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IT導入補助金の不正受給問題と受給企業が対応しておくべき準備とは

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IT導入補助金は、中小企業等が行う勤怠管理や会計ソフトなどのITツール導入を支援する制度です。今回、会計検査院の調査で補助金の不正受給が報告されており、不正が指摘された金額は1億4755万円になります。本記事では、IT導入補助金の不正受給の事例、発覚した場合のペナルティ、そして企業が調査に備えて事前に確認すべきポイントについて解説します。正しい手続きを理解し、企業がどのような準備をすべきかぜひ参考にしてください。

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この記事の目次

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IT導入補助金の不正受給とは

IT導入補助金の不正受給で代表的なのは「実質的還元」と呼ばれるものです。ITツールの販売金額に占める企業の自己負担額を減額もしくは無償とする、または一部の利害関係者に不当な利益が配賦されるような行為を指します。会計検査院の資料には、実質的還元による不正事例として「自己負担額全額(事業費と補助金の差額581万円)を実質的に負担せず、更に178万円の利益を獲得した例」が記載されています。

出典:会計検査院「サービス等生産性向上IT導入支援事業の実施状況について」報告のポイント

実質的還元による不正は、ITツールを導入する企業が単独で行ったものではなく、多くは、制度上のパートナーであるIT導入支援事業者やその関係会社等からの「自己負担のない方法によりITツールを導入できる」「自己負担額を上回る報酬を得ることができる」などの働きかけを契機として行われていました。このほか、ITツールの導入報告書に虚偽の内容を記載したり、全く導入していないITツールの購入を報告したりするケースも見受けられました。

不正受給が発覚した場合のペナルティ

不正が判明した場合は、補助金の全額返還が求められ、不正に関与したIT導入支援事業者の登録取消しや公表等が行われます。不正が公になれば、取引先や顧客からの信頼が失われ、ビジネスの機会を失うリスクが高まります。また、交付決定取り消しを受けた企業や、登録取消処分を受けたIT導入支援事業者は、再度の交付申請や事業者登録などが制限される可能性があります。

不正受給は、補助金の返還義務だけでなく、社会的信用の失墜や、将来的な支援制度の利用制限など、多くのリスクを伴う行為なのです。

▼11月8日更新
IT導入補助金事務局は10月31日に「※重要※ IT導入補助金は不正を絶対に許しません」として、不正行為に対して調査を行い、不正が発覚した場合は補助金の交付取消や返還請求、IT導入支援事業者の登録取消を行うとホームページで発表しました。

【IT導入補助金では、以下の行為はすべて不正であり、犯罪です】

重複交付 同じ内容で他の国の補助金や助成金を重複して受けること。
不適切な行為 事業期間中や補助金交付後に、不正や情報漏洩などの疑いがある行為を行うこと。
事業の不遂行 ITツールが導入されていないなど、補助事業が実施されていないこと。
なりすまし申請 補助事業者本人が行うべき申請手続きを他者が代行すること。
自己負担額を減額または無償とするような販売方法 補助事業者の自己負担額を減額や無償にする方法や、不当な利益を配分する行為(例:ポイント・クーポンの発行や、口座振り込み・現金払い戻し等で支払額を実質的に減らす)。

参考:IT導入補助金2024 10月31日更新 ※重要※ IT導入補助金は不正を絶対に許しません

調査に備えてに準備しておくべきこと

実際に現場で行われる調査には、実績報告後の確定審査で必要に応じて行われる「現地調査」と、IT導入補助金の交付後でも行うことができる「立入調査」があります。不正の疑いがある場合、立入調査は事業者だけでなく、IT導入支援事業者にも行われることがあります。

補助金の申請者は、不正受給の有無にかかわらず、突然の調査にも対応する必要があるため、事前に以下の点をしっかりと準備しておくようにしましょう。

(1)書類の整理
補助金に関連するすべての書類は、いつでも提出できるよう整理しておくことが大切です。公募要領には留意事項として以下のように記載されています。


事務局及び中小機構が行う検査や会計検査院による会計検査に備え、補助対象事業に係る全ての書類等の情報(※)を補助事業の完了(廃止の承認を受けた場合を含む。)の日の属する年度終了後5年間保管し、閲覧・提出することについて協力しなければならない。
(※)具体例:交付決定通知、契約書、注文書、納品書、導入通知書、請求書、振込受領書、領収書、確定通知 等
引用IT導入補助金2024公募要領p28

(2)ITツールの利用実態の証明
実際に導入したITツールが適切に利用されていることを証明できる資料を用意しておきます。スクリーンショットや利用ログ、業務にどのように役立っているかを示す報告書なども有効です。

(3)IT導入支援事業者との取引記録
不正受給の多くは、IT導入支援事業者との不適切な取引によって発生します。そのため、取引記録を詳細に管理しておくと、取引の透明性の確保につながるでしょう。

(4)効果報告における正確な数値
虚偽の報告を避けるため、導入ツールが実際に企業の生産性向上に寄与しているかや、生産性関連情報等の数値を正確に報告できるようにしておきます。

まとめ

過去に事業再構築補助金で、補助金の効果や採択審査に厳しい指摘がなされたことで、制度の大幅な見直しが行われた事例があります。今回のIT導入補助金でも、不正受給が明らかになったことで、信頼性確保のために厳しい対策が講じられることが予想されます。

具体的には、交付申請や実績報告における証拠書類の範囲が拡大し、確認の厳格化が進むでしょう。また、現地調査や立入調査の実施手順や確認項目の見直しが進められ、不正防止のための対応策が強化される可能性があります。

このような状況を踏まえると、企業はこれまで以上に正確な申請手続きと報告が必要になると考えられます。IT導入補助金の不正受給問題を踏まえ、受給企業は突然の調査にも対応できるよう、前項でお伝えしたような準備を行いましょう。不正が発覚すれば、補助金の返還だけでなく、企業の信頼も大きく損なうことになるため、企業としては、いつでも補助金の正しい活用を心がけ、透明性のある経営体制を整えるようにしてください。

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