家族や親族の介護で仕事を休まざるを得ないとき、収入の減少は大きな問題です。しかし、短い時間単位で取得できる介護休暇の賃金が支給されるかどうかは、会社の規則や方針によって異なります。
一方、まとまった期間休みたいときに使える介護休業では「介護休業給付金」が申請でき、収入面での支えとなります。
介護休業給付は、休業中の賃金の67%をハローワーク(公共職業安定所)が支給するものです。今回は介護休業制度について、対象者や申請方法をまとめました。
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この記事の目次
介護休業制度とは?
介護休業制度は、介護休暇・休業を含む、家族の介護を行う労働者のための制度です。年5日(または10日)の休暇のほか、短時間勤務等の措置や所定外労働の制限などが含まれます。育児・介護休業法の改正により、令和4年4月からは「入社1年以上であること」の要件が撤廃され、より多くの労働者が活用しやすい制度となりました。
全体の概要は、以下の図も参照してください。
出典:介護休業制度
介護休暇とは
介護休暇は、労働基準法の年次有給休暇とは別に取得できる休暇です。家族の介護等で急に予定を変更せざるを得なくなった時に活用できます。ただし、有給か無給かは会社の方針によって異なります。
まずは、介護休暇の内容を見ていきましょう。
介護休暇 取得できる日数と単位
取得できる日数は、対象となる家族の人数によって異なります。
対象家族が1人の場合 | 年5日まで |
対象家族が2人以上の場合 | 年10日まで |
【取得単位】
令和3年1月1日からの取得単位は、以下のとおりです。
「1日または時間単位」
半日または時間単位での取得が困難と認められる業務に従事する労働者については、労使協定を締結している場合、1日単位でのみ取得可能です。
介護休暇 対象となる労働者
対象家族を介護する労働者が対象です。ただし、以下の場合は対象外です。
日々雇用労働者 |
労使協定を締結している場合 ・入社6か月未満の労働者 ・1週間の所定労働日数が2日以下の労働者 |
また、対象となる家族は以下のとおりです。
- 事実婚を含む配偶者
- 父母
- 養子含む子
- 配偶者の父母
- 祖父母
- 兄弟姉妹
- 孫
【手続きの方法】
書面の提出もしくは口頭での申出によって、手続きを行います。
介護休業とは
介護休業は、対象家族1人につき、通算93日・3回まで支給されます。介護休暇よりも長期的な休みが取得できるため、実際に介護を行うだけでなく、「介護と仕事を両立するための期間」として想定されています。
介護休業給付金の対象となる介護休業の要件は、以下のとおりです。
①負傷、疾病または身体上もしくは精神上の障害により、2週間以上にわたり常時介護を必要とする状態にある家族を、介護するための休業であること。 |
②被保険者が、事業主にその期間範囲に関して申し出を行い、実際に取得した休業であること。 |
ただし、介護休業は、産前・産後休業中に開始することはできません。また、介護休業の期間中に他の家族に対する介護休業、産前・産後休業、育児休業が開始された場合、それらの新たな休業の開始日の前日をもって当初の介護休業は終了します。
介護休業給付は誰が申請できる?
介護休業給付は、事業主を通じて申請を行います。ただし、被保険者本人が希望する場合は、本人が申請手続きを行うことも可能です。
受給要件は、以下のとおりです。
・原則として、休業開始前2年間に被保険者期間が12か月以上あること |
・有期雇用労働者の場合は、取得予定日から起算して、93日を経過する日から6か月を経過する日までに契約期間が満了しないこと |
介護休業給付はいくらもらえる?
介護休業給付金は、1回の介護休業につき、毎回1か月ごとの期間(「支給単位期間」)の支給額を計算して支給されます。1回の介護休業期間は3か月ですので、最大で3支給単位期間です。分割して休業する場合は、支給も分割となります。
介護休業給付の1支給単位期間ごとの給付額は、以下の式で算出します。
休業開始時賃金日額×支給日数×67%
休業開始時賃金日額は、原則として、介護休業開始前6か月間の総支給額を180で除した額です。
正確な金額は提出する雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書から算出されますが、例えば1か月の介護休暇を取得した場合、支給額の目安は以下のとおりです。
・月額15万円程度の場合、支給額は月額10万円程度 |
・月額20万円程度の場合、支給額は月額13万4,000円程度 |
・月額30万円程度の場合、支給額は月額20万1,0000円程度 |
ただし、給付額には上限があります。また、支給対象期間中に賃金支払い日があり、そこで支払われた賃金の額と賃金日数の67%相当額の合計額が賃金月額の80%を超えるときは、支給額は以下のようになります。
・賃金が休業開始時賃金日額×支給日数の13%以下⇒ 賃金月額の67%相当額 |
・賃金が休業開始時賃金日額×支給日数の13%~80%⇒ 賃金月額の80%相当額と賃金の差額 |
・賃金が休業開始時賃金日額×支給日数の80%以上⇒ 支給なし |
なお、介護休業給付は、介護休業終了後の職場復帰を前提とした給付金です。休業前、すでに退職を予定している場合には、介護休業給付の支給対象となりません。
介護休業申請のフローについて
介護休業給付の受給手続は、ハローワークで行います。
介護休業終了日の翌日から2か月後の月の月末までに「介護休業給付金支給申請書」と「雇用保険被保険者休業開始時賃金証明票」を、事業所を管轄するハローワークに提出してください。
そのほか、必要な書類は以下のとおりです。
■受給資格確認に必要な書類 |
①雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書 |
②賃金台帳、タイムカードなど、賃金の額および賃金の支払い状況を証明することができる書類 |
■支給申請に必要な書類 |
①介護休業給付金支給申請書 個人番号欄にマイナンバー(個人番号)の記載が必要です。 |
②被保険者が事業主に提出した介護休業申出書 |
➂住民票記載事項証明書等 介護対象家族の方の氏名、申請者本人との続柄、性別、生年月日等が確認できる書類 |
④出勤簿、タイムカード等 介護休業の開始日・終了日、介護休業期間中の休業日数の実績が確認できる書類 |
⑤賃金台帳等 支給対象期間中に支払われた賃金の額および賃金の支払い状況、休業日数、就労日数を確認できる書類 |
なお、手続きは会社が行う場合もありますので、担当部署に確認してください。
申請後に介護休業給付支給決定通知書が送付されます。概ね支給決定日から1週間程度で、支給金が振り込まれます。
まとめ
介護は、「高齢の親を持つ労働者」だけの問題ではありません。子供や配偶者はもちろん、自分自身が要介護の状態となったときには、家族全体の生活を調整していく必要があります。介護の問題は、誰もが当事者になりうる社会的課題のひとつです。
介護休業制度は、介護と仕事を両立するための支援として設置されています。今後の仕事と、新しい生活について考える時間を確保することは、自分にとっても家族にとっても大切なことです。介護休業給付金をはじめとする支援制度を活用し、少しでも負担を減らしながら、大変な時期を乗り越えていきましょう。
参考:厚生労働省 介護休暇とは
参考:厚生労働省 介護休業とは