キャリアアップ助成金は、多様で柔軟な働き方が拡大する中、非正規雇用労働者(正社員待遇を受けていない無期雇用労働者を含む)の企業内でのキャリアアップ促進を支援するもので、人気の助成金の1つです。
この度「キャリアアップ助成金が変わります」として令和4年4月からの変更点が示されたリーフレットが公表されました。キャリアアップ助成金は毎年制度変更がありますので、改正内容を押さえておくことが重要になります。
令和4年度の変更は一部要件緩和などがありますが、全体的にみて、「縮小された」という印象です。さっそく気になる変更点をみていきましょう!
参考:「キャリアアップ助成金が変わります~令和4年1月1日以降変更点の概要~」
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この記事の目次
キャリアアップ助成金とは
キャリアアップ助成金のコースは、取り組み内容により7つに分かれています。全部覚えるのは大変なので、「正社員化支援」と「処遇改善支援」に関したコースがあるとご認識ください。キャリアアップ助成金は、非正規雇用労働者の企業内でのキャリアアップを促進するため、以下の取り組みを実施した事業主に対して助成金を支給する制度です。
▼取り組み内容とコース名
1.正規雇用労働者等へ転換または直接雇用を実施する | 「正社員化コース」 |
2.障害のある労働者を正規雇用労働者等へ転換する | 「障害者正社員化コース」 |
3.賃金規定等の増額改定により賃金の引き上げを実施する | 「賃金規定等改定コース」 |
4.正規雇用労働者と共通の賃金規定等を導入する | 「賃金規定等共通化コース」 |
5.正規雇用労働者と共通の諸手当制度を導入する、または法定外の健康診断制度を導入する |
「諸手当制度等共通化コース」 |
6.非正規雇用労働者を新たに社会保険に加入させると同時に被用者保険の適用と働き方の見直しに反映させるための取組を実施する | 「選択的適用拡大導入時処遇改善コース」 |
7.短時間労働者の所定労働時間を延長すると同時に社会保険に加入させる | 「短時間労働者労働時間延長コース」 |
キャリアアップ助成金 令和4年度変更点
令和4年度は大きく内容が変わります。
【主な変更点】
- 助成対象となる転換の見直し(正社員化コース)
- 正社員定義等の変更(正社員化コース・障害者正社員化コース)
- 加算措置の追加(正社員化コース)
- 加算措置の廃止(賃金規定等共通化コース)
- 賞与・退職金制度導入コースの新設
- 支給要件の緩和および時限措置の延長(短時間労働者労働時間延長コース)
では、コースごとに変更内容を確認しましょう。
正社員化コースの変更点
【助成対象となる転換の見直し】
非正規雇用労働者の正社員化を支援する「正社員化コース」では、助成対象となる転換が見直され、有期雇用労働者から無期雇用労働者への転換の助成が廃止されます。これにより、助成対象となるのは、正社員待遇を受ける労働者へ転換した場合に限られます。
▼変更前
(1) 有期 → 正規 | 1人当たり 57万円 |
(2) 有期 → 無期 | 1人当たり 28万5千円(廃止) |
(3) 無期 → 正規 | 1人当たり 28万5千円 |
▼変更後
(1) 有期 → 正規 | 1人当たり 57万円 |
(2) 無期 → 正規 | 1人当たり 28万5千円 |
【正社員定義の変更(令和4年10月1日~)】
「正社員化コース」と「障害者正社員化コース」において、正社員定義の変更があり、これにより「賞与または退職金の制度」かつ「昇給」のある正社員への転換が必要となります。
現行 | 同一の事業所内の正社員に適用される就業規則が適用されている労働者 |
改正後 | 同一の事業所内の正社員に適用される就業規則が適用されている労働者 ただし「賞与または退職金の制度」かつ「昇給」が適用されている者に限る |
【非正規雇用労働者定義の変更(令和4年10月1日~)】
「正社員化コース」と「障害者正社員化コース」において、非正規雇用労働者の定義も変更となります。これにより賃金の額または計算方法が「正社員と異なる雇用区分の就業規則等」の適用を受ける非正規雇用労働者※の正社員転換が必要となります。
※(例)正社員と異なる賃金規定(基本給の多寡や昇給幅の違い)等が適用されている契約社員など
現行 | 6か月以上雇用している有期または無期雇用労働者 |
改正後 | 賃金の額または計算方法が「正社員と異なる雇用区分の就業規則等」の適用を 6か月以上受けて雇用している有期または無期雇用労働者 |
これらの定義の変更(両コースに共通の改正事項)は、令和4年10月1日以降の正社員転換に適用となります。
【加算措置の追加】
時期は未定ですが、正社員化コースにおけるプラス面の変更としては「加算措置の対象となる訓練の追加」が予告されています。どういうことかというと、令和3年12月21日以降の改正として、人材開発支援助成金の特定の訓練修了後に正社員化した場合は助成額を加算するという「加算措置の新設」が行われました。
これは人材開発支援助成金において高助成率とする一定のIT訓練等を経て正社員化した場合、1人あたり、有期から正規の場合9.5万円、無期から正規の場合4.75万円が加算されるという内容ですが、この措置の対象となる訓練が追加予定とのことです。※他の加算措置と併給が可能です。
賃金規定等共通化コースの変更点
このコースは、非正規雇用の労働者等に関して、正社員と共通の職務等に応じた賃金規定等を新たに作成し、適用した場合に助成するコースです。
【加算措置の廃止】
中小企業の場合、1事業所あたり57万円<生産性の向上が認められる場合:72万円>が助成されます。これまで共通化した対象労働者(2人目以降)について、1人当たり2万円<生産性向上の場合:2万4千円>の加算がありましたが、この2人以降にかかる加算が廃止となります。
賞与・退職金制度導入コース(新設)
【諸手当等制度共通化コースの廃止と賞与・退職金制度コースの新設】
諸手当等(賞与、退職金、家族手当、住宅手当、健康診断制度)の制度共通化への助成を廃止し、賞与または退職金の制度新設への助成へ見直しが行われます。
「賞与・退職金制度導入コース」では、非正規雇用の労働者等を対象に賞与・退職金制度を導入し、支給または積立てを実施した場合に助成されます。
なお、賞与・退職金に関して正社員との共通化(同額または同一の算定方法)は必須ではありません。つまり、非正規雇用労働者に対する制度新設のみで助成可能ということになります。中小企業の場合、1事業所当たり38万円<生産性向上の場合:48万円>が助成されます。賞与・退職金同時に導入した場合は16万円<19.2万円>の加算があります。
なお、こちらのコースも、対象労働者(2人目以降)に係る加算は廃止となっています。
短時間労働者労働時間延長コース
「短時間労働者労働時間延長コース」は、短時間労働者の週所定労働時間を延長するとともに、処遇の改善を図り、新たに社会保険の被保険者とした場合に助成するコースです。
【支給要件の緩和および時限措置の延長】
社会保険の適用拡大を更に進めるため、以下の措置が取られます。
◆延長すべき週所定労働時間の要件を緩和 (週5時間以上 → 週3時間以上)
◆助成額の増額措置等を延長 (令和4年9月末 → 令和6年9月末(予定))
現行制度では、助成額の増額措置等(令和4年9月末まで)が行われ、助成額は、中小企業の場合、1人当たり 22.5万円<生産性向上の場合28.4万円>です。この措置が、令和6年9月30日まで延長となります。
まとめ
- 助成対象となる転換の見直し(正社員化コース)
- 正社員定義等の変更(正社員化コース・障害者正社員化コース)
- 加算措置の追加(正社員化コース)
- 加算措置の廃止(賃金規定等共通化コース)
- 賞与・退職金制度導入コースの新設
- 支給要件の緩和および時限措置の延長(短時間労働者労働時間延長コース)
今回ご紹介した変更内容は、一部を除き、令和4年4月1日以降の取り組みを実施した場合に適用となる予定です。
これらは、令和4年度予算の成立及び雇用保険法施行規則の改正が前提のため、今後変更される可能性があります。なお「選択的適用拡大導入時処遇改善コース」は、予定通り、時限到来に伴い令和4年9月30日に廃止となります。
キャリアアップ助成金の令和4年度の変更は、どのタイミングで、どのコースを申請するかといった、事業主の皆さまのこれからの取り組みに大きく関わる変更となっていますので、今後の情報も注意して確認するようにしてください。キャリアアップ助成金の活用をご検討の際は、補助金ポータルまでお気軽にご相談ください。