日本発のエンターテイメントとして、世界でもアニメや漫画と並んで大きな人気を誇るゲーム。世代を超え、多様なユーザーに愛されるゲームは、産業としても大きなポテンシャルを秘めています。
一方で1本のゲームを開発するためには、膨大な時間と資金が必要です。今回は財団や国が設置する、ゲーム開発に使える支援策をまとめました。
ゲーム開発を次の段階へ進めるために必要な、資金調達のポイントを見ていきましょう。
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この記事の目次
インディーゲーム開発支援の重要性
近年、世界的な大ブームとなったマインクラフトをはじめ、インディーゲームが人気を集めています。個人の作成したゲームがネットなどを介してユーザーに広まり、メディアの枠を超えて発展していく流れは、もはや一般的な流通方法のひとつと言えそうです。
しかしインディーゲームの開発では、資金調達が大きな壁になります。また、プロモーションや技術面での課題から、アイディアが商品化されず、埋もれてしまうこともあるでしょう。
こうした問題には、公的な支援が欠かせません。補助金や助成金を活用した資金調達はもちろん、技術者の伴走サポートや、各企業とのつながりを促進する発表会への参加が、若手技術者を支えるのです。
開発者は創造的な活動に集中できる環境を整えるため、こうした支援の充実と適切な活用が、課題解決への第一歩となります。
ゲーム開発にかかる費用の目安
インディーゲーム開発に必要な費用は、規模や開発期間によって大きく異なります。一般的に、個人開発でも以下のようなコストが発生します。| 費用項目 | 内容 | 金額の目安 |
|---|---|---|
| 人件費 | 自身の生活費を含む | 1年あたり数百万円規模 |
| ツール・ソフトウェア費用 | ゲームエンジン、3DCGツール、サウンド素材など | 年間数万〜数十万円 |
| 機材費 | 開発用PC、検証用デバイス(コンソール機・スマートフォン・VR機器など) | 数十万〜数百万円 |
| 委託・外注費 | イラスト、効果音、BGM、声優収録、ローカライズなど | 数十万〜数百万円 |
| プロモーション費用 | イベント出展、トレーラー制作、広告など | 数十万〜数百万円 |
経済産業省の資料によれば、創風ゲーム部門では1チームあたり最大1,000万円(補助率1/2の場合、総事業費は2,000万円規模)が想定されており、これがインディーゲーム1本を本格的に仕上げる際の現実的な費用感の一つの目安となります。
こうした費用を全て自己資金でまかなうのは難しいため、補助金や助成金の活用を検討することも一つの方法です。
インディーゲーム向け補助金制度 2選
インディーゲーム開発向けの支援制度には、日本ゲーム文化振興財団「ゲームクリエイター助成制度」や、デジタル等クリエイター人材創出事業(映像・ゲーム等人材創出支援事業)【創風】などがあります。
それぞれの概要や、支援内容をまとめました。
日本ゲーム文化振興財団「ゲームクリエイター助成制度」

画像元:日本ゲーム文化振興財団
日本ゲーム文化振興財団「ゲームクリエイター助成制度」
「ゲームクリエイター助成制度」は、日本ゲーム文化振興財団が、若手ゲームクリエイターの創作活動を助成するために設置したものです。クリエイターの活動を奨励し、ゲーム文化の振興に寄与します。
対象は、コンピューターを使った広義のゲームです。対象事業への制限が少なく、使いやすい助成制度と言えるでしょう。
応募資格
応募は、以下のすべてに該当する者が対象です。
・募集年度の4月1日時点で年齢35歳以下であること
・国内における活動であること
・活動状況および成果について適正に報告できること
国内で活動する、若手が対象となります。なお、グループの場合は、代表者の年齢で判断されます。
対象事業
対象となるゲームには、以下のものが挙げられます。
・ロールプレイングゲーム
・シューティングゲーム
・アクションゲーム
・アドベンチャーゲーム
・シミュレーションゲーム
・パズルゲーム など
原則として、プラットフォームの制限はありません。アーケードゲームやコンシューマーゲーム、パソコンゲーム、モバイルゲームなど幅広い意味でのゲームが対象です。また、ジャンルの指定もありません。
対象経費と補助額
助成の対象となる経費は、活動に必要な費用のうち、諸給与・事務所維持費・生活費等の経費は除いたものです。ただし、活動のために臨時に雇い入れた者に対する謝礼金についてはこの限りではありません。
【補助額】補助金額は、1件あたり200万円までです。
選考体制と過去の助成実績
審査は、日本ゲーム文化振興財団に設置された選考委員会が行います。選考委員には、『ゼビウス』の生みの親である遠藤雅伸氏、ゲームジャーナリストの平林久和氏、元ファミ通編集長のバカタール加藤氏など、ゲーム業界で長年活躍してきた人物が名を連ねています。理事長は岡本吉起氏が務めています。
過去の助成実績は財団の公式サイトで公開されており、年度ごとに以下のような採択数となっています。
| 年度 | 採択件数 | 助成金額(例) |
|---|---|---|
| 令和7年度 | 3件 | 20万円〜100万円 |
| 令和6年度 | 3件 | 約40万円〜52万円 |
| 令和5年度 | 3件 | 10万円〜50万円 |
| 令和4年度 | 3件 | 約43万円〜50万円 |
| 令和3年度 | 3件 | 約31万円〜100万円 |
代表的な過去の採択作品には、『カニノケンカ -Fight Crab-』(大貫真史氏(、『RPGタイム!〜ライトの伝説〜』(藤井トム氏)などがあり、その後アワード受賞や商業的成功を収めた作品もあります。
申請の流れ
申請は、Webでの応募のみ受け付けています。応募書類を用意し、PDF等で提出してください。なお、プレゼン資料等が動画になる場合は、YouTube限定公開で設定の上URLを準備してください。
また、助成金の交付時期は毎年3月です。
【募集期間】例年9月1日〜12月31日(令和8年度の詳細は財団公式サイトを要確認)
創風(IP360:スタートアップ支援事業)
「創風」は、経済産業省の予算で設置された補助事業です。インディーゲーム開発者向けのアクセラレーションプログラムとして、採択されたクリエイターに対して、作品制作から展開までを総合的にサポートします。
2024年度に第1回が実施されて以降、2025年度・2026年度と継続的に実施されており、2026年度で3回目の実施となります。経済産業省が2026年3月に新たに立ち上げた「IP360(Toward 20 Trillion Yen)」というコンテンツ産業支援フレームワークの中の、スタートアップ支援事業として位置づけられています。
正式名称は「令和7年度補正 コンテンツ産業成長投資支援事業費補助金 スタートアップ支援事業」です。
対象者
対象者の主な要件は、以下のとおりです。
| 主な要件 |
|---|
| 個人またはチームであること |
| 代表者が日本国籍または日本の永住資格を有すること |
| 募集年度4月1日時点で中学校を卒業しており、35歳未満であること |
| デジタル技術等を活用し、海外展開も見据えた高品質なゲームを制作する意欲を有すること |
また、ゲーム分野の主な要件は以下のとおりです。
| ゲーム分野の主な要件 |
|---|
| PC(Steam)・家庭用ゲーム機・XR機器・スマートフォン向けに、単体の有償販売を予定していること |
| パブリッシャーと契約を交わしていないこと(交渉中は可) |
| 資金調達を行っておらず、他社と資本関係がないこと |
| 参加希望者およびチーム自ら、応募作品の著作権および知財を単独で保有していること |
| チームメンバーに、プログラマーまたはゲーム開発ツールを使った主な制作を担う作業者が含まれていること |
要件を満たしていれば、会社員や未成年者も対象となります(未成年の場合は保護者の承諾書が必要)。応募時にはデモなどの提出が必要です。
なお、アイテム課金制のゲームや特定のアプリ内で動作するゲームは対象外となります。
対象事業
対象となる事業は、コンテンツの一般公開を目的としているものに限られます。また、以下のものは対象外です。
・政治的または宗教的な宣伝意図を有するもの
・性的な内容や差別的な要素を有するもの
・慈善事業への寄付を主な目的とするもの
既に国などの補助金・助成金等が支出されているものも対象外ですが、クラウドファンディングによる資金調達などはこの限りではありません。
対象経費
対象となる主な経費は、以下のとおりです。
・補助員人件費(アルバイト等)
・旅費(国内外出張の交通費・宿泊費)
・備品費(1年以上継続使用できる物品)
・借料および損料(機材レンタル、スタジオレンタル、3DCG制作ツール使用料など)
・通信費(サーバー使用料、インターネット利用料など)
・運搬費
・諸経費(消耗品費、印刷製本費、その他諸経費)
・委託・外注費(イラスト制作、効果音やBGM制作、声優への外注など)
支援内容・補助額
本事業では、「制作費等の補助」「メンターの伴走」「つながりの創出」の3つの支援が設定されています。作成から発表までを総合的に支援する仕組みです。
| 制作費等の補助 |
|---|
| 1申請あたり上限500万円を支援します。補助率は1/2です(補助対象経費の半分が補助される仕組み)。 第2回公募に採択されたチームには上限500万円が追加で支援され、第1回・第2回両方に採択されると合計上限1,000万円となります。 |
| メンターの伴走 |
| 国内外で活躍するゲーム業界のプロフェッショナルがメンターとして参加し、制作面・事業戦略面・マーケティング面でのサポートを行います。 担当メンターによるアドバイス・相談、講義などが受けられます。 |
| つながりの創出 |
| 「東京ゲームショウ(TGS)」への出展機会が全採択クリエイターに与えられます。 さらに選抜されたクリエイターは、海外のゲーム展示会(GameBCN Demoday、Gamescom Asia、Taipei Game Showなど)に招待される予定です。 中間成果発表会・最終成果発表会も開催され、業界関係者へのアピールの機会となります。 |
採択実績
年度ごとの採択件数は以下のとおりです。
・令和6年度(2024年度):ゲーム部門 9件、映像・映画部門 10件
・令和7年度(2025年度):ゲーム部門・映像音楽部門で計20組
・令和8年度(2026年度):ゲーム部門で20組(『Beautiful Life Show』『Dress the Duel』『セイズの国』など多彩なジャンルの作品が採択)
申請の流れ
申請は、以下の流れで行います(すべてオンライン上で完結)。
①企画書をクラウドストレージ上に準備する
②Google Formsへの応募情報登録・必要書類のアップロードを行う
【スケジュール例(令和8年度第1回公募)】
・募集開始:2026年3月31日
・応募締切:2026年5月13日17:00
・一次審査(書面):5月中旬〜下旬
・二次審査(面談):5月下旬〜6月中旬
・採否公表:6月下旬
・事業実施期間:交付決定日(6月下旬)〜2027年2月28日
・第2回公募の結果通知:9月中旬〜10月中旬(予定)
最新情報は、創風ゲーム分野の公式サイトおよび公式Xで確認できます。
IP360という新しい支援フレームワーク
経済産業省は2026年3月に、日本発コンテンツの海外売上を2033年までに20兆円とする目標を掲げた、新たな支援フレームワーク「IP360(Toward 20 Trillion Yen)」を立ち上げました。
IP360では、ゲーム・アニメ・マンガ・音楽・実写の5分野を横断する形で、複数の補助メニューが用意されています。創風はこのIP360フレームワークの中の「スタートアップ支援事業」に位置づけられており、その他にも以下のような支援メニューがあります。
・大規模開発支援:継続的に新規IPを創出するための大規模制作支援
・海外展開支援(IPエコシステム世界展開支援):海外への販路拡大・プロモーション支援
ゲーム単体だけでなく、ゲーム×アニメ、ゲーム×音楽といった多角的なIP展開を見据えた支援体制が整いつつあるのが、近年の大きな潮流です。
詳細は経済産業省の公式ページ「コンテンツ産業支援メニュー」を確認してください。
補助金以外の「ゲーム開発支援サービス」
補助金や助成金以外にも、インディーゲーム開発者を支援する民間のプログラムが複数存在します。資金援助だけでなく、開発ノウハウ・海外展開支援・パブリッシャーとのマッチングなど、多角的なサポートを受けられるものもあります。
| プログラム名 | 運営 | 支援内容 |
|---|---|---|
| iGi indie Game incubator | iGi運営事務局 | 日本のインディーゲーム開発者向けインキュベーションプログラム。資金援助に加え、メンタリング・海外展開支援を提供。 |
| ゲームクリエイターズCAMP | 集英社 | 集英社が運営するクリエイター支援プログラム。チームアップ支援サービス「CAMP TEAM-UP PRO」なども実施。 |
| LVLZero Tokyo | MIXI | 「gamescom」無料出展枠を含むインディーゲーム海外展開支援プログラム。 |
| Google Play Accelerator Japan | Androidアプリ開発者向けのアクセラレータープログラム。 |
補助金と民間プログラムを組み合わせることで、資金面・技術面・販路面の課題を同時に解決していくことも可能です。
補助金を最大限に活用するためのポイント
補助金・助成金の交付は事業の実施後になるため、計画的な予算管理とスケジュールの調整が必要です。
また、採択には審査が行われます。ミスのない書類を作成することはもちろん、計画している事業について、わかりやすく説明する資料を用意することが重要です。過去に採択された事例も参考にして、審査員に熱意が伝わる資料を準備しましょう。
また、こうしたサポートには、事業期間の終了後にも持続的な支援が行われるものもあります。長期的なサポートを有効に活用するためにも、制度の内容は事前に詳しく確認しておきましょう。
よくある質問
ゲームクリエイター助成制度と創風は併用できる?
同一の経費に対しては、国の補助金・助成金を二重に受けることはできません。ただし、経費の項目を明確に切り分ければ、別経費に対しては併用できる可能性があります。詳細は各事務局に事前相談することをおすすめします。
創風の補助率「1/2」ってどういう意味?
補助対象経費の半分が補助される仕組みです。例えば1,000万円の経費がかかる場合、500万円が補助され、残りは自己資金などで賄います。第1回・第2回両方に採択された場合は合計で最大1,000万円までの補助が受けられます。
創風の第2回公募はいつ募集が始まる?
公募要領によれば、第2回公募の結果通知は2026年9月中旬〜10月中旬とされており、募集開始はそれ以前の見込みです。ただし正式な募集開始日は未確定で、第2回は第1回採択チームからの再募集となる可能性もあります。最新情報は創風公式Xでご確認ください。
創風に未成年でも応募できる?
応募できます。ただし募集年度の4月1日時点で中学校を卒業していることが条件です。一次審査通過後は保護者の承諾書提出と二次審査への保護者同席が求められ、採択されると保護者が契約当事者となります。
会社員でも創風に応募できる?
応募できます。ただし一次審査を通過した場合、二次審査までに所属組織からの了解を証明する承諾書の提出が必要となります。
交付決定前に発注した経費も補助対象になる?
なりません。交付決定日(2026年6月下旬予定)以降に発注し、事業期間中に支払った経費のみが補助対象です。採択されてもすぐに発注すると対象外になるため、必ず交付決定日以降に発注してください。
創風の人件費はどう計算する?
「1時間あたり3,800円×制作時間(上限160時間/月)」か、法人の場合は「健保等級単価による計算」のいずれかを選択します。いずれも毎日の業務日誌記録と毎月の提出が必須です。チームの場合は各メンバーがそれぞれ業務日誌を作成します。
ゲームクリエイター助成制度の選考委員は誰?
日本ゲーム文化振興財団に設置された選考委員会で審査が行われます。選考委員には『ゼビウス』の遠藤雅伸氏、ゲームジャーナリストの平林久和氏、元ファミ通編集長のバカタール加藤氏らが名を連ねており、理事長は岡本吉起氏が務めています。
創風に採択されたら必ず完遂しないとダメ?
原則として事業完了が必要です。最終成果発表会で成果物を発表できない場合は完遂できなかったとみなされ、受領済みの補助金は全額返金しなければなりません。チームの場合はリーダー離脱でも完遂不可とみなされるため、やむを得ない事情がある場合は早めに事務局へ相談してください。
概算払いって何?
事業終了前に補助金の一部を前倒しで受け取れる制度です。創風ゲーム分野では交付決定額の2/3を上限に請求できます。ただし、連帯保証人と保証差入書、印鑑登録証明書、発注書または見積書の提出が必要となります。
アイテム課金制のゲームは対象外?
創風ゲーム分野では「単体の有償販売を予定していること」が要件のため、買い切り型のゲームが対象です。アイテム課金制(基本無料+ガチャや有料アイテムでマネタイズ)のゲームや、特定のアプリ内でしか動作しないミニゲームなどは対象外となります。
創風以外で今からでも応募できる支援は?
ゲームクリエイター助成制度(例年9月〜12月募集、最大200万円)、iGi indie Game incubator、集英社ゲームクリエイターズCAMP、MIXI LVLZero Tokyoなどがあります。募集時期や対象が異なるため、複数の支援を組み合わせる活用法も検討してみてください。
まとめ
インディーゲーム開発では、資金調達のほか、技術面やプロモーションに関する支援も必要です。
ゲームクリエイター助成制度は35歳以下の若手開発者を対象に最大200万円を支援し、創風は技術面のメンター支援や業界関係者との接点創出まで含めた包括的なサポートを最大1,000万円規模で提供します。さらに2026年からは、ゲーム・アニメ・音楽など複数分野を横断するIP360フレームワークも立ち上がり、支援の選択肢が広がっています。
これらの制度を活用することでゲーム開発の課題を克服し、開発者が独創的な開発に専念できる環境を整えていきましょう。
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