
観光庁は、令和6年度(2024年度)予算の概算要求において、670億4700万円を計上しました。そのうち一般会計は、前年度予算額の2.2倍となる241億1200万円を計上し、東日本大震災からの復興枠は、対前年度比1.21倍の9億3500万円、国際観光旅客税を活用した高次元な観光施策の展開には、対前年度比2.13倍の420億円を計上しました。
予算要求の中心には「持続可能な観光地域づくり」「地方を中心としたインバウンド誘客」「国内交流拡大」という3つの重要な柱が据えられています。本記事では、具体的施策の予算要求についてみていきます。以下、昨年度から増額している箇所を抜粋して記載します。
参考・出典:観光庁 令和6年度 観光庁関係 予算概算要求概要

この記事の目次
1.持続可能な観光地域づくり
(1)地域における受入環境整備促進事業【令和6年度要求額 18億9600万円】
旅行環境は、旅行者と地域住民双方にとって快適かつ安全である必要があり、これを実現するための受入環境の整備やオーバーツーリズムの防止等に予算を要求しています。(対前年度比:1.15)
【事業内容】
■持続可能な観光の促進に向けた受入環境整備促進
・補助対象事業者:地方公共団体、DMO、民間事業者 等
・補助率:1/2、1/3等(オーバーツーリズムの未然防止に資する受入環境整備は補助率2/3)
■インバウンド先進車両導入支援事業
・補助対象事業者:地方公共団体 等
・補助率:1/2
■インバウンド安全・安心対策推進事業
・補助対象事業者:民間事業者、地方公共団体、DMO 等
・補助率:1/2 ※一部上限500万円のものあり
■宿泊施設の受入環境整備
・補助対象事業者:宿泊事業者
・補助率 1/2 (上限500万円)等
(2)観光地・観光産業における人材不足対策事業【令和6年度要求額 4億円】
宿泊業の人手不足解消は急務となっています。短期・中長期の対策として採用活動支援やDX化推進、外国人材の活用などが必要とされているため、あらゆるフェーズの人手不足対策を総合的に実施するための予算を要求しています。(対前年度比:2.67)
(3)持続可能な観光推進モデル事業【令和6年度要求額 2億1700万円】
持続可能な観光推進は国際的な課題であり、日本版ガイドラインを基に自然や地域資源の保全・活用を進め、持続可能な観光計画の策定を支援する方針が示されています。(対前年度比:1.45)
【事業内容】
■地域における持続可能な観光計画の策定支援
・補助対象事業者:地方公共団体、DMO 等
・補助率 1/2、上限500万円
2.地方を中心としたインバウンド誘客の戦略的取組
(1)戦略的な訪日プロモーションの実施【令和6年度要求額 55億1800万円】インバウンドは回復しているものの、コロナ前の水準未到達であり、2025年の大阪・関西万博を機に持続的な観光や地方誘客のプロモーション強化が必要です。そのため効果的なプロモーションのために55億1800万円を計上しています。(対前年度比:1.05)

(2)MICE誘致の促進【令和6年度要求額 2億1000万円】
MICE需要を呼び込むため、ニーズに合わせた情報発信と連携強化が必要です。日本がポストコロナの観光をリードできるように観光分野における日本の取組や魅力を世界に発信していけるように2億1000万円を要求しています。(対前年度比:1.17)
(3)双方向交流拡大に向けた各国政府観光局等との連携促進事業【令和6年度要求額 7000万円】
アウトバウンドはインバウンドに比べて回復が遅れているため、イン・アウトの両輪で双方向交流拡大に向けた実効性のある取組が必要だとして、連携体制の強化のための予算を要求しています。ほかに若年層を対象とした海外教育旅行のプログラム普及のための予算も要求しています。(対前年度比:3.50)
3.国内交流拡大
(1)新たな交流市場・観光資源の創出事業【令和6年度要求額 8億5400万円】
国内旅行市場の拡大のためには新しい交流市場の構築が求められます。そのため「第2のふるさとづくり」を通じて、繰り返し訪れる旅のスタイルの奨励や、テレワークの増加や多様な働き方を基盤とした「ワーケーション」の浸透などを図ります。(対前年度比:1.31)
(2)ユニバーサルツーリズム促進事業【令和6年度要求額 5000万円】
「心のバリアフリー」の認知度を50%に高めるため、「観光施設における心のバリアフリー認定制度」の拡大と啓発活動に取り組みます。これによりユニバーサルツーリズム(UT)の普及を推進するとしています。(対前年度比:1.67)
東日本大震災からの復興(復興枠)
ブルーツーリズム推進支援事業【令和6年度要求額 4億3500万円】
ALPS処理水の海洋放出の風評対策として、海洋レジャーを中心とするブルーツーリズムを推進し、観光客の増加と定着を目指します。ほかに、津波で損壊した海水浴場の設備の新設も進めていきます。
まとめ
このように、観光庁は令和6年度(2024年度)の予算要求を通じて、多岐にわたる課題に取り組む方針を明確にしています。
観光関連の事業を営んでいる皆さま、この予算要求から積極的に補助金の情報を探し、ビジネスに活用してみませんか?
特に、持続可能な観光地域づくりの項目では、具体的な補助や支援の内容が明記されており、これを活用すれば事業展開や改善の助けとなるでしょう。
また、双方向交流の拡大に関しても、国内外の観光需要を取り込むための取り組みが提案されており、これをヒントに新たな事業展開を考えることも可能です。
観光業界は日本の経済を支える重要な分野となっています。観光庁の提案する予算要求をうまく活用し、事業の更なる発展を目指しましょう。