完了させる必要があります。
まとめ
今回の助成金は、企業におけるBCP策定の遅滞を解消し、BCP意識の向上を促すことを目的としています。企業は、災害やテロなどの被害発生時に何も準備していない状況では済まされず、リスクを予見し被害を最小限に抑えることも重要です。このような助成事業による支援を受けられる今こそ、企業のあり方を再考する好機と言えるでしょう。
参考:BCP実践促進助成金