近年、激甚化・頻発化が進む自然災害への備えとして、都市ガスの安定的な供給の強化は急務となっています。社会的需要の高まりを背景に、災害時のガスの安定供給を目指す取組を支援する「都市ガス分野の災害対応・レジリエンス強化に係る支援事業費補助金」が設置されました。
今回は、都市ガス分野の災害対応・レジリエンス強化に係る支援事業費補助金の概要や申請方法をお伝えします。
この記事の目次
都市ガス分野の災害対応・レジリエンス強化に係る支援事業費補助金とは
災害時の都市ガス供給障害に備え、一般ガス導管事業者には、連携して復旧作業にあたるための「災害時連携計画」の策定・届出が義務化されました。
「都市ガス分野の災害対応・レジリエンス強化に係る支援事業費補助金」はそうした事業者を対象に、災害時の復旧作業等を迅速化し、ガス供給の安全性を高めるための設備投資を支援するものです。
まずはその目的や留意事項についてみていきましょう。
【目的】
本事業では、中小企業者等が行う災害時の復旧作業等の迅速化に資する機器や、設備の導入を行う事業を支援します。経費の一部を補助することにより災害時連携計画の効果を高め、都市ガス分野における災害対応・レジリエンスを強化することが目的です。
【留意事項】
申請や事業の実施に関する主な留意点は、以下のとおりです。
補助対象者 |
■補助事業に含まれる設備等の所有者と使用者が異なる場合は「共同申請」となります。なお、申請後は、単独申請から共同申請への変更等はできません。 |
■利害関係者が多数存在する場合等は、事前に一般社団法人都市ガス振興センターまでご相談ください。 |
■本補助金は単年度事業です。以下の期間内に事業を開始し、完了する場合のみが、支援の対象となります。 ・事業開始日 最初に設計や工事の契約を締結する日(交付決定日以降) ・事業完了日 工事の完了、検収および費用の支払いがすべて完了する日 ※令和7(2025)年2月28日までに完了することが条件です。 |
■見積依頼は必ず書面で行い、その際に見積項目が一式で50万円以上(単体で50万円以上の機器を除く)とならないことを明記してください。 |
■ガバナ遠隔監視システムを設置する場合、工事金額が500万円以上となる場合は、「建設業法の電気通信」の資格が必要です。該当の資格を所持していることを証明する書類のコピー等を提出してください。 |
■リース等により使用者と所有者が別の場合は、以下の点に留意してください。 ・補助金額がリース料金等に反映されていること ・リース等の期間は、原則、設備の耐用年数と合致させること ・実績報告時までに契約が締結されていること ・事業年度内に開始すること(ただし、翌年度4月1日に開始することは可能です) |
中間報告
令和6(2024)年11月末までに事業が完了しない場合は、実績報告書にて提出する書類のなかで報告可能なものを、「中間報告」として令和6年12月10日までに提出する必要があります。また、必要に応じて、中間報告に加えて、進捗状況等が確認されます。
実施計画上、中間報告が必要と見込まれる場合は、交付申請時の発注計画書に予定日を記入してください。
対象事業者と対象事業
それでは、補助事業の内容を見ていきましょう。補助の対象となる設備は「バルブ開閉器」と「ガバナ遠隔監視システム」の2つです。
【対象事業者】
対象となる事業者は、一般ガス導管事業者のうち、中小企業者等です。具体的には、以下のいずれかを指します。
私営事業者 | 資本金3億円以下または従業員300人以下 |
公営事業者 | 従業員300人以下 |
【対象事業】
補助の対象となる設備は、「ガス事業法に定める災害時連携計画の効果を高め、災害時の二次災害の防止と復旧作業等の迅速化に資する機器あるいは設備」です。具体的には、以下のいずれかです。
①バルブ開閉器 |
災害時に応援事業者が、被災事業者の本支管バルブ・供給管バルブの開閉等を行う際、形式の違うバルブ(以下「特殊バルブ」)を開閉することが可能となる工具一式 |
②ガバナ遠隔監視システム |
ガバナの遠隔監視により災害時にガスを供給すべき範囲の特定や遠隔で供給停止を停電時にも行うことができる設備であって、以下のうち、ひとつ以上の機能を有するもの。 ■ガバナのガスの圧力、漏洩、地震のSI値等からガバナを遠隔監視する機能 ■ガバナを自動または遠隔で制御できる機能 なお、地区ガバナが対象です。お客様の専用ガバナは対象となりません。 |
交付要件
バルブ開閉器と、ガバナ遠隔監視システムの交付要件はそれぞれ以下のとおりです。
①バルブ開閉器 |
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災害時に想定される応援規模等、合理的な根拠に基づき算出された必要個数以下であること 以下は、必要数の算出例です。 ・特殊バルブの個数が少ない場合 特種バルブの全設置数から、特種バルブ開閉器の自社保有数を引いた数 ・特殊バルブの個数が多い場合 特殊バルブ開閉器作業班数(応援事業者側)から、特種バルブ開閉器の自社保有数を引いた数 |
②ガバナ遠隔監視システム |
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新規に導入されるシステムであること 既存システムの単なる入れ替えによる更新は対象外です。ただし最新の通信方式への更新等は対象となります。 |
補助対象範囲
①バルブ開閉器 |
■開閉器アダプタの設計費・購入費 ■上記アダプタに係る蓋上げ器および開閉器の購入費 |
②ガバナ遠隔監視システム(スマートメータ除く) |
■親局側装置 パソコン、サーバー、ルーター、監視・制御ソフト、パトライト、無停電電源装置、通信設備、その他ガバナ遠隔監視システムに付帯する設備等 ■子局側装置 監視・制御盤、自記圧力計、電源設備、圧力センサー、通信設備、テレメータ、ガス漏れ検知器、SIセンサー、開度計、流量計、遮断装置、遮断判定装置、浸水センサー、監視カメラ、その他ガバナ遠隔監視システムに付帯する設備等 ■工事費 ガバナ遠隔監視システムの設置・更新に伴う、以下のような工事が対象です。 ・既存設備撤去工事、設置工事、通信確認試験、電源引き込み工事 ・SIセンサーについては基礎および架台の設置 ・遮断装置については配管工事、配線工事 なお、ガバナ本体工事や老朽化等によるセンサー類の交換工事は対象外です。 |
補助率・上限額
対象ごとの補助率と上限額は、以下のとおりです。
設備の名称 | 補助率 | 補助金上限額(事業者・年度) |
---|---|---|
①バルブ開閉器 | 2/3 | 50万円 |
②ガバナ遠隔監視システム | 1/2 | 2000万円 |
なお、同一年度内で①②を同時に導入する場合、設備毎に上限額が適用されます。
申請に必要な提出書類
申請に必要な主な書類は、以下の①~⑤です。
①交付申請書 |
②実施計画書 以下の書類を添付してください。 ・地図 ・補助事業に要する経費と、補助対象経費の差額のわかる資料 |
➂発注計画書 申請、契約、中間報告、納品、検収、支払完了予定日等の計画を、時系列で記載 |
④導入設備に関する仕様等 バルブ開閉器 ・災害時における復旧工事の方法を定めた書類の写し ・特殊バルブの設置状況が分かる資料 ・被災時に特殊バルブ設置地区に投入予定の供給操作施工班数が分かる資料 ガバナ遠隔監視システム ・システムのメーカー、型式、性能等が分かるパンフレット ・システムフロー図、対象設備全体配置図 ※システムフロー図・対象設備全体配置図は、対象設備を指定の色で色分けして記載してください。 |
⑤会社情報 ・会社・事業所のパンフレット、役員名簿 ・履歴事項全部証明書、前年度の財務諸表(法人の場合) ・地方公営企業・非営利民間団体等にあっては、それらを証明する書類 ・中小企業者であることを証明する書類 |
申請期間・申請の流れ
申請には、jGrants(補助金申請システム)を使用します。公募期間は、以下のとおりです。
令和6(2024)年4月12日(金)~予算限度額上限に達するまで
なお、やむを得ない理由によりjGrantsによる申請ができない場合は、申請前にセンターに問い合わせてください。センターが認めた場合に限り、電子メールでの申請も可能です。
【交付から申請までの流れ】
最後に、交付から申請までの流れを確認しましょう。全体の流れとスケジュールは、以下のとおりです。
①概算見積依頼・回答
②交付申請:令和6年4月下旬~
➂審査手続き:5月上旬~6月中~下旬
④事業開始
⑤工事完了
⑥実績報告
⑦補助金支払い
事業の全体像については、以下の図も参照してください。
出典:公募説明会資料
まとめ
気象変動をはじめとした環境問題の悪化から、世界各国で大きな自然災害が多発するようになりました。日本では、今後30年以内に首都直下型地震が起きる確率が70%とも言われています。災害時への備えは個人レベルにとどまらず、社会全体で取り組むべき課題のひとつです。
都市ガス分野の災害対応・レジリエンス強化に係る支援事業費補助金は、中小企業の災害対応力を強化するための制度です。費用の負担を軽減しながら、社会的な課題に取り組んでいきましょう。