2050年のカーボンニュートラル実現に向け、再生可能エネルギーに注目が集まっています。日本では2021年の時点で太陽光発電累積導入量が世界3位となるなど、太陽光を利用したエネルギーの普及が進みつつあります。
太陽光発電の導入拡大には、需要家主導での設備導入が大きな役割を果たします。今回は需要家主導による新たな太陽光発電設備の導入モデルの実現を支援する、需要家主導太陽光発電導入促進事業についてまとめました。
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この記事の目次
非FIT・非FIPとは
2012年、日本ではFIT制度(固定価格買取制度)が導入されました。これは2022年度から、FIP制度に切り替わっています。
FIPとは、「フィードインプレミアム(Feed-in Premium)」の略です。電力会社による固定価格での買取制度であるFITと違い、再生エネルギーの売電価格に対して一定の「プレミアム(補助額)」を上乗せすることで、導入促進を図ります。
需要家主導太陽光発電導入促進事業では、FITにもFIPにも該当しない設備の設置が補助の対象となります。
非FIT・非FIPの設備導入でも費用的負担を軽減できることが、本事業を活用するメリットです。
参考:https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/fip.html
参考:https://www.rd.ntt/se/media/article/0055.html
需要家主導太陽光発電導入促進事業の概要
需要家主導太陽光発電導入促進事業は、需要家が小売電気事業者・発電事業者と一体となって取り組む太陽光発電の導入や当該太陽光発電設備への蓄電池の併設を支援します。
再生可能エネルギーの導入の加速化および最大限の活用を促し、エネルギー危機に強い経済構造への転換を図ることを目的とする事業です。
事業全体のイメージは、以下の図も参照してください。
参考:需要家主導太陽光発電導入促進事業
需要家主導太陽光発電導入促進事業の内容と申請方法
それでは、需要家主導太陽光発電導入促進事業の内容や申請の方法について確認しましょう。令和5年度予算事業では、「太陽光発電設備に併設する蓄電池を補助対象とする」などの変更がありました。
それぞれの概要を見ていきましょう。
補助対象事業
補助対象事業の主な要件は、以下の①~➆です。
補助対象事業の主な要件 |
①一般送配電事業者に対して、接続検討申込や系統連系申込等が完了している ・未完の場合も申請は可能ですが、補助対象経費には制限が生じます。 |
②補助対象設備が、再生可能エネルギー発電事業計画に含まれない |
③原則として令和6年2月29日までに運転を開始する、以下の設備を導入する事業 ・合計2MW 以上 ・補助対象経費のうち、蓄電池を除く単価が23.6万円/kW (AC ベース) 未満 ・蓄電池を導入する場合は、単価が19万円/kWh以下 |
④8年以上にわたって、補助対象設備による発電量の7 割以上に相当する量の電気を利用する契約等が締結される |
⑤蓄電池を導入する場合には、上記に加え、以下のすべてを満たす 〇資源エネルギー庁による電力需給ひっ迫警報および注意報、一般送配電事業者による電力需給ひっ迫準備情報が発出された際、可能な限り導入する蓄電池を利用した電力供給を行う 〇蓄電および放電した時間や電力量などの蓄電池に係る運用実績を取得・保管するとともに、JPEA が要請した場合には当該運用実績を提出する 〇採用予定の蓄電システムのBMSのメーカー等について、国際的に受け入れられた基準等に反していないこと等の適切性が確保されている |
⑥再エネ特措法に基づく「事業計画策定ガイドライン (太陽光発電)」を遵守する 特に、以下の事項等が重視されます。 〇地域住民や地域の自治体と適切なコミュニケーションを図るとともに、地域住民に十分配慮して事業を実施するよう努める 〇関係法令および条例の規定に従い、土地開発等の設計・施工を行う 〇防災、環境保全、景観保全を考慮し補助対象設備の設計を行うよう努める 〇一の場所において、設備を複数の設備に分割したものでない 〇発電設備の設計図書や竣工試験データを含む完成図書を作成し、適切な方法で管理・保存をする 〇設備の設置後、適切な保守点検・維持管理を実施する 〇防災、環境保全、景観保全の観点から計画段階で予期しなかった問題が生じた場合、適切な対策を講じ、災害防止や自然破壊、近隣への配慮を行うよう努める 〇「廃棄等費用積立ガイドライン」を参考に、必要な経費を算定し、積立等の方法により確保する計画を策定し、適切な廃棄・リサイクルを実施する |
補助対象事業者
対象となる事業者の主な要件は、以下の通りです。
①国内において事業活動を営んでいる法人
②本事業を実施するために必要な経営基盤を有し、事業の継続性が認められる
③補助対象設備の所有者であり、その補助対象設備の処分制限期間を超えて、継続的に使用する
④経済産業省から補助金等停止措置等が講じられていない
⑤政治団体、宗教上の組織、風俗営業者、暴力団員関係者等でない
補助率
補助率は、「自治体連携型」と「それ以外」とで異なります。それぞれの補助率は以下のとおりです。
自治体連携型
以下のいずれかの場合は、補助率は2/3
①補助対象事業者が、地方公共団体が所有する土地に補助対象設備を設置して事業を実施する
②地方公共団体が資本金の過半を出資する補助対象事業者または地方公共団体・地方公営企業が、当該地方公共団体内に需要地を有する者を需要家として補助事業を実施する
それ以外
・1/2
・ただし、蓄電池の設置に係る経費については1/3
補助対象経費
補助の対象となる経費は、以下のとおりです。
補助対象経費 | |
①設計費 | 設備導入に必要な設備等の設計に要する経費 |
②設備購入費 | 太陽電池モジュール、蓄電池、パワーコンディショナ、モニターシステム等 |
③土地造成費 | 設備設置に必要な土地造成費 |
④工事費 | 基礎、設備の据付、電気配管及び柵塀に係る工事費 |
⑤接続費 | 送配電事業者の有する系統への電源線、遮断機、等に対する工事費負担金 |
【補助対象外】
以下の経費は補助の対象外です。
- 土地の取得・賃貸借に係る費用や既存建物等の除去、建物躯体の補強に関する費用
- リース・レンタルや、電動車の駆動用蓄電池のリユース蓄電池を除く中古品の購入のための費用
- グループ企業との取引であることのみを選定理由とした調達
- 交付決定前に契約・発注等を行った経費
- 消費税や地方消費税、振込手数料
補助対象期間
補助に関する各期間は、以下のとおりです。
①事業開始日
事業開始日は、交付決定日です。
②事業完了日
補助対象設備の運転を開始した日を事業完了日とし、原則として令和6年2月29日までに、支払いを含めた事業を完了させてください。
事業の流れ
事業の流れは、以下のとおりです。
①応募
②採択決定通知
③交付申請
④交付決定通知
⑤事業の実施
⑥中間検査
➆事業完了・実施報告
⑧確定検査
⑨補助金額の確定通知
➉補助金支払い請求
⑪交付
申請方法
申請は電子申請にて受付を致します。郵送やメール、窓口での提出は受け付られていません。また、申請にはgBizIDの取得が必須です。gBizIDの取得には約1週間程度かかります。申請の準備は、早めに行いましょう。
公募期間
令和5年6月23日(金)~ 令和5年8月10日(木)
提出書類
申請の際、必ず提出する書類は、以下の①~⑫です。
提出書類 |
①応募申請書 ・補助事業に要する経費、補助対象経費及び補助金の配分額 ・役員名簿 ・誓約書 |
②実施計画書 ・申請者情報 (発電事業者) ・関係者情報 (小売電気事業者・需要家) |
③実施体制 |
④補助対象設備の整備計画 (総括表) |
⑤補助対象設備による電気の利用の計画 |
⑥補助対象設備の設備構造図 |
➆資金計画 |
⑧申請者の会社情報 (法人概要) |
⑨申請者の決算書 (直近1年分) ・開業1年未満の場合は、資本や資産などの状況が分かる書類を添付 |
➉申請者の商業登記簿謄本の写し (3か月以内のもの) |
⑪補助対象設備の系統連系に係る接続検討申込み (低圧設備については、系統連系申込み) が完了したことが判別できる書類結果の回答 |
⑫関係法令手続状況の説明資料 |
まとめ
環境問題に関する姿勢は、企業評価にも直結します。再生可能エネルギーに対する関心が世界的にも高まるいま、太陽光エネルギーをはじめとする再生可能エネルギーの導入は、企業の成長に不可欠です。
非FIT・非FIPの設備を補助対象とする需要家主導太陽光発電導入促進事業は、設備導入に関する企業の選択肢を広げます。上手に活用し、負担を減らしながら、新しいエネルギーの活用に取り組んでください。