寡婦(かふ)とは、夫と死別または離婚したあと、再婚していない女性のことです。ただし「寡婦」という言葉は法律ごとに意味が違い、税金の世界では所得税27万円・住民税26万円の「寡婦控除」を受けられる人を指します。
2026年(令和8年)は、寡婦にかかわる制度が続けて動く年です。令和8年度税制改正で扶養親族等の所得要件が58万円以下から62万円以下に引き上げられ、この改正は令和8年12月1日に施行されて同月の年末調整から反映されます。年金でも、2025年6月に公布された年金制度改正法により、2028年4月から遺族厚生年金の仕組みが変わります。
「自分は寡婦にあてはまるのか」「ひとり親控除とどちらを使えばいいのか」「源泉徴収票の寡婦区分は何を意味するのか」――こうした疑問を持つ方は多いのではないでしょうか。
本記事では、寡婦の読み方と法律ごとの定義、寡婦控除の金額・申請方法、寡婦年金や中高齢寡婦加算の令和8年度の金額まで、2026年9月時点の情報でまとめました。
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この記事の目次
寡婦とは?読み方と意味をわかりやすく解説
寡婦の読み方は「かふ」です。意味は夫と死別または離婚したあと、再婚していない女性を指します。「寡」には数が少ない・ひとりという意味があり、配偶者を失ってひとりになった女性を表す言葉です。
日常語では「未亡人」とほぼ同じ意味で使われますが、両者は完全な同義語ではありません。制度の話をするときは、税法・福祉法・年金法のどの「寡婦」なのかを見分けることが何より大切です。
寡婦・寡夫・未亡人・やもめの違いは?
寡婦と似た言葉は複数ありますが、離婚を含むかどうか、男女どちらを指すかで使い分けられています。
| 言葉 | 読み方 | 意味 |
|---|---|---|
| 寡婦 | かふ | 夫と死別または離婚し、再婚していない女性。離婚を含む |
| 未亡人 | みぼうじん | 夫と死別した女性。離婚は含まない |
| 寡夫 | かふ | 妻と死別または離婚し、再婚していない男性 |
| やもめ | やもめ | 配偶者を失った人の和語。男やもめ・女やもめと男女どちらにも使う |
| 後家 | ごけ | 夫を亡くした女性を指す古い言い方 |
「未亡人の対義語は何か」と調べる方も多いのですが、対応する語は「寡夫」または「男やもめ」です。ただし税制上の寡夫控除は2020年(令和2年)分の所得税から廃止され、現在は男女を問わない「ひとり親控除」に統合されています。妻と死別・離婚した男性が子どもを扶養している場合は、寡夫控除ではなくひとり親控除を申告することになります。
寡婦には法律ごとに4つの定義がある
「寡婦」は、根拠となる法律によって定義も受けられる支援も異なります。検索して情報が食い違って見えるのは、この違いが原因です。
| 根拠となる法律 | 寡婦の定義 | 受けられる支援 |
|---|---|---|
| 所得税法・地方税法 | 夫と離婚後に再婚しておらず扶養親族がいる女性、または夫と死別後に再婚していない女性(本人の合計所得金額500万円以下) | 寡婦控除(所得税27万円・住民税26万円) |
| 母子及び父子並びに寡婦福祉法 | 配偶者のない女子で、かつて母子家庭の母として児童を扶養していたことがある人 | 母子父子寡婦福祉資金貸付金、就業支援事業 |
| 国民年金法 | 国民年金第1号被保険者だった夫と10年以上継続して婚姻関係にあり、生計を維持されていた妻 | 寡婦年金(60歳から65歳まで) |
| 厚生年金保険法 | 遺族厚生年金を受ける40歳以上65歳未満で18歳年度末までの子がいない妻など | 中高齢寡婦加算(2026年度は年63万5,500円) |
「寡婦世帯」「寡婦家庭」という言葉が福祉の文脈で使われるときは母子及び父子並びに寡婦福祉法(読み方は「ぼしおよびふしならびにかふふくしほう」)の定義、「寡婦控除」の文脈では所得税法の定義を指しています。
寡婦に年齢制限はある?何歳まで対象になる?
所得税法上の寡婦控除に年齢制限はありません。65歳以上の年金受給者でも、要件を満たせば寡婦控除を受けられます。「いつまで」という期限もなく、再婚するか、扶養親族がいなくなるなどして要件を満たさなくなるまで、毎年継続して適用できます。
一方、年金の「寡婦年金」は60歳から65歳になるまでの5年間、「中高齢寡婦加算」は40歳以上65歳未満と、年齢が明確に区切られています。同じ「寡婦」でも制度ごとに年齢の扱いが違う点に注意してください。
寡婦控除の対象条件は?該当する人・しない人
寡婦控除の対象となるのは、その年の12月31日時点で次のいずれかにあてはまり、かつ本人の合計所得金額が500万円以下の女性です。ここでいう「夫」は民法上の婚姻関係にあった人を指します。| 区分 | 要件 |
|---|---|
| 離婚型 | 夫と離婚した後、再婚しておらず、扶養親族がいる |
| 死別型 | 夫と死別した後、再婚していない、または夫の生死が明らかでない(扶養親族の要件なし) |
離婚型で必要な「扶養親族」は、子ども以外でもかまいません。自分の父母や兄弟姉妹などを扶養している場合も対象になります。ただし離婚と同時に姻族関係は終了するため、元夫の親族は扶養親族に含められません。
扶養親族と認められるには、その年の12月31日時点で次の要件を満たす必要があります。
■納税者と生計を一にしていること
■年間の合計所得金額が62万円以下であること(令和8年分以後の所得税。収入が給与だけなら136万円以下)
■青色申告者の事業専従者として給与の支払を受けていない、または白色申告者の事業専従者でないこと
寡婦控除の対象になる具体例
以下のようなケースは、寡婦控除の対象になります。
- 夫と離婚後に再婚せず、収入のない母親を扶養している
- 夫と離婚後に再婚せず、パート収入のみ(給与収入136万円以下)の弟を扶養している
- 夫と死別後に再婚しておらず、扶養親族はいないが合計所得金額が400万円である
- 子どもが就職して扶養から外れた後も、離婚経験があり別の扶養親族がいる
- 夫と死別し、年金収入のみで暮らしている70歳の女性
寡婦控除に該当しない人は?
反対に、次のようなケースは寡婦控除を受けられません。
- 婚姻歴がなく未婚のまま出産した(この場合はひとり親控除の対象)
- 住民票に「未届の夫」など事実婚をうかがわせる記載がある人がいる
- 本人の合計所得金額が500万円を超えている
- 離婚した後、扶養親族が誰もいない
- 扶養している子どもがいる(控除額の大きいひとり親控除が優先される)
- 離婚後に開業し、扶養していた妹を青色事業専従者にしている
寡婦控除は廃止された?「特別の寡婦」との違い
寡婦控除そのものは廃止されていません。2026年9月時点でも、所得税27万円・住民税26万円の控除として存続しています。廃止されたのは「特別の寡婦」と「寡夫控除」の2つで、いずれも令和2年分の所得税(令和3年度分の住民税)からひとり親控除に置き換わりました。
2019年(令和元年)分までは、扶養する子がいて合計所得金額500万円以下の寡婦に「特別の寡婦」として35万円の控除がありました。この区分は令和2年分の所得税から廃止され、ひとり親控除(所得税35万円)に統合されています。古い解説記事を参照して35万円で申告しないよう注意してください。
寡婦控除はいくら?所得税27万円・住民税26万円
寡婦控除の控除額は、所得税で27万円、住民税で26万円です。いずれも定額で、扶養親族の人数や所得の額によって変動することはありません。令和8年度税制改正でも、寡婦控除の控除額そのものは据え置かれています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象者 | 合計所得金額が500万円以下の寡婦 |
| 所得税の控除額 | 27万円 |
| 住民税の控除額 | 26万円 |
| 控除の種類 | 所得控除(税額から直接引かれるのではなく、課税所得を減らす) |
寡婦控除で税金はいくら安くなる?
寡婦控除は所得控除のため、「27万円が戻ってくる」わけではありません。実際の軽減額は、所得税率に27万円を掛けた額と、住民税所得割10%に26万円を掛けた2万6,000円の合計です。
| 課税所得の目安 | 所得税率 | 所得税の軽減額 | 住民税の軽減額 | 合計 |
|---|---|---|---|---|
| 195万円以下 | 5% | 1万3,500円 | 2万6,000円 | 約3万9,500円 |
| 195万円超330万円以下 | 10% | 2万7,000円 | 2万6,000円 | 約5万3,000円 |
| 330万円超695万円以下 | 20% | 5万4,000円 | 2万6,000円 | 約8万円 |
上の表は復興特別所得税を除いた金額です。なお令和9年1月からは防衛特別所得税(所得税額の1%)が創設される一方、復興特別所得税の税率が2.1%から1.1%に引き下げられます。合計税率は2.1%のまま変わらないため、寡婦控除による軽減額の目安も実質的に変わりません。
寡婦は住民税非課税になる?年収の目安は204万4,000円未満
地方税法上の寡婦にあてはまり、前年の合計所得金額が135万円以下(給与収入だけなら204万4,000円未満)であれば、住民税は所得割・均等割ともに非課税となります。これは一般の非課税限度額より緩やかな基準で、寡婦・ひとり親・障害者・未成年者に認められた特例です。
年金収入のみで暮らしている65歳以上の寡婦の場合、公的年金等控除を差し引いた後の所得が135万円以下であれば、この非課税措置の対象になります。住民税が非課税になると、自治体の給付金や医療・介護の負担軽減など、さまざまな支援の対象にもなります。
寡婦控除とひとり親控除はどちらが優先される?
扶養している子がいる場合は、寡婦控除ではなくひとり親控除が優先されます。ひとり親控除のほうが控除額が大きく、男女を問わず適用できるためです。両方を併用することはできません。
判定の順番はシンプルです。まず「生計を一にする子がいるか」を確認し、いればひとり親控除を検討します。子がいない、または子が就職・結婚して扶養から外れた場合に、寡婦控除の要件を確認しましょう。
| 比較項目 | ひとり親控除 | 寡婦控除 |
|---|---|---|
| 対象の性別 | 男女問わず | 女性のみ |
| 婚姻歴の要件 | 問わない(未婚・離婚・死別すべて対象) | 離婚または死別(未婚は対象外) |
| 扶養する対象 | 生計を一にする子が必須(他者の扶養に入っていない子に限る) | 離婚の場合は扶養親族が必要/死別の場合は不要 |
| 子・扶養親族の所得要件(令和8年分) | 総所得金額等62万円以下 | 合計所得金額62万円以下 |
| 本人の所得制限 | 合計所得金額500万円以下 | 合計所得金額500万円以下 |
| 事実婚の有無 | 住民票に「未届の夫・妻」等の記載がある人がいないこと | 住民票に「未届の夫・妻」等の記載がある人がいないこと |
| 控除額(所得税) | 35万円(令和9年分以後は38万円) | 27万円 |
| 控除額(住民税) | 30万円(令和10年度分以後は33万円) | 26万円 |
| 優先順位 | 要件を満たすならこちらを優先 | ひとり親に該当しない場合に判定 |
2026年の税制改正で寡婦控除・ひとり親控除はどう変わる?
令和8年度税制改正により、扶養親族等の所得要件が引き上げられました。58万円以下から62万円以下への引き上げは、令和8年(2026年)分の所得税から適用されます。国税庁によると、この改正は令和8年12月1日に施行され、令和8年12月に行う年末調整から反映されます。令和8年11月までの源泉徴収事務に変更はありません。
| 改正項目 | 改正前 | 改正後 | 適用時期 |
|---|---|---|---|
| 寡婦の扶養親族の合計所得金額要件 | 58万円以下(給与収入123万円以下) | 62万円以下(給与収入136万円以下) | 令和8年(2026年)分以後の所得税 |
| ひとり親控除の子の総所得金額等の要件 | 58万円以下 | 62万円以下 | 令和8年(2026年)分以後の所得税 |
| ひとり親控除の控除額(所得税) | 35万円 | 38万円 | 令和9年(2027年)分以後の所得税 |
| ひとり親控除の控除額(住民税) | 30万円 | 33万円 | 令和10年(2028年)度分以後の個人住民税 |
| 基礎控除(本則) | 58万円 | 62万円 | 令和8年(2026年)分以後の所得税 |
| 給与所得控除の最低保障額 | 65万円 | 74万円 | 令和8年(2026年)分以後の所得税 |
参考:国税庁 令和8年度税制改正による所得税の基礎控除の引上げ等について
扶養親族の所得要件が62万円以下に上がったことで、これまで所得がわずかに超えて扶養から外れていた親族を、令和8年分から扶養親族として申告できるケースが出てきます。離婚型の寡婦にとっては、扶養親族の有無が控除の可否を左右するため、見逃せない改正です。
「ひとり親控除の本人の所得要件が500万円から1,000万円に引き上げられる」という情報を見かけますが、これは2023年12月の令和6年度税制改正大綱に盛り込まれた検討方針です。その後、扶養控除の見直しとあわせて結論が先送りされ、令和8年度税制改正では控除額の引き上げのみが決定しました。2026年9月時点で、寡婦控除・ひとり親控除いずれも本人の合計所得金額要件は500万円以下です。
また注意したいのは、ひとり親控除の控除額35万円から38万円への引き上げが令和9年(2027年)分以後の所得税からという点です。2026年分の年末調整・確定申告では、控除額はまだ35万円のまま計算します。
寡婦控除の申請方法は?年末調整と確定申告
寡婦控除は自動的には適用されません。会社員なら年末調整、自営業者や年金受給者なら確定申告で、自分から申告する必要があります。添付書類は原則不要です。
「寡婦区分」とは?年末調整での書き方
「寡婦区分」「本人寡婦等区分」とは、年末調整の書類や源泉徴収票で、本人が寡婦・ひとり親・障害者・勤労学生のどれに該当するかを示す欄のことです。給与計算ソフトの入力項目名として目にすることもあります。記入する場所は次のとおりです。
| 書類 | 記入する場所 |
|---|---|
| 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書 | 「障害者、寡婦、ひとり親又は勤労学生」欄の「寡婦」にチェックを入れる |
| 源泉徴収票 | 「寡婦」欄に○が付く(勤務先が記載) |
| 給与支払報告書・住民税の申告書 | 「本人該当区分」の寡婦欄 |
毎年秋ごろに勤務先から配られる扶養控除等(異動)申告書で「寡婦」にチェックを入れて提出すれば、年末調整で控除が適用されます。逆に言えば、チェックが漏れていると控除は反映されません。手元の源泉徴収票の寡婦欄が空欄になっている場合は、勤務先に確認するか、自分で確定申告をして控除を受けましょう。
確定申告で申請する場合
確定申告書では、次の2か所に記入します。
| 手順 | 記入内容 |
|---|---|
| ①第一表 | 「所得から差し引かれる金額」の「寡婦、ひとり親控除」欄に「270000」と記入する |
| ②第二表 | 右側の「本人に関する事項」で「寡婦」に丸をつけ、該当する理由(死別・離婚・生死不明)にチェックを入れる |
年金収入だけの方でも、確定申告をすることで寡婦控除を適用でき、源泉徴収された所得税の還付を受けられる場合があります。提出先は住所地を管轄する税務署で、窓口への持参のほか郵送やe-Taxでの電子申告もできます。
寡婦控除の申請を忘れた場合はどうする?
過去に寡婦控除の申告を忘れていた場合は、その年の翌年1月1日から5年以内であれば「更正の請求」または還付申告により、さかのぼって控除を受けられます。たとえば2021年分であれば2026年12月31日まで手続きが可能です。
数年分をまとめて還付できるケースもあります。所得税の還付申告をすれば住民税にも自動的に反映されるため、税務署での手続き1回で両方が是正されます。心当たりのある方は、源泉徴収票を用意して税務署に相談してみましょう。
「寡婦手当」「寡婦給付金」という制度はある?
結論からいうと、「寡婦手当」「寡婦給付金」という名称の制度は存在しません。ただし、寡婦にあたる方が実際に利用できる公的な支援はいくつもあります。検索でよく使われるこれらの言葉は、次のような制度を指していると考えられます。
| 制度名 | 内容 | 窓口 |
|---|---|---|
| 児童扶養手当 | 18歳年度末までの子を養育するひとり親等に支給。かつて「母子手当」と呼ばれていた制度 | 市区町村 |
| 母子父子寡婦福祉資金貸付金 | 母子及び父子並びに寡婦福祉法に基づく貸付制度。事業開始資金、修学資金、生活資金など12種類。連帯保証人を立てれば無利子 | 都道府県・指定都市等 |
| 寡婦年金 | 国民年金第1号被保険者だった夫を亡くした妻に60歳から65歳まで支給 | 年金事務所・市区町村 |
| 遺族基礎年金・遺族厚生年金 | 亡くなった配偶者に生計を維持されていた遺族に支給 | 年金事務所 |
| 住民税非課税世帯向け給付金 | 物価高対策などで実施される国・自治体の給付金。寡婦の非課税特例により対象となるケースがある | 市区町村 |
このうち母子父子寡婦福祉資金貸付金は、母子家庭の母として児童を扶養していたことがある寡婦であれば、子どもが成人したあとでも利用できるのが特徴です。就職支度資金や生活資金など目的別に12種類が用意されており、連帯保証人を立てれば無利子で借りられます。
寡婦年金はいくらもらえる?支給要件と申請方法
寡婦年金は、国民年金第1号被保険者だった夫が老齢基礎年金を受け取る前に亡くなった場合、妻が60歳から65歳になるまでの間、夫の第1号被保険者期間で計算した老齢基礎年金額の4分の3を受け取れる制度です。夫が納めた保険料が掛け捨てにならないよう設けられた給付といえます。
寡婦年金の支給要件
支給を受けるには、亡くなった夫と妻の双方が要件を満たす必要があります。
死亡日の前日までに、国民年金の第1号被保険者としての保険料納付済期間と保険料免除期間を合わせて10年以上あること
10年以上継続して婚姻関係にあり、夫の死亡当時にその夫に生計を維持されていたこと(事実上の婚姻関係を含む)
寡婦年金を受け取れないケース
次のいずれかにあてはまる場合、寡婦年金は支給されません。
- 亡くなった夫が老齢基礎年金または障害基礎年金を受け取ったことがある
- 妻が老齢基礎年金の繰上げ受給をしている
- 妻が再婚した、または他の年金を選択した
なお、寡婦年金と死亡一時金の両方の要件を満たす場合は、どちらか一方を選択して受け取ります。一般には受給総額の大きい寡婦年金が有利になるケースが多いものの、妻の年齢や夫の納付期間によって異なるため、年金事務所で試算してもらうと確実です。時効にも差があり、死亡一時金は死亡日の翌日から2年、寡婦年金は受給権が発生した日の翌日から5年で請求できなくなります。
寡婦年金の申請方法
市区町村役場または年金事務所にある年金請求書で申請します。主な添付書類は次のとおりです。
- 基礎年金番号通知書または年金手帳など、基礎年金番号がわかる書類
- 戸籍謄本(記載事項証明書)
- 世帯全員の住民票の写し
- 死亡者の住民票の除票
- 請求者の収入が確認できる書類
- 受取先金融機関の通帳等
遺族基礎年金・中高齢寡婦加算の2026年度の金額は?
令和8年度(2026年度)の年金額は、国民年金(基礎年金)が前年度比1.9%、厚生年金(報酬比例部分)が2.0%の増額改定となりました。18歳年度末までの子がいる配偶者などが受け取る遺族基礎年金は、年額84万7,300円です。
| 項目 | 令和8年度(2026年度)の年額 |
|---|---|
| 遺族基礎年金(昭和31年4月2日以後生まれ) | 84万7,300円+子の加算額 |
| 遺族基礎年金(昭和31年4月1日以前生まれ) | 84万4,900円+子の加算額 |
| 子の加算額(1人目・2人目) | 各24万3,800円 |
| 子の加算額(3人目以降) | 各8万1,300円 |
| 中高齢寡婦加算(40歳以上65歳未満の妻) | 63万5,500円 |
| 経過的寡婦加算(昭和31年4月1日以前生まれ) | 63万3,700円から生年月日に応じて逓減 |
たとえば配偶者と子2人の世帯なら、本体の84万7,300円に第1子・第2子の加算額(各24万3,800円)が加わり、年間で合計133万4,900円が支給される計算です。中高齢寡婦加算の63万5,500円は、遺族基礎年金84万7,300円の4分の3にあたる金額(100円単位)です。
遺族基礎年金は、末子が18歳到達年度末を過ぎると支給が終了します。その後は、要件を満たせば寡婦年金や中高齢寡婦加算に切り替わる形で生活を支えることになります。
2028年4月から遺族厚生年金はどう変わる?
2025年6月に公布された年金制度改正法(令和7年法律第33号)により、2028年4月から遺族厚生年金の仕組みが大きく変わります。寡婦の生活に直結する改正のため、概要を押さえておきましょう。
| 改正項目 | 改正内容 |
|---|---|
| 遺族厚生年金の有期給付化 | 18歳年度末までの子がいない60歳未満の配偶者は、男女とも原則5年間の有期給付に変更。現行では子のいない30歳以上の妻は無期限受給 |
| 有期給付加算の創設 | 5年間の給付期間中は年金額に加算が行われ、給付水準は現行のおよそ1.3倍に引き上げられる |
| 継続給付措置 | 障害の状態にある人や、収入が一定以下の人は5年経過後も最長65歳まで継続して受給できる |
| 男性の年齢要件撤廃 | 妻の死亡時に55歳以上という夫側の要件が撤廃され、男女差が解消される |
| 中高齢寡婦加算の段階的廃止 | 2028年4月以後に新たに発生する分から26分の1ずつ縮小し、25年かけて2053年度に廃止 |
| 死亡分割制度の創設 | 亡くなった配偶者の厚生年金加入記録の一部を、残された配偶者の年金記録に上乗せする仕組みを新設 |
影響を受ける人・受けない人
影響が大きいのは、子のいない若い配偶者です。女性については2028年度末時点で40歳未満、かつ18歳年度末までの子がいない人から段階的に有期給付へ移行します。厚生労働省の推計では、新たに対象となる女性は年間約250人、男性は年間約1万6,000人と見込まれています。子のいない男性はこれまで対象外になるケースが多かったため、男性のほうが影響を受ける人数は多くなります。
一方、2028年3月末までに受給権が発生している人は、改正による不利な変更を受けません。中高齢寡婦加算をすでに受給している方も、65歳になるまで現在の金額が維持されます。改正後に受給が始まった場合も、受給権が発生した年度の金額が原則65歳まで続き、毎年下がるわけではありません。子育て世帯への影響も限定的で、子の遺族基礎年金については収入要件の撤廃など受け取りやすくなる方向で見直されます。
寡婦・寡婦控除に関するよくある質問
寡婦の読み方と意味を教えてください
寡婦は「かふ」と読み、夫と死別または離婚した後、再婚していない女性を意味します。日常語の「未亡人」が死別のみを指すのに対し、寡婦は離婚した女性も含みます。なお、税制上の「寡婦控除」を受けられる寡婦は、本人の合計所得金額が500万円以下で、離婚の場合は扶養親族がいることが条件です。
寡婦と寡夫の違いは何ですか?未亡人の対義語は?
寡婦(かふ)は夫と死別・離婚した女性、寡夫(かふ)は妻と死別・離婚した男性を指し、読み方は同じです。未亡人の対義語にあたる言葉は寡夫または男やもめになります。ただし税制上の寡夫控除は2020年(令和2年)分の所得税から廃止され、男女を問わないひとり親控除に統合されました。妻と死別・離婚した男性が子を扶養している場合は、ひとり親控除を申告します。
寡婦控除は何歳まで受けられますか?65歳以上でも対象になりますか?
寡婦控除に年齢制限はなく、65歳以上でも要件を満たせば適用されます。適用期限もないため、再婚するか要件を満たさなくなるまで毎年継続して受けられます。年金収入のみの方でも、確定申告で寡婦控除を申告すれば所得税の還付を受けられる場合があります。ただし年金の「寡婦年金」は60歳から65歳まで、「中高齢寡婦加算」は40歳以上65歳未満と年齢が区切られており、税制上の寡婦控除とは扱いが異なります。
寡婦控除はいくら税金が安くなりますか?
控除額は所得税27万円、住民税26万円です。所得控除のため27万円が戻るわけではなく、実際の軽減額は所得税率によって変わります。課税所得195万円以下(税率5%)なら所得税1万3,500円と住民税2万6,000円で合計約3万9,500円、課税所得330万円超695万円以下(税率20%)なら合計約8万円が軽減される計算です。
寡婦は住民税が非課税になりますか?年収はいくらまでですか?
地方税法上の寡婦にあてはまり、前年の合計所得金額が135万円以下(給与収入のみなら204万4,000円未満)であれば、住民税は所得割・均等割ともに非課税になります。これは寡婦・ひとり親・障害者・未成年者に認められた特例で、一般の非課税限度額より緩やかな基準です。住民税非課税世帯になると、自治体の給付金や医療・介護の負担軽減などの対象にもなります。
寡婦控除は廃止されたのですか?
寡婦控除は廃止されていません。2026年9月時点でも所得税27万円・住民税26万円の控除として存続しています。廃止されたのは「特別の寡婦」(控除額35万円)と「寡夫控除」の2つで、いずれも令和2年分の所得税からひとり親控除に統合されました。古い解説を参照して35万円で申告しないよう注意してください。
源泉徴収票や申告書の「寡婦区分」とは何ですか?
寡婦区分(本人寡婦等区分)とは、年末調整の書類や源泉徴収票で、本人が寡婦・ひとり親・障害者・勤労学生のどれに該当するかを示す欄のことです。給与所得者の扶養控除等(異動)申告書では「障害者、寡婦、ひとり親又は勤労学生」欄の「寡婦」にチェックを入れます。チェックが漏れると控除は適用されないため、源泉徴収票の寡婦欄が空欄の場合は勤務先に確認するか、確定申告で申告してください。
寡婦控除とひとり親控除はどちらが優先されますか?
扶養している子がいる方は、ひとり親控除が優先されます。ひとり親控除は男女問わず適用でき、控除額も所得税35万円(令和9年分以後は38万円)と寡婦控除の27万円より大きいためです。両方の併用はできません。子がいない方や、子が独立して扶養から外れた方は、寡婦控除の対象になる可能性があります。
未婚のシングルマザーでも寡婦控除は受けられますか?
未婚の場合、寡婦控除の対象にはなりません。寡婦控除は「離婚」または「死別」が要件だからです。一方、ひとり親控除は婚姻歴を問わず未婚・離婚・死別のすべてが対象となるため、未婚で子を扶養しているシングルマザー・シングルファザーはひとり親控除を申告してください。
離婚して子どもがいない場合、寡婦控除は受けられますか?
離婚の場合は扶養親族がいることが要件のため、扶養親族が誰もいなければ寡婦控除は受けられません。ただし扶養親族は子どもに限られず、自分の父母や兄弟姉妹でも該当します。合計所得金額62万円以下(令和8年分以後の所得税。給与収入だけなら136万円以下)の親族を扶養していれば対象です。なお死別の場合は、扶養親族がいなくても本人の合計所得金額が500万円以下であれば対象になります。
寡婦であることを証明する書類は必要ですか?
寡婦控除の申告に「寡婦証明書」という専用の書類はなく、年末調整でも確定申告でも添付書類は原則不要です。申告書の寡婦欄にチェックまたは丸を付ければ適用されます。ただし母子父子寡婦福祉資金貸付金など福祉制度を利用する場合は、戸籍謄本や住民票などで婚姻状況・世帯状況の確認を求められることがあります。
寡婦控除の申請を忘れていました。さかのぼって受けられますか?
その年の翌年1月1日から5年以内であれば、更正の請求または還付申告によりさかのぼって寡婦控除を受けられます。たとえば2021年分であれば2026年12月31日まで手続きが可能です。所得税の還付申告をすれば住民税にも反映されるため、税務署での手続き1回で両方が是正されます。手続きはe-Taxからも行えます。
「寡婦手当」「寡婦給付金」という制度はありますか?
「寡婦手当」「寡婦給付金」という名称の公的制度は存在しません。実際に利用できるのは、児童扶養手当(18歳年度末までの子を養育するひとり親等が対象)、母子父子寡婦福祉資金貸付金(母子及び父子並びに寡婦福祉法に基づく12種類の貸付)、寡婦年金、遺族年金、住民税非課税世帯向けの給付金などです。まずはお住まいの市区町村の窓口で相談するとよいでしょう。
2026年度の遺族基礎年金と中高齢寡婦加算はいくらですか?
令和8年度(2026年度)の遺族基礎年金は、昭和31年4月2日以後生まれの方で年額84万7,300円です。これに子の加算額(1人目・2人目は各24万3,800円、3人目以降は各8万1,300円)が上乗せされます。配偶者と子2人の世帯なら合計133万4,900円となる計算です。40歳以上65歳未満の妻が対象の中高齢寡婦加算は年額63万5,500円で、遺族基礎年金の4分の3にあたります。
まとめ
寡婦(かふ)とは、夫と死別または離婚した後、再婚していない女性のことです。ただし定義は法律ごとに異なり、税制上は寡婦控除の対象者、福祉制度では母子及び父子並びに寡婦福祉法上の寡婦、年金では寡婦年金や中高齢寡婦加算の対象者を指します。
寡婦控除の控除額は所得税27万円・住民税26万円で、本人の合計所得金額500万円以下が条件です。年齢制限はなく、65歳以上の年金受給者でも申告できます。扶養している子がいる場合は控除額の大きいひとり親控除が優先されるため、まずはひとり親控除の要件から確認しましょう。
2026年は制度の変わり目です。令和8年度税制改正により扶養親族等の所得要件が62万円以下(給与収入136万円以下)に引き上げられ、令和8年12月の年末調整から反映されます。ひとり親控除の控除額38万円への引き上げは令和9年分以後の所得税からである点、本人の所得要件は500万円以下のままである点に注意してください。さらに2028年4月からは遺族厚生年金が有期給付化され、中高齢寡婦加算も25年かけて段階的に廃止されます。
控除も年金も、申告しなければ受けられません。年末調整では扶養控除等申告書の「寡婦」欄へのチェックを忘れずに、過去5年分はさかのぼって還付を受けられますので、心当たりのある方は税務署や年金事務所に相談し、使える制度を確実に活用してください。
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