2022年11月28日、政府は「スタートアップ育成5か年計画」を発表しました。新たなイノベーションを生み出すスタートアップを支援し、第二の創業ブームを実現するため、国や各団体からはさまざまなスタートアップ支援策が打ち出されています。
FASTAR(ファスター)は、「困難に挑むスタートアップを加速させ煌めかせる」ことをビジョンに掲げ、事業課題に悩むシードスタートアップを支援するものです。
今回はFASTARプログラムの内容や申請方法、活用のメリットを見ていきましょう。
この記事の目次
中小機構アクセラレーション事業FASTARとは?ビジネス加速を後押しするプログラム
中小機構は、国の中小企業政策の中核的な実施機関として、企業の成長ステージに合わせた支援を提供しています。FASTARはそうしたリソースを活用した、スタートアップ支援事業です。
まずはFASTARの目的や内容について、確認していきましょう。
【FASTARの目的】
本事業では、IPOやM&A等を視野に、ユニコーン企業や地域有力ベンチャーを目指すスタートアップや個人を支援する制度です。資金調達や業務提携に向けて、成長の加速化を目指します。
【支援内容】
支援内容は以下の4つです。
①伴走メンタリングによる事業計画策定支援 |
中小機構の専門家(専任パートナー)による、定期的なメンタリングです。支援は約1年間、原則として月に1回行われます。面談は、対面とオンラインの併用です。 また、必要に応じて外部メンターによるメンタリングを実施し、経営分析から戦略立案、事業計画策定までを伴走支援します。 |
②イベントによるナレッジ提供 |
企業ニーズの高いイベントを開催します。資金調達や知財戦略など、スタートアップに必要な経営面のナレッジの提供を行い、事業スキルの向上の機会を提供します。 |
➂ピッチイベント等でのプレゼン機会提供 |
支援プログラムの最後に、ピッチイベント等で投資機関や事業会社等に対してのプレゼンテーションの機会(デモデイ)を提供します。また、各参加企業の事業内容・ステージにフィットしたVC等との個別マッチングを支援します。 |
④卒業後も連携サポート |
支援情報やイベント情報など、有益な情報を発信します。 たとえば中小企業等を想定顧客とするスタートアップを、中小機構のマッチングサービスに登録します。ヒアリング・実証検証・テストマーケティング等を目的に、該当する業種の中小企業等を全国から紹介します。 |
支援の対象
支援の対象となるのは、以下のような悩みを抱えるスタートアップまたは個人です。
①経営課題への助言を受けられる外部人材が周囲にいない |
②プロダクト・サービスの実証や、拡大のために必要な連携プレイヤーへのアプローチ手段がない |
➂資金調達先を探すためのリレーションがない |
④研究開発起点での事業創出を目指しているが、ビジネスのナレッジが不足している |
⑤資本政策を含め、事業計画を見直したい |
FASTARにはどうやって参加する?応募要件
FASTARへの応募要件は、次の①~⑤です。
応募要件 |
①創業から原則5年以内(2019年4月1日以降創業)または創業前であること ただし、薬機法に規制される治験を必要とするバイオ関連においては、例外として創業から10年以内(2014年4月1日以降創業)となります。 |
②事業ステージが「シード」から「アーリー」までのスタートアップまたは起業予定の個人 |
➂法人の場合、中小企業基本法上の中小企業者 |
④事業内容が公序良俗に反していないこと |
⑤FASTARプログラム参加規約を遵守し、デモデイ等の本プログラムのイベントに必ず参加できること |
いつ、どうやって応募する?募集期間・応募方法
応募の際は、必要書類をメールにて提出してください。締め切りと送り先は以下のとおりです。
■募集期間
2024年5月1日(水)~6月14日(金)17:00必着
■送り先
fastar@smrj.go.jp
6月18日(火曜)正午までに事務局から受領の連絡がない場合は、お問い合わせください。
応募には何が必要?必要書類とは
応募に必要な提出書類は、以下のとおりです。
提出書類 |
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①応募申請書 WEBサイトから申請様式をダウンロードし、必要事項を記入してください。 ②事業計画書 様式は自由ですが、次の内容を含む必要があります。 ■解決する課題 事業背景となる課題や顧客が有するニーズ、マクロトレンドを踏まえた当該課題の解決の重要性 ■ターゲット顧客 ・具体的に想定している顧客 ・ターゲット絞り込みの根拠 ■提供するプロダクト・ソリューション ・具体的なプロダクト・ソリューションの内容 ・どのように課題を解決するか ■想定市場規模 ・TAM・SAM・SOMの3パターンでの試算 ・算出のロジック ■競合優位性 ・現在の競合品(代替品) ・独自のテクノロジーやビジネスモデルによる優位性 ■顧客ニーズを示すファクト ・顧客インタビュー結果やNPS等の先行指標 ・顧客数や離脱率等のトラクションのうち、最低1項目 ■要素技術(研究開発型の場合のみ) ・基盤となる要素技術の解説 ・当該技術の出所 ・現時点の成熟度(研究段階、試作段階、製品化段階など) ➂会社概要およびパンフレット、製品カタログ、経営者プロフィール ④財務諸表 |
どうやって選ばれるのか?選考スケジュール・内容
それでは、選考スケジュールや審査内容を見てみましょう。6月14日に応募が締め切られた後は、2回の審査を経て、9月上旬に支援が開始されます。
スケジュールと審査観点は、次のとおりです。
選考スケジュール | |
募集開始 | 5月1日(水) |
募集締切 | 6月14日(金) |
書類審査 | 6月下旬 |
面談審査 | 7月上旬~8月下旬 |
採択結果通知 | 9月上旬※順次支援開始 |
【審査観点】
採択予定者数は、15~20事業者程度が予定されています。ただし、予算や申請状況に応じて変更される場合があります。
審査観点は、以下の①~⑤です。
①社会性・地域性 | 抱える経営課題が、社会性または地域性を有していること |
②課題の深さ | 根深い課題・ニーズの解決を目指していること |
➂市場成長性 | 潜在的に大きい市場規模が見込まれること |
④競合優位性 | 模倣困難な独自のテクノロジーまたはビジネスモデルを有すること |
⑤ケイパビリティ | メンバーが技術や業界に対する十分な経験値、および起業のためのスキルやマインドセットを有すること |
募集セミナー開催
開催日時:5月14日(火)17:00~18:00
開催形式:オンライン開催
プログラムの概要やサポート体制について詳しく説明します。応募を検討している方は、ぜひこの機会にご参加ください。
▼セミナー申し込み
https://fastar-briefing202405.peatix.com/
FASTAR活用のメリット
岸田内閣は2022年を「スタートアップ元年」と位置づけ、対策を強化してきました。令和4年度第2次補正予算では、スタートアップ支援の施策に過去最大規模の約1兆円規模の計上がなされました。また、令和5年度税制改革ではスタートアップ・エコシステムの抜本強化に向けた7つの税制改正が行われています。2023年の政府の骨太の方針では、スタートアップの推進と新たな産業構造への転換」が引き続き重点分野に設定されました。
その結果、国内スタートアップの資金調達額は、2013年から2023年の10年間で約10倍に成長するなどの成果が報告されています。
出典:経済産業省 スタートアップの力で社会課題解決と経済成長を加速する
一方で、スタートアップには資金や人材の不足が大きな壁となっています。スタートアップの5社に1社は5年以内に倒産しているともいわれる現状では、解決すべき課題はまだまだ多いと言ってよいでしょう。
FASTARをはじめとしたスタートアップの支援事業は、こうした課題解決のための一助となります。
まとめ
スタートアップは、新しい技術やアイデアを持った企業です。社会のイノベーション改革が期待される一方で、資金や人材の不足が大きな課題となっています。これまでも、FASTARをはじめ、さまざまな支援事業が設置されてきました。国は今後も、積極的にスタートアップの支援強化を進める姿勢を打ち出しています。補助や支援制度を上手に活用し、これまでなかった商品やサービスの誕生につなげていきましょう。