「ひとり親控除が38万円に増えた」「所得制限が1,000万円になったらしい」——年末調整の時期が近づくと、こうした情報がSNSや口コミで一気に広がります。しかし国税庁タックスアンサーNo.1171(令和8年4月1日現在法令等)を確認すると、2026年(令和8年)分の控除額は35万円、本人の所得制限は合計所得金額500万円以下のままです。
ひとり親控除は、子どもを1人で育てる方の税負担を軽くする所得控除です。申告しなければ1円も戻らない「申請主義」の制度でもあります。2026年(令和8年)分からは扶養する子の所得要件が62万円以下に緩和され、これまで対象外だった家庭が新たに使えるケースも出てきました。しかもこの改正は令和8年12月1日施行。つまり今年12月の年末調整が、緩和後の要件で判定される最初の機会になります。
この記事では、ひとり親控除の控除額・年収の上限・子どもの年齢制限・いくら戻るのか・住民税非課税になる年収・年末調整と確定申告の書き方までを、国税庁と財務省「令和8年度税制改正の大綱」の資料にもとづいて整理します。
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この記事の目次
ひとり親控除とは?2026年(令和8年)の控除額と要件をわかりやすく解説
ひとり親控除とは、生計を一にする子どもがいる単身者が受けられる所得控除で、2026年(令和8年)分の控除額は所得税35万円・住民税30万円です。2020年(令和2年)分の所得税から適用されている比較的新しい制度で、婚姻歴や性別を問わず利用できます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象者 | 婚姻歴・性別を問わないひとり親(シングルマザー・シングルファザー) |
| 本人の所得要件 | 合計所得金額500万円以下(給与収入のみなら年収約678万円以下) |
| 子の所得要件 | 総所得金額等62万円以下(給与収入のみなら年収136万円以下) |
| 控除額(所得税) | 35万円(2027年・令和9年分以後は38万円) |
| 控除額(住民税) | 30万円(2028年度・令和10年度分以後は33万円) |
| 申告方法 | 年末調整または確定申告 |
| 扶養控除との併用 | 可能(子が16歳以上の場合) |
| 根拠法令 | 所得税法第2条・第81条、地方税法第34条 |
ひとり親控除の対象になる3つの要件
ひとり親控除を受けられるのは、その年の12月31日時点で次の要件をすべて満たす方です。国税庁タックスアンサーNo.1171に定められた要件で、1つでも欠けると適用されません。
・事実上婚姻関係と同様の事情にあると認められる人がいないこと
・生計を一にする子がいること(その子の総所得金額等が62万円以下で、他の人の同一生計配偶者や扶養親族になっていないこと)
・本人の合計所得金額が500万円以下であること
「事実上婚姻関係と同様の事情にある人」とは、住民票に「夫(未届)」「妻(未届)」と記載された同居相手などを指します。法律上の婚姻をしていなくても、こうした相手がいる場合は対象外です。
未婚のシングルマザー・シングルファザーも対象になる
ひとり親控除は、一度も結婚したことがない未婚のシングルマザー・シングルファザーも対象です。2020年(令和2年)の税制改正以前は、寡婦(夫)控除の対象が離婚・死別に限られており、未婚のひとり親は同じ状況でも控除を受けられませんでした。
現在は婚姻歴を問わないため、未婚で出産して子育てをしている方も、事実婚の相手がいなければ控除の対象となります。性別の制限もなく、父子家庭のシングルファザーも同額の控除を受けられます。
税法上の「ひとり親」と支援制度の「ひとり親家庭」は定義が違う
税法上の「ひとり親」と、児童扶養手当などで使われる「ひとり親家庭」は別の定義です。混同すると「手当はもらえているのに控除が使えない」「その逆」という食い違いが起きます。
| 区分 | 税法上のひとり親(所得税法) | ひとり親家庭(児童扶養手当など) |
|---|---|---|
| 判定する人 | 税務署・勤務先 | 市区町村 |
| 子の年齢 | 制限なし | 原則18歳到達年度末まで(障害がある場合20歳未満) |
| 子の所得 | 総所得金額等62万円以下 | 制度ごとに別基準 |
| 本人の所得 | 合計所得金額500万円以下 | 扶養人数に応じた所得制限額 |
| 手続き | 年末調整・確定申告 | 自治体への申請・現況届 |
たとえば子どもが20歳の大学生でアルバイト年収が120万円なら、児童扶養手当は対象外でもひとり親控除は使えます。税の控除は税の要件だけで判定する、と覚えておくと迷いません。
ひとり親控除は年収いくらまで?所得制限をわかりやすく解説
ひとり親控除の所得制限は本人の合計所得金額500万円以下で、給与収入だけの方なら年収677万7,777円(約678万円)以下が目安になります。この上限は2020年(令和2年)の制度創設時から変わっていません。判定に使うのは「年収(額面)」ではなく「合計所得金額」です。給与所得者の場合、額面収入から給与所得控除を差し引いた後の金額で判定します。副業やパート収入が複数ある方は、すべての所得を合算して500万円以下かどうかを確認してください。
年収から合計所得金額を計算する方法(令和8年分)
給与収入から合計所得金額を出すには、国税庁タックスアンサーNo.1410の給与所得控除額を差し引きます。2026年(令和8年)分と2027年(令和9年)分は、最低保障額が74万円に引き上げられた表を使います。
| 給与等の収入金額 | 給与所得控除額 |
|---|---|
| 220万円まで | 74万円 |
| 220万1円〜360万円 | 収入金額×30%+8万円 |
| 360万1円〜660万円 | 収入金額×20%+44万円 |
| 660万1円〜850万円 | 収入金額×10%+110万円 |
| 850万1円以上 | 195万円(上限) |
年収678万円の場合、給与所得控除は678万円×10%+110万円=177万8,000円。給与所得は500万2,000円となり、わずかに500万円を超えます。ちょうど500万円になる境目が年収677万7,777円です。年収700万円を超える方は対象外と考えてください。
「所得制限が1,000万円になる」という情報は正しい?
2026年9月時点で、ひとり親控除の所得制限を1,000万円に引き上げる改正は行われていません。財務省「令和8年度税制改正の大綱」(令和7年12月26日閣議決定)に盛り込まれたのは控除額と子の所得要件の見直しのみで、本人の合計所得金額の要件は500万円以下のままです。
所得制限を1,000万円に緩和する案は、税制改正の議論の過程で検討課題として報じられました。しかし令和7年度・令和8年度いずれの税制改正大綱にも要件緩和は明記されておらず、法改正には至っていません。
なお「合計所得金額1,000万円以下」は配偶者控除を受ける側(納税者本人)の所得要件です。ひとり親控除の要件と混同されて拡散した可能性があります。
国税庁タックスアンサーNo.1171(令和8年4月1日現在法令等)でも、ひとり親控除の要件は「合計所得金額が500万円以下であること」と明記されています。
今後の税制改正で見直される可能性はありますが、現時点で合計所得金額が500万円を超える方は対象外です。
ひとり親控除は子供が何歳まで対象?年齢制限と所得の条件
ひとり親控除に子どもの年齢制限はありません。0歳でも25歳でも、生計を一にしていて総所得金額等が62万円以下であれば対象になります。16歳以上という年齢要件がある扶養控除とは、この点が大きく異なります。
年齢ではなく「子どもの所得」で切り替わる制度だと理解しておくと、判断を誤りません。子の所得要件は税制改正で毎年のように引き上げられているため、最新の金額を確認しましょう。
| 適用年分 | 総所得金額等の上限 | 給与収入のみの場合の目安 |
|---|---|---|
| 2024年(令和6年)分まで | 48万円以下 | 年収103万円以下 |
| 2025年(令和7年)分 | 58万円以下 | 年収123万円以下 |
| 2026年(令和8年)分以後 | 62万円以下 | 年収136万円以下 |
子供が大学生・アルバイトをしている場合はどうなる?
子どもが大学生でも、アルバイト収入が年間136万円以下であればひとり親控除の対象です。2025年(令和7年)分までは年収123万円が上限でしたが、2026年(令和8年)分からは給与所得控除の最低保障額が74万円に引き上げられたことにともない、136万円(74万円+62万円)まで拡大しました。
アルバイトを掛け持ちしている場合は、すべての勤務先の収入を合算して判定します。年末が近づいたら子どもの収入を確認し、136万円を超えそうならシフト調整を検討するのも一案です。子ども側の「年収の壁」については下記の記事で詳しく解説しています。
子供が就職したらひとり親控除はどうなる?
子どもが就職して年収136万円を超えると、その年からひとり親控除は使えなくなります。同居していても、子どもが経済的に自立して「生計を一にする」状態でなくなった場合も同様に対象外です。
| 子どもの状況 | ひとり親控除 | 扶養控除(16歳以上) |
|---|---|---|
| 大学生・アルバイト年収136万円以下 | ○ 適用 | ○ 適用 |
| 就職して年収136万円超 | × 対象外 | × 対象外 |
| 就職・同居しているが別生計 | × 対象外 | × 対象外 |
| 進学で別居・仕送りをしている | ○ 適用(生計が一なら可) | ○ 適用 |
| 障害などで就労が困難、収入が要件以下 | ○ 適用 | ○ 適用 |
子どもが扶養から外れると、翌年の所得税・住民税は控除額が減った分だけ増えます。年収400万円の方であれば、ひとり親控除と一般の扶養控除(38万円)が同時に外れることで、年間およそ10万円前後の負担増になる計算です。
「生計を一にする」の判定は同居かどうかでは決まらない
「生計を一にする」かどうかは、同居しているかではなく生活費を共有しているかで判定します。国税庁タックスアンサーNo.1180の考え方では、進学や就職で別居していても、生活費・学資金・療養費を常に送金していれば生計を一にすると扱われます。
逆に、同じ家に住んでいても子どもが自分の収入で生活費を完全にまかなっている場合は、生計が別と判断されることがあります。判断に迷いやすいのは次の3つのケースです。
・元配偶者が子どもを扶養親族として申告している……同じ子どもを2人が扶養にはできないため、どちらか一方のみ
・自分の親と同居している……親が子(=孫)を扶養親族にしている場合、その子ではひとり親控除を受けられない
二重に申告するとどちらかが否認され、あとから修正申告や追徴が発生します。離婚時の取り決めや、同居する祖父母の申告内容を事前に確認しておきましょう。
ひとり親控除でいくら戻る?年収別の節税額を計算
ひとり親控除による節税額は、2026年(令和8年)分でおおむね年4万7,500円〜11万円です。所得控除は税額から直接差し引く制度ではなく、課税所得を減らす仕組みのため、適用される税率によって戻る金額が変わります。
所得税の節税額は「控除額35万円×所得税率」、住民税の節税額は「控除額30万円×税率10%=3万円」で計算できます。
| 課税所得 | 所得税率 | 所得税の軽減額 | 住民税の軽減額 | 合計 |
|---|---|---|---|---|
| 195万円以下 | 5% | 約1万7,500円 | 3万円 | 約4万7,500円 |
| 195万円超〜330万円以下 | 10% | 3万5,000円 | 3万円 | 約6万5,000円 |
| 330万円超〜695万円以下 | 20% | 7万円 | 3万円 | 約10万円 |
| 695万円超〜900万円以下 | 23% | 8万500円 | 3万円 | 約11万500円 |
年収300万円・400万円・600万円のシングルマザーの場合
2026年(令和8年)分は基礎控除が最大104万円まで拡大したため、年収500万円台までは所得税率5%に収まるケースが多く、軽減額は約4万7,500円にとどまります。税率が10%に上がる年収600万円前後から、軽減額が一段増える形です。
| 年収 | 給与所得 | 課税所得(控除後) | 所得税率 | 軽減額の合計 |
|---|---|---|---|---|
| 300万円 | 196万円 | 約13万円 | 5% | 約4万7,500円 |
| 400万円 | 276万円 | 約79万円 | 5% | 約4万7,500円 |
| 500万円 | 356万円 | 約145万円 | 5% | 約4万7,500円 |
| 600万円 | 436万円 | 約210万円 | 10% | 約6万5,000円 |
年収400万円・中学生の子ども1人・社会保険料約58万円のケースを詳しく見ると、給与収入400万円から給与所得控除124万円を引いた給与所得は276万円。ここから基礎控除104万円と社会保険料控除58万円、ひとり親控除35万円を差し引くと課税所得は79万円となり、所得税率は5%が適用されます。所得税で1万7,500円、住民税で3万円が軽くなる計算です。
「いくら戻る」という表現をよく見かけますが、年末調整で還付されるのは源泉徴収で払いすぎた税金です。もともと納める税金が少ない方は、軽減額もその範囲内にとどまります。
ひとり親控除はいつから38万円?改正スケジュールと令和8年分の年末調整
ひとり親控除の控除額は、所得税が2027年(令和9年)分から38万円、住民税が2028年度(令和10年度)分から33万円に引き上げられます。2026年(令和8年)分の年末調整では、従来どおり35万円で計算します。
「2026年から38万円」という情報が一部で出回っていますが、財務省「令和8年度税制改正の大綱」の記載は「令和9年分以後の所得税について適用する」です。適用開始時期を1年間違えると年末調整の計算がずれ、あとから追加納税が必要になります。
| 項目 | 現行 | 改正後 | 適用時期 |
|---|---|---|---|
| 控除額(所得税) | 35万円 | 38万円 | 2027年(令和9年)分以後 |
| 控除額(住民税) | 30万円 | 33万円 | 2028年度(令和10年度)分以後 |
| 子の総所得金額等の要件 | 58万円以下 | 62万円以下 | 2026年(令和8年)分以後 |
| 本人の合計所得金額の要件 | 500万円以下 | 変更なし | ― |
2026年(令和8年)分の年末調整はここが変わる
2026年(令和8年)分の年末調整は、基礎控除と給与所得控除が大きく引き上げられた最初の年末調整です。ひとり親控除の額そのものは35万円のままですが、周辺の控除が動くため還付額は例年より増えやすくなります。
| 項目 | 令和7年分 | 令和8年分 |
|---|---|---|
| 基礎控除(合計所得489万円以下) | 最大95万円 | 最大104万円 |
| 給与所得控除の最低保障額 | 65万円 | 74万円 |
| 所得税がかからない年収の目安 | 160万円 | 178万円 |
| 扶養親族・ひとり親の子の所得要件 | 58万円以下(年収123万円) | 62万円以下(年収136万円) |
| 定額減税 | なし | なし |
実務で押さえておきたいのは、毎月の源泉徴収税額表の改正が令和9年1月支払分からである点です。令和8年11月までの天引き額は据え置きのまま、増えた控除分は12月の年末調整でまとめて精算されます。「毎月の手取りが変わらないから改正されていない」わけではありません。
住民税の控除額が30万円である根拠
住民税のひとり親控除30万円は、地方税法第34条に定められた金額です。所得税の控除額(35万円)より5万円低く設定されており、これは配偶者控除や扶養控除など他の人的控除でも共通する構造です。
2027年(令和9年)分の所得にもとづく2028年度(令和10年度)分の住民税から33万円に引き上げられます。所得税と住民税で適用開始のタイミングが1年ずれるのは、住民税が前年の所得をもとに翌年度課税される仕組みだからです。
ひとり親は住民税が非課税になる?年収の目安と判定方法
ひとり親または寡婦に該当する方は、前年の合計所得金額が135万円以下であれば住民税が非課税になります。給与収入のみの場合、2026年度(令和8年度)分は年収204万4,000円未満、2027年度(令和9年度)・2028年度(令和10年度)分は年収209万円以下が目安です。
この特例は地方税法第295条に定められたもので、扶養親族の人数で判定する通常の非課税基準とは別枠です。給与収入への換算額が年度によって動くのは、給与所得控除の最低保障額が改正されたためです。
| 年度 | 対象となる所得の年 | ひとり親の特例(合計所得135万円以下) | 扶養人数による通常基準(合計所得101万円以下) |
|---|---|---|---|
| 2026年度(令和8年度) | 2025年(令和7年)中 | 年収204万4,000円未満 | 年収約166万円以下 |
| 2027年度(令和9年度) | 2026年(令和8年)中 | 年収209万円以下 | 年収175万円以下 |
| 2028年度(令和10年度) | 2027年(令和9年)中 | 年収209万円以下 | 年収175万円以下 |
ひとり親の特例と扶養人数の基準はどちらが有利?
子ども1人を扶養するひとり親の場合、ひとり親の特例(年収209万円以下)のほうが扶養人数の基準(年収175万円以下)より30万円以上高い水準になります。どちらか一方でも満たせば住民税は非課税になるため、有利なほうで判定されます。
つまり「扶養人数の計算式では非課税にならない年収でも、ひとり親なら非課税になる」ケースが存在します。年収180万円〜200万円の層は、この特例を知らずに非課税世帯向けの給付金を申請し損ねていることがあります。
住民税が非課税になると何が変わる?
住民税が非課税になると、税負担が消えるだけでなく各種の減免や給付の対象になります。自治体が実施する低所得世帯向け給付金、国民健康保険料・国民年金保険料の減免、保育料や高等教育の修学支援制度などが代表例です。
非課税限度額は自治体の級地区分によって細かく異なるため、正確な判定はお住まいの市区町村の税務担当課にご確認ください。住民税非課税世帯の条件と支援策は下記の記事で整理しています。
ひとり親と寡婦の違いは?どちらが有利か比較
ひとり親控除と寡婦控除の最大の違いは、扶養している相手が「子」かどうかです。子どもを扶養しているなら男女問わずひとり親控除、子ども以外の扶養親族しかいない女性なら寡婦控除、という切り分けになります。控除額はひとり親控除のほうが8万円大きく、両方の要件を満たす場合はひとり親控除が優先されます。
| 項目 | ひとり親控除 | 寡婦控除 |
|---|---|---|
| 対象の性別 | 男女問わず | 女性のみ |
| 婚姻歴 | 問わない(未婚でも対象) | 離婚または死別のみ |
| 扶養の要件 | 生計を一にする子が必須 | 離婚は子以外の扶養親族が必要、死別は不問 |
| 本人の所得要件 | 合計所得金額500万円以下 | 合計所得金額500万円以下 |
| 控除額(所得税) | 35万円 | 27万円 |
| 控除額(住民税) | 30万円 | 26万円 |
| 令和9年分以後の控除額 | 38万円に引き上げ | 27万円のまま(改正なし) |
| 優先順位 | 要件を満たせば優先適用 | ひとり親に該当しない場合に判定 |
判定の順序は「まずひとり親、当てはまらなければ寡婦」です。子どもが就職して扶養から外れた場合、離婚した方は子ども以外の扶養親族がいないと寡婦控除を使えませんが、死別した方は扶養親族がいなくても寡婦控除の対象になります。寡婦控除の詳しい要件は下記の記事でまとめています。
適用の判断で間違えやすいケース
実務でつまずきやすいのが、同居相手がいるケースと、子どもを元配偶者の扶養に入れているケースです。次のような場合はひとり親控除を受けられません。
・子どもが元配偶者の扶養親族として申告されている
・子どもの総所得金額等が62万円を超えている
・子どもが青色申告者の事業専従者として給与の支払いを受けている
・単身赴任中の配偶者がいる(婚姻関係が続いているため対象外)
子どもを父母のどちらの扶養にするかは、離婚後の取り決めや実際の扶養状況によります。二重に申告するとどちらかが否認されるため、事前に確認しておきましょう。
ひとり親控除の申請方法は?年末調整と確定申告の書き方
ひとり親控除は自動的には適用されません。会社員は年末調整、自営業やフリーランスは確定申告で自分から申告する必要があります。申告を忘れると控除は受けられないため、該当する年は必ず手続きしてください。
会社員の場合:年末調整で申告する
給与所得者は、毎年11月から12月ごろに勤務先へ提出する「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」で申告します。用紙の「ひとり親」のチェック欄に印を付け、扶養する子どもの氏名・生年月日・続柄・所得の見積額を記入すれば完了です。
証明書類の添付は原則不要です。ただし勤務先から住民票の提出を求められる場合があるため、案内に従ってください。年の途中で離婚・死別した場合も、その年の12月31日時点で要件を満たしていれば適用対象になります。2026年(令和8年)分の年末調整は申告書の様式や記入欄の位置が変わっていますが、「ひとり親」のチェックを忘れないという点は同じです。
自営業・フリーランスの場合:確定申告で申告する
確定申告では、申告書第一表と第二表の両方に記入が必要です。第一表の「所得から差し引かれる金額」欄にひとり親控除の金額(令和8年分は35万円)を記載し、第二表の「本人に関する事項」で「ひとり親」にチェックを入れます。
- 第一表「所得から差し引かれる金額」に35万円(令和8年分)を記入する
- 第二表「本人に関する事項」の「ひとり親」にチェックを入れる
- 第二表「配偶者や親族に関する事項」に子どもの氏名・生年月日・続柄・所得を記入する
- e-Tax(電子申告)でも画面の案内に沿って同じ内容を入力できる
- 年末調整で申告し忘れた場合は、翌年3月15日までの確定申告で申告できる
ひとり親控除が適用されているか確認する方法
ひとり親控除が適用されているかどうかは、源泉徴収票の「ひとり親」欄と、住民税の決定通知書の所得控除欄で確認できます。「申告したつもりが反映されていなかった」というケースは珍しくないため、書類を受け取ったら必ずチェックしましょう。
| 書類 | 受け取る時期 | 確認するポイント |
|---|---|---|
| 給与所得の源泉徴収票 | 12月〜翌年1月 | 本人欄の「ひとり親」に○(チェック)が付いているか |
| 住民税の決定通知書 | 毎年5〜6月ごろ | 所得控除欄にひとり親控除30万円が記載されているか |
| 確定申告書の控え | 申告後 | 第二表「本人に関する事項」の「ひとり親」にチェックがあるか |
源泉徴収票に○が付いていない場合は、年末調整で申告が漏れています。翌年3月15日までに確定申告をすれば控除を受けられるため、慌てずに手続きしましょう。
ひとり親控除と扶養控除は併用できる
ひとり親控除と扶養控除は同時に適用できます。子どもが16歳以上であれば、ひとり親控除35万円に加えて扶養控除も受けられるため、控除額を大きく積み増せます。
| 控除の種類 | 控除額(所得税) | 対象 |
|---|---|---|
| ひとり親控除 | 35万円 | 生計を一にする子がいるひとり親(年齢制限なし) |
| 一般の控除対象扶養親族 | 38万円 | 16歳以上19歳未満、23歳以上70歳未満の扶養親族 |
| 特定扶養親族 | 63万円 | 19歳以上23歳未満の扶養親族 |
| 老人扶養親族(同居老親等) | 58万円 | 70歳以上の同居老親等(同居以外は48万円) |
たとえば18歳の子ども1人ならひとり親控除35万円+扶養控除38万円で合計73万円、20歳の大学生1人なら35万円+特定扶養控除63万円で合計98万円の所得控除になります。子どもが15歳以下の場合、扶養控除は適用されないためひとり親控除35万円のみです。
申告し忘れたときは5年以内なら取り戻せる
過去にひとり親控除を申告し忘れていた場合でも、5年以内であれば還付申告や更正の請求で取り戻せます。年末調整で漏れた分はその年の翌年3月15日までの確定申告で、確定申告で漏れた分は法定申告期限から5年以内の更正の請求で対応します。
2020年(令和2年)の制度創設時に未婚のひとり親が新たに対象となったことを知らないまま、数年分を申告していない方もいます。5年分さかのぼれば20万円以上戻るケースもあるため、心当たりがあれば確認してみる価値があります。
ひとり親控除と手当・支援金の違いは?
ひとり親控除は「税金を軽くする制度」、児童扶養手当などは「現金を受け取る制度」で、目的も窓口も別です。「ひとり親家庭支援金」という名称の単一制度は存在せず、複数の支援が組み合わさっていると理解しておくと整理しやすくなります。
| 制度名 | 種類 | 特徴 |
|---|---|---|
| ひとり親控除(本記事) | 税の軽減(所得控除) | 年末調整・確定申告で申告。納める税金がないと効果は出ない |
| 児童扶養手当 | 現金給付 | ひとり親家庭等が対象。所得に応じて全部支給・一部支給に分かれる |
| 母子父子寡婦福祉資金貸付金 | 貸付(無利子〜低利子) | 生活資金・修学資金などを低利で借りられる |
| ひとり親家庭等医療費助成 | 医療費の助成 | 自治体ごとに対象年齢や所得制限が異なる |
| 高等職業訓練促進給付金 | 現金給付 | 看護師・保育士などの資格取得中の生活費を支援 |
児童扶養手当の支給額や所得制限限度額は、下記の記事で詳しく解説しています。
ひとり親控除についてよくある質問
ひとり親控除について、検索の多い疑問と回答をまとめました。ひとり親控除は年収いくらまで受けられる?
本人の合計所得金額が500万円以下であることが要件です。給与収入のみの場合、年収677万7,777円(約678万円)以下が目安になります。判定に使うのは額面の年収ではなく、給与所得控除を差し引いた後の合計所得金額です。
ひとり親控除の所得制限が1,000万円になるのはいつから?
2026年9月時点で、所得制限を1,000万円に引き上げる改正は行われていません。令和7年度・令和8年度いずれの税制改正大綱にも要件緩和は盛り込まれておらず、合計所得金額500万円以下のままです。なお「合計所得金額1,000万円以下」は配偶者控除を受ける本人の所得要件であり、混同されやすい点にご注意ください。
ひとり親控除が38万円になるのはいつから?
所得税は2027年(令和9年)分から38万円、住民税は2028年度(令和10年度)分から33万円に引き上げられます。2026年(令和8年)分の年末調整では、従来どおり所得税35万円・住民税30万円で計算します。
ひとり親控除でいくら税金が戻る?
2026年(令和8年)分では、所得税率5%の方で年約4万7,500円、税率10%の方で年約6万5,000円、税率20%の方で年約10万円が目安です。所得税は控除額35万円に税率を掛けた金額、住民税は控除額30万円×税率10%=3万円が軽減されます。年収400万円で子ども1人の場合は、およそ4万7,500円の軽減となります。
ひとり親控除は子供が何歳まで対象?
年齢制限はありません。子どもの総所得金額等が62万円以下(給与収入のみなら年収136万円以下)で、生計を一にしていれば、子どもが何歳でも対象です。0歳でも25歳でも要件を満たせば適用されます。16歳以上という年齢要件がある扶養控除とは判定基準が異なります。
子供が就職したらひとり親控除はどうなる?
子どもの年収が136万円を超えた年からひとり親控除は使えなくなります。同居していても別生計であれば対象外です。死別した方は子どもが扶養から外れても寡婦控除の対象になりますが、離婚した方は子ども以外の扶養親族がいないと寡婦控除も使えません。
子供が大学生でアルバイトをしていても対象になる?
アルバイト収入が年間136万円以下であれば対象です。2026年(令和8年)分から給与所得控除の最低保障額が74万円に引き上げられたため、74万円+62万円=136万円が上限になりました。2025年(令和7年)分までの123万円から13万円拡大しています。掛け持ちしている場合はすべての勤務先の収入を合算して判定します。
ひとり親は年収いくらまで住民税が非課税になる?
前年の合計所得金額が135万円以下であれば非課税になります。給与収入のみの場合、2026年度(令和8年度)分は年収204万4,000円未満、2027年度(令和9年度)・2028年度(令和10年度)分は年収209万円以下が目安です。これは扶養人数で判定する通常の基準とは別枠の特例で、どちらか一方を満たせば非課税になります。
ひとり親控除と寡婦控除はどちらが有利?
ひとり親控除のほうが有利です。所得税で35万円(寡婦控除は27万円)、住民税で30万円(寡婦控除は26万円)と控除額が大きく、両方の要件を満たす場合はひとり親控除が優先して適用されます。2027年(令和9年)分からはひとり親控除のみ38万円に引き上げられ、差はさらに広がります。
未婚のシングルマザーでもひとり親控除は受けられる?
受けられます。2020年(令和2年)の税制改正により、婚姻歴の有無を問わず適用されるようになりました。未婚で出産して子育てをしている方も、事実婚の相手がいないなど他の要件を満たせば対象です。父子家庭のシングルファザーも同額の控除を受けられます。
ひとり親控除と扶養控除は併用できる?
併用できます。子どもが16歳以上であれば、ひとり親控除35万円に加えて扶養控除38万円(19歳以上23歳未満は63万円)を受けられます。子どもが15歳以下の場合は扶養控除の対象外となるため、ひとり親控除35万円のみの適用です。
ひとり親控除が適用されているか確認する方法は?
給与所得の源泉徴収票の本人欄「ひとり親」に○が付いているか、毎年5〜6月ごろに届く住民税の決定通知書の所得控除欄にひとり親控除30万円が記載されているかで確認できます。反映されていない場合は、翌年3月15日までの確定申告で控除を受けられます。
年末調整で申告し忘れた場合はどうすればいい?
翌年3月15日までに確定申告をすれば控除を受けられます。過去分についても、法定申告期限から5年以内であれば更正の請求や還付申告で取り戻すことが可能です。制度創設を知らずに申告していなかった方も、さかのぼって手続きできます。
まとめ
ひとり親控除は、子どもを1人で育てる方の税負担を軽くする所得控除です。ネット上には適用時期や金額を先取りした情報も多いため、最新の要件を正しく押さえておきましょう。
- 控除額(2026年・令和8年分):所得税35万円・住民税30万円。所得税は2027年分から38万円、住民税は2028年度分から33万円に引き上げ
- 本人の所得要件:合計所得金額500万円以下(給与収入のみなら年収約678万円以下)。1,000万円への緩和は行われていない
- 子の所得要件:2026年分から総所得金額等62万円以下(給与収入のみなら年収136万円以下)に緩和。年齢制限はなし
- 節税額の目安:年約4万7,500円〜11万円。基礎控除104万円の影響で、年収500万円台までは約4万7,500円にとどまるケースが多い
- 住民税非課税のライン:合計所得金額135万円以下。2027年度以降は年収209万円以下が目安で、扶養人数による基準より有利
- 申告方法:会社員は年末調整、自営業は確定申告。適用状況は源泉徴収票の「ひとり親」欄で確認でき、申告漏れは5年以内なら取り戻せる
ひとり親家庭の経済的な負担軽減には、税制優遇だけでなく手当や助成の活用も欠かせません。子育て世帯が使える支援制度は下記の記事でまとめています。
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