岸田政権は2022年をスタートアップ創出元年として位置づけ、5年間で10倍増を目指すことを発表しました。2022年末には5か年計画の策定が予定されるなど、日本経済の成長を促すスタートアップに対する期待が高まっています。
こうした取り組みのひとつとして、東京都ではスタートアップ海外進出支援事業を設置しています。これは都内のスタートアップ等が海外向けの販路の開拓等を行う際に最大200万円を助成するものです。
今回は、スタートアップ海外進出支援事業についてまとめました。
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この記事の目次
スタートアップ支援の目的
スタートアップの育成は、社会的課題を解決する鍵と位置付けられました。岸田首相は日本の「第二創業期」の実現を目指し、公共調達におけるスタートアップの活用など、若手人材の支援や起業家教育の推進などに意欲を見せています。
まずは、スタートアップの重要性について見てみましょう。
スタートアップ支援の重要性
スタートアップとは、いままでにない新しい価値や需要を生み出す企業のことです。前例のない事業には予算や技術面での課題もあります。
しかしこうした斬新なアイデアを持つ企業を支援することは、社会全体に新たなイノベーションを生み出す可能性を高めることに繋がります。新型コロナウイルスの流行や不安定な社会情勢、環境問題などのさまざまな問題を解決するために、スタートアップ企業が提供する新しい価値や技術が求められているのです。
日本国内でのスタートアップ企業数は増加傾向にありますが、世界的にはまだまだ低い水準に留まっています。こうした状況を踏まえ、国や自治体ではスタートアップを支援する取り組みが設置されています。
スタートアップ海外進出支援事業とは
スタートアップ海外進出支援事業は、東京都が設置する、スタートアップ企業を支援するための取り組みです。
本事業の目的や内容などを確認していきましょう。
目的
スタートアップ海外進出支援事業では、円安を契機に積極的な海外展開を目指す都内の中小企業者等を対象に、海外向けの販路開拓支援や販売促進に要する経費の一部が助成されます。都内中小企業の振興に資することが目的です。
助成内容
都内中小企業者等が取り組む「海外展示会参加費」「海外向け EC サイ ト出店初期登録料」「海外向け自社 web サイト制作費」「販売促進費」「委託費」の経費の一部が助成されます。
助成要件(申請要件)
助成の対象となるのは中小企業者または創業予定者のうち、要件を満たした者です。主な要件は、以下のとおりです。
申請要件 | |
(1)右記のいずれかに該当すること。 | ■令和5年3月31日までに都内で創業することを計画している個人 ■中小企業者のうち、令和5年1月1日時点で創業10 年未満の法人または個人事業主 |
(2)右記の全てに該当すること | ■登記や本店が都内にあり、法人事業税等を東京都に納税している ■代表者が実質的な経営に関する指揮等を行っている ■関係法令を遵守している ■対象期間内に事業の実施が可能であり、その継続について不確実な状況が存在していない ■ほかの助成金や支援等を受けていない ■都や公社に対する支払い等が滞っていない ■暴力団関係者等でない など |
助成率・助成限度額
助成率と助成限度額は以下のとおりです。
■助成率
2/3以内
■助成限度額
200万円
なお、個別の上限金額が設定されている経費もあります。
対象経費
助成の対象となる経費は、以下の(1)~(6)の要件を満たすものです。
(1)取組を実施するための必要最小限の経費
(2)対象期間内に発注から支払いまでが完了する経費
(3)報告書類により確認可能であり、本助成対象となる取り組みに関するものとして区分できる経費
(4)業者へ直接委託・契約するもの
(5)自社内で直接実施することが困難なものについて、外部に委託する場合の経費
(6)自社や自社で取り扱う商品・サービスに関する制作物や広告であることが確認できること
また、助成対象経費には、以下の5区分があります。
(1)海外展示会参加費 | |
小間スペース利用料 | ・リアル展示会のみの場合 申請者名義で主催者と契約もしくは主催者指定代理店経由で契約し、出展小間内で商談を行うための小間スペース利用料 ・リアル展示会+オンライン展示会の場合 上記の小間スペースに加えて、併設されたオンライン展示会に出展する場に関わる出展基本料 ・限度額 オンライン出展基本料は 20 万円まで |
小間装飾費 | ・リアル展示会の小間に設置する什器や備品のリース代等の小間装飾委託費、小間内に掲示するポスターやパネルの印刷委託費 |
輸送費 | ・展示物の輸送を運送事業者へ外部委託する場合の輸送委託費 |
(2)海外向け EC サイト出店初期登録料 |
・申請者名義で運営者と契約し、出店する場合の出店初期登録料 ・限度額 20万円 |
(3)海外向け自社webサイト制作費 |
・海外向け自社webサイトの制作、改修委託費 ・限度額 20万円 ※「海外向け自社 web サイト制作費」単独での申請はできません。 |
(4)販売促進費 | |
外国語チラシ・カタログ制作費 | ・展示会等で使用する自社または自社で取り扱う商品、サービスの海外向けチラシ等の印刷物制作費 ・限度額 50万円 |
外国語PR動画制作費 | ・展示会等で使用する自社又は自社で取り扱う商品、サービスの海外向けPR動画の制作委託費 ・限度額 20万円 |
海外向けPR広告掲載費 | ・展示会出展等に伴い、自社または自社で取り扱う商品、サービスをPRするための海外向け広告掲載費 ・限度額 20万円 ※「販売促進費」単独での申請はできません。 |
(5)委託費 | |
海外向けマーケティング調査費 | ・展示会出展等に伴い実施する、新たな海外での販売先確保を目的とした市場調査、アンケート収集等の委託経費 ・限度額 70万円 |
海外向けデザイン・コンセプト設計費 | ・展示会出展等に伴い実施する、海外向けに自社の商品、サービスを改良する際の仕様などに関する委託経費 ・限度額 50万円 ※「委託費」単独での申請はできません。 |
【対象外経費】
また、以下の経費については対象外です。
- 手数料、交通費、レンタカー代、ガソリン代、宿泊費、保険料、飲食費、雑費等の間接経費および租税公課
- 自社や自社で取り扱う商品・サービスのPR に直接的に関わらない経費
- 購入物、特注品、自社で制作する場合の経費
- 他の用途にも使用できる経費
- 支払いに際してクレジットカード等により取得または使用した現金換算可能なポイント分
- 取引を証明する証憑に記載の金額と支払われた金額が一致しないもの
- 社会通念上、不適切と認められる経費
補助対象期間
助成対象期間は、以下のとおりです。
令和5年4月1日~令和6年4月30日(最⾧1年1か月)
ただし「海外展示会参加費」の「小間スペース利用料」は、助成対象期間前に行った申込・契約も助成対象です。
申請方法
次に、申し込みの方法や必要な書類について見てみましょう。なお、申し込みには事前エントリーが必須です。申請を検討している事業者は、はやめに準備を行ってください。
必要書類
申請に必要な書類は、以下の(1)~(6)です。
(1)申請書および誓約書
(2)登記簿謄本等
(3)納税証明書
(4)直近3期分の確定申告書
(5)展示会出展要項 (海外展示会に出展する場合)
(6)ECサイトの出店登録要項 (海外向けECサイトに出店・出品する場合)
また「創業支援プログラム」等の利用状況によっては、ほかにも必要な書類があります。申請の前に公式HPで確認してください。
受付期間
事前エントリーと申請の期間は、それぞれ以下のとおりです。
【事前エントリー】
令和4年12月15日17時~令和5年1月13日17時
【申請受付】
郵送…令和4年12月23日~令和5年1月16日 (当日消印有効)
電子申請…令和5年1月上旬 (予定)~令和5年1月16日
提出方法
申請書類は、郵送またはJグランツでの電子申請で提出してください。
事業実施の流れとスケジュール
スタートアップ海外進出支援事業の流れとスケジュールは、以下のとおりです。
事業の流れとスケジュール |
1.事前エントリー 締切日・令和5年1月13日(金)17時 |
2.申請 締切日・令和5年1月16日(月) |
3.面接審査(創業予定者のみ) 令和5年2月上旬(予定) |
4.交付決定 令和5年3月下旬予定 |
5.実施 令和5年4月1日~令和6年4月30日(最⾧1年1か月) |
6.実績報告書の提出 |
7.完了検査 |
8.助成金額の確定 |
9.助成金の請求 |
10.助成金の受取 請求書到着から約1か月後 |
スタートアップ海外進出支援事業はこんな方におすすめ
新型感染症や各国間の関係など、社会的には先の見えない情勢が続いています。しかし人々の間では新しい生活様式が定着し、それに伴う社会的ニーズも見えてきました。
こうした動きの中、経済的イノベーションを引率する存在として、スタートアップ企業には大きな期待が寄せられています。
東京商工会議所が発表した「創業・スタートアップ実態調査」では、創業10年未満の中小企業は40.1%が赤字であることや、事業拡大に向け必要とする支援策として「補助金・助成金、融資制度の充実」がもっとも高い割合を占めたことなどが報告されています。
出典:東京商工会議所「創業・スタートアップ実態調査」
スタートアップ海外進出支援事業活用は、こうしたスタートアップ企業の需要に応えるものです。海外への進出を狙う企業は、ぜひ、活用してください。
まとめ
コロナ禍をはじめとする社会情勢の悪化は、既存の企業のみならず、これから起業しようとする若い事業者にとっても大きな影響を与えています。しかし、変化の時期はチャンスでもあります。円安によって海外へ販路拡大の可能性が広がったと感じる事業者もいるでしょう。
スタートアップ海外進出支援事業活用は、変化の時代にチャンスをつかみ取ろうとする企業のための補助金です。新しいイノベーションを引率する存在として、多くのスタートアップに利用してほしい事業です。