「中小企業成長加速化補助金」の3次公募の公募要領が2026年8月20日に公開されました。申請受付は2026年9月29日(火)〜10月29日(木)15:00です。令和7年度補正予算分は今回の3次公募で終了となる見込みで、現行制度では事実上の最終回と考えて準備を進める必要があります。
2次公募で「間に合わなかった」「不採択だった」という企業にとっては、現行制度で残された最後のチャンスになる可能性があります。一方で、3次公募では補助事業期間が「14か月以内〜24か月以内」に変更されたほか、補助事業期間中の「足下の賃上げ」が審査で評価されるなど、計画の前提に関わる変更も加わっており、2次の計画をそのまま出し直すのは危険です。
この記事では、制度の概要に加えて、2次公募からの変更点、賃上げ要件、2次公募の採択データ、申請スケジュールを最新の公募要領に基づいて解説します。売上高10億円以上で、工場・拠点の新設や設備導入など1億円以上の大規模投資を検討している経営者の方はぜひご確認ください。
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この記事の目次
中小企業成長加速化補助金とは
中小企業成長加速化補助金は、将来の売上高100億円を目指す中小企業の大胆な設備投資を、補助率1/2・上限5億円で支援する制度です。高い成長意欲を持つ中小企業の大規模投資を後押しし、賃上げや輸出、域内仕入を通じて地域経済に波及効果をもたらす「100億企業」の創出を目的としています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 補助上限額 | 5億円 |
| 補助率 | 1/2 |
| 対象者 | 売上高10億円以上100億円未満の中小企業者 |
| 主な要件 | 100億宣言の公表 投資額1億円以上 賃上げ要件を満たす5年程度の事業計画 |
| 対象経費 | 建物費、機械装置費、ソフトウェア費、外注費、専門家経費 |
| 事業期間 | 交付決定日から14か月以内〜24か月以内(3次公募で変更) |
老朽化設備の単なる入れ替え(更新投資)は対象外で、生産能力や付加価値の向上につながる「一段上の成長」を目指す投資が求められます。
3次公募のスケジュール
3次公募の申請受付期間は2026年9月29日(火)〜10月29日(木)15:00です。採択決定から原則2か月以内に交付申請を行い、交付決定後に契約・発注が可能になります。| 日程 | 内容 |
|---|---|
| 2026年8月20日 | 公募要領・公募概要資料・FAQ公開 |
| 2026年9月1日(火) | 公募説明会(動画配信) |
| 2026年9月29日(火) | 申請受付開始 |
| 2026年10月29日(木)15:00 | 申請受付締切(厳守) |
| 2027年1月中旬 | 1次審査(書面)結果の通知 |
| 2027年2月15日(月)〜3月5日(金) | 2次審査(プレゼンテーション審査) |
| 2027年3月下旬以降 | 採択結果の公表、以降順次交付決定 |
スケジュール上の注意点は以下のとおりです。
・申請時までに100億宣言がポータルで公表されている必要があります。公表手続きには通常2〜3週間かかるため、未了の場合は9月上旬までに宣言の申請を済ませておくのが安全です。
・提出後に資料を再提出したい場合は、締切の2営業日前17時までに事務局へ事前連絡が必要です。
・交付決定前の発注(内示を含む)は補助対象外です。
・令和7年度補正予算分は本3次公募で終了見込みとされています。
2次公募からの変更点
3次公募の公募要領(2次公募対照版)で明示された主な変更点を解説します。申請計画に直接影響するものばかりなので、2次公募の要領をベースに準備していた場合は必ず確認してください。
補助事業期間が「14か月以内〜24か月以内」に
2次公募までは「交付決定日から24か月以内」でしたが、3次公募では「交付決定日から14か月以内〜24か月以内」となり、予算執行可能期間を踏まえて調整するとされました。採択が2027年3月下旬以降であることから、予算年度の都合で事業期間が24か月より短く設定される可能性があります。工場新設など工期の長い案件は、最短14か月で完了できる工程かを事前に確認しておく必要があります。
「足下の賃上げ」が審査で評価される
補助事業完了後3年間の賃上げに加えて、補助事業期間中に実施する「足下の賃上げ」が審査の評価対象に加わりました。具体的には、申請時の直近決算期から基準年度(補助事業完了年度)までの従業員1人当たり給与支給総額の年平均上昇率が物価上昇率を上回らない計画は「審査上大幅に不利になる」と明記されています。
さらに、足下の賃上げについても採択後〜交付決定までに従業員への表明が必須となり、補助事業期間中の賃上げ実績はモニタリングの対象になります。「事業完了後に賃上げする」計画だけでは通りにくくなった、もっとも実務インパクトの大きい変更です。
投資額1億円の定義が厳格化
投資額(建物費・機械装置費・ソフトウェア費の合計)は、資産計上するものに限ると明記されました。費用処理される経費は1億円の要件にカウントされません。
外注費・専門家経費が「資産取得のため」に限定
外注費は「補助対象となる建物・機械装置・ソフトウェアの取得のために必要な加工・設計・検査等」、専門家経費は「同じく資産取得のために依頼した専門家への経費」に範囲が限定されました。
資産取得と直接結びつかないコンサルティングや検証業務は対象外と考えておくべきです。また、設計等を外注して資産計上する場合は、外注費ではなく該当する経費区分(建物費等)に計上します。
賃上げ要件の返還ルールが明確化・厳格化
賃上げ要件に関しては、以下の点が変更・追加されました。
・従業員への目標表明がなかった場合も全額返還。交付前に判明した場合は交付自体が行われない
・基準年度や最終年度に12か月未満の決算期がある場合は、次の12か月の事業年度で判定する規定を新設
・指標名を「従業員の給与支給総額」「従業員の1人当たり給与支給総額」に統一
売上高投資比率の見方が変更
審査で見る「売上高に対する設備投資額の比率」が、「本補助事業を含む」から「本補助事業に限る」に変わりました。他の投資を合算して比率を大きく見せることはできません。
変更のない主な条件
補助率1/2・上限5億円、売上高10億〜100億円、課税所得年平均15億円以下、基準率4.5%、単価100万円以上の経費要件、経営者本人によるプレゼン審査、5年間(6回)の事業化・賃上げ報告は据え置きです。
対象者・申請要件
申請にあたっては、以下の「対象事業者の範囲」と「申請要件」をすべて満たす必要があります。
対象事業者の範囲
・資本金・従業員数が中小企業等経営強化法の「中小企業者」の定義に合致すること
・「みなし大企業」「みなし同一法人」に該当しないこと
・公募開始日時点で、直近過去3年分の課税所得の年平均額が15億円を超えていないこと
・日本国内に本社と事業実施場所を有すること
主な申請要件
・投資額1億円以上:建物費・機械装置費・ソフトウェア費のうち資産計上するものの合計が1億円以上(税抜)
・賃上げ計画:補助事業終了後3年間、従業員1人当たり給与支給総額を年平均4.5%以上引き上げる計画を策定し、従業員等に表明すること
・日本国内で補助事業を実施すること
「100億宣言」の内容と手続き
100億宣言は、経営者が「売上高100億円」という目標を掲げ、実現に向けた道筋を公表するものです。A4用紙1枚程度のフォーマットに、主に以下の5項目を記載します。
・売上高100億円実現の目標と課題(成長目標、達成までの期間、プロセス)
・具体的措置(生産体制増強、海外展開、M&Aなど)
・実施体制
・経営者のコミットメント
申請はJグランツから行い、事務局の確認を経てポータルに公表されます。公表までに通常2〜3週間かかり、不備がある場合はさらに時間を要します。3次公募の締切(10月29日)に間に合わせるには、9月上旬までの申請が目安です。
なお、宣言の内容と補助金の投資計画は整合している必要があり、「宣言だけ先に出して後から計画を考える」と審査で矛盾が生じます。
賃上げ要件と未達成時の返還ルール
本制度では、大規模投資の成果を従業員へ還元することを重視しており、賃上げ要件が課されています。
賃上げ目標
補助事業が完了した事業年度(基準年度)と比較して、その3事業年度後(最終年度)の「従業員の1人当たり給与支給総額」の年平均上昇率が4.5%(全国の直近5年間の最低賃金の年平均上昇率=基準率)以上であることが必要です。応募時に基準率以上の目標を掲げ、交付決定までに従業員等へ表明します。
目標指標は「従業員の給与支給総額」か「従業員の1人当たり給与支給総額」のいずれかを申請時に選択します(申請後の変更不可)。「給与支給総額」を選んだ場合でも、1人当たり給与支給総額が基準率を下回れば返還対象になります。
返還となるケース
| ケース | 返還 |
|---|---|
| 交付決定までに目標を従業員等に表明しなかった | 全額返還(交付前なら不交付) |
| 基準年度の給与水準が申請時の直近事業年度を下回った | 全額返還 |
| 最終年度に目標を達成できなかった | 未達成率に応じて返還 |
| 給与支給総額を選択し、1人当たりが4.5%を下回った | 未達成率に応じて返還 |
天災など事業者の責めに帰さない理由がある場合は返還を求められません。また、返還となった場合も事業者名は公表されません。
足下の賃上げも審査対象
前述のとおり、3次公募では補助事業期間中の賃上げも審査対象です。2次公募の採択者データでは、申請時直近決算期から基準年度までの「足下の賃上げ」は採択者平均5.5%(申請全体4.5%)でした。計画策定時は、事業完了を待たず段階的に賃上げを実行するシナリオを組み込んでおくのが現実的です。
補助率・補助額と対象経費
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| 建物費 | 工場・物流拠点・販売施設等の新設、増築、改修、中古建物取得(単価100万円以上) |
| 機械装置費 | 製造装置、検査工具、器具備品等の購入・製作・借用(単価100万円以上) |
| ソフトウェア費 | 専用ソフトウェア、情報システム、クラウド利用料(単価100万円以上) |
| 外注費 | 補助対象となる建物・機械装置・ソフトウェアの取得に必要な加工・設計・検査等の外注費用 |
| 専門家経費 | 補助対象となる建物・機械装置・ソフトウェアの取得のために依頼した専門家への経費 |
| 補助率 | 1/2 |
| 補助上限額 | 5億円 |
対象経費について押さえておきたい点は以下のとおりです。
・土地代、建物の単なる購入・賃貸、構築物(門・塀・舗装等)、公道を走る車両、汎用PC・タブレット、更新投資、投資計画書の作成費用は対象外です。
・補助対象経費は交付決定日以降に契約・発注したものに限られます。
・交付申請時には原則2者以上の相見積もりが必要です。応募段階から複数者の見積もりを取得しておくと、採択後の手続きがスムーズです。
審査の3つの観点
審査は1次(書面)と2次(プレゼン)の2段階で、「経営力」「波及効果」「実現可能性」の3つの観点から評価されます。
| 観点 | 主な審査内容 |
|---|---|
| 経営力 | 売上高100億円に向けたビジョンと5年程度の事業戦略 高い売上高成長率・付加価値増加率 売上高に対する投資比率(本補助事業に限る) 賃上げ計画の妥当性(足下の賃上げを含む) 市場分析と差別化 成果目標と管理体制 |
| 波及効果 | 域内仕入の拡大、サプライチェーンへの波及 イノベーション創出 地域のモデル企業としての取組(パートナーシップ構築宣言、BCP、えるぼし・くるみん認定等) |
| 実現可能性 | 実施体制 財務状況(ローカルベンチマーク) 金融機関のコミットメント(確認書) |
2次公募の採択データ(採択倍率約3.9倍)
2次公募は申請872件に対し採択224件で、採択倍率は約3.9倍(1次公募は約6.0倍)でした。事務局が公表した採択者と申請全体の指標(中央値)は次のとおりです。
| 指標 | 採択者 | 申請全体 |
|---|---|---|
| 売上高成長率(年平均) | 30.5% | 26.0% |
| 付加価値増加率(年平均) | 35.0% | 28.6% |
| 労働生産性成長率(年平均) | 23.7% | 18.0% |
| 売上高投資比率 | 54.7% | 38.5% |
| 最新決算期の売上高 | 20.5億円 | 26.9億円 |
| 補助事業全体に要する経費 | 11.3億円 | 10.3億円 |
| 1人当たり給与支給総額の増加率(年平均) | 6.5% | 6.0% |
| 足下の賃上げ(年平均) | 5.1% | 3.7% |
| 自己資本比率 | 43.8% | 34.4% |
| ローカルベンチマーク得点 | 22.3点 | 21.0点 |
採択者の「金融機関による確認書」提出率は100%(224件中224件)でした。任意書類ではありますが、実質的には必須と考えるべきです。また、採択者の売上高中央値が申請全体より小さいことから、現在の企業規模よりも成長率・投資比率・賃上げ率の高さが重視されていることがわかります。
審査員のコメントによる審査の判断基準
事務局資料には審査員の感想も掲載されています。要約すると「経営者自身の言葉でブレずに答えられるか」「数字の根拠・仕組み・人材確保が噛み合っているか」「補助金ありきの計画になっていないか」「国内市場だけでなく輸出やM&Aなど100億に届く打ち手があるか」といったことが、審査の判断基準となっています。
また、金融機関による確認書のコメントについても、計画のプラス面だけでなく、課題面を把握したうえで経営者とともにどう解決していくかまで書かれているかが評価されます。
申請方法と採択後の流れ
申請は電子申請システム「Jグランツ」のみで受け付けます。「GビズIDプライムアカウント」の取得に約2週間かかるため、未取得の場合はすぐに手続きしてください。
・投資計画書(様式1、40ページ以内、PDF)
・投資計画書別紙(様式2、Excel)
・ローカルベンチマーク(様式3、Excel)
・決算書3期分(PDF)
・金融機関による確認書(様式4、任意だが採択者の提出率100%)
・リース関連書類(該当者のみ)
採択後の流れ
・交付決定後に契約・発注(事業期間は交付決定日から14〜24か月以内)
・事業完了後30日以内に実績報告、確定検査を経て補助金支払い(原則精算払い)
・事業終了後5年間(計6回)、事業化状況・賃上げ状況を報告
申請して採択されたら終わりではなく、事業終了後も数年間の報告義務が続きます。長期にわたるプロセスとなるため、計画的に進めることが重要です。
よくある質問
3次公募が最後になる?
令和7年度補正予算分は3次公募で終了見込みとされています。4次公募の予定は現時点で示されておらず、今後の情報は100億企業成長ポータルで案内される予定です。
2次公募で不採択でも再申請できる?
可能です。ただし3次公募では事業期間、足下の賃上げ、投資比率の算定方法が変わっているため、2次の計画をそのまま出し直すのではなく見直しが必要です。
事業期間が14か月になるのはどんな場合?
公募要領では「予算執行可能期間を踏まえ調整」とのみ記載されており、個別の確定は交付決定時になります。工期の長い案件は事務局への事前相談をおすすめします。
成長加速化補助金は怪しい制度?
中小企業庁・中小機構による正規の補助金で、事務局はTOPPAN株式会社です。ただし賃上げ未達時の返還規定や経営者本人のプレゼン必須などハードルは高く、「必ず採択される」と謳う支援業者には注意が必要です。
熊本地震の被災事業者への配慮はある?
2026年7月28日の熊本県を震源とする地震の影響を受けた事業者向けに、事務局が配慮措置を検討中と公表しています(8月20日時点)。詳細は追って案内される予定です。
まとめ
中小企業成長加速化補助金の3次公募は、2026年9月29日〜10月29日が申請期間で、現行予算では最終回の見込みです。3次公募では、事業期間が14〜24か月に変更され、補助事業期間中の「足下の賃上げ」が審査対象になるなど、計画の前提に関わる変更が加わりました。
採択データが示すように、求められているのは現在の規模ではなく、売上高成長率30%、投資比率50%超、賃上げ6%超といった「背伸びした本気の成長計画」と、それを経営者自身の言葉で語れることです。100億宣言の公表、GビズIDの取得、金融機関との協議、相見積もりの取得など、公募開始前にできる準備は今すぐ着手することをおすすめします。
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