子育てしながら生活を支えることは、ひとり親家庭にとって難しい問題です。特に子供が小さいうちは、収入が安定せず、資金的な余裕の足りない場面もあるでしょう。そんなひとり親家庭を支援するための税制度が「ひとり親控除」です。
今回はひとり親控除の対象者や控除額、申告方法などを解説します。「自分が控除の対象となるかどうか」や、申請の方法が分からないという人は、ぜひ参考にしてください。
▼▼▼日々配信中!無料メルマガ登録はこちら▼▼▼
メルマガ会員登録する
この記事の目次
ひとり親控除とは?対象者と要件を解説
ひとり親控除は、合計所得が500万円以下で結婚しておらず、1人で子どもを育てている場合に受けられる所得控除です。まずはひとり親控除の基本的な内容や、対象者についてみていきましょう。
ひとり親控除とは?
ひとり親控除は、2020年の税制改正で新設された制度です。それまでの寡婦(夫)控除を見直す形で導入されました。
寡婦(夫)控除では未婚のひとり親は対象外でしたが、ひとり親控除では婚姻歴がなくても適用されます。
ひとり親控除の対象者と要件
ひとり親控除を受けるための主な要件は以下のとおりです。
・婚姻をしていないまたは配偶者の生死の明らかでないこと。 |
・事実上婚姻関係と同様の事情にあると認められる相手がいないこと。生計を一にする子がいること。 |
・合計所得金額が500万円以下であること。 |
なお、子は総所得金額等が48万円以下で、他の人の同一生計配偶者や扶養親族になっていない人に限られます。
未婚のシングルマザー・シングルファザーも対象
ひとり親控除は、未婚のシングルマザー・シングルファザーも対象となります。これは従来の制度では離婚や死別による場合のみが対象とされていた控除を、婚姻歴に関係なく適用できるよう改正された結果です。
未婚で出産し子育てをする人や、法的な婚姻関係のないまま子育てをしている人も、要件を満たせば控除の対象となります。
寡婦控除との違いと注意点
ひとり親控除と寡婦控除は、混同されやすい制度です。両制度について、それぞれの特徴や違いをまとめました。
寡婦控除とは?
寡婦控除は、夫と死別または離婚した女性のための所得控除制度です。子ども以外の扶養家族がいる場合が対象となります。
対象となるのは以下の人です。
・「ひとり親」に該当しないこと |
・事実上婚姻関係と同様の事情にあると認められる相手がいないこと |
・合計所得金額が500万円以下で、以下のいずれかであること -夫と離婚した後婚姻をしておらず、扶養親族がいる人 -夫と死別した後婚姻をしていない人または夫の生死が明らかでない人(この場合、扶養親族の有無は要件になりません) |
ひとり親控除と寡婦控除の違い
ひとり親控除と寡婦控除の主な違いは、対象者の範囲と控除額にあります。ひとり親控除は性別に関係なく、未婚の方も含めて子どもを養育している一人親が対象です。
一方、寡婦控除は、死別または離婚した女性のみが対象となります。控除額もひとり親控除の方が高く設定されています。各控除額は、以下のとおりです。
控除の種類 | 控除額 |
ひとり親控除 | 所得税35万円、住民税30万円 |
寡婦控除 | 所得税27万円、住民税26万円 |
適用判断で注意が必要な事例
実際の適用判断では、いくつか注意が必要な事例があります。以下の場合は対象にならないことに留意しましょう。
・特定の相手と事実婚状態にある |
・子どもや扶養親族の所得が48万円を超えている |
・扶養親族を「青色事業専従者」にしている(寡婦控除) |
事実婚状態にある場合は、いずれの控除も受けることができません。また単身赴任中の配偶者がいる場合なども対象外です。
さらに子どもが就職して収入が48万円を超えた場合は、ひとり親控除の適用がなくなります。また要件を満たさなくなった場合(子どもが独立した、再婚したなど)は控除も適用されなくなります。
また、寡婦控除を受けようとする際には、対象の親族が「扶養親族」の要件を満たす必要があります。青色申告者の事業専従者として給与の支払いを受けた者は、扶養親族に該当しません。
なお、子どもの独立によってひとり親控除の対象外となった場合、代わりに寡婦控除が受けられることもあります。わからないときは、税務署や市区町村の窓口に確認してみましょう。
ひとり親控除の控除額と申告方法
ひとり親控除の手続きは、年末調整や確定申告で行います。具体的な控除額や申告の流れをまとめました。
ひとり親控除の控除額
ひとり親控除の所得税への控除額は、定額35万円です。また住民税についても30万円の控除が適用されます。
ひとり親控除や寡婦控除は、いずれも自分で申請しないと受けられない制度です。該当する場合は忘れずに申請を行いましょう。
【ひとり親控除の拡充】
なお令和6年度税制改革では、ひとり親控除の拡充が盛り込まれました。
この改革では、現行では500万円以下となっている合計所得の要件が1,000万円以下に引き上げられるほか、所得税の控除額も35万円が38万円に引き上げられます。あわせて、住民税の控除も33万円に引き上げられることになりました。
ひとり親控除の申告方法
ひとり親控除の申告方法は、就業形態によって異なります。各申請方法は、以下のとおりです。
給与所得者の場合 |
---|
毎年年末に会社に提出する「年末調整」の際に、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」にひとり親である旨を申請しましょう。「ひとり親」の欄にチェックを入れ、扶養する子どもの情報も併せて記入します。 |
確定申告が必要な場合(自営業者など) |
---|
確定申告書の「本人に関する事項」や「寡婦控除・ひとり親控除」の欄で申告します。第一表と第二表の両方に記載する必要があるので、注意して下さい。 特に確定申告書第一表では、控除金額(35万円)も併せて記載します。 |
ひとり親控除と扶養控除の併用申請
ひとり親控除は、扶養控除との併用申請が可能です。扶養控除の要件と控除額は、以下のとおりです。
子どもが16歳以上で、年間所得48万円以下 | 控除額38万円 |
19歳以上23歳未満 | 控除額63万円 |
なお、令和6年度税制改正により、16歳から18歳の扶養控除額が縮小されます。所得税の控除額は従来の38万円から25万円に(住民税の控除額は33万円から12万円に)引き下げられる予定です。
まとめ
ひとり親控除は、子育てをしながら働くひとり親家庭の生活を支援するための税制度です。2020年からは婚姻歴に関係なく適用できるようになりました。
子どもを扶養し、合計所得が500万円以下の人が対象です。所得税では35万円、住民税で30万円が控除されます。
給与所得者は年末調整で、自営業者は確定申告で手続きを行います。また扶養控除など他の控除との併用も可能です。
ひとり親家庭の貧困問題は、社会的な課題のひとつです。制度を上手に活用し、経済的負担の軽減を目指しましょう。