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産業雇用安定助成金とは?最大で250万円の助成金

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雇用の安定、職場環境の改善、仕事と家庭の両立支援、従業員の能力向上などに活用できる厚生労働省の「 雇用関係助成金」のひとつに、在籍型出向等を支援する「産業雇用安定助成金」があります。

令和5年(2023年)10月31日に、産業雇用安定助成金の雇用維持支援コース(新型コロナによる事業縮小時の雇用維持助成)が廃止となり、同11月29日に産業連携人材確保等支援コース(事業縮小時の新人材雇用支援)が創設されました。

本記事では、産業雇用安定助成金の各コースの概要と助成金額、申請方法とその流れなどを解説します。

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この記事の目次

産業雇用安定助成金とは?わかりやすく解説

産業雇用安定助成金には、複数のコースがあり、労働者の失業防止や雇用安定を目的としています。これには、労働者のスキルアップを支援する「スキルアップ支援コース」、新型コロナウイルス影響下で雇用を維持する「雇用維持支援コース」(令和5年10月31日廃止)、そして景気変動や産業構造の変化に対応し新たな人材を雇用する「産業連携人材確保等支援コース」(令和5年11月29日創設)が含まれます。これらは、それぞれの状況に応じた助成を提供し、事業の持続と労働者のキャリアアップを支援するためのものです。

産業雇用安定助成金のコースと助成金額

ここからは、「産業連携人材確保等支援コース」と「スキルアップ支援コース」についてみていきます。

産業雇用安定助成金(産業連携人材確保等支援コース)の助成金額

本コースでは、景気の変動や産業構造の変化などにより一時的に事業活動が縮小された事業主が、生産性向上に資する取組等を行うため、当該生産性向上に資する取組等に必要な新たな人材の雇入れを支援します。

出典:産業雇用安定助成金(産業連携人材確保等支援コース)のご案内

中小企業は1人あたり最大250万円、それ以外の企業は1人あたり最大180万円が助成されます。(※一事業主あたり5人まで)助成金は、雇入れから6か月を支給対象期の第1期、次の6か月を第2期として、6か月ごとに2回に分けて支給されます。中小企業の場合、125万円×2期という計算になります。

産業雇用安定助成金(スキルアップ支援コース)の助成金額

スキルアップ支援コースは、労働者が在籍型出向を通じてスキルを習得し、その後の復帰時に賃金が出向前と比較して5%以上上昇させた事業主(出向元)を支援するコースです。このコースの主な目的は、出向によるスキルアップの結果として賃金が増加することに対するインセンティブを提供することです。これにより、労働者のキャリア発展と事業主の人材育成を促進することを目指しています。

出典:産業雇用安定助成金ガイドブックスキルアップ支援コース

スキルアップ支援コースの受給額は次のようになります。

対象: 出向元事業主(企業グループ内出向は対象外)
助成率: 中小企業は2/3、中小企業以外は1/2
助成額: 出向労働者の出向中の賃金(出向元が負担する部分)または出向前の賃金の1/2のうち、低い額に助成率を適用(最長1年まで)
上限額: 1人1日当たり8490円、1事業所あたり年度最大1000万円

注意点として、出向中の賃金は出向前と同等以上が必要です。上限額は雇用保険の基本手当日額の最高額に基づくため、毎年8月に見直される可能性があります。

産業雇用安定助成金をもらうための条件

助成金をもらうために、満たさなければならない要件というものが各コースで決まっています。支給要件や対象事業主の要件など、最新のものを確認するようにしましょう。

出向させるともらえる条件とは?

スキルアップ支援コースの支給対象となる出向には、以下の条件が必要です。

1 出向先の業務が港湾運送、建設、警備、医療関連業務に該当しないこと
2 労働者のスキルアップを目的とする出向で、雇用調整や技術指導等他の目的でないこと
3 労使間の協定に基づいて行われること
4 出向労働者の同意があること
5 出向元と出向先間の契約に基づくものであること
6 出向元と出向先が独立していること
7 出向計画届に基づいて実施されること
8 出向期間が1ヶ月以上2年以内で、終了後に元の職場に復帰すること
9 出向元が出向中の賃金を全てまたは一部負担すること
10 出向労働者に出向前以上の賃金を支払うこと
11 同一出向期間内で複数の出向先に就労しないこと
12 労働組合等による出向の実施状況の確認を受けること

スキルアップ支援コースの支給対象となる事業主は

スキルアップ支援コースの支給対象となる事業主は、雇用保険適用のもとで労働者のスキルアップを目的とした出向を実施し、出向復帰後の賃金を5%以上上昇させる企業です。詳しい要件は以下のとおりです。

対象事業主
・雇用保険適用事業所であること
・労働者のスキルアップと企業活動の促進を目的とする出向を実施すること
・出向復帰後の6ヶ月間の賃金を出向前と比較して5%以上上昇させること
・職業能力開発推進者を選任していること
・他の事業所の労働者を出向で受け入れ、他の助成金を受けていないこと
・対象労働者を継続して雇用し、出向後に他の事業所に就労させないこと
・解雇等を含めた特定の離職がないこと
・特定の離職理由による離職者数が一定基準を超えていないこと
・対象労働者を解雇等していないこと
・必要な書類を整備し、提出し、保管すること
・労働局等の実地調査を受け入れること

産業連携人材確保等支援コースの支給対象となる事業主は

いっぽう、生産性向上に資する取組等を行うための新たな人材の雇入れを支援する、産業連携人材確保等支援コースでは、ものづくり補助金の交付決定を受けている事業主が対象になります。ただし、第17次公募要領に基づくものづくり補助金のうち、「製品・サービス高付加価値化枠」の採択及び交付決定を受けた事業主のみが対象となります。第16次以前の公募要領により当該ものづくり補助金の採択及び交付決定を受けた事業主は支給対象となりません。対象事業主の主な要件は以下のとおりです。

対象事業主
・ものづくり補助金の交付決定を受けていること ※第17次公募要領に基づく「製品・サービス高付加価値化枠」に限る。
・対象労働者の雇入れ条件を満たすこと
・生産量や販売量などの指標が10%以上減少していること
・対象労働者に350万円以上の賃金を支払っていること
・雇用解雇などを行っていないこと
・特定受給資格者の離職率が6%以下であること
・以前の助成金受給対象労働者を解雇していないこと
・派遣労働者の雇用指標が5%以上減少していないこと
・必要な書類の整備と提出を行うこと
・労働局等の実地調査を受け入れること

さらに、対象となる労働者は「ものづくり補助金の交付決定を受けた事業に関する業務に就く者」で、次の①②のどちらも満たす必要があります。

①専門的な知識や技術が必要な業務に従事する者、または係長相当職以上で部下を指揮・監督する者
②1年間に350万円以上の賃金(基本給および諸手当。時間外手当や休日手当を除く)が支払われる者

産業雇用安定助成金と雇用調整助成金の違い

産業雇用安定助成金と雇用調整助成金は、労働者の失業の予防や雇用の安定を図ることを目的としている点では共通していますが、助成対象となる取組が異なります。

産業雇用安定助成金のスキルアップ支援コースでは、労働者のスキルアップを在籍型出向により行い、当該労働者の賃金を5%以上上昇させた出向元事業主に対して助成を行います。

産業連携人材確保等支援コースは、経済的理由で事業が縮小した事業主が、生産性を高める取り組みを実施する際に必要となる新しい人材の雇い入れを支援する制度です。

一方、雇用調整助成金は、経済的な変動で事業活動が縮小した際、休業、教育訓練、出向を通じて労働者の雇用を維持しようとする事業主を支援するための制度です。そのうち「出向」は、雇用維持のために他社へ在籍出向させた場合に支給するもので、出向中の賃金等に対する助成になります。

産業雇用安定助成金の申請方法・流れについて

助成金の申請には、産業雇用安定助成金の該当するコースの支給申請書を準備し、必要書類を添付して都道府県労働局またはハローワークへ提出する必要があります。

ここからは、助成金の手続きの流れを確認します。スキルアップ支援コースの受給手続きは、以下のステップで進みます。

出向の計画 出向の具体的な内容を検討し、計画を立てます
計画届 出向元が出向計画の内容について計画届を提出します
出向の実施 計画届に基づいて出向を実施します
出向から復帰(賃金の上昇) 出向復帰後の労働者の賃金を出向前と比較して5%以上上昇させます
支給申請 出向の実績に基づき、出向元が支給申請を行います
労働局における審査・支給決定 支給申請の内容について労働局で審査と支給決定が行われます
支給額の振り込み 決定された支給額が振り込まれます

産業連携人材確保等支援コースの手続きは、まず、ものづくり補助金の申請が最初にあります。

1 ものづくり補助金の事業計画書の申請
2 ものづくり補助金事務局・採択審査委員会による審査
3 ものづくり補助金の交付申請
4 ものづくり補助金の交付決定
5 対象者の雇入れ(補助事業実施期間内)
6 助成金の第1期支給申請 ※各支給対象期が経過するごとに、当該支給対象期の末日の翌日から2か月以内に支給申請書を作成し、都道府県労働局またはハローワークへ提出
7 支給申請書の内容の調査・確認
8 支給・不支給決定
9 助成金の支給

産業雇用安定助成金の申請に必要な書類

次に、申請に必要な書類を確認しましょう。

スキルアップ支援コースの支給申請に必要な書類は以下のとおりです。

  • 支給申請書(様式第5号(1))
  • 出向に関する証明書(出向先事業主、様式第5号(2))
  • 対象労働者別支給額算定調書(様式第5号(3))
  • 出向実施結果報告書(出向元事業主、様式第6号(1))
  • 出向実施結果報告書(出向労働者、様式第6号(2))
  • 支給要件確認申立書(共通要領様式)
  • 支払方法・受取人住所届(※該当する場合に提出)
  • 出向の実績に関する書類(確認書類(4))
  • 対象労働者に該当することの確認のための書類(確認書類(5))
  • 出向終了後の状況の確認のための書類(確認書類(6))
  • 出向復帰後の賃金が上昇していることの確認のための書類(確認書類(7))
  • 中小企業に該当しているかの確認のための書類(※該当する場合に提出)

産業連携人材確保等支援コースの支給申請時に提出する書類はこちらです。

  • 支給申請書(様式第1号)
  • 対象労働者雇用状況等申立書(様式第2号)
  • 事業所の事業活動の状況に関する申立書(様式第3号)
  • 実施結果報告書(様式第4号)
  • 事業所の雇用指標の状況に関する申出書(様式第5号)
  • ものづくり補助金の交付決定を受けていることが確認できる書類の写し
  • 雇用契約書または雇入れ通知書など
  • 賃金台帳または報酬支払簿
  • 出勤簿等
  • 対象労働者であることを証明する業務内容、部署が明らかにされた事業主の組織図等の写し
  • 支給要件確認申立書(共通要領様式第1号)
  • 支払方法・受取人住所届(共通要領様式)

このほかにも労働局から書類の提出を求める場合があります。

産業雇用安定助成金申請時の注意

申請時に注意が必要なケースがいくつかあります。

まず、過去に雇用関係助成金を不正に受給し、その結果として不支給決定や支給決定の取り消しを受けた事業主は、平成31年3月31日以前に申請した場合は不支給決定日または支給決定取消日から3年、平成31年4月1日以降に申請した場合は5年が経過していなければ助成金の対象外となります。さらに、申請年度の前年度より前の保険年度に労働保険料の滞納がある事業主も対象外です。また、本助成金に関して不正受給が理由で支給決定が取り消され、その事業主名を労働局が公表することに同意していない場合も対象外とされます。

特に産業連携人材確保等支援コースで気を付ける点は以下のとおりです。いずれかに該当する場合は、助成の対象となりません。

  • 雇入れ日の前日から過去3年間に事業主と雇用、請負、委任、出向、派遣の関係にあった労働者を雇用する場合
  • 雇入れ日の前日から過去1年間に、対象労働者と雇用、請負、委任、出向、派遣の関係にあった事業主と資本的・経済的・組織的関連性等からみて独立性が認められない事業主が、対象労働者を雇い入れる場合
  • 対象労働者が事業主または取締役の3親等以内の親族である場合
  • 支給対象期の対象労働者の賃金が支払期日までに支払われていない場合

産業雇用安定助成金についてよくある質問

スキルアップ支援コースと産業連携人材確保等支援コースのよくある質問をまとめました。

【スキルアップ支援コース】
Q.事業所設置後1年未満の事業主は対象になる?
A.事業所設置後1年未満の事業主も助成対象としていますが、出向させる労働者が出向前日までに出向元の事業主に雇用保険の被保険者として6か月以上連続して雇用されていることが条件です。

Q.事業主が雇用保険に加入していないが、労災保険に加入していれば対象になるか?
A.雇用保険と労災保険の両方に加入している必要があります。

Q.企業グループ内の出向も対象になる?
A.親会社と子会社間の出向や、代表取締役が同じである企業間の出向のように、出向元と出向先が資本的、経済的、組織的に密接に関連しており独立性がない場合は対象外です。

Q.出向中の賃金が出向前の賃金を下回った場合でも、助成対象になる?
A.本助成金の支給対象となる支給対象期間中の出向労働者の賃金については、出向前の賃金以上の額であることが必要です。

【産業連携人材確保等支援コース】
Q.産業雇用安定助成金(産業連携人材確保等支援コース)の実施はいつまで?
A.令和6年度以降の取り扱いは未定です。

Q.「ものづくり補助金」の採択及び交付決定を受けた事業主は、すべて対象になる?
A.令和5年11月29日以降に事業計画書の申請を行って「製品・サービス高付加価値化枠」の採択及び交付決定を受けた事業主だけがこの対象です。さらに、事業計画には「実施体制」の部分に人材確保の計画を含める必要があります。

Q.労働者を有期雇用契約で雇い入れる場合は対象となる?
A.期間の定めのない労働契約を締結する労働者として雇い入れる必要があるため、有期雇用契約労働者は対象外です。

まとめ

雇用維持のための取り組みは、それ自体にも費用的負担を伴います。事業縮小を余儀なくされている中で新たな契約や雇用のための整備を行うことは、中小企業にとって、厳しい決断です。

一方で労働者を守ることは、将来的な企業成長にとっても重要なことです。出向した労働者が得たスキルは、企業の新しい戦力ともなります。

産業雇用安定助成金を上手に活用し、負担を軽減しながら、労働者の失業防止や雇用安定に向けた取組を有意義なものにしていきましょう。

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