東京都「地域の多様な主体と連携した中小規模事業所省エネ支援事業」は、省エネに向けた活動を推進したい中小企業をサポートする制度です。資金援助だけでなく、無料のコンサルティングによって専門家の意見も吸収できるため、今後の経営において生かせる部分は多いでしょう。
今回の記事では「地域の多様な主体と連携した中小規模事業所省エネ支援事業」の概要や助成対象事業者、助成額、必要な書類などを詳しく解説します。
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この記事の目次
今求められるのはどのような省エネか
地球温暖化をはじめとする世界的な環境変化を解消するため、日本でもCO2の排出削減を目指した取り組みを行っています。削減を進めるためには、「業務・産業部門」で約6割の排出量を占める都内の中小企業等からの協力が必須です。
しかし中小企業の場合、CO2排出削減に取り組もうにも「資金が足りない・技術が不足している」という課題を抱えているケースが多く、支援がなければ推進できないことも珍しくありません。
上記の課題を解決する手段として編み出されたのが「経営効率化に繋がる省エネ」という考え方です。従来とは異なり、省エネのみに着目するのではなく「省エネ施策が経営効率化にもつながる」という気づきを中小企業に与え、かつ、具体的な改善施策に乗り出す際の支援を通して、最終的なCO2削減につなげています。
地域の多様な主体と連携した中小規模事業所省エネ支援事業とは
本事業では、公益財団法人東京都環境公社が以下2つに対して助成金によるサポートを実施します。
(1) 省エネ対策サポート事業者が「経営支援団体から紹介を受けた中小企業者等が所有している、あるいは使用している都内の中小規模事業所」へ省エネコンサルティングを実施する際に発生する経費の一部
(2) 中小企業者等が、省エネコンサルティングで提案された運用改善を実施した際に発生する経費の一部
助成金の交付決定を受けた事業者は、省エネコンサルティングや運用改善の実施を通じて都内の中小規模事業所の省エネルギー対策を促進するとともに、都および公社が実施する効果分析に必要なデータ提供やセミナーでの事例発表、アンケート調査、その他求められた事項に応じることが必須です。
事業スキーム
本事業は、東京都が公社へ捻出した37億円の基金をもとに運営されているものです。都内の中小規模事業所に対して無料の省エネコンサルティングを実施し、ダウンサイジング化を含む省エネ設備改修工事契約の締結あるいは運用改善の実践等を条件に、発生した経費の一部を助成します。
助成事業
助成は省エネコンサルティングと運用改善の実践支援の2つに分かれています。
【省エネコンサルティング】 |
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以下1〜4の要件をすべて満たすものが助成金の対象です。 1:経営支援団体から紹介を受けた中小企業者等が所有、あるいは使用する都内の中小規模事業所(以下「省エネコンサルティング対象事業所」)に対して、省エネコンサルティングを無料で実施する 2:上記の1で実施する省エネコンサルティングの「省エネ設備改修の提案内容」に、ダウンサイジング化を含む 3:上記1の省エネコンサルティング対象事業所において、以下(1)あるいは(2)のいずれかを確認できる (1)ダウンサイジング化を含む省エネ設備改修の工事契約が締結されている (2)運用改善の提案内容に基づく省エネルギー対策の実施によって、エネルギー使用量が前年同月比で1.3%以上削減されている 4:省エネコンサルティング対象事業所のエネルギー使用量等を系統的に整理、および蓄積するための計測装置等を事業所に設置し、省エネコンサルティングに必要なデータ収集や分析を実施する |
【運用改善の実践支援】 |
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以下1〜2の要件をすべて満たすものが助成金の対象です。 1:省エネコンサルティング(本事業の助成金交付を受けている)に基づき、費用負担が発生する運用改善の取り組みを実施している 2:省エネコンサルティング(本事業の助成金交付を受けている)の運用改善の提案内容に基づく省エネルギー対策の実施によって、エネルギー使用量が前年同月比で1.6%以上削減されている。ただし、省エネルギー対策の実施から1年以上経過している場合は、省エネルギー対策を実施する前年の同月と比較する |
助成事業者
【省エネコンサルティング】 |
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助成対象となるのは、上記「助成事業」で解説する「省エネコンサルティング」を実施しており、かつ、以下1〜3の要件をすべて満たす事業者です。 1:経営支援団体から本事業に参加する中小企業者等の紹介を受けている 2:国やその他の団体から、上記の事業スキームで解説した「省エネコンサルティング」に関連する補助金等を別途で交付されていない 3:以下(1)〜(5)のいずれにも該当していない (1)暴力団(平成23年東京都条例第54号の東京都暴力団排除条例第2条第2号に規定するもの。以下同じ) (2)暴力団員等(暴排条例第2条第3号の暴力団員及び同条第4号に規定するもの。以下同じ) (3)法人の代表者、役員、使用人、その他従業者、構成員に、暴力団員等に該当する者がいる (4)成年被後見人、あるいは被保佐人、または破産者で、その復権を得ていない (5)税金の滞納や刑事上の処分を受けた、あるいはその他にも、公的資金の交付先として社会通念上適切でない要因がある |
【運用改善の実践支援】 |
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助成対象となるのは、上記「助成事業」で解説する「運用改善に必要な取り組み」を実施しており、かつ、以下1〜3の要件をすべて満たす事業者です。 1:本事業に参加し、省エネコンサルティング(助成金の交付を受ける)を受けている 2:国やその他の団体から、上記の事業スキームで解説した「運用改善に必要な取り組み」に関連する補助金等を別途で交付されていない 3:以下(1)〜(5)のいずれにも該当していない (1)暴力団(平成23年東京都条例第54号の東京都暴力団排除条例第2条第2号に規定するもの。以下同じ) (2)暴力団員等(暴排条例第2条第3号の暴力団員及び同条第4号に規定するもの。以下同じ) (3)法人の代表者、役員、使用人、その他従業者、構成員に、暴力団員等に該当する者がいる (4)成年被後見人、あるいは被保佐人、または破産者で、その復権を得ていない (5)税金の滞納や刑事上の処分を受けた、あるいはその他にも、公的資金の交付先として社会通念上適切でない要因がある |
助成金額
【省エネコンサルティング】
「助成対象経費」の10/10であり、上限額は100万円
【運用改善の実践支援】
「助成対象経費」の1/2であり、上限額は50万円
助成対象経費
【省エネコンサルティング】の対象経費は以下のとおりです。
区分 | 内容 |
人件費 | 事業に直接従事する者の人件費(現地調査、計測器設置・撤去、データ分析・報告書作成、報告会等に発生する費用) |
機器費 | エネルギー計測装置、計測装置取付費等 |
諸経費 | 事業の実施に必要であり、かつ、他のいずれの区分にも属していないうえで、以下のうち公社が必要と認めた経費 ・旅費 ・通信運搬費(郵便料、運送代、通信・通話料等) ・事務所賃貸料 ・振込手数料 ・間接部門人件費等 ・その他、事業の実施に必要と認められるもの |
【運用改善の実践支援】の対象経費は以下のとおりです。
区分 | 内容 |
機器費 | 機器の購入等に必要な経費 |
工事費 | 工事の実施に必要であり、かつ、以下のうち公社が必要と認める経費 ・労務費 ・材料費 ・消耗品費、雑材料費 ・直接仮設費 ・総合試験調整費 ・立会検査費 ・機器搬入費等 ・その他、事業の実施に必要と認められるもの |
助成対象外経費
以下1〜5に該当する経費は【省エネコンサルティング】【運用改善の実践支援】のいずれも助成対象外です。
1:過剰であると思われ、予備あるいは本事業以外での使用を目的としたものに発生する経費
2:消費税および地方消費税
3:第9条第3項の規定による交付決定通知日より前に、本事業に必要な契約を締結したものの経費
4:中古機器等の購入に発生する経費
5:その他、経済的合理性を欠くと公社が判断する経費
応募方法
以下、主な手続きの流れです。
手続きの流れ |
1.クールネットが公募を開始する |
2.省エネコンサルティングに係る助成金の交付申請を行う |
3.クールネットが申請内容を審査する |
4.交付決定通知後に、省エネ対策サポート事業者と申請企業の間でコンサルティング契約を締結する |
5.「省エネコンサルティングの実施に係る経費の助成開始届」を提出し、実際にコンサルティングを実施する |
6.省エネ対策サポート事業者が、申請企業とクールネットに改善提案書を提出する |
7.申請企業がクールネットに対して、運用改善の実践支援に係る助成交付申請を行う |
8.クールネットからの交付通知後、申請企業は工事契約を締結する |
9.申請企業はクールネットに対して「運用改善の実践支援に係る経費の助成開始届」を提出する |
10.助成金の助成完了届を提出する |
11.交付額の確定後、請求を行う |
スケジュール
1.交付申請の実施
令和5年1月20日までを予定(変更する場合はその都度案内される)
2.審査および交付の決定
令和4年5月中〜令和5年3月中までを予定
3.省エネコンサルティングおよび運用改善施策の実施
令和4年6月中〜令和5年4月中までを予定
4.助成事業完了届の作成および提出
令和4年9月中〜令和5年5月中までを予定
必要書類
【省エネコンサルティング】の申請に必要な書類は以下のとおりです。
- 確認書
- チェックリスト
- 助成金交付申請書
- 助成事業実施計画書
- 商業・法人登記簿謄本
- 建物登記簿謄本
- 省エネコンサルティング対象事業所を使用していることがわかる書類(写し)
- 暴力団排除に関する誓約書
- 納税証明書
- 助成事業経費内訳書
- 参考見積書(写し)
- 人件費単価に関する根拠資料(写しでも可)
- 省エネコンサルティング契約書案
- その他必要に応じて公社が指示する書類
以下、【運用改善の実践支援】の申請に必要な書類です。
- チェックリスト
- 助成金交付申請書
- 運用改善提案書
- 助成事業実施計画書
- 地球温暖化対策報告書(写し)
- 暴力団排除に関する誓約書
- 商業・法人登記簿謄本
- 建物登記簿謄本
- 決算報告書(写しでも可)
- 納税証明書
- 運用改善を実施する事業所を使用していることがわかる書類(写し)
- 助成事業経費内訳書
- 工事等参考見積書(写し)
- その他必要に応じて公社が指示する書類
まとめ
地球温暖などの問題が発生している現在では、CO2削減を通じて環境に配慮しつつ生産活動を続けたい中小企業も多いはずです。しかし、資金的な問題で具体的な行動に移せなかったり、そもそも何を改善すればよいのか判断できなかったりするケースもあるでしょう。
今回紹介した「地域の多様な主体と連携した中小規模事業所省エネ支援事業」を活用すれば、無料のコンサルティングを受けたうえで、資金サポートも得ながら実際の施策に取り掛かれます。
経営効率化にもつながる施策を、コスト負担を軽減して取り組めるというのは、中小企業にとって大きなチャンスですので、今後の方向性について専門家によるアドバイスを受けたい中小企業はぜひ活用しましょう。