「社会保険適用時処遇改善コース」は、事業主が労働者に社会保険を適用し、労働者の収入を「社会保険適用促進手当」等により増加させる場合、3年間で労働者1人あたり最大50万円を助成するコースです。
本制度は、2026年3月31日までの暫定措置となります。2025年7月以降、新たな年収の壁対策として「短時間労働者労働時間延長支援コース」が新設されています。労働時間の延長を検討している場合、以下の制度もご確認ください。
合わせて読みたい:キャリアアップ助成金「短時間労働者労働時間延長支援コース」新設!【最大75万円】
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・【本記事】社会保険適用時処遇改善コース
・短時間労働者労働時間延長支援コース
この記事の目次
年収の壁 助成金について
「年収の壁」とは、配偶者の扶養に入っているパート・アルバイトなどの労働者が、一定の年収を超えると社会保険料の負担が発生し、手取り収入が減ってしまうと意識される収入のラインを指します。この問題が注目されている背景には、最低賃金の引き上げがあります。パートなどの労働者が年収を扶養の範囲内に抑えようとして働く時間を調整するため、企業の人手不足につながるケースがあると指摘されています。
社会保険適用時処遇改善コースは、こうした課題に対応するため、短時間労働者に社会保険を適用する際に処遇改善を行う事業者を支援する制度です。
キャリアアップ助成金 社会保険適用時処遇改善コースの助成メニューと支給額
キャリアアップ助成金の社会保険適用時処遇改善コースには、企業や労働者の多様なニーズに応えるため、社会保険適用時処遇改善コースには以下の3つのメニューがあります。1.手当等支給メニュー
事業主が労働者に「社会保険適用促進手当」支給等により収入を増やす取組に対して助成します。具体的な助成内容は以下のとおりです。

出典:厚生労働省 キャリアアップ助成金(社会保険適用時処遇改善コース)
1~2年目は、賃金(標準報酬月額・標準賞与額)の15%以上分を労働者に追加支給すると、中小企業は1人あたり20万円、大企業は15万円が支給されます。3年目は、基本給を18%以上増額すると、中小企業は1人あたり10万円、大企業は7.5万円が支給されます。
なお、2年目に3年目の取組(賃金の増額の場合のみ)を前倒しで実施も可能です。その場合、2年目の1回目の支給申請で30万円が助成されます。
| 手当等支給メニュー(3年間で取り組み、支給要件を満たす場合) | |
| 1年目 | 助成対象人数×20万円 |
| 2年目 | 助成対象人数×20万円 |
| 3年目 | 助成対象人数×10万円 |
| 手当等支給メニュー(2年間で取り組み、支給要件を満たす場合) | |
| 1年目 | 助成対象人数×20万円 |
| 2年目 | 助成対象人数×30万円 |
2.労働時間延長メニュー

出典:厚生労働省 キャリアアップ助成金(社会保険適用時処遇改善コース)
所定労働時間を延長して社会保険を適用するメニューです。週の所定労働時間を4時間以上延長、または特定の時間延長と賃金増額の組み合わせで、中小企業は1人あたり30万円、大企業は22.5万円が支給されます。
| 労働時間延長メニュー(支給要件を満たす場合) | |
| 助成対象人数×30万円 |
3.併用メニュー

出典:厚生労働省 キャリアアップ助成金(社会保険適用時処遇改善コース)
1年目の手当等支給と2年目の労働時間延長を組み合わせる取組に対して助成します。1年目に標準報酬・賞与の15%以上分を労働者に追加支給で中小企業に20万円(大企業15万円)、2年目に週4時間以上の労働時間延長または特定の組み合わせで中小企業に30万円(大企業22.5万円)が支給されます。
メニューの選択にあたっては、事業主と労働者の間で働き方の希望や処遇に関する話し合いが求められ、双方の合意に基づいて決定する必要があります。
| 併用メニュー(1年目に手当等支給メニュー、2年目に労働時間延長メニューを活用し、支給要件を満たす) | |
| 1年目 | 助成対象人数×20万円 |
| 2年目 | 助成対象人数×30万円 |
社会保険適用促進手当について
手当等支給メニューでは、社会保険加入によって増える保険料負担を補うため、「社会保険適用促進手当」を支給する方法があります。
社会保険適用促進手当とは、短時間労働者が社会保険に加入した際に発生する保険料負担を軽減するために支給される手当です。給与や賞与とは別に支給され、労働者が負担する社会保険料相当額を上限として支払うことができます。
この手当は特例措置として、最大2年間、社会保険料の算定に用いる標準報酬月額や標準賞与額に含めない取り扱いが認められています。そのため、手当を支給しても社会保険料が増えることはありません。
ただし、この措置の対象となるのは、新たに社会保険に加入した労働者のうち、標準報酬月額が10万4,000円以下の人に限られます。
一方、標準報酬月額が11万円以上の人は年収が128万円以上となり、社会保険料を差し引いても手取り収入が106万円を上回るため、「106万円の壁」をすでに超えているとみなされ、この支援措置の対象にはなりません。
なお、事業所内の公平性を保つため、同じ条件で働きすでに社会保険に加入している他の労働者にも同水準の手当を支給した場合は、その労働者も特例の対象とすることができます。
【社会保険適用促進手当の活用イメージ】
時給1000円から1020円に上がり(年収104万円から106万円へ)、厚生年金・健康保険に加入した場合
・時給が上がり社会保険加入後、保険料約16万円が発生するが、手取り収入を減らさないように、保険料相当額の手当てを支給する。(社会保険適用促進手当の支給)

キャリアアップ助成金(社会保険適用時処遇改善コース)いつから申請できる?
社会保険適用時処遇改善コースの助成は、10月1日から遡及して適用されます。10月1日以降に、事業主が短時間労働者に被用者保険を新たに適用し、その労働者の収入を増やす取組を実施した場合、助成の対象となります。
キャリアアップ助成金 対象事業主の要件
キャリアアップ助成金の対象となる事業主の要件は以下のとおりです。(全コース共通)
| ①雇用保険適用事業所の事業主 |
| ②雇用保険適用事業所ごとに、キャリアアップ管理者を置いている事業主 |
| ③雇用保険適用事業所ごとに、対象労働者に係るキャリアアップ計画を作成し、管轄労働局長の受給資格の認定を受けた事業主 |
| ④実施するコースの対象労働者の労働条件、勤務状況および賃金の支払い状況等を明らかにする書類を整備し、賃金の算出方法を明らかにすることができる事業主 |
| ⑤キャリアアップ計画期間内にキャリアアップに取り組んだ事業主 |
キャリアアップ助成金(社会保険適用時処遇改善コース)対象労働者の要件
社会保険適用時の前日から起算して過去6か月以上の期間継続して、非正規雇用労働者として雇用された者が対象です。

出典:キャリアアップ助成金(社会保険適用時処遇改善コース)
助成金受給までの手続き
まず最初に、助成対象コースの取組を開始する前日までに、キャリアアップ計画書を管轄の労働局に提出する必要があります。
ただし社会保険適用時処遇改善コースでは、令和5年10月1日から令和6年1月31日までの間に手当の支給等を就業規則に規定する等の措置を講じた場合には、事後的に令和6年1月31日までにキャリアアップ計画書の提出をすることが許されています。計画の作成に当たっては、労働者から意見を聴取し、計画へ反映させましょう。
▼1月31日までに取組を開始する場合の申請スケジュールの例

出典:キャリアアップ助成金(社会保険適用時処遇改善コース)のご案内(リーフレット)
【助成金の支給申請】
原則として、キャリアアップ計画書に従った活動を進めた後、6か月の賃金を支払った日の翌日から起算して2か月以内に助成金の支給申請を行います。
▼社会保険適用時処遇改善コース(手当等支給メニュー)の場合
- 1年目と2年目に関しては、社会保険適用時における社会保険の標準報酬月額及び標準賞与額の総額の15%以上分の賃金を6か月分支給した日のそれぞれ翌日から起算して2か月以内に支給申請。
- 3年目では、社会保険適用時の基本給の18%以上分の賃金を3年目の取組開始後6か月分支給した日の翌日から記載して2か月以内に支給申請。
助成金の活用事例
ここで、他のパート従業員とのバランスを考慮しつつ、助成金を活用した飲食業の例をご紹介します。
この例では、企業がパート従業員全員の福祉向上を目指して2つのアプローチを展開しています。
①社会保険適用促進手当の支給
月収10.7万円未満のパート従業員全員に「社会保険適用促進手当」を支給することを決めました。すでに社会保険に加入している従業員は企業が独自に負担し、新たに加入する従業員には助成金を活用して手当を支給します。
②2年間の手当支給と労働時間の調整提案
社会保険に新たに加入する従業員に対し、手取り収入が減らないように2年間は手当を支給し、その間に働き方について話し合い、3年目以降に労働時間を延長することを提案します。この方針は各店舗のマネージャーが従業員に個別に説明し、就業調整中の従業員には社会保険加入のメリットと経済的サポートを明確にすることで、福利厚生の充実を図ることにしました。
■活用したのは…手当等支給メニュー■
新たに社会保険の適用対象となった従業員に対して2年間の手当支給を実施

出典:キャリアアップ助成金(社会保険適用時処遇改善コース)活用事例
よくある質問
最後に、社会保険適用時処遇改善コースに関するよくある質問を紹介します。キャリアアップ計画書を提出しなければ、支給申請できない?
キャリアアップ計画書については、原則として、助成対象コースの取組を開始する日の前日までに管轄労働局に提出することが必要になります。
キャリアアップ計画書は対象労働者ごとに作成するの?
キャリアアップ計画書は、対象労働者ごとに作成する必要はなく、事業所ごとに1部作成する必要があります。
なぜ2025年度までの暫定処置なの?延長は?
今回の支援措置は、いわゆる「106万円の壁」に対応するために、当面の措置としてまず導入するものであり、さらに制度の見直しに取り組むこととしております。時限措置の延長は予定されていません。
まとめ
令和5年(2023年)10月20日から受付開始となった、「年収の壁」を乗り越えるための助成金により、労働者は経済的な安定を得るとともに、自らのキャリアを向上させることが可能となります。
助成金の詳しい問い合わせ先や支給申請は、管轄の都道府県労働局またはハローワークにお問い合わせください。また「年収の壁突破・総合相談窓口」(コールセンター)もご利用ください。

