2022年10月28日に閣議決定した「物価高克服・経済再生実現のための総合経済対策」には、エネルギー価格高騰対策が盛り込まれました。これを受け、2023年1月から電気・都市ガス料金を支援する電気・ガス価格激変緩和対策事業が開始されています。
本事業は毎月の電気・ガス料金のから値引きを行い、家計や企業を支援するものです。今回は電気・ガス価格激変緩和対策事業の概要や仕組み、適用期間についてまとめました。
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この記事の目次
電気・ガス価格激変緩和対策事業とは
電気・ガス価格激変緩和対策事業は、国が値引き原資を補助することで、電力や都市ガスの小売業者などが請求料金の値引きを行うものです。
まずはその目的や概要について見ていきましょう。
目的
不安定な世界情勢を背景に、エネルギー価格の高騰が続いています。電気・都市ガス料金の上昇は家計や企業の業績を圧迫し、日本の経済社会全体に大きな影響を与えています。さらに電気料金やガス料金は今後も上昇が続くことが見込まれ、負担増加による経済的な悪影響が危惧されています。
電気・ガス価格激変緩和対策事業は、こうした状況に対する負担緩和策として発表されました。特に家庭の電気使用量が増加する冬季から令和5年度前半にかけて、継続的に値下げ支援が行われます。
概要
令和4年度第2次補正予算ではエネルギー価格の高騰により厳しい状況にある家庭や企業の負担を軽減するため、「物価高克服・経済再生実現のための総合経済対策」として、3兆円以上が計上されました。令和5年1月の使用分から、使用量に応じてガス・電気料金の値引きが行われます。
電気や都市ガスの料金プランのうち、規制料金は経済産業大臣の認可や経済産業大臣に届け出た供給約款などに従って設定されます。そのため、値引きの実施には、定めとは異なる条件で供給を行うことの認可が必要です。
電気・都市ガスの小売事業者などが令和4年12月7日付けで申請を出し、それが認可されたことで、規制料金の値引きが可能となったのです。また、認可や届出を経ることなく設定できる自由料金についても、今回の支援事業の対象になっています。
支援の対象
国からの補助は電力・都市ガスの小売業者などが受け取り、電気代・ガス代の値引きとして家庭・企業などの利用者へ還元します。
ただし、支援の対象となるのは「電気・ガス価格激変緩和対策事業」の申請手続きを行い、採択された電力・都市ガスの小売業者などです。申請を行っていない企業の電気代・ガス代は値引きの対象ではありません。
すでに各電力・都市ガスの小売業者などが値引き単価の詳細等を発表しています。利用している企業が支援の申請を行っているかどうかは、経済産業省・資源エネルギー庁の電気・ガス価格激変緩和対策事業サイトなどで確認をしてください。
電気代・ガス代値引きの仕組み
電気代・ガス代は、国からの値引き原資を元に行われます。値引きは家庭や事業所など、すべての利用者が受けられます。
本事業は電力・都市ガスの小売業者などが国に申請を行うことで料金の値引きを実施するもので、電気やガスを利用する家庭や事業所では手続き等は必要ありません。小売業者などが規定額を値引きし、家庭や企業への請求額に反映させる仕組みです。
支援の仕組みはや支援内容については、以下の図も参考にしてください。
出典:電気・ガス価格激変緩和対策事業
電気代・ガスの値引きはいつからいつまで?適用期間について
電気代やガス代金の値引きは、令和4年12月下旬に確定する燃料費調整単価(電気)、原料費調整単価(都市ガス)が適用される検針分からの適用です。したがって、令和5年1月の請求分から割引が開始されます。
割引の適用は令和5月9月使用(10月検針分)までですが、適用期間の途中で割引額に変更があります。
適用期間と使用量あたりの単価からの割引額は、以下のとおりです。
■令和5年1月使用分(2月検針分)から令和5年8月使用分(9月検針分) |
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電気(低圧)…7.0円 電気(高圧)…3.5円 都市ガス…30円 |
■令和5年9月使用分(10月検針分) |
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電気(低圧)…3.5円 電気(高圧)…1.8円 都市ガス…15円 |
なおこの額は、電力・都市ガスの小売業者などが電気料金や都市ガス料金の算定に用いる単価です。実際の値引き額とは異なる場合があります。
電気代・ガス代どのくらい安くなる?
では家庭や企業が支払う電気代やガス代は、具体的にはどれくらい値引きされるのでしょうか。次は値引き金額の目安や確認方法について見ていきましょう。
電気代・ガス代の計算方法
電気代・ガス代のプランは各業者によって異なりますが、例として、東京電力エナジーパートナー株式会社の場合は以下のような計算で算出されます。
■一般的な電気料金の計算式
基本料金+電気使用量単価×使用量±燃料費調整単価×使用量
このうち「電気使用量単価×使用量±燃料費調整単価×使用量」の部分を電力量料金と呼び、「燃料費調整額×使用量」が「燃料費調整額」となります。電気・ガス価格激変緩和対策事業の値引き単価は、この燃料費調整額に反映されます。
また、定額制を利用している場合は契約種別に値引き単価が設定されています。
■一般的なガス料金の計算式
基本料金+従来料金単価×使用量+原料費調整単価×使用量
このうち「従来料金単価×使用量+原料費調整単価×使用量」の部分を従量料金と呼び、「原料費調整単価×使用量」が「原料費調整額」となります。電気・ガス価格激変緩和対策事業の値引き単価は、この原料費調整額に反映されます。
いずれの場合も「基本料金」「最低料金」「従量料金」等ではなく、各調整費に反映されます。基本料金等が値引きになるわけではありません。
値引き額
家庭や企業の電気やガスの値引き額は、使用量に応じて変わります。具体的には各単価に使用量(電気の場合はkWh、ガスの場合は㎥)をかけた金額が、実際の値引き額です。
電気代・ガス代の値引きの単価と標準世帯の負担軽減額は、以下のとおりです。
【電気料金の各値引き単価】 |
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■低圧契約(主に家庭)…7.0円/kWh ■高圧契約(主に企業)…3.5円/kWh 標準世帯の負担軽減額 1カ月につき2,800円 |
【ガス料金】 |
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■値引き単価…30円/㎥ 標準世帯の負担軽減額 1カ月につき900円 |
なお、年間契約量が1000万㎥以上の企業等は対象外です。また発電事業者向けの販売量は除きます。
実際の値引き額等は、契約のプランや使用量によっても異なる場合があります。また、この事業とは別に、企業が独自の費用負担を行っている場合もあります。
正確な値引き額に関しては、契約している電力・都市ガスの小売業者などのサイト等で確認をしてください。
値引き額の確認方法
値引き金額は2023年1月使用分(2月請求分)以降、家庭や事業所に届く請求書や検針票、web明細で確認できます。
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まとめ
家庭の電気は冬場の暖房の使用料がもっとも高い割合を占めます。無駄を省き、節約を重ねたとしても、これからの季節は特に経済的負担が大きくなります。
ガスや電気代は、生活するうえで必要な費用です。生活のため、また経済活動の回復のためには、こうした負担を乗り越えなくてはなりません。
今回の電気・ガス価格激変緩和対策事業は、家庭や企業には手続き等の手間なく毎月のガス代・電気代が安くなる制度です。こうした支援は生活を支える大きな力となります。
不安定な世界情勢や物価の高騰は、もうしばらく続きそうです。国の支援策や節約を組み合わせ、厳しい時期を乗り越えていきましょう。