東京の農業は、農業者の高齢化や後継者不足など国共通の課題に加え、生産環境の悪化や重い税負担など、大都市特有の課題を抱えています。特に小規模の農家は、十分な収益を得ることも困難なため、後継者を確保しづらい点が危惧されています。
そこで注目したいのが、出産・育児等の休業期間中の代替人材雇用を支援する「農業者出産・育児期支援事業」です。妊娠・出産・育児期の女性農業者に対しより良い環境を整え、安定した経営を維持したいとお考えの都内対象事業者は、ぜひこの記事を参考にしてください。
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この記事の目次
農業者出産・育児期支援事業とは
農業者等が出産・育児等で就業が困難になったり、もしくは働きながら子どもを養育したりする場合、事業規模の縮小を余儀なくされます。そのような状況の中、東京の農業は家族経営が多いため、労働力不足で経営が不安定になると懸念されています。
東京の農業は、担い手の約半数を女性農業者が占めており、これまでは収穫や調整作業などの役割が中心でした。しかし近年では、自ら作付計画を立てて栽培や販売を行うケースが増加傾向にあり、女性ならではの視点による新たな品目の栽培も行われています。
よって、女性はもちろん全ての農業者が安定的な農業生産を継続できるよう、労働環境を整備する必要があります。本事業では、出産・育児等に取り組む農業者が、代替人材を確保するために必要な経費の一部を助成します。
支援対象者
下記の都内農業事業体(農業者、農業法人等)で、農業生産による農畜産物の販売収入があり、かつ一定の農業経営に従事(およそ年間150日以上)していると確認できる者とします。
- 認定農業者
- 認定新規就農者
- 家族経営協定を締結し経営上役割を担っている農業者
(注1)支援対象者は、上記の農業事業体の代表者並びにその家族(構成員)とします。
(注2)支援対象者は都内在住とします。性別は問いません。
対象期間
①支援開始日
出産予定日の6週間前(双子以上の場合は14週間前、養子縁組等の場合はその開始日が確認できる書類によります)とします。※養子縁組等は里親制度による里親を含みます。
②支援終了日
支援対象児童が満1歳を迎える日の前日までを原則とします。ただし、支援対象児童を保育園に預けられず子の養育が困難な場合は、満3歳を迎える前日までとします。
支援対象経費
支援対象経費は、次の①~③です。
支援対象経費 |
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①代替人材の雇用に必要な下記の人件費等 - 雇賃金・給与手当 - 通勤手当(最も経済的・合理的な経路や方法、燃油代等を除く実費) - 労働災害保険料 - 雇用保険料 - 厚生年金並びに健康保険のうち使用者負担分 - 労働安全衛生規則に基づいた必要な健康診断の経費等 ②人材派遣に必要な経費 ③その他知事が認めた経費 |
【注意事項】
代替人材の雇用や人材派遣では書面契約が必要です。代替人材の労働時間は、1日8時間・週40時間を上限とします。
【助成対象外経費】
対象外となる経費には次のようなものがあります。
- 申請書に記載されていない経費
- 書類不備で支払実績等が書面で判断できない場合
- 賃金、給与等が振込以外で支払われている場合(現金、現物支給は対象外です)
- 所定労働時間を超過する時間外労働
- 農業に直接関連のない業務への従事(家事手伝い、保育・福祉サービス等)
- 代表者、役員、構成員の自らの報酬
- 国や他機関からの人件費助成等の受給が、本助成と重複している場合
- 消費税、振込手数料、通信費、光熱水費等
- 提出書類の作成等、申請に必要な経費、会議費、消耗品等の事務的経費
- 契約や取引に関連した経費のうち、交付決定を受けた対象期間外に実施されたもの
- その他、公的資金の用途として社会通念上不適切とみなされる経費
助成率、助成限度額
【助成率】
助成対象経費の1/2以内
【助成限度額】
1回の出産あたり100万円
※養子縁組等の場合は、これに準ずることとします。なお、上記「対象期間②支援終了日」の場合は、満1歳以上は1年あたり100万円を上限とします。
申請受付期間
令和5年7月10日~令和6年3月29日
※本事業は基金事業なので、支援対象期間が翌年度にまたがる場合でも利用できます。
〈本支援事業に関する相談やお問い合わせ先〉
公益財団法人東京都農林水産振興財団農業支援課
申請書に記載する内容
申請書は公式ホームページよりダウンロードできます。
申請書に記載する内容 |
助成金交付申請額 |
助成対象期間 |
助成金交付を受ける目的(出産・育児期支援を受けたい理由や状況等) |
休業にかかる内容 |
予算計画 |
他の助成等の受給状況 |
申請者連絡先 |
農業経営の概要(営農類型、農業経営の規模・構成等) |
代替人材雇用等の計画 |
【その他添付書類】
- 雇用契約書や見積書の写し等、経費の内訳・積算根拠が確認できる資料
- 母子健康手帳の写し等、出産・育児期の該当要件を証明できる資料
- 農業従事日数が年間150 日以上であると確認できる資料
- 支援対象児童の年齢が1歳を超える期間で申請する場合は、区市町村が発行する保育所入所不承諾通知書、利用調整結果通知書(保留)の写し等
- その他、財団が必要とみなす書類
申請の撤回等について
交付決定の内容や条件に異議がある場合、申請を取り下げられる期間は、交付決定通知を受けた日より起算して14日を経過した日までとします。
また、下記のいずれかに該当する場合、変更承認申請書を前もって提出し承認を受ける必要があります。(軽微な変更を除きます)
- 助成事業の内容に大きな変更箇所がある。
- 助成事業者の住所、名称、代表者に変更がある。
- 助成対象期間を延長する。
活用イメージ事例
活用イメージの例としては次のようなものがあります。
- 農業者自らが妊娠・出産の状況に置かれ、農作業に従事できない場合、農業アルバイトで作業等を代替する。
- お子さんが保育園に入れない場合、入園できるまでの期間は農業アルバイトで作業等を代替する。
まとめ
都市農業を将来にわたり安定して継続させるため、東京都はこれまで都市農業・農地に関する制度改善や税制改正を国へ求めてきました。また国も、都市農業振興や都市計画についての検討会等を設け、それらについての議論が行われるなど、都市農業の安定的な環境が整いつつあります。
「農業者出産・育児期支援事業」を導入すれば、農業経営の安定した継続につながるだけでなく、新たな女性農業者の確保も期待されます。農業の労働力不足解消や将来的な発展に力を入れたいとお考えの都内対象事業者は、ぜひ本事業の活用を検討してみてはいかがでしょうか。