ヒートアイランド現象が全国各地で深刻化する中、東京都千代田区では対策費用を助成する「ヒートアイランド対策助成制度」を実施しています。この制度を活用すれば、ヒートアイランド対策に貢献できるだけでなく、企業にもさまざまなメリットをもたらします。
より良い労働環境を整え、企業のイメージアップや経済的効果を図ることにもつながりますので千代田区内の事業者は、ぜひ参考にしてください。
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この記事の目次
ヒートアイランド現象とは
ヒートアイランド現象とは、都市部の気温が周囲に比べ高温になる現象のことです。関東地方では東京を中心に高温域が拡大しており(下図参照)、ここ100年間で平均気温が3.3℃上昇しました。これは、世界の平均気温上昇の数値に比べ高い水準です。
出典:気象庁 ヒートアイランド現象
ヒートアイランド現象の要因としては、主に下記の項目が挙げられます。
-植生域(緑地・水面等)の減少
緑地は水を吸収し、気温が上昇すると地面・空気の熱を奪い蒸発する性質があります。また河川等の水面も、蒸発時に空気中の熱を奪います。緑地や水面が減少すると、地面・空気の熱が奪われず熱がこもりやすくなります。
-人工被覆域(アスファルト・コンクリート等)の拡大
都市部の地面は、アスファルトの道路やコンクリート製の建物で覆われているところがほとんどです。これらの素材は日射による熱が蓄積しやすく、また冷えにくい性質を持っています。よって、日中に蓄積された熱が夜間まで保持され放出されることで、夜間の気温低下を妨げてしまいます。
-人口排熱(自動車、エアコン・室外機等からの排熱)の増大
自動車やエアコン・室外機等から排出される空気は、特に夏場は高温を帯びています。そのため、産業活動や社会活動が盛んな都心部では、気温上昇に拍車がかかっています。
出典:気象庁 ヒートアイランド現象
都市化の進展に伴い、ヒートアイランド現象はますます深刻化しています。このまま長期化すると、熱中症等の健康被害や二酸化炭素排出量増加をはじめ、本来越冬できない生物(感染症を媒介する蚊など)が越冬可能になるなど、生態系への影響も懸念されます。
ヒートアイランド対策助成制度とは
東京都千代田区において、都市部のヒートアイランド現象緩和に貢献する事業へ助成金を交付します。地球温暖化防止や都市景観の向上など、良好な生活環境の保全並びに改善を図るのが目的です。
助成の種類
①屋上等緑化
②壁面緑化
③敷地内緑化
④高反射率塗料・熱交換塗料(屋上)
⑤日射調整フィルム・窓用コーティング材
⑥遮熱性塗料・熱交換塗料(舗装面)
⑦ドライ型ミスト発生装置
助成対象、条件等
〈共通〉
- 区内の建物等で、かつ工事等の実施前に申請している。
- 施工業者が実施するものである。
- 国や地方公共団体等が実施する類似の助成等(総合設計制度の屋上緑化による容積率の割増など)を受ける予定もしくはすでに受けていない。
- 当該年度で同一の建物等において本助成制度の助成を受けていない。
- 住民税や固定資産税等を滞納していない。
〈屋上等緑化・壁面緑化・敷地内緑化〉
- 新築の建物の場合は敷地面積が1,000㎡未満とする。
- 敷地面積が250㎡以上の建物のうち「千代田区緑化推進要綱」で計画書提出の対象である建物は、要項に規定する基準を超える部分を助成対象とする。
- プランターによる緑化の場合は容量100l/基以上のものとする。
〈高反射率塗料・日射調整フィルム・窓用コーティング材〉
第三者機関の証明書等によって性能値が証明できる製品を使うものとする。
〈ドライ型ミスト発生装置〉
- 公共又はそれに準ずる場で、不特定多数へ涼を提供する目的で設置する。
- 運用見込期間がおよそ年間90日以上である。(レンタルの場合はイベント等で一時的に設置するものである)
助成内容
助成種別 助成金の額(税抜) 上限額 屋上等緑化・敷地内緑化(固定基盤) 対象経費の50%もしくは緑化面積×30,000円/㎡のいずれか低い額 200万円 屋上等緑化・敷地内緑化(プランター) 対象経費の50%もしくは緑化面積×15,000円/㎡のいずれか低い額 50万円 壁面緑化 対象経費の50%もしくは緑化面積×5,000円/㎡のいずれか低い額 50万円 高反射率塗料・熱交換塗料(屋上) 対象経費の50%もしくは緑化面積×2,000円/㎡のいずれか低い額 30万円 日射調整フィルム・窓用コーティング材 対象経費の50%もしくは緑化面積×4,500円/㎡のいずれか低い額 30万円 遮熱性舗装・熱交換塗料(舗装面) 対象経費の50% 100万円 ドライ型ミスト発生装置(固定式) 対象経費の50% 100万円 ドライ型ミスト発生装置(レンタル) 対象経費の50% 10万円 ※助成は2種以上の組み合わせも可能です。
※単位(面積等)は小数点第3位以下を切り捨てとし、千円未満は切り捨てとします。
【在来種植栽による緑化割増】
屋上等緑化、壁面緑化、敷地内緑化において、生物多様性の観点に基づき、区画ごとに植栽に用いる植物全てを「千代田区在来種植栽選定の手引き」に記載されている在来種にした際は(複数種選択を含む)当該区画に関する助成金の額並びに上限額を20%割増します。
申請方法
【手続きの流れ】
①助成金交付申請書と必要書類を提出(申込期限:令和5年2月15日)
※工事等の実施前に申請してください。
※申請は区役所の窓口もしくは郵送で受け付けています。
※申請時は事前のご連絡が必要です。(出張所窓口提出は不可です)
②審査(10日程度)後、交付の可否や交付予定額を郵送で通知
③交付決定通知受領後、工事等を開始
④工事等並びに支払終了後、完了報告書と必要書類(領収書、納品書等、写真他)を提出(提出期限:令和5年3月15日)
※区役所の窓口もしくは郵送で受け付けています。
※完了報告時は事前のご連絡が必要です。(出張所窓口提出は不可です)
⑤審査(10日程度)後、助成金額を郵送で通知
※審査は現地確認を行うケースがあります。
⑥確定通知受領後、速やかに助成金交付請求書を提出
⑦助成金振込(請求日から振込まで1か月程度)
申請に必要な書類
〈共通〉
- 助成金交付申請書(区様式)
- 確認書(区様式)
- 前年度(令和3年度)の納税証明書の写し
- 見積書の写し
- 施工・設置前写真(カラー)
- 施工・設置箇所の平面図
- 承諾書(区様式)
上記に加え、助成種別ごとに下記の書類が必要です。
〈屋上等緑化、壁面緑化〉
建物形状が確認できる図面(立面図)・写真
〈高反射率塗料・熱交換塗料(屋上)〉
- 建物形状が確認できる図面(立面図)・写真
- 製品の性能証明書(第三者機関発行)※高反射率塗料のみ
- 製品・設備性能等のパンフレット
〈フィルム、コーティング材〉
製品の性能証明書(第三者機関発行)
〈遮熱性塗料・熱交換塗料(舗装面)〉
製品・設備性能等のパンフレット
〈ドライ型ミスト発生装置(固定式・レンタル)〉
- 製品・設備性能等のパンフレット
- 実施内容が確認できる事業計画書
申請に必要な書類の一覧は、千代田区令和4年度 ヒートアイランド対策助成制度パンフレットをご参照ください。また、区様式は千代田区ホームページからダウンロードできます。
注意事項
- 事業内容が助成対象に該当するか、事前にご相談ください。
- 申請後、内容に変更があった場合は変更申請が必要です。区担当へ速やかにご連絡ください。
- 受付は先着順とし、予算がなくなり次第助成を打ち切ります。
- 千代田区暴力団排除条例に則り、暴力団や暴力団員等は助成金交付の対象外とします。
- 提出書類には全て同じ印を用いることとし、消せるボールペンの使用は不可とします。
ヒートアイランド対策助成制度 活用のメリット
本助成制度を活用すれば、下記のメリットが期待できます。
- 省エネ効果が期待できる
屋上緑化や壁面緑化を施すと、夏場は室温上昇を抑える効果が、冬場は室温が外へ逃げるのを防ぐ保温効果があります。その結果、建物内の冷暖房稼働が軽減できるため、省エネ効果が図れます。
- 従業員や来客者がリフレッシュできる
植物が身近にあると、血圧の低下や目の疲労などを軽減する効果があると言われています。また、植物には緊張や不安などを取り除く効力も確認されているため、従業員が心身ともにリフレッシュした状態で仕事に臨めます。さらには来客者の緊張感をほぐし、スムーズな商談をサポートする役目としても効果的です。
- 企業のイメージアップになる
緑化等への取り組みは、世界的な目標であるSDGs(持続可能な開発目標)における「気候変動に具体的な対策を」「働きがいも経済成長も」などの項目に該当します。そのため、企業のイメージアップや集客・宣伝効果に繋がります。
まとめ
都市部ではヒートアイランド現象と地球温暖化の影響を両方受けており、気温上昇のリスクは年々高まっています。より暑くなった夏をしのぐために冷房の使用頻度が多くなれば、二酸化炭素排出による環境への影響だけでなく、企業側もコスト面で損害を受けるでしょう。
ヒートアイランド対策助成制度を活用すれば、環境への配慮に加え企業の経済活動促進も期待できます。対象事業者は、ぜひこの機会に本助成制度の導入を検討してみてはいかがでしょうか。