IT導入補助金は、中小企業等が行う勤怠管理や会計ソフトなどのITツール導入を支援する制度です。一方で、不正受給の発生も問題となっています。
会計検査院が令和6年10月21日に発表した調査によれば、令和2年度から令和4年度の3年間で、1億4,755万円の不正受給が報告されました。
本記事では、IT導入補助金の不正受給の事例、発覚した場合のペナルティ、そして企業が調査に備えて事前に確認すべきポイントについて解説します。正しい手続きを理解し、企業がどのような準備をすべきかぜひ参考にしてください。
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この記事の目次
IT導入補助金の不正受給とは
IT導入補助金では、以下の行為が不正行為に当たります。
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上記の中で代表的なものは、「ITツールを実質無償で提供する、減額する等の販売行為」です。
「実質的還元」と呼ばれており、ITツールの販売金額に占める企業の自己負担額を減額もしくは無償とする、または一部の利害関係者に不当な利益が配賦されるような行為を指します。

出典:IT導入補助金2025
会計検査院の資料には、実質的還元による不正事例として「自己負担額全額(事業費と補助金の差額581万円)を実質的に負担せず、更に178万円の利益を獲得した例」が記載されています。

出典:会計検査院「サービス等生産性向上IT導入支援事業の実施状況について」報告のポイント
実質的還元による不正は、ITツールを導入する企業が単独で行ったものではなく、多くは、制度上のパートナーであるIT導入支援事業者やその関係会社等からの「自己負担のない方法によりITツールを導入できる」「自己負担額を上回る報酬を得ることができる」などの働きかけを契機として行われていました。このほか、ITツールの導入報告書に虚偽の内容を記載したり、全く導入していないITツールの購入を報告したりするケースも見受けられました。
不正受給が発覚した場合のペナルティ
不正受給が発覚した場合、以下のペナルティを受けることになります。
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不正が公になれば、取引先や顧客からの信頼が失われ、ビジネスの機会を失うリスクが高まります。不正受給は、補助金の返還義務だけでなく、社会的信用の失墜や、将来的な支援制度の利用制限など、多くのリスクを伴う行為なのです。
調査に備えて準備しておくべきこと
実際に現場で行われる調査には、実績報告後の確定審査で必要に応じて行われる「現地調査」と、IT導入補助金の交付後でも行うことができる「立入調査」があります。不正の疑いがある場合、立入調査は事業者だけでなく、IT導入支援事業者にも行われることがあります。
補助金の申請者は、不正受給の有無にかかわらず、突然の調査にも対応する必要があるため、事前に以下の点をしっかりと準備しておくようにしましょう。
(1)書類の整理
補助金に関連するすべての書類は、いつでも提出できるよう整理しておくことが大切です。公募要領には留意事項として以下のように記載されています。
事務局及び中小機構が行う検査や会計検査院による会計検査に備え、補助対象事業に係る全ての書類等の情報(※)を補助事業の完了(廃止の承認を受けた場合を含む。)の日の属する年度終了後5年間保管し、閲覧・提出することについて協力しなければならない。
(※)具体例:交付決定通知、契約書、注文書、納品書、導入通知書、請求書、振込受領書、領収書、確定通知 等
(2)ITツールの利用実態の証明
実際に導入したITツールが適切に利用されていることを証明できる資料を用意しておきます。スクリーンショットや利用ログ、業務にどのように役立っているかを示す報告書なども有効です。
(3)IT導入支援事業者との取引記録
不正受給の多くは、IT導入支援事業者との不適切な取引によって発生します。そのため、取引記録を詳細に管理しておくと、取引の透明性の確保につながるでしょう。
(4)効果報告における正確な数値
虚偽の報告を避けるため、導入ツールが実際に企業の生産性向上に寄与しているかや、生産性関連情報等の数値を正確に報告できるようにしておきます。
もし不正を見つけた場合はどうすればいい?
IT導入補助金の不正だと思われる事案を見かけた場合、IT導入補助金の公式サイトに設置された専用窓口を通じて通報できます。
▼IT導入補助金 通報窓口
https://forms.gle/rmgDCkHuown7x6JD7
事務局が回答内容を調査し、必要と判断した場合、通報内容を提供するためのフォーマットが別途送られてきます。フォーマットを受け取った人は、案内に従い、不正に関する情報を提供してください。
万が一不正に巻き込まれたらどうしたらいい?
不正をするつもりはなくても、「実質無償だと勧誘されて不正だと知らずに受給してしまった」というケースも考えられます。その場合、IT導入補助金の申請マイページで、返還手続きが可能です。
後年手続きによる、補助金返還の流れは以下のとおりです。

出典:IT導入補助金2025
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①申請マイページより辞退届作成 ②IT事業者ポータルより辞退届確認 ③申請マイページより辞退届提出 ④辞退届の内容を審査、その後の手続きをメールで通知 ⑤申請マイページより納付額を確認、指定口座に納付額入金 |
なお、補助金を返還する際には、加算金や延滞金が発生する可能性があります。
まとめ
過去に事業再構築補助金で、補助金の効果や採択審査に厳しい指摘がなされたことで、制度の大幅な見直しが行われた事例があります。IT導入補助金でも、不正受給が明らかになったことで、信頼性確保のために厳しい対策が講じられることが予想されます。
具体的には、交付申請や実績報告における証拠書類の範囲が拡大し、確認の厳格化が進むでしょう。また、現地調査や立入調査の実施手順や確認項目の見直しが進められ、不正防止のための対応策が強化される可能性があります。
このような状況を踏まえると、企業はこれまで以上に正確な申請手続きと報告が必要になると考えられます。IT導入補助金の不正受給問題を踏まえ、受給企業は突然の調査にも対応できるよう、前項でお伝えしたような準備を行いましょう。不正が発覚すれば、補助金の返還だけでなく、企業の信頼も大きく損なうことになるため、企業としては、いつでも補助金の正しい活用を心がけ、透明性のある経営体制を整えるようにしてください。
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