デジタルシフトや環境問題への対応など、ファッション産業は大きな転換点を迎えています。消費者の間でも大量生産・大量消費のサイクルが見直され、リユースやシェアリングに対する関心が高まってきました。
ブランドの持続可能な成長を支え、課題解決への取組を後押しするため、公益財団法人や自治体ではさまざまな支援策が設置されています。
今回はファッション業界が活用できる、支援制度をまとめました。
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この記事の目次
ファッション業界の未来を築く「人材育成と産業支援制度」を紹介
若い人材の育成は、多くの業界で課題のひとつです。ファッション業界でも、若手デザイナーや新規事業を対象にした支援策が設置されています。また、東京都では、地域の特性を活かした産業としてファッションの発展を目指す支援制度も実施されました。
ファッション業界に新たなアイデアと可能性をもたらす人材育成と、ファッション産業を支援する事業を見ていきましょう。
公益財団法人日本服飾文化振興財団 JFLF AWARD 2024
「JFLF賞」は、服飾デザインに係る活動を行う者に対して助成することを目的として制定された「服飾デザイナー助成制度」です。若手服飾デザイナーの活発なデザイン活動を奨励するとともに、新たな才能を発掘し、服飾文化の振興に貢献することを目指します。
対象者 |
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対象者は、以下のすべてに該当する者です。 ①服飾デザインに係る活動に従事している者 ②募集年度4月1日現在で20歳以上35歳以下である者 ③日本国籍を有する者、または日本の永住資格を有する者 服飾デザインを行う、若手のデザイナーが対象です。 |
対象となる活動 |
対象となるのは、「服飾文化の発展に寄与する可能性のあるデザインに係わる活動」です。過去の助成対象者の作品は、ホームページで確認できます。助成対象者は、活動終了後3か月以内に、活動の成果、今後の課題、支出金額について「完了報告書」と「会計報告書」を作成し、公益財団法人日本服飾文化振興財団に直接提出する必要があります。 |
対象経費 |
助成の対象となる経費は、「活動のために通常必要とされる費用」です。ただし、諸給与・事務所維持費・生活費等の経費は除きます。なお、活動のために臨時に雇い入れた者に対する謝礼金は、助成経費の対象です。 |
助成額 |
助成額は1名あたり30万から100万円(毎年、300万円を限度額)※なお令和4年は3名、令和5年は2名が対象となりました。連名やチーム、グループでの応募はできません。 |
申請の流れ
申請は、郵送にて行います。必要な書類を、以下の宛先まで送付してください。
①申込書 ②履歴書(顔写真貼付、様式自由)
〒107-0052 東京都港区赤坂8-1-19 日本生命赤坂ビル8F
公益財団法人日本服飾文化振興財団 助成事業担当
申請期間は以下のとおりです。
令和6年10月1日(火)~11月30日(土)
地域特性を活かしたファッション産業振興事業
東京都では、ファッションに関するイベントに対して補助を実施しました。東京の街全体でファッションを盛り上げる雰囲気を醸成し、幅広い層へ東京のファッションの魅力を発信することで、東京を世界有数のファッション都市とすることを目指すものです。
なお、本年度の募集はすでに締め切られました。
対象者 |
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対象者の主な要件は、以下のとおりです。 -東京都全域を含むアパレル・ファッション産業の事業者、またはそのグループであること -経理等の資金管理面を含め補助対象事業の実施に十分な体制が整っていること グループ申請の場合には、エリアごとに事業の実施者を指定することなどが必要です。 |
対象事業
対象となる事業の主な要件は、以下のとおりです。
-都内6か所以上のエリアで、3月中旬から3月31日の期間内に開催する事業であること
-全エリア共通のコンセプトを定め、統一的なタイトル・ロゴを使用すること
-各エリアで実行委員会を組織すること
-各エリアで開催されるイベントが、ファッションに関するものであること。
-新規拡充の取組であること
-参加無料で、誰もが観覧、参加できるものであること
エリアや期間の指定のほか、全エリアで統一感のある事業となること、誰もが参加できるイベントであることなどが盛り込まれています。
対象経費 |
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①広報費 ②委託費 ③賃借費 ④出演費 |
出演費は単価300万円までが補助の対象です。全体広報およびエリアそれぞれの出演費で1,000万円が上限となります。
いずれも該当のイベント実施に必要な最低限の費用に限られます。また、補助金を受けることで収益が出る場合は、相当額が控除されます。
補助率 | 1/2 |
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補助上限額 | 6億円 |
ただし、中小企業を特に取り込んだ企画および学生デザイナー支援につながる企画は、補助率が2/3になります。
申請の流れ
申請は、郵送または持参での受付となりました。受付期間等は、以下のとおりです(現在は、募集は終了しています)
令和6年10月7日(月曜日)から10月25日(金曜日)まで
※令和4年は10月11日~11月4日、令和5年は10月6日~10月26日までの公募期間でしたので、例年秋ごろに公募が行われています。
■補助対象期間
交付決定の日から令和7年3月31日まで
みらいのファッション人材育成プログラム
経済産業省では、次世代のファッション産業を担うファッション領域の人材に向けた「みらいのファッション人材育成プログラム」を実施しています。持続可能なサプライチェーン構築に向けた製品やサービス、システムを創出するための実践的な教育機会の提供を中心とした、1年間の事業化支援プログラムです。
すでに今年度の募集は終了し、以下の5組が採択されました。
採択企業名 | 取組内容 |
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株式会社メタクロシス | デジタルマネキンAuinの開発 |
株式会社ワコール | 立体メルトブロー法による単一素材アイテムの展開 |
JR西日本SC開発株式会社 | 商業施設を起点としたサーキュラーエコノミー型社会モデルの構築について |
Synflux株式会社 | ゼロウェイストファッション事業におけるLCA評価導入調査事業 |
MAI SUZKI | 伝統工藝「組子」×デジタルファブリケーションの融合による循環型・ウェアラブル新素地の開発 |
対象者
本プログラムでは、個人またはチーム(人数制限なし)が対象となりました。主な要件は、以下のとおりです。
-個人またはチームの代表者が、中学校を卒業していること
-個人またはチーム全員が、日本国籍または日本の永住資格を有すること
-2024年5月10日までに「応募参加表明フォーム」にて参加表明をした者であること
また、クリエイターの主な要件は以下のとおりです。
-年間事業計画を立て、完遂できること
-応募者自身または応募チームで事業開発及び制作を行えること
-他企業や団体と進行中の企画、契約書を締結している企画の応募ではないこと
本事業では、未成年や行政、民間組織も対象となりました。
対象経費 |
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■人件費 ■借料および損料 ■旅費 ■委託・外注費 ■消耗品費 ■印刷製本費 |
いずれも本事業の目的に沿ったもののみが対象です。消耗品費に関しては、ほかの事業の経費と混同することのないように、受払簿や在庫の管理をしてください。
支援内容・支援額
本プロジェクトでは、以下の5つの支援が行われます。
支援事業 | 支援内容 |
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①活動費の補助 | 上限500万円が支援されます。 |
②専門家による伴走支援 | 専門家がクリエイターごとに伴走支援します。 |
③事業化へのレクチャー | 事業計画を推進するための、専門的知見を各領域の講師が提供します。 |
④ファブ施設の利用 | 必要に応じて、デザインスペース・KYOTO Design Lab[D-lab]の利用を提供します。 |
⑤事業化機会の創出 | 事業計画の推進や成果報告会を通して、京都を中心とした研究機関や産業界との情報交換、マッチングの機会を創出します。 |
作成段階から事業化までの、総合的な支援が特徴です
申請の流れ
申請の大きな流れは、以下のとおりです(現在は、募集は終了しています)
①参加表明:5月10日17時まで
応募サイトの「応募参加表明フォーム」から参加表明を行います。
②応募申請:5月17日17時
参加表明を行うと「応募フォーム」のリンクが通知されます。フォームに従い、必要事項の記入および書類の提出を行います。
デジタルシフトとサステナブルファッションの考察
ファッション業界では、生産過程で排出するCO2や、年間約9,200万トンにも上る廃棄が問題となっています。ファッションビジネスを持続可能なものに転換するために、デジタルシフトとサステナビルファッションへの取り組みが大きな注目を集めています。
2022年、これからのファッションを考える研究会の「ファッションの未来に関する報告書」では、「望ましい未来のファッション」として、デジタルとリアルを行き来する、循環的なサイクルが提示されました。
参考:ファッションの未来に関する報告書
SNSやメタバース空間の普及を受け、アバターが着用するデジタルファッション市場が拡大しています。自由な発想で展開されるデジタルファッションの世界では、新たなクリエイションの可能性にも期待が寄せられています。
また、デジタルシフトは環境問題への対応でも利益をもたらします。受注生産によって需要ギャップを埋める取組では、データ上で自分の写真と商品を合成するデジタル試着も一般化してきました。ネットでの売買が一般化した現代において、こうしたツールはユーザーにとってもメリットの大きいものです。さらに環境に配慮したファッションの広がりは、ユーザーの意識の変化とともに、企業への新たなニーズとして顕在化してきました。
将来にわたって持続可能な企業であり続けるために、デジタルシフトや環境負荷の少ないサステナブルファッションへの取組が、互いに関連しながら効果を発揮しているのです。
まとめ
ファッション業界は、デジタル化と環境問題への配慮という転換期を迎えています。社会的にも大きな注目を集めるファッション産業への支援として、若手デザイナーサステナブルファッション人材育成、地域振興のためのイベント支援など、さまざまな支援策が設置されています。
ファッションは、人の生き方や社会の在り方を反映する、文化的なツールでもあります。持続可能な業界成長を目指し、助成金や伴走支援を活用しながら、デジタルシフトとサステナビリティへの取り組みを進めていきましょう。
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