こども家庭庁の発足に伴い、ひとりで子供を養育する「ひとり親」の就労支援も重要視されるようになりました。子供の都合にあわせて生活せざるを得ない場面も多いひとり親は、ほかの人に比べて、就労に課題を抱えていることが少なくありません。
ひとり親を支えることは、子供たちとその未来を支えることです。今回は、ひとり親を雇用する事業主が活用できる助成金をまとめました。
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この記事の目次
ひとり親を雇用する事業主が活用できる助成金
ひとり親の雇用に関する助成金には、「特定求職者雇用開発助成金」の特定就職困難者コースや成長分野等人材確保・育成コース、「トライアル雇用助成金」のほか、キャリアアップ助成金の加算などがあります。
特定求職者雇用開発助成金はひとり親である就労者を雇用したり、人材育成の対象にしたりすることで助成金を受け取れる事業です。特定就職困難者コースの対象となるひとり親が成長分野等人材確保・育成コースの対象にもなる場合、より高い助成金の支給があります。
またトライアル雇用助成金ではひとり親を対象にした場合の支給額が上がるほか、キャリアアップ助成金では最大で9万5,000円の加算が受けられます。
各助成金額の一覧は、以下の表も参照してください。
出典:厚生労働省・ハローワーク・こども家庭庁
なお「特定求職者雇用開発助成金」と「トライアル雇用助成金」は併用できます。
ここからは、それぞれの要件や内容について、見ていきましょう。
特定求職者雇用開発助成金
特定求職者雇用開発助成金は、要件を満たした就労者を雇用することで助成を受けられる制度です。雇用機会の拡大や安定、失業の防止などを目的にしています。
ひとり親の雇用は、「特定就職困難者コース」と「成長分野等人材確保・育成コース」が対象です。
特定就職困難者コース
ハローワークなどを通じてひとり親を雇い入れた事業主が、その賃金の一部が助成されます。
【主な支給要件】
主な支給要件は、以下のとおりです。
①ハローワークまたは民間の職業紹介事業者等の紹介であること
②雇用保険一般被保険者等として雇い入れ、継続して雇用すること
支給額
支給額は、以下のとおりです。なお ( ) は、中小企業事業主以外に対する支給額です。
【短時間労働者以外の者】
60万円 (50万円)
【短時間労働者以外の者】
40万円 (30万円)
ただし支給対象期ごとの支給額は、対象労働者対して支払った賃金額を上限とします。
成長分野等人材確保・育成コース
成長分野等人材確保・育成コースには、「成長分野」と「人材育成」の2つの助成メニューがあります。それぞれの内容は、以下のとおりです。
①成長分野
他コースの対象となる労働者を以下の「成長分野の業務」に従事させ、人材育成や職場定着に取り組む場合に、より高額の助成金を支給します。
■「情報処理・通信技術者」またはデータサイエンティストに関する「その他の技術の職業」該当
■脱炭素・低炭素化などに関する「研究・技術の職業」
②人材育成
他コースの対象となる労働者に人材育成を行い、賃上げを行った場合に、より高額の助成金を支給します。
主な支給要件
主な支給要件は、以下のとおりです。
【共通】
特定求職者雇用開発助成金の他のコースの支給要件を、すべて満たしている
【成長分野】
①対象労働者を、「成長分野等の業務」に従事させる
②対象労働者に対して、雇用管理改善または職業能力開発にかかる取組を行う
③実施結果報告書を提出する
【人材育成】
①対象労働者が、就労の経験のない職業に就くことを希望している
②対象労働者に該当の訓練を行い、当該訓練と関連した業務に従事させる
③賃金が5%以上引上げられている
支給額
支給額は、以下のとおりです。なお ( ) は、中小企業事業主以外に対する支給額です。
【短時間労働者以外の者】
90万円 (75万円)
【短時間労働者以外の者】
60万円 (45万円)
トライアル雇用助成金
トライアル雇用助成金は求職者の適性や業務遂行可能性を見極め、相互理解を促進すること等を通じて、早期就職の実現や雇用機会の創出を図ることを目的とする事業です。ハローワークなどの紹介で、ひとり親を一定期間試行雇用する事業主に助成金が支給されます。
主な支給要件
主な支給要件は、以下のとおりです。
①対象労働者が、以下のいずれにも該当しない
■安定した職業に就いている
■学校に在籍している
■トライアル雇用期間中の者
②ハローワーク等の紹介により雇い入れる
③原則3ヶ月のトライアル雇用をすること
④1週間の所定労働時間が、原則として通常の労働者と同程度である
支給額
支給額は、1人につき月額4万円です。ただし、ひとり親の場合は、月額5万に引き上げられます。
キャリアアップ助成金の加算
キャリアアップ助成金は、非正規雇用労働者のキャリアアップを促進するため、正社員化や処遇改善の取組を実施した事業主に対して助成する制度です。
ひとり親を正社員化した事業主には、加算措置により増額した助成金を支給されます。
主な支給要件
主な支給要件は、以下のとおりです。
①キャリアアップ管理者を置いている
②対象労働者に係るキャリアアップ計画を作成し、管轄労働局長の受給資格の認定を受けている
③対象労働者の労働条件、勤務状況等を明らかにする書類を整備している
④キャリアアップ計画期間内にキャリアアップに取り組む
支給額
支給額は、以下のとおりです。なお ( ) は、中小企業事業主以外に対する支給額です。
【有期雇用労働者】
57万円 (42万7,500円)
■加算額
9万5,000円
【無期雇用労働者】
28万5,000円 (21万3,750円)
■加算額
4万7,500円
ひとり親の雇用促進に取り組むメリット
働く意欲はあるひとり親が雇用の機会を得にくいことは、社会的な課題のひとつです。能力としては不足がないのに、労働条件や企業側の事情によっては正規雇用が難しいケースもあるでしょう。
しかし国内の労働人口は減少傾向にあります。ひとり親をはじめとした未活用の労働力を積極的に活用することで、企業の課題を解決できることもあるはずです。
また、日本の出産数は、過去最少水準を推移しています。国を支える人口数の減少は、経済力や生産力の低下だけでなく、国としての機能そのものにも影響を及ぼす深刻な課題です。岸田政権は「異次元の少子化対策」として、子育て世帯の支援を政策の柱に掲げています。
ひとり親を支えることは、その子供を支えることです。子供が増えれば消費者が増え、経済の活性化につながります。また将来的な労働力としても期待できます。ひとり親を支え、すべての家庭の子供がのびのびと育つ環境を整えることは、すべての人にとって住みよい社会を作る第一歩にもなるのです。
まとめ
ひとり親をはじめ、さまざまな事情を抱えた人を雇用するためには、企業内での環境整備が必要です。また、スキルアップのための研修等にも費用がかかります。
一方で、多様な人材を採用する企業の姿勢は、社会的にも高く評価されます。就労に課題を抱えるひとり親の雇用には、企業にとっても、労働力の確保以上のメリットがあります。
助成金は、政府の方向性を示すものです。社会的な需要が高く、国内の注目を集める取組には、活用できる制度もたくさん用意されています。
助成金を上手に活用し、すべての人が働きやすく、住みよい社会を目指しましょう。