キャリアアップ助成金のデメリットとは?メリットと申請前に知るべき注意点

公開日:2024/10/23 更新日:2026/7/14
image

キャリアアップ助成金は、パート・アルバイト・契約社員などの非正規雇用労働者の正社員化や処遇改善に取り組む企業を支援する、返済不要の助成金です。正社員化コースでは中小企業の場合、対象者1人あたり最大80万円が支給されるなど、人材確保に悩む中小企業にとって魅力的な制度といえます。

一方で、実際に申請を検討し始めると、「手続きが大変そう」「正社員化した後の人件費が心配」「不支給になるケースもあると聞いた」といった不安の声も少なくありません。助成金は"もらえるお金"である一方、申請にも受給後にも一定の負担やリスクが伴うのは事実です。

そこで本記事では、キャリアアップ助成金の注意点やデメリットをそれぞれの対処法とあわせて解説します。そのうえで、それでも活用したいメリット、自社が申請に向いているかどうかの判断軸まで、2026年度(令和8年度)の最新制度をもとにまとめました。

無料で相談する

▼▼▼日々配信中!無料メルマガ登録はこちら▼▼▼
メルマガ会員登録する

この記事の目次

\ 制度やどの補助金が使えるか知りたい! /
お問い合わせ
\ 申請サポートをお願いしたい! /
専門家を探す
補助金対象商品を調べる
導入したい商材が補助金に対応しているかチェック!
ITトレンドへ

キャリアアップ助成金とは

キャリアアップ助成金は、非正規雇用労働者の企業内でのキャリアアップを促進するため、正社員化や処遇改善の取組を実施した事業主に対して助成する厚生労働省の制度です。2026年度(令和8年度)は、大きく「正社員化支援」と「処遇改善支援」の2つの枠組みのもと、以下の6コースが設けられています。

コース名取組内容主な支給額(中小企業)
正社員化コース有期雇用労働者等を正社員へ転換有期→正社員:重点支援対象者80万円/それ以外40万円
無期→正社員:重点支援対象者40万円/それ以外20万円
(1事業所あたり年間20名まで)
障害者正社員化コース障害のある有期雇用労働者等を正社員化最大120万円(重度障害者等の場合)
賃金規定等改定コース基本給の賃金規定等を3%以上増額改定引上げ率に応じて1人あたり4万円〜7万円(年度100人まで)
賃金規定等共通化コース正規雇用労働者と共通の賃金規定等を新設・適用1事業所あたり60万円
賞与・退職金制度導入コース賞与または退職金制度を新たに導入し支給・積立を実施1事業所あたり40万円(両制度同時導入で加算あり)
短時間労働者労働時間延長支援コース短時間労働者の労働時間を延長し社会保険を適用1人あたり最大75万円(小規模企業・2年間の合計)

詳しい加算措置や詳細要件は、以下の記事でご確認ください。

詳しくはこちら:キャリアアップ助成金とは?【2026年・令和8年】全コースの支給額と対象事業者を解説

キャリアアップ助成金とは?【2026年・令和8年】全コースの支給額と対象事業者を解説

2026年度の主な変更点

2026年度は制度の入れ替わりが大きい年度です。前年までの情報のまま検討を進めると要件を誤るおそれがあるため、まず変更点を押さえておきましょう。

「社会保険適用時処遇改善コース」が終了

いわゆる「年収の壁」対策の暫定措置として設けられていた社会保険適用時処遇改善コースは、2026年3月31日をもって終了しました。年収の壁への対応機能は、2025年7月に新設された「短時間労働者労働時間延長支援コース」に引き継がれています。

正社員化コースに「情報公表加算」が新設

2026年4月8日以降、正社員転換に関する情報を自社ホームページまたは厚生労働省のサイト「しょくばらぼ」で公表した場合、1事業所あたり20万円(大企業は15万円)が加算される仕組みが新設されました。

正社員化時の賃金3%以上引上げ要件

正社員化コースでは、転換後に基本給等を3%以上引き上げることが支給要件とされています。正社員化と処遇改善(賃上げ)をセットで進める政策的な方向性が、年々強まっています。

キャリアアップ助成金の6つのデメリット・注意点

キャリアアップ助成金の申請の際、企業がつまずきやすいポイントは、大きく次の6つです。

・申請手続き・書類作成の負担が大きい
・入金まで時間がかかり、人件費が先に発生する
・助成金は一時金だが、人件費の増加は恒久的に続く
・要件を満たせず「不支給」になるケースがある
・不正受給と判断された場合のリスクが重い
・制度が毎年変わり、情報のアップデートが欠かせない

それぞれのデメリットについて、対処法とあわせて詳しく解説します。

①申請手続き・書類作成の負担が大きい

キャリアアップ助成金の最大のハードルは、事務負担です。単に「正社員にしました」と申請すればよいわけではなく、おおまかに次のようなステップを踏む必要があります。

①キャリアアップ管理者の配置、キャリアアップ計画の作成
②取組実施「前」にキャリアアップ計画書を労働局へ提出
③就業規則等に正社員転換制度や賃金規定を整備(改定した就業規則の届出)
④転換・処遇改善の実施と、その後6か月分の賃金支払い
⑤支給申請書と添付書類(雇用契約書、賃金台帳、出勤簿、就業規則など)の提出

最初にやるべきことは、取組の実施ではなくキャリアアップ計画書の提出です。「計画提出→就業規則整備→転換→6か月賃金支払→申請」という一連の流れを年間スケジュールに落とし込み、労務書類(賃金台帳・出勤簿・雇用契約書)の整備状況を先に点検しておきましょう。

正社員転換や社会保険加入の手続きを先に済ませてしまうと、その時点で申請資格を失います。また、賃金台帳や出勤簿といった日常の労務管理書類がきちんと整備されていない企業では、申請準備の段階で帳簿の整備からやり直す必要があり、想像以上の工数がかかります。

②入金まで時間がかかり、人件費が先に発生する

キャリアアップ助成金は「後払い」の制度です。正社員転換などの取組を実施した後、6か月分の賃金を支払い、その賃金支払日の翌日から2か月以内に支給申請を行います。その後の審査にも数か月を要するため、取組の開始から実際の入金までは、おおむね1年程度かかるのが一般的です。

そのため、昇給分・社会保険料増加分を自己資金で賄えるか事前に確認しましょう。助成金は「かかった人件費の一部が後から戻ってくるもの」と位置づけるのが安全です。

「助成金で人件費増をまかなおう」という資金計画を立てていると、入金までの期間に資金繰りが苦しくなるおそれがあります。

③助成金は一時金だが、人件費の増加は恒久的に続く

見落とされがちですが、経営インパクトとして最も大きいのがこの点です。

たとえば正社員化コースで80万円を受給できたとしても、支給は一度きりです。一方、正社員化に伴う昇給(3%以上の引上げが要件)、賞与や退職金、社会保険料の会社負担分といったコストは、その労働者が在籍する限り毎年発生し続けます。

月給25万円の従業員を1人正社員化した場合、昇給分と法定福利費を合わせると、年間で数十万円規模のコスト増になることも珍しくありません。数年単位で見れば、人件費の増加額が助成金の受給額を上回るのが通常です。

正社員化・処遇改善を、定着率向上・採用コスト削減・生産性向上といった経営課題の解決策として設計し、助成金はその後押しと捉えましょう。「もともとやる予定だった取組に助成金を乗せる」のが、最も失敗しない使い方です。

④要件を満たせず「不支給」になるケースがある

計画どおり取組を進めたつもりでも、要件の見落としにより不支給となるケースがあります。代表的なつまずきポイントは次のとおりです。

・賃金3%以上引上げの計算誤り:比較対象となる賃金の範囲(基本給と諸手当の扱い)を誤り、実際には3%に達していなかった
・対象労働者の要件漏れ:雇入れから6か月未満での転換、事業主の3親等以内の親族、転換前から実質的に正社員と同様の働き方だった場合などは対象外
・会社都合の離職者を出した:転換日の前後6か月間に事業主都合の解雇等を行うと支給対象外になる
・申請期限の徒過:6か月分の賃金支払日の翌日から2か月以内という申請期限を過ぎると、理由を問わず受給できない
・就業規則の不備:転換制度が就業規則に規定されていない、規定と実際の運用が食い違っている

申請前に要領をよく確認し、判断に迷う点は管轄の労働局・ハローワークに事前照会しましょう。特に賃金3%引上げの計算方法と、対象労働者の要件は重点的な確認が必要です。

⑤不正受給と判断された場合のリスクが重い

不正受給は「故意に虚偽の記載や偽りの証明を行うこと」と定義されており、単純な計算ミスや過失まで直ちに不正となるわけではありません。ただし、故意かどうかは本人の主観ではなく、書類と実態の食い違いから客観的に判断されます。

さらに、従業員や代理人など申請に関わった者が不正に関与した場合でも、事業主が不正を行ったものとみなされます。「悪気はなかった」では済まないケースがあるのです。

不正受給と認定された場合のペナルティは重く、次のような措置が取られます。

・不正受給額の全額返還に加え、2割相当額の違約金と延滞金の納付
・不正受給日から5年間、雇用関係助成金全般が受給できなくなる
・事業主名等の公表(支給取消額等が100万円以上の場合など)
・悪質な場合は刑事告発の可能性

ペナルティを受けないためにも、勤怠管理・賃金計算・雇用契約の内容が実態と一致しているか、申請前に総点検しましょう。また、受給後に誤りに気づいた場合は放置せず、速やかに労働局へ自主申告することが重要です。

⑥制度が毎年変わり、情報のアップデートが欠かせない

キャリアアップ助成金は、毎年4月を中心に支給額・要件・コース構成の見直しが行われます。実際に2026年度も、社会保険適用時処遇改善コースの終了、情報公表加算の新設など大きな変更がありました。

「昨年調べた情報」「数年前に申請した経験」のまま手続きを進めると、廃止されたコースを前提にしていたり、新しい要件を満たせていなかったりするリスクがあります。

そのため、申請の際は必ずその年度の支給要領・パンフレットを確認しましょう。厚生労働省の公式ページと最新パンフレットを一次情報として確認する習慣をつけることが大切です。

対処が難しいと感じたら専門家の活用も選択肢

ここまで紹介した対処法は、いずれも自社で実行できるものですが、「労務管理体制に不安がある」「初めての申請で確実に進めたい」という場合は、専門家に頼る方法もあります。

雇用関係助成金の申請代行は、社会保険労務士の独占業務です。依頼する場合、報酬は着手金+成功報酬(受給額の10〜20%程度)が一般的な相場とされています。コストはかかりますが、要件確認や書類作成の負担軽減、不支給リスクの低減というリターンがあります。

事務負担や不支給リスクといったデメリットの多くを引き受けてもらえるため、申請が難しいと感じている場合は、専門家の依頼も検討してみてください。

それでも活用したい3つのメリット

デメリットと対策を理解したうえで活用すれば、キャリアアップ助成金は企業成長を後押しする強力な制度です。主なメリットを3つ紹介します。

①人材の定着率が改善し、離職コストを削減できる

どの業界でも人材不足が深刻化するなか、採用した人材が短期間で離職すれば、採用費・教育コストが繰り返し発生します。正社員化コースや障害者正社員化コースを活用して雇用の安定性を高めることは、経験を積んだ人材の定着につながり、頻繁な採用活動そのものを不要にします。長く働ける環境は長期的な技能形成を促し、企業全体の生産性向上にも寄与します。

②採用力が強化され、選ばれる企業になる

賃金規定等改定コース・賃金規定等共通化コース・賞与・退職金制度導入コースといった処遇改善支援を活用すれば、賃上げや正規・非正規間の待遇差の解消、賞与・退職金制度の整備を、助成金の後押しを受けながら進められます。

処遇の改善は在籍する従業員の満足度を高めるだけでなく、求職者への強力なアピールになります。2026年度に新設された情報公表加算のように、取組を社外へ発信すること自体が評価される仕組みも登場しており、「働きやすい会社」であることを対外的に示す好機といえます。

③返済不要の資金で、成長投資の余力が生まれる

助成金は融資と異なり返済不要で、使途も限定されません。処遇改善で先行した人件費の一部が後から補填されることで、教育訓練や設備投資など次の成長戦略に資金を回す余力が生まれます。また、雇用関係助成金を受給できたという事実は、労働関係法令を遵守し労務管理が整った企業であることの間接的な証明にもなり、対外的な信用形成にもつながります。

キャリアアップ助成金に向いている企業・向いていない企業

ここまでの内容から、キャリアアップ助成金に向いている企業、向いてない企業をまとめました。

【キャリアアップ助成金の活用に向いている企業】
・助成金の有無にかかわらず、もともと正社員化や賃上げを進める方針がある
・転換後の人件費増を自己資金で賄える資金余力がある
・賃金台帳・出勤簿などの労務管理書類が整備されている(または整備する意思がある)
・人材の定着・採用力強化を中期的な経営課題と捉えている

【活用に向いていない企業】
・「助成金がもらえるから」を主目的に正社員化を判断しようとしている
・入金までの期間、人件費増を支える資金繰りに不安がある
・勤怠管理や賃金計算が実態と一致しておらず、是正の予定もない
・直近で事業主都合の解雇・雇止めを行った、または行う可能性がある

「助成金がもらえるから取り組む」ではなく、「自社を良くするために取り組む」と答えが出ているのであれば、キャリアアップ助成金はその決断を強力に後押ししてくれます。

まとめ

キャリアアップ助成金には、事務負担・入金までのタイムラグ・恒久的な人件費増・不支給リスクといったデメリットが確かに存在します。しかし、いずれも事前の準備と正しい理解で対処できるものであり、正社員化や処遇改善をもともと計画している企業にとっては、活用しない手はない制度です。

最後に、申請前のチェックリストを掲載します。

・助成金がなくても実施する価値のある取組か(正社員化・処遇改善の経営上の目的が明確か)
・取組実施「前」にキャリアアップ計画書を提出するスケジュールになっているか
・入金まで約1年、人件費増を自己資金で賄えるか
・賃金台帳・出勤簿・雇用契約書・就業規則は実態と一致しているか
・2026年度(令和8年度)の最新の支給要領・パンフレットを確認したか

自社だけで判断が難しい場合や、要件の確認・書類作成に不安がある場合は、助成金に詳しい社会保険労務士などの専門家に相談するのも有効な選択肢です。デメリットを正しく理解したうえで、キャリアアップ助成金を人材戦略の強い味方として活用してください。

無料で相談する

▼▼▼日々配信中!無料メルマガ登録はこちら▼▼▼
メルマガ会員登録する

関連記事