デジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金)の不正受給とは?事例・ペナルティ・通報窓口を解説

公開日:2024/10/22 更新日:2026/8/18
image

デジタル化・AI導入補助金(旧:IT導入補助金)は、中小企業等が行う勤怠管理や会計ソフト、AIツールなどの導入を支援する制度です。一方で、旧IT導入補助金の時代から不正受給の発生が問題となっており、会計検査院が令和6年10月21日に発表した調査では、令和2年度から令和4年度の3年間で1億4,755万円の不正受給が報告されました。

こうした経緯を踏まえ、後継制度の「デジタル化・AI導入補助金」でも不正への監視と対策は一段と強化されています。「実質無料で導入できます」「キャッシュバックがあります」といった勧誘は、不正行為の入り口である可能性が高いため注意が必要です。

本記事では、デジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金)における不正受給の事例、発覚した場合のペナルティ、企業が調査に備えて確認すべきポイント、そして万が一不正に巻き込まれた場合の対処法について解説します。

無料で相談する

▼▼▼日々配信中!無料メルマガ登録はこちら▼▼▼
メルマガ会員登録する

▼デジタル化・AI導入補助金の解説はこちら

デジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金)とは?最大450万円・補助率1/2〜4/5・採択率44%【2026年9月最新】

この記事の目次

\ 制度やどの補助金が使えるか知りたい! /
お問い合わせ
\ 申請サポートをお願いしたい! /
専門家を探す
補助金対象商品を調べる
導入したい商材が補助金に対応しているかチェック!
ITトレンドへ

IT導入補助金から「デジタル化・AI導入補助金」へ

IT導入補助金は、令和7年度補正予算事業から「デジタル化・AI導入補助金」に名称を変更しました。制度の枠組みや事務局の体制は引き継がれており、不正行為への対応方針も基本的に継続されています。

名称変更の背景には、AI活用支援の強化とともに、旧制度で相次いだ不正受給を踏まえた制度の信頼性確保があります。実際に、事務局の公式サイトでは「キャッシュバック」「実質"無料"」などの勧誘に対する注意喚起が、これまで以上に前面に打ち出されています。

過去にIT導入補助金を受給した企業も、調査や書類保管義務の対象であることに変わりはありません。本記事では旧制度での不正事例も含めて解説します。

デジタル化・AI導入補助金の不正受給とは

デジタル化・AI導入補助金(旧:IT導入補助金)では、以下の行為がすべて不正に当たります。事務局は「これらはすべて不正であり、犯罪です」と明言しています。

・ITツールを実質無償で提供する、減額する等の販売行為
・補助対象者以外が申請手続きを代理で行う行為
・ITツールが導入されていない、役務(導入研修・コンサルティング等)が実際に遂行されていない行為
・同じ内容で国から他の補助金や助成金を受給する行為
・補助事業者として不適切な行為(従業員数の過少申告等)

①実質的還元(実質無料・キャッシュバック)

最も代表的な不正は「ITツールを実質無償で提供する、減額する等の販売行為」、いわゆる「実質的還元」です。ITツールの販売金額に占める企業の自己負担額を減額もしくは無償とする、または一部の利害関係者に不当な利益が配賦されるような行為を指します。

事務局が示す具体例には、次のようなものがあります。

・会計ソフトの購入費用を後日、IT導入支援事業者もしくは第三者から返金される
・営業先への紹介料と称して、IT導入支援事業者もしくは第三者から「紹介料やコンサル料等」を受け取る


出典:デジタル化・AI導入補助金2026

会計検査院の資料には、実質的還元による不正事例として「自己負担額全額(事業費と補助金の差額581万円)を実質的に負担せず、更に178万円の利益を獲得した例」が記載されています。

出典:会計検査院「サービス等生産性向上IT導入支援事業の実施状況について」報告のポイント

実質的還元による不正の多くは、ITツールを導入する企業が単独で行ったものではなく、制度上のパートナーであるIT導入支援事業者やその関係会社等からの「自己負担のない方法によりITツールを導入できる」「自己負担額を上回る報酬を得ることができる」などの働きかけを契機として行われていました。

②GビズIDの共有・申請代行

「補助対象者以外が申請手続きを代理で行う行為」も明確な不正です。具体的には、補助対象者がGビズID(法人・個人事業主向け共通認証システム)等を他者に共有し、申請マイページの開設やその後の交付申請における手続き等を行わせる行為が該当します。

「面倒な申請はすべて代行します」と持ちかけられ、ログイン情報をベンダーに渡してしまうケースは典型的なパターンです。申請は補助対象者自身が行う必要があります。

③ツール未導入・役務の未遂行

補助金を受給したにもかかわらず、実態が伴っていないケースも不正です。事務局は次のような例を挙げています。

・会計ソフトを購入したが、試供版のみが提供されており、利用可能なソフトウェアが導入されていない
・ソフトウェア導入研修を10時間受講したという内容で補助金を受給したが、実際は導入手順をメールで共有されたのみで導入研修が行われていない

④他の補助金との重複受給

1つのITツールについて、デジタル化・AI導入補助金と「ものづくり補助金」など他の国の補助金の両方に申請し、同じ費用に対してそれぞれの補助金を受給する行為も不正に当たります。

「実質無料」「キャッシュバック」勧誘の見分け方

不正受給の多くは、事業者側が最初から不正を意図していたわけではなく、営業電話やセミナーでの勧誘をきっかけに巻き込まれるケースです。次のようなセールストークが出てきたら、不正勧誘を疑ってください。

・「補助金を使えば実質無料(実質0円)でツールを導入できます」
・「自己負担分は後からキャッシュバックします」
・「紹介料・コンサル料としてお支払いするので、実質負担はありません」
・「GビズIDをお預かりして、申請はすべて弊社で代行します」
・「導入実態は問われないので、書類さえ揃えれば大丈夫です」

補助金は自己負担があることが制度の前提です。「負担ゼロ」をうたう提案は、その時点で制度の趣旨に反しています。また、勧誘してきた事業者が「事務局公認」「採択率100%」などをうたっている場合も注意が必要です。

不審な勧誘を受けた場合は、契約前に事務局のコールセンター(0570-666-376)や、顧問税理士・中小企業診断士等の専門家に相談することをおすすめします。

不正受給が発覚した場合のペナルティ

不正受給が発覚した場合、以下のペナルティを受けることになります。

・補助事業者の交付決定の取消
・補助金の全額返還(加算金・延滞金が課される場合あり)
・事業者名の公表
・警察への通報
・不正に関与したIT導入支援事業者の登録取消し・公表等
・交付決定取消を受けた企業や、登録取消処分を受けたIT導入支援事業者は、再度の交付申請や事業者登録などが制限される可能性

事務局は交付規程の定めに則り、IT導入支援事業者・補助事業者に対して現地確認を含めた立入調査を実施しています。交付規程や公募要領に反する事実が確認された場合のほか、正当な理由なく立入調査に応じなかった場合にも、登録取消・交付決定取消・事業者名の公表・警察への通報等の措置が取られることがあります。

不正が公になれば、取引先や顧客からの信頼が失われ、ビジネスの機会を失うリスクが高まります。不正受給は、補助金の返還義務だけでなく、社会的信用の失墜や、将来的な支援制度の利用制限など、多くのリスクを伴う行為なのです。

調査に備えて準備しておくべきこと

実際に現場で行われる調査には、実績報告後の確定審査で必要に応じて行われる「現地調査」と、補助金の交付後でも行うことができる「立入調査」があります。不正の疑いがある場合、立入調査は補助事業者だけでなく、IT導入支援事業者にも行われることがあります。

補助金の申請者は、不正受給の有無にかかわらず、突然の調査にも対応する必要があるため、事前に以下の点をしっかりと準備しておくようにしましょう。

(1)書類の整理
補助金に関連するすべての書類は、いつでも提出できるよう整理しておくことが大切です。公募要領には留意事項として以下のように記載されています。

(カ) 事務局及び中小機構が行う検査や会計検査院による会計検査に備え、補助対象事業に係る全ての書類等の情報(※)を補助事業の完了(廃止の場合を含む。)の日の属する年度終了後5年間保管し、閲覧・提出することについて協力しなければならない。
※ 交付決定通知、契約書、注文書、納品書、導入通知書、請求書、振込受領書、領収書、役務の実施実態資料(業務日誌、勤怠管理簿)等

引用:デジタル化・AI導入補助金2026 公募要領(通常枠)

(2)ITツールの利用実態の証明
実際に導入したITツールが適切に利用されていることを証明できる資料を用意しておきます。スクリーンショットや利用ログ、業務にどのように役立っているかを示す報告書なども有効です。

(3)IT導入支援事業者との取引記録
不正受給の多くは、IT導入支援事業者との不適切な取引によって発生します。そのため、取引記録を詳細に管理しておくと、取引の透明性の確保につながるでしょう。

(4)効果報告における正確な数値
虚偽の報告を避けるため、導入ツールが実際に企業の生産性向上に寄与しているかや、生産性関連情報等の数値を正確に報告できるようにしておきます。デジタル化・AI導入補助金では労働生産性の向上目標が申請要件となっているため、効果報告の数値管理はこれまで以上に重要です。

もし不正を見つけた場合はどうすればいい?

デジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金)の不正だと思われる事案を見かけた場合、公式サイトに設置された専用フォームを通じて情報提供できます。

▼デジタル化・AI導入補助金 不正に関する情報提供フォーム
https://forms.gle/rmgDCkHuown7x6JD7

回答内容を踏まえ、事務局が情報取得を必要と判断した場合、不正に関する情報を提供するためのフォーマットがメールで送付されます。フォーマットを受け取った人は、案内に従って情報を提供してください。

なお事務局は、提供された個人情報を追加ヒアリング等の連絡手段としてのみ利用し、第三者への提供は行わないとしています。

万が一不正に巻き込まれたらどうしたらいい?

不正をするつもりはなくても、「実質無償だと勧誘されて、不正だと知らずに受給してしまった」というケースも考えられます。その場合、補助金の自主的な返還が受け付けられています。

現在の返還手続きは、不正への関与を知っていたかどうかで提出書類が分かれます。

不正と知りながら関与した場合

不正と知りながら関与した場合、「自己申告書」を提出し、加算金を課したうえで返還・納付することになります。

①公式サイトから「自己申告書」をダウンロードし、必要事項をすべて記入のうえ、指定のWEBフォルダにアップロードして提出
②事務局での確認完了後、事務局から補助事業者へメールが送信される
③メールに記載された返還口座へ、指定の期日までに定められた金額を返還

なお、納付期限までに返還されない場合は延滞金が課される場合もあります。

不正と知らずに関与した場合

不正と知らずに関与した場合も、手続きの流れは自己申告書の場合と同様で、提出書類が「誓約書」になります。納付期限までに返還されない場合は遅延損害金が課される場合があります。

返還手続きの注意点

返還手続きを行う場合、以下の注意点があります。

・自己申告書・誓約書は提出後の内容変更ができない
・納付額は補助事業者ごとに全額一括で入金する必要があり、分割入金はできない
・複数の交付申請番号の納付額をまとめて入金することはできない
・事務局の処理には時間を要するため、納付予定日の2〜3週間前までに不備のない書類を提出する

自己申告書・誓約書の様式のダウンロードと提出先は、公式サイトの「不正行為にご注意ください」ページで確認してください。

参考:デジタル化・AI導入補助金 不正行為にご注意ください

まとめ

旧IT導入補助金では、会計検査院の調査により多額の不正受給が明らかになり、制度の信頼性確保が大きな課題となりました。後継制度のデジタル化・AI導入補助金では、「キャッシュバック」「実質無料」といった勧誘への注意喚起が強化され、立入調査や事業者名の公表、警察への通報を含む厳格な対応が明示されています。

企業側に求められるのは、これまで以上に正確な申請手続きと報告です。過去にIT導入補助金を受給した企業も含め、突然の調査に対応できるよう、書類の保管・整理やITツールの利用実態の証明など、本記事で紹介した準備を進めておきましょう。

また、「実質無料で導入できる」といった勧誘を受けた場合は、安易に応じず、事務局や専門家に相談することが自社を守る第一歩です。万が一不正に関与してしまった場合も、自主返還の制度が用意されています。補助金の正しい活用を心がけ、透明性のある経営体制を整えるようにしてください。

無料で相談する

▼▼▼日々配信中!無料メルマガ登録はこちら▼▼▼
メルマガ会員登録する

関連記事