物価高や不安定な社会情勢は、しばらく続くことが予想されます。苦しいインフレを好循環に変えるためには、収入の増加が不可欠です。
岸田政権は経済活動の活性化を最優先事項として掲げ、賃上げや業績向上に向けた取組を支援しています。令和5年度補正予算案では、労働者のキャリアアップを支援する「キャリアアップ助成金」にも拡充が盛り込まれました。
今回はキャリアアップ助成金拡充の内容や、労働者と事業主が知っておくべきポイントを紹介します。
▼▼▼日々配信中!無料メルマガ登録はこちら▼▼▼
メルマガ会員登録する
【令和5年度補正予算関連記事】
▶︎令和5年補正予算【環境省】
▶︎令和5年補正予算【厚生労働省】
▶︎令和5年補正予算【こども家庭庁】
▶︎令和5年補正予算【観光庁】
▶︎令和5年補正予算【農林水産省】
▶︎令和5年補正予算【経済産業省】
この記事の目次
施策の目的
キャリアアップ助成金の拡充は、有期雇用労働者や派遣労働者といった非正規雇用労働者を正社員化した事業者や、処遇改善を行った事業者に助成金が交付される制度です。企業内のキャリアアップを促進し、労働市場の機能強化を図ります。
これは政府が掲げる5つの経済対策の柱のうち、「地方・中堅・中小企業を含めた持続的賃上げ、所得向上と地方の成長を実現する」と「人口減少を乗り越え、変化を力にする社会変⾰を起動・推進する」に対応します。
施策の概要
今回拡充されるキャリアアップ助成金「正社員化コース」は、非正規雇用労働者を正社員に転換した場合等が補助の対象です。なお「正社員」には、「勤務地・職務限定正社員」「短時間正社員」等が含まれます。
個人の状況に合わせた多様な働き方を認め、正社員としてのキャリアアップを推進することで、雇用の安定や労働市場の機能強化を目指します。
キャリアアップ助成金とは
キャリアアップ助成金には、「正社員化支援」と「処遇改善支援」の2つが設定されています。このうち「処遇改善支援」では2023年10月から「「社会保険適用時処遇改善コース」が始まるなど、社会の動きにあわせて変更されています。
今回拡充が行われるのは「正社員化支援」の「正社員化コース」です。ここではキャリアアップ助成金の概要と、拡充内容をまとめました。
コースごとの概要
まずは、キャリアアップ助成金の基本的な内容について確認しましょう。キャリアアップ助成金の各支援・コースは、以下のとおりです。
【正社員化支援】 |
---|
■正社員化コース 非正規雇用労働者等を、正社員化した際に助成 ■障害者正社員化コース 障害のある非正規労働者等を、正規雇用労働者等に転換した際に助成 |
【処遇改善支援】 |
---|
■賃金規定等改定コース 非正規労働者等の基本給の賃金規定等を、3%以上増額した際に助成 ■賃金規定等共通化コース 非正規労働者等と正規雇用労働者との共通の賃金規定等を行った際に助成 ■賞与・退職金制度導入コース 非正規労働者等を対象に、賞与や退職金制度を導入した際に助成 ■短時間労働者労働時間延長コース 非正規労働者等の週所定労働時間を延長し、社会保険を適用した際に助成 ■社会保険適用時処遇改善コース 非正規労働者等に新たに社会保険を適用させ、さらに、労働者の収入を増加させた際に助成 |
拡充内容
今回「正社員化コース」で行われる拡充は、以下の4つです。
①助成額の増額
②支給要件の緩和
➂正社員転換制度の導入に関する加算措置の新設
④多様な正社員制度の導入に関する支援拡充
それぞれ詳しく見ていきましょう。
①助成額の増額
正社員になった非正規労働者1人あたりの助成金額が、増額されます。現行と拡充後の助成額は、以下のとおりです。
【現行】
■中小企業:57万円
■大企業:42万7,500円
【拡充】
■中小企業:80万円
■大企業:60万円
現行では1期 (6か月) で57万円の助成でしたが、拡充後は2期 (12か月) で80万円の助成となります。1期あたりでは、40万円です。
なお、これは有期雇用から正規雇用になった場合の金額です。非正規雇用であっても、無期雇用から正規雇用への転換の場合は、上記の半額となります。
②支給要件の緩和
非正規の有期雇用労働者を正社員化する場合、対象となる有期雇用労働者等の雇用期間の要件に、以下のような変更がありました。
【現行】
6か月以上3年以内
【拡充】
6か月以上
なお、有期雇用期間が通算5年を超えた有期雇用労働者は、「無期雇用労働者」とみなされます。
➂正社員転換制度の導入に関する加算措置の新設
新設される正社員転換制度に関する加算処置は、以下のとおりです。
【加算要件】
正社員転換制度を新たに規定し、当該雇用区分に転換等した場合
【加算金額】
20万円(大企業は15万円)
加算は1事業所あたり1回のみです。
なお、1人目の転換時には①も合わせて適用されますので、合計で100万円 (大企業75万円) の助成となります。
④多様な正社員制度の導入に関する支援拡充
多様な働き方を認め、正社員として雇用するための制度を規定する場合の加算措置の拡充は、以下のとおりです。
【加算要件】
「勤務地限定・職務限定・短時間正社員」制度を新たに規定し、非正規雇用者の転換等を行った場合
【現行】
9万5,000円 (大企業7万1,250円)
【拡充】
40万円 (大企業30万円)
加算は1事業所あたり1回のみです。
なお、1人目の転換時には①も合わせて適用されますので、合計で120万円 (大企業90万円) の助成となります。
キャリアアップ助成金の拡充が与える影響
厚生労働省の発表では、2010年以降増加が続いていた非正規雇用者数は、2020年以降減少傾向にありました。
2022年には増加しましたが、今後、人の動きが活性化するにつれて、再び正規雇用者の割合が大きくなることが予想されます。同調査では、正社員になりたいのに機会を得られずにいる「不本意非正規雇用」者数は、非正規雇用者全体の10.3%に留まります。これは2013年と比べると、約半分です。
出典:厚生労働省
キャリアアップ助成金の拡充をはじめとした、国の支援強化も続いています。非正規雇用者から正社員への転換をめぐる環境は、改善されつつあると言えそうです。
一方で、同調査では、非正規雇用者の給金は正社員と比べて低いことも問題視されています。年齢階級の平均時給は、正社員では1,976円であるのに対し、非正規雇用者は1,375円と、約600円の差があります。
1日7時間労働として、日給は4,200円程度低いことになります。月収では、8万4,000円ほどの差となる計算です。
出典:厚生労働省
もちろん業務内容や責任の違いによって、収入に差が出ることは珍しいことではありません。しかし、同一労働同一賃金の概念は尊重されるべきです。非正規雇用者の処遇改善や、希望者への正社員登用機会の提供など、多様な働き方が認められる社会の実現には課題も残ります。
経済活動の活発化には、消費者の収入を安定させる必要があります。日本労働組合総連合は、2024年の春闘では5%以上の賃金アップを求める方針です。賃上げに対する社会的ニーズは、これまでにないほど高まっています。
しかしこうした改革は、労働者の多数を占める一般的な正規雇用者から適用されていくケースが多いのが現状です。非正規雇用者や時短労働者などへの対応は、どうしても後手に回ります。
多様化の時代、誰もが非正規雇用にならざるを得なくなる可能性を持っています。非正規雇用者の正社員化だけではなく、非正規雇用者のままで働く労働者や多様な働き方を望む人のための環境を整えることが、今後の課題となりそうです。
まとめ
一般的に、企業の規模が大きくなればなるほど、アルバイトやパート従業員を含めた非正規雇用の力が必要です。育児や介護によって、時短勤務等に切り替える人も多いでしょう。そうした多様な従業員を支えるのは、企業の義務です。
企業の成長には、人の力が必要です。様々な環境にある人が働きやすい環境になれば、それだけ多くの人材を確保できる可能性が高まります。キャリアアップ助成金をはじめとした助成事業を積極的に活用し、職場環境を整えることで、業績アップにつながる循環を目指しましょう。